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こんなに近くで…… ◆/O9sjV9JyQ



数年前の話だ。
ジャイアンの母がいつものように店番をしていると、小学生の息子が帰ってきた。
「お帰り。手を洗ったらちょっと手伝いしとくれよ」
しかしいつもは無駄に元気な息子からは返事が無かった。
少し心配になって見てみると、息子のタケシはいつに無く元気の無い顔をしている。
それも、先生に怒られたとか友達と喧嘩したとか、そんなことでも無さそうだ。
「どうしたんだい?」
母が問うと、タケシは戸惑いながらも答えた。
「母ちゃん、俺……好きな人が出来たんだ」



「どうやら、タケシはここにはいないようだね……」
名簿を確認したジャイアンの母はほっと息をついた。
てっきり息子のタケシもここに連れて来られていると思い込んでいただけに喜びは大きい。
タケシがいないのなら、タケシのために他の参加者を殺したりする必要だって無いだろう。
むしろ、どうやって他の人たちと一緒にここから脱出するかを考えるべきだろう。
何しろ今までとは違って、限定された空間の中での殺し合いであり主催者はこの会場には恐らくいない。
つまり、直接主催者のもとに乗り込む前にまずはこの会場から首輪を爆破されずに脱出する方法を考えないといけない。
一筋縄ではいかないだろうが、そこは剛田雑貨店を切り盛りすることで身に着けた才覚の見せ所だ。
「タケシ、待ってなよ。母ちゃんはすぐに帰るからな!!」
そう意気込み、まずはもう一度地図と名簿を確認しようとしていた時、すぐ近くで爆音に似た音がした。
慌ててジャイアンの母がその音のしたほうを振り向くと、そこには見覚えのあるシルエットがあった。
「あれは……確か、野比くんの家に居候してるロボットじゃないかい」


「……かはっ……畜生……こんなものを俺に見せやがって……
許さねえ。どうやらここにいる奴らはよほど俺を虚仮にしたいようだな!!」
ドラえもんの前には、真っ黒に焦げた一枚の布切れが落ちていた。
人間を皆殺しにすることを決断したドラえもんの目の前に、それは風に吹かれてどこからともなく飛んできたのだ。
本来の彼であればそのようなものを意に介すはずがなかった。
そう、その布が、ネズミのアップリケのついた一枚のパンツでさえなかったら。
パンツの尻の部分にまるで自分をあざ笑うかのように微笑んでいるネズミの姿を認めたとき、ドラえもんは手にしていた銃の引き金を引いた。
「ネズミも、人間も、一人残らず皆殺しだ!! ついでにこの俺をここまで舐めやがった首謀者もな!!」
「ちょっとアンタ、何をやってんだい?」
月を見上げて狂人のように哄うドラえもんにジャイアンの母が恐る恐るながらも声をかけた。
夜空を仰いでいたドラえもんはゆっくりと自分に声をかけた女に向き直る。
「ああ……お前はジャイアンの母親じゃないか。なんでお前までこんなところにいる?」
その、普段のドラえもんとはあまりにも違う態度にジャイアンの母は戸惑う。
「まあなんでもいい。貴様が人間である以上……ここで死んでもらうぜ」
そう言って、手にしていた銃口をジャイアンの母に向け、引き金を引いた。


「ふざけてるんじゃないよおおおおおおおおおおおおお!!」
ジャイアンの母の咆哮が月夜に響き渡る。それと同時に、何かがバラバラに破壊される音。
「な、何だと!!」
ドラえもんは呆然としながらも、ジャイアンの母の手の中で銃がバラバラになっていくのを見守るしかなかった。
彼の敗因はただ一つ。この銃は主催者によって、参加者間の戦力のバランスをとるために一発しか撃てないようにされていたのだ。
しかし、もしドラえもんがこの一発を残していればジャイアンの母は確実に死んでいたであろう。
だが、つい先刻彼はこの貴重な一発をパンツに向けて撃ってしまったのだ。
手の中から砕けた銃の破片を零しながらジャイアンの母が言う。
「何だって……人間は皆殺しにする、だって……何てこと言ってんだい!! あんたはロボットだろうが!!」
「黙れ!! お前ら人間はいつも俺たちロボットを虐げ、馬鹿にしてきた!!
口では何を言おうが、心の中では俺などただの道具だと思ってるんだろうが!!」
「おだまりっ!!」
ジャイアンの母の平手打ちが飛ぶ。
ドラえもんは数メートルほど吹っ飛ばされた。

「あんたは何もわかっちゃいないんだよ!! タケシはねえ……うちの息子はねえ、ずっとあんたのことが好きだったんだよ!!」
「だから、そんなこと口ではいくらでも!!」
「そうじゃないんだよ。タケシは一人の男として、ずっとあんたのことを愛してたんだよ!!」
「なっ―――」
ドラえもんは絶句する。ジャイアンの母の口から告げられた、そのあまりに意外な言葉に驚愕と疑念とが同時に沸き起こる。
「あんたが野比くんの家に来てからしばらく経った頃だった。あの子は泣きながら私に告白したんだよ。
好きになっちゃいけない人を好きになったってね。
あの子は本当に難儀な子でね。その少し前には野比くんに告白して玉砕してたから、そのこともあったんだろうけど」
「それじゃあ、あいつがことあるごとにのび太を虐めてたのも……」
「ああ、そういうことさ。不器用な子だからねえ。でも、あの子の思いはいつだって本物だったんだ。
あんたのことだって本気で好きだったんだ。なのに、そのあんたが人間は敵だと言う。
それが、あたしには我慢できないんだよおおおおおお!!」
再びジャイアンの母の往復ビンタがドラえもんの顔に飛んだ。
顔を凸凹に変形させたドラえもんに彼女は呼びかける。
「あんたも私と一緒に生きて帰るんだよ!! タケシのために!!
そして他の人もみんな一緒に帰るんだ!!」
ドラえもんはぽかんと口を開けたまま、空ろな目で夜空を見上げてジャイアンの母の声を聞いていた。
すべての人間は自分を道具だと思っていたはずでは無かったのか?
自分はずっと人間たちに馬鹿にされてきたのでは無かったのか?
さっき知らされた事実は、あまりに空疎で重く、取り返しがつかないほど馬鹿げたことだった。
「ハ……ハッハッハッハ!!」
口を小さく開けて、喉の奥から搾り出すような笑い声を上げた。
「ハハハハハ、これは傑作だ!! 貴様の話が本当だとしたら、俺は何のために今まで―――!!」
ドラえもんは跳ね起きた。そして地面の上に転がっていた自分の支給品袋に手を伸ばす。
「もう何もかも遅い!! もう俺には戻るべき場所すらない!! だから、俺が憎んだ人間ごと何もかもを終わらせてしまおう!!」
そう言ってドラえもんがバッグから取り出したのは「地球破壊爆弾」。
「これは俺の支給品に入っていたものだ。こいつで、ここにいるクズどもごとこの馬鹿げた殺し合いを終わらせてやる!!
黒幕野郎をぶっ殺せねえのは残念だが、殺し合いを台無しにすりゃあ嫌がらせくらいにはなるだろうからな!!」
「あんた、何てものを……やめなさい!!」
「もう遅い!!」
ドラえもんは地球破壊爆弾の起爆スイッチに手を伸ばした。


しかし、何も起こらない。




「しまった……」
ドラえもんは愕然とした顔で膝をついた。
「どうしたんだい?」
ジャイアンの母の問いに、ドラえもんは自嘲気味に答える。
「ったく、こんなことも忘れちまうとは、俺も堕ちたもんだ。
この爆弾の効果は『地球を破壊させるほどの爆発を起こすこと』じゃあない。
文字通り、『地球を破壊させること』なんだ」
「じゃあ……」
「ああ。今頃、どっかの平行世界の地球が木っ端微塵に砕けてるはずだ。
だが、ここにいる俺たちには何の関係も……ない……」
そういい終えたドラえもんの頭にジャイアンの母の手が置かれた。
「そうかい。そりゃあ良かったよ」
そしてそのまま、ドラえもんの頭部の外殻を指で握り潰した。
「があああああッ!!」
ドラえもんは内臓コンピューターをむき出しにしながら悲鳴を上げる。
「あんたは生きていたらまた他の人を殺そうとするだろう。だから、私がここで殺してやるよ」
ジャイアンの母はそう呟くと、両手でドラえもんのボディを原型をとどめなくなるまで破壊した。

薄れ行く意識の中で、ドラえもんは昔ロボット学校で聞いた先生の言葉をなぜか思い出していた。
『第一条・ロボットは人間に危害を加えてはならない。
第二条・ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。
第三条・ロボットは―――』

(ジャイアン……のび、太……)

ドラえもんに内蔵されていたコンピューターは、その機能を完全に停止した。


「タケシ……すまないね。母ちゃんを許しとくれ」
ドラえもんの亡骸を前にして、ジャイアンの母は頬に伝う涙を必死で拭っていた。
「いや、許してもらおうなんていわないよ。もうあんたの所に帰れなくてもいい。
ただ、こいつみたいにここにいる他の人を殺そうとする奴らがいたら、そいつらを全員殺してやるんだ。
こんな思いをするのは私だけでいい……だからタケシ、あんたはどうか……」
独り言は、いつしか完全な嗚咽に変わっていた。



【C-6 森の中/一日目・黎明】
【ジャイアンの母@カオスロワ】
【服装】:ジャイアンの母の服装
【状態】:健康
【装備】:天の羽衣@竹取物語
【持ち物】:支給品一式
【思考】基本:他の参加者を殺す可能性のある参加者を殺す
1:無抵抗な参加者は殺さないが殺人者には容赦しない
2:可能であれば脱出する方法を探る

【ドラえもん@ニコニコ動画バトルロワイアル  死亡】

※「おじいさんの銃@アルプスの少女ハイジ」(弾なし)と「地球破壊爆弾@ドラえもん」(使用不可能)、
 ドラえもんの支給品一式はC-6に落ちてます

※どこかの世界の地球が破壊されましたがロワそのものには全く影響がありません




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投下順で読む

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テラカオスニコニコオリジナル葉鍵FFDQバトルロワイアル ドラえもん GAME OVER
無題(053) ジャイアンの母 怪しい洞窟へ行こう!
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