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間然。一体いかなる思考にて私の思想に異を唱えるか ◆.pKwLKR4oQ


「ん、これは!?」

何やら嗅いだ事のある臭いで仮面の男は目を覚ます。
白い仮面を付けたトゥスクル国の皇の名はハクオロ。
彼はこの殺し合いが始まってすぐにウィツァルネミテアとなって契約による力を行使した事で眠りに就いた。
それからハクオロは力の回復のために眠り続けていたのだ。
当然その間に何があったのかは全く知る由もない。
だから目覚めたハクオロには分からない。
隣の部屋の惨劇――上下左右血塗れの部屋がどのようにして齎されたのか。
動物達が全て殺されているのには流石に幾度の戦争を潜り抜けてきたハクオロでも吐き気を催す光景だった。

「サギリ! サギリ! いないのか」

直前まで自分の元へいた契約者・狭霧嘉麻屋の姿は影も形もない。
一応念のため周囲も建物の中も調べたが、やはり見つける事は出来なかった。
もしや自分が寝ている間に不測の事態が起きたのではとハクオロは己を責めようとした。

その時だった。

『ああ、ああ、マイクテスト、マイクテスト。テス、テス……七並べ、七並べ……よし、感度良好』

男の声が聞こえてきた――しかもよく聞けばこの声は最初に自分達に殺し合いをしろと言ってきた男の声だ。

『ああ、殺し合いに熱中している皆さん。突然の放送で驚かせてすいません』

何を謝るかと思えば腹立たしい。他に謝る事があるだろうとハクオロは声を大にして叫びたい衝動に駆られた。

『言い忘れていましたが、六時間に一回の頻度でこのような放送を行うから、その辺りよろしく』

その内容はこの6時間に死んだ者と侵入禁止エリアなるものの発表だった。
禁止エリアの方はとりあえず今いるペットショップとは関係ない場所なのでひとまず安心だった。
建物の表に『ペットショップ』という看板があったのは現在地の特定は容易だった。

『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリェッ――!?
 …
 ……
 ………
 …………
 ……………
 ………………失礼した。続きだ。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』

呼ばれてしまった。
ハクオロにとってはここへ来る前からの唯一の知り合いが。
そして仮面の男にとっては特別な女性の名が。
あまりに呆気なく呼ばれてしまった。
だが、まだ放送が真とは限らない。
社長に捕らえられている可能性もある。
しかしハクオロも本当は分かっていた。
そんな可能性など全く無いという事に。

『それでは、また六時間後の私の放送を楽しみにしていてくれ』

その言葉を最後に社長による最初の放送は終了した。
名前を呼ばれた者、つまり死者の数はなんと全体の半数に届こうかという73人だった。
ハクオロはあまりの死者の多さ、特にルイズの死亡にしばらく呆然としていた。
だがハクオロは元々トゥスクルの民の上に立つ皇の立場にあった身だ。
すぐさま気持ちを持ち直して、自分がやるべき事を模索する。

「とりあえずサギリを探すか――ん?」


これからどうするべきか考えているハクオロの耳が隣の部屋から聞こえてきた物音に気付いた。
確か隣の部屋は今まで自分が寝ていた部屋だ。
もしかして誰か来たのだろうか。それなら事情を聞いた方がいい。
そんな事を考えつつハクオロはドアを開けて、そこにいる者に声をかけた。

「すまない、お嬢さん。今の状況を説明してほしいんだが……」

部屋にいたのはピンクの装束を着た少女と犬と鼠のような生き物だった。
だがハクオロは少女の様子がおかしい事に逸早く気が付いた。
それはまるで何かに怯えているような様子だった。
しかもその恐れの対象は自分の方にいるかのような反応だった。

そこでハクオロは自らの失態に気が付いた。
今のハクオロの格好は「仮面を被り着物の所々を血で染めている」ものだった。
明らかに怪しまれて当然という格好なのだ。
それに気付いた時には既に手遅れだった。

