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悪霊

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悪霊 ◆QkRJTXcpFI



愛の究極に、憎しみの究極に、ともに潜むのは殺意。

完全なる殺意は、最早感情ではなく、冷徹なる意志。

人は、神に似せて創られたという。

それでは、神の意志に潜みしものは、愛か、憎悪か。

次回「悪霊」。我、かの人を愛するが故に。


教会を出て数時間後、キリコはA-6地区に到達していた。

ここに来るまでの間、他の参加者たちに会う事や、
それ以外のアクシデントも起こらず、順調な行程であった。

ここで、キリコは一つの出会いを果たした。
ただし、相手は人ではない。
愛嬌のある顔立ちの一頭の大型犬であった。

キリコがA-6とA-7の境に差し掛かった時、
向うから歩いてくる一頭の犬を見つけた。
犬は、口に焦げたパンを咥えながら、あまり元気がない様子で
トボトボと歩いてくる。

人慣れした犬・・・なのだろう。
元気がないからかもしれないが、
犬がキリコの存在に気づいたのは、
キリコの目の前まで来た時だった。

キリコはこちらをきょとんとした様子で見つめる犬の前で、
デイパックを開き、中から何かを取り出した。
それは、ひと振りの
登 山 ナ イ フ だった。



キリコは地面に腰かけて、食料品の中にあった干し肉を齧っていた。
彼の足元では、キリコが食べやすいように細かくナイフで切った
干し肉をもぐもぐと食べる犬の姿があった。
犬はよほど空腹だったのか、わき目もせずに肉を食べている。
その傍らには、半分になった焦げたパンがあった。
何故かこの犬はこの焦げたパンに酷く執着しており、
さっきキリコがそれを取ろうとしたところ、急いで口に咥え、
首をフルフルと横に振ったのだ。
キリコは別に焦げたパンなど特に欲しくはなく、
そのままパンは犬の物となっていた。

キリコがこの犬を助けた理由は、善意によるものだけでは決してない。
犬は、嗅覚をはじめとするあらゆる感覚が人間よりもはるかに鋭い。
(ただし犬は種族として色盲なので、その点では人間の方が上だが)
故にキリコはこの犬をレーダー代わりに使う積りでいた。
人慣れした犬なので、恐らくついて来いと言えばついてくるだろう。
ついて来なかったときは・・・・まあ仕方ない。
人助け・・・ならぬ犬助けをしたと思えばいい。

キリコがそんな事を考えていた時、
犬が、(首の名札には“パトラッシュ”と書かれていた、何でキリコが
アストラーダ文字以外読めるんだとかは・・・突っ込むな)
もとい、パトラッシュが突然、びくっと震えたかと思うと、
辺りを見渡し始めた。
その反応に、キリコは立膝をついた状態で、UZIを構え、辺りをじっと窺う。
しかし、辺りには人っ子一人見えない。
辺りは背の高い木もない原っぱで、人が隠れられそうな場所もない。
しかし、キリコは警戒を緩めない。否、緩められなかったのだ。

何故なら、

(何だ・・・・この異常な気配、背筋の寒気は・・・・・)
辺りを包む尋常でない空気が、キリコに警戒を解かせないのだ。

そんな時、キリコの背筋に誰かが触れた。

「・・・・・・ッ!!」
しかし振り返れない。何故か、キリコの体は、まるで凍結してしまったかの
ように動かなかった。

『・・・・・・お主』
不意に声が聞こえた。
女の声だ。
とても美しい声だ。
そして、
『・・・・お主は・・・』
この世のものとは思えぬほどにオゾマシい声だ。

キリコはかろうじて眼だけを動かした。
するとどうであろう。
自分の顔のすぐ横、右肩の上に美しい女の顔があった。
透けて見えるほどの青白い肌、
病的なまでに、まるで生血で染めたように赤い唇。
それが耳元で囁いた。

『愛しき人をしなせたな・・・・』
「!」
『あの女を殺したのはお主だ・・』
『お主と共にあらねばあの女は死ぬ事はなかったろうに』
(・・・やめろ)
『お主を愛せねば死ぬことも、苦しむことも無かったろうに』
(・・・やめてくれ)
『せいぜい後悔するがいい・・・・あの女を愛してしまったことを』
『あの女に愛されたことを・・・・・』
(やめろっ!!)
『あの女を・・・・・』
「やめてくれっ!!」
唐突に口が、体が動いた。
それは、キリコの体を貫いた感情のうねりがそうさせたのか。
キリコは足もとの登山ナイフを掴むと、
背後へと振りぬいた。

『ほほほほほほっ!あははは、あははははははははは・・・・・』
女は、六条御息所の生霊は、憐れむような視線と、
こちらを蔑むような高笑いを残して、南の森の方へと消えていった。

キリコは知らぬ話だが、古来、光物は魔除けになると言われており、
太刀などの刃物は魔除けとして使われていたこともあるのだ。
キリコがとっさに振るった登山ナイフが魔除けの働きをし、
六条御息所の生霊を退けたのだ。

「はぁ・・・・はぁ・・・・・・」
キリコの体は、嫌な汗でぐっしょり濡れていた。
心臓は異様に高鳴り、息は上がっていた。
落ち付くには数分の時間を必要とした。


ようやく落ち着いたキリコは、立ち上がって辺りを見渡す。
あの女の影は、何処にも見当たらない。
まるで霞のように消えてしまっていた。

彼を心配してか、パトラッシュが足もとにすり寄ってきていた。
キリコはそんなパトラッシュの頭を優しく撫でると、
ぽつりと、永遠に失われてしまった恋人の名を呟いた。
「・・・・・・・フィアナ」
と。


【A-6:一日目 黎明】

【キリコ=キュービィ@装甲騎兵ボトムズ】
【服装】: AT耐圧服@装甲騎兵ボトムズ
【状態】:健康
【装備】:S&W M60@現実(弾丸は全部で24発)、
    UZIサブマシンガン@現実(マガジンの数は全部で4つ)
【持ち物】:登山ナイフ(支給品はすべて確認済)、基本支給品
【思考】
基本行動:神にだって俺は従わない
1: フィアナ・・・・・
2:パトラッシュを出来れば連れて行きたい。
3:カン=ユーが少し気になる
※ 「赫奕たる異端」終了後からの参戦です
※ 異能生存体としての能力は制限されています。
肉体の再生能力は常人よりも少し上な程度、
彼の身を守る「幸運」は本来の半分程度です。
しかし、コンピューターへの高い適応能力、
AT操縦技術は制限されません。
なお、キリコは首輪による制限に気付いていません。

【パトラッシュ@フランダースの犬】
【服装】全裸。敢えていうなら毛皮?
【状態】満腹・気力十分
【装備】未確認
【所持品】支給品一式
【思考】基本行動:ネロにこげぱんの半分を渡す。
1 :青髪のお兄さん(キリコ)の様子が気になる。
※パトラッシュは一度天国に召された経験があります。


『あはは、あははははっ』
六条御息所は愉快でたまらなかった。
女を求めて彷徨う彼女がキリコに憑いたのは
ほんの気まぐれだ。最初は軽くからかうつもりだった。
しかし、キリコに憑いた瞬間、彼女の頭に流れ込んできた物。
それは、相手が死してもなお消えることない、愛しい人への
強い思慕の情であった。
彼女は嫉妬した、死んでもなお、愛され続ける女に。
自分は決してあの人に愛される事はなかったというのにっ!!
だから弄ってやった。死んだ女の思い人を。
女の事を言った時の男のあの青ざめた顔っ!!
愉快、愉快、愉快でたまらない。
六条御息所は最初からキリコを殺すつもりはなかった。
彼女が憎いのはこの世で生を愉しむ女どもであって、
“やもめ男”なのではない。
彼女は、ただ虫を弄るように、キリコを弄っただけだ。

『さて・・・・』
これからどこへ行こう。
嫉妬に狂う女の悪霊は何処とも知れず森の闇へと消えた。

【C-6/豪邸付近の森/一日目/黎明】

【六条御息所@源氏物語】
【服装】:白襦袢
【状態】:生霊
【装備】:不明
【所持品】:支給品一式
【思考】女を一人残らず呪い殺す。
1:愉快、愉快。

※備考:本体はマップのどこかに眠っています

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UNTOUCHABL キリコ=キュービィ 異変
繋がる命 パトラッシュ 異変
葵、夕霧、そして猫 六条御息所 嘘が為に鐘は鳴る



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