 ◆

そもそも連れて来られたのが人生で最悪な瞬間ではきちんと物事を理解するのには時間がかかるもの。
沙枝は最初の4時間こそ自分が受けた恥辱の極みを思い出しては気落ちするばかりだった。
だが黒井先生やランキング作成人と触れ合う内に沈んだ心も徐々に持ち直していった。
黒井先生の明るい雰囲気、作成人との何気ないやり取りは沙枝の心に安らぎを与えてくれた。
その甲斐あってしばらくすると沙枝はいつも通り元気な姿を見せるようになっていた。

だが、そんな空気も放送を聞いた瞬間に吹き飛んだ。
西島翔子。
沙枝の一番の親友である彼女の名はあっさりと呼ばれてしまった。
心のどこかで否定していたが、ここは殺し合いの場だ。
翔子が死ぬ事だって十分あり得る。
むしろ魔法が使える自分とは違って翔子は極普通の女子高生だ。
こんな場所に連れて来られて無事でいられる可能性なんて限りなく0だ。
だけど翔子が死んだなんて簡単に納得できる事じゃない。
寧ろ嘘だと言ってほしかった。
沙枝は再び落ち込み、深い悲しみの奥底へ落ちようとしていた。

さらに悪い事は重なるもの。
偶然にも作成人の怒りに呼応して発動したイデは沙枝をペットショップへと飛ばしたのだ。
そして気づいたらどこにでもあるような事務室にいた。
もちろん周りには人はいない。
傍らにパトラッシュという名札を付けた犬とチビすけという名札を付けたハムスターがいたが、黒井先生と作成人の姿はどこにもない。
親友の死に引き続いて、ここで知りあった人達との別れは沙枝の心を再び沈ませるのに十分だった。
沙枝は悲しみに耐えられずに床に座り込み、再び泣き始めてしまった。
それを見たパトラッシュとチビすけは悲しみに暮れる沙枝を懸命に慰めようとした。
そんなパトラッシュとチビすけの気持ちが通じたのか沙枝は何とか笑みを作って気持ちを落ち着かせ始めたのだが――

――いきなり部屋のドアが開いた。

「誰!?」

沙枝は突然の侵入者の正体を確かめようと視線をドアの方に向けると、そこには一人の男の姿があった。

「すまない、お嬢さん。今の状況を説明してほしいんだが……」

それは顔には白い仮面を付けて所々血痕が付いている着物を着た怪しげな男だった。
しかもドアの向こうには一面に血と何かの死体が散らばっていた。
それだけで沙枝のパニックを起こすのには十分だった。

「いやぁぁぁあああああ!!!!!」

沙枝は目の前の不審者を倒すべく掌に思念を集めた。
集まった思念にイメージを送り込み、見る間にそれが形を成していく。
これが沙枝の使える特別な力「魔法」だ。
思念という所謂魔力に類する力を自分のイメージ通りに具現化させる力だ。

「グ、グレネードランチャー!!」
「おい、待て! 話を――」

そして具現化されたのは無骨な黒い砲身を持った歩兵用の銃火器、グレネードランチャー。
本来なら魔法少女らしく魔法のステッキが出てもいいところだが、親友の翔子の影響で沙枝の武器の概念は銃器で決まりだった。
だがそれでもグレネードランチャーの威力が弱まる事など無い。
沙枝のイメージがしっかりしていれば本来の威力に劣る事はない。

「来ないでぇぇぇえええええ!!!!!」
「――ッ!!」

沙枝の絶叫と共にグレネードランチャーの引き金に掛かる指に力が籠められる。
仮面の男が何か言っているが今の沙枝にはグレネードランチャーを発射する事で頭が一杯だった。
そしてハクオロの弁明も虚しく引き金が――

カチッ

「……え? あれ?」

――引かれた。だが沙枝の意に反して銃器は虚しくカチッカチッと音を響かせるだけだった。

「……あ、そういえば焼夷弾が無いとダメだったんだ」

沙枝の使用する魔法には具現化する物をイメージする必要がある。
サブカルチャーオタクの翔子の影響で軍用兵器に関してはある程度造詣があるとはいえ、さすがに焼夷弾までは無理だ。
つまり今沙枝が手にしているのはただの黒い鉄の塊同然なのだ。

「ぅう……いや、来ないでください……」

沙枝は涙混じりにハクオロに訴えた。
その姿はまさに怯えきった小動物そのものと言っても過言ではないほど。
それほど沙枝は今の状況に恐怖を抱いていたのだ。

「……まずは私の話を」
「助けて」
「だから話を」
「いや! 来ないで!」
「いい加減に話を」
「ぅう、みんな……」

「おい!!!」

泣きじゃくる沙枝に対してハクオロは大声を上げた。
沙枝は一瞬ビクッと身体を震わせて、恐る恐るハクオロの方を見上げた。
よく見るとハクオロは手を後ろで交差させて、デイパックはこちらへ放り投げていた。

「え、あ、あの……?」
「私の名はハクオロだ。君に危害を加える気はない」
「へ?」
「証拠代わりに私のデイパックを調べてくれていい。もちろん君が望むなら身体検査もしたらいい」
「ほ、本当に殺さないんですか? だ、だって服に血が……」
「信じてもらえないかもしれないが、私は誰も殺していない。この血は向こうの部屋を調べた時に着いたものだ。
 それに誰かを殺していたら返り血はこの程度では済まないはずだ」


ハクオロの服に付いている血は裾周りがほとんどでその量も多くはない。
確かにハクオロの言う事は正しいように思える。
ふと周りを見るとパトラッシュもチビすけも最初に比べてハクオロへの警戒を和らげている。
動物は人よりも相手の感情に敏感だと聞いた事あるが、おそらくそれだろう。

「あの、私、すいませんでした。もしかしたら私……」
「君が謝る事はないさ」
「え?」
「君の名前は?」
「……沙枝。楠沙枝です」
「サエか。いい名前だ」
「え!? あ、ありがとうございます」

沙枝はいきなり名前を褒められてしどろもどろになってしまった。
そんな沙枝を見てハクオロは微かに微笑んでいた。

「だいぶ落ち着いたみたいだな」
「は、はい。その……おかげさまで……」
「さっきも言ったがサエが謝る事はない。やはり誰か大切な人が死んでしまったのか?」
「!?」
「なんで分かったのかと言いたげだな。簡単だ。私も同じだからだ」
「ハクオロさんも……?」
「ああ、その人は私にとって特別な存在だった。だからこそ何とかしてここから救いたいと思ったんだ。
 先の放送で死んだと聞いた時、私はそれを信じなかった。
 だが、それはただの現実逃避だ。あのような放送、虚言を交えてまでする必要はない」
「……ハクオロさん」
「私は分かっていた……それなのに一瞬逃げてしまった。案外私も情けないな」
「そんな事ありません!」

いつのまにか沙枝はハクオロの話に聞き入っていた。
そしてハクオロがその人の事ですごく悲しんでいるような気がした。
それなのにハクオロは平気な顔をしている。
それが沙枝には何となく許せなかった。

「私も翔子が死んで悲しいし、嘘だと思いたいし、もう一度会いたいです。だから、そんなに自分を責めないでください」
「すまない。少し喋りすぎた。辛い思いをさせたな」
「いえ、私も変なこと言ってすいません」

結局沙枝は自分が何を言いたかったのかよく分かっていなかった。
それでもハクオロは何となく沙枝が何を言いたかったのか理解した。
たぶんそれは言葉にするのは難しい事だろう。
今はそれで納得する二人だった。


(翔子ごめんね、守れなくて)
――いいんですよ。それよりも頑張ってきてくださいね。
そんな声を沙枝は聞いたような気がした。

「くうぅぅん(よかった、危険な人じゃなくて)」
「きゅぅ(ところで俺はいつまでここにいればいいんだ)」

その様子を傍らで見守っていたパトラッシュとチビすけもほっとしていた。
もっともチビすけは転送されてからずっとパトラッシュの頭の上にいる事に少々不満を覚えてきた。
チビすけとしては今の状況に大きな不満はないが、それでも早く6/との合流を果たしたいと思っていた。
パトラッシュも別れてしまったキリコの事が心配ではある。

「よし、まずは落ち着いて情報を整理したいんだが大丈夫か?」
「は、はい! 私にできる事なら……」

もう沙枝は落ち着いてハクオロと会話ができるまでに回復していた。
ハクオロはそんな沙枝に誰かが重なるような気がした。
上手く言えないが娘のようなものかと思っているのかもしれない。
ルイズが死んだ事はハクオロにとっては大きなショックだった。
だが、それで腑抜けているようでは示しがつかない。
目の前の沙枝も親友を失って悲しんでいるのだ。
もうこのような事を起こす訳にはいかない。
そんな決意を胸にハクオロはこの殺し合いを打破するために一歩を踏み出そうとしていた。

――そんな尊い決意が無残にも踏み躙られるとは知らずに。

「サエ! 逃げろ!」
「え?」

それは突然の出来事だった。
いきなり声を上げて沙枝を突き飛ばすハクオロ。
訳も分からないままにハクオロに突き飛ばされる沙枝。
動物の勘から窓の方を威嚇するパトラッシュとチビすけ。

そして――

「――ァァァアアアッ!!」

――窓から飛び込んできた剣を持ったメイド、赤根沢玲子。

 ◆


狭間偉出夫。
その名前が呼ばれた時、私は呆然とした。

たった一人の兄、それが私――赤根沢玲子にとっての狭間偉出夫という存在の全てだった。

両親の勝手な都合で偉出夫と離れ離れに引き裂かれてしまったのは、まだ私が幼稚園の頃だった。
それからしばらくして再会したのは中学入学を控えた時期だった。
しかしその時はお互い何も話せないまま終わってしまった。
それが私の中では大きな後悔だった。
だから偉出夫が軽子坂高校にいると知った時、私の進路はそこに決まった。
今度こそ偉出夫の妹として再会したい。
それが当時の願いだった。

だけど私はまた偉出夫と話す事をしなかった。
あれほど偉出夫に会いたいと思っていたのに、いざ現実を見ると足が竦んでしまった。
今思うと情けなかった。
あの時私はイジメられていた偉出夫を見捨ててしまった。
それが決め手だったのか、もう私が偉出夫に声をかける事はなかった。

そして今私は永遠に偉出夫と話す機会を失ってしまった。

あの時、私から声をかけてあげれば!
あの時、友達の言葉を振り切って助けに入っていれば!
もしかしたら今とは違って偉出夫ともっともっと話せていたかもしれないのに!

後悔はいくらでも湧いて来た。
でもいくら後悔しても偉出夫が死んでしまった事に変わりはない。
もう偉出夫は死んでしまったのだ。
もう妹として会う事も、話す事もできない。

「……許せない」

偉出夫を殺した奴が許せない。
偉出夫を見殺しにした奴が許せない。
偉出夫を助けなかった奴が許せない。
偉出夫の代わりに生きている奴が許せない。

そして偉出夫と妹でありながら何もできなかった自分が許せない。

だから決めた。
偉出夫を死に追いやったここにいる全員を殺し尽くす。
そして最期に私も死ぬ。
これだけ多くの人を死なせれば天国の偉出夫も寂しくはないだろう。
それが私の……あの時何もしなかった私の……償いだ。

そうと決まれば善は急げ。
まずはあそこに見えるペットショップにいる奴らから殺す。
不用心に窓から丸見えなのに気付いてすらいない。
なぜあんな奴らが生きていて偉出夫が死ななければいけないのか。
理不尽だ。
だから――

――死ね。

「――ァァァアアアッ!!」


マハザンダインの衝撃で加速を付けて、窓を突き破ってヒノカグツチの剣を力の限り振り抜く。
偉出夫のために、私の償いのために、目の前の奴を殺すために。
私の手には確かに肉を切り裂く感触が残った。
それを掌で感じても私は特に何も思わなかった。

 ◆

「ハクオロさん!!!」

それはいきなりの襲撃だった。
窓から飛び込んできたのは肩までのストレートセミロングの黒髪に眼鏡をかけたフリフリ衣装のメイド。
それだけなら可愛いと思えるのだが、そのメイドは両手に血に塗れた剣を握っている。
しかも剣の先はハクオロの胸に深々と刺さっていた。

「サエ……無事か……?」
「そんな!? ハクオロさん、私を庇って……」
「泣くな。私に構わず早く逃げるんだ。私がこいつを抑えている間に――」
「誰を抑えるんですかッ!!」

玲子はハクオロがヒノカグツチを抑えているのを見ると、デイパックから二つ目の凶器を取り出した。
それは銀の回転刃が眩しいチェーンソーだった。
ハクオロがそれに気付いた時には既に遅かった。
無慈悲な回転刃はハクオロの身体を豪快に血飛沫を上げさせながら切り裂いた。

「ハクオロさん!!!」

沙枝が駆け寄った時にはもうハクオロの息はなかった。
いくら沙枝が声をかけてもハクオロが優しい言葉を掛ける事はもうない。
絶望が再び沙枝を押し潰そうとしていた。
だが今度は違った。
ハクオロは身を張って自分を守ってくれたのだ。
その努力を無駄にはしない。
沙枝の心にはそんな強い決意が芽生えていた。

「なんでこんな酷い事するんですか!?」
「偉出夫のためよ! 私は偉出夫のためにも――」
「誰かのために人を殺すなんて……そんな事……」
「うるさい。あなたに偉出夫の何が分かるって言うの!!!」
「え? イデオ……?」

時間稼ぎのための会話のつもりだったが、沙枝はその言葉に聞き覚えがあった。
それは数分前に沙枝達をばらけさせた小規模イデに浮かんだ『IDEON』の文字という事に気付くのに然程時間は掛からなかった。
何かあるのかと思って、沙枝はデイパックからそれを取り出してみる。

「偉出夫!!!」
「きゃぁっ!」

だが玲子は「イデオ」と聞くとそれが何か碌に確認もしないで沙枝から小規模イデを取り上げた。
そこに偉出夫の痕跡があると一方的に思ったのだが、そんなものあるはずもない。
それが玲子の感情を高ぶらせた。

「なによ……期待させて……こんなもの! 偉出夫の名前が付いている事自体が図々しい!!!」

玲子は期待外れの小規模イデに怒り心頭だった。
そして感情の赴くままにハクオロからヒノカグツチを抜き取るや、それを小規模イデに突き刺した。
玲子にとって偉出夫は兄一人だけの名前。
それがこんな物に付けられている事が許せなかったのだ。

――それが何を引き起こすかも知らずに。

刹那、ペットショップは光に包まれた。


 ◆

「え!? ここは……どこ……?」

沙枝は気付いたらまたも見知らぬ場所にいた。
今度はどことなく立派な部屋だ。
周りを見渡せばパトラッシュとチビすけの姿があった。
そして元は小規模イデと思われる欠片が5つ散らばっていた。
だが玲子の姿はどこにもなかった。

あの時、小規模イデは玲子の激情に反応して起動しようとした。
だがそこへ突きつけられたのはヒノカグツチ。
ヒノカグツチの力とイデの力。
お互いの持つ潜在的な力は拮抗して、それゆえに予想外の結果を引き起こした。
まずは原因となったヒノカグツチと小規模イデの破壊。
しかし剣の方はボロボロになり使用不可能だが、辛うじてイデの方は欠片が残った。
本体ほどではないが僅かに力は残っている。
そしてもう一つが旅の扉への干渉だ。
ペットショップの脇には首相官邸に繋がる旅の扉が設置されている。
本来なら数時間前に狭霧とハクオロが使用した時点で使用不可能となったのだが、ヒノカグツチとイデの力に触発され一時的に復活したのだ。
しかもそれはイデの転送ルートに組み込まれ、結果沙枝一行はこの首相官邸に飛ばされた訳だ。
もっとも旅の扉の復活は一時的なもので既に再び機能停止している。
それ故に沙枝にそれが分かる事はなかった。

「私、生きているんだよね?」

一瞬前までは玲子から逃れる術を考えていたが、思いがけない形で助かった。
何が起きたかは分からないが、それでも自分は生きている。
ハクオロの決死の行動は無駄ではなかった。

「……翔子……ハクオロさん」

翔子は沙枝の知らない所で死んでいった。
ハクオロは沙枝の目の前で死んでいった。
今でも悲しみで立ち止まってしまいそうだった。
だが今は前を向く。
沙枝は生きている。
だからこそ前に進む事ができる。

「パトラッシュ、チビすけ、行こうか。早くこんな悲しい事は終わらせよう」

楠沙枝は静かに願う。
もう悲しい事は起きない事を。
だがその願いが如何に脆いかは分かっている。
だからこそ自分の周りだけでも悲しみはなくしたい。
そんな事を願わずにはいられなかった。


【1日目 朝/I-3 首相官邸】

【楠沙枝@魔法少女沙枝】
【服装】ピンクのフリルが付いた可愛らしい魔法衣装
【状態】健康、新たな決意
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、小規模イデの欠片×3@kskロワ、不明支給品0~2
【思考】
 1:もう悲しい事は起きてほしくない。
 2:ななこ先生たちと合流したい。
【備考】
※ルルーアンの罠によって衆人環視の中で辱められている最中からの参戦。
※いろいろあった結果、立ち直りました。
※小規模イデの欠片一つは本来の小規模イデ1回分の力しかありません。

【パトラッシュ@フランダースの犬】
【状態】深い悲しみ
【装備】未確認
【所持品】基本支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
 1:沙枝と一緒に行動する。
 2:ネロが死んですごく悲しい。
 3:キリコお兄さんはどこに行ったんだろう?

【チビすけ@ハムスターの研究レポート】
【服装】全裸
【状態】健康、パトラッシュの頭の上に搭乗中
【装備】水戸黄門の印篭@水戸黄門
【持ち物】支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
 基本方針:家族の所に帰る。
 1:とりあえずは沙枝に付いていく(というよりそろそろパトラッシュから降りたい)
 2:◆6/WWxs9O1s@カオスロワに再会したい。
【備考】
※◆6/WWxs9O1s@カオスロワを対主催だと誤解しています。
※サザエを呪術師だと誤解しています。
※所詮ハムスターなので思考回路がアレです。
※かえるの事をどう思っているかはまだ不明です。

 ◆


「――ッ! いったい何があったの?」

ペットショップから程なく離れた場所。
そこに玲子はいた。
玲子は先程の出来事を思い出していた。
怒りに任せて小規模イデにヒノカグツチを突き刺した瞬間、眩い光が辺りを覆ったかと思うと次の瞬間には見知らぬ森の中。
玲子には何が何だかさっぱりだったが、そんな事は関係ない。
玲子がする事は唯一つ。

ここにいる者すべてを天国にいる偉出夫の元へ送り届ける事なのだから。

「待っていてね。私も皆を殺したら行くから……そしたら、今度こそ……」

淡い願いを込めて玲子は草原の中へ消えていった。

【1日目 朝/B-5 草原】
【赤根沢玲子(レイコ)@真・女神転生if…】
【服装】ふりふりメイド服(Sサイズ)
【状態】健康、偉出夫を失った事による激情
【装備】チェーンソー@School Days
【所持品】基本支給品一式、兄へのお土産のふりふりメイド服(Lサイズ)
【思考】
 基本方針:皆を殺して最期に自分も死ぬ。そして偉出夫のいる天国へ行く。
 1:見つけた者から殺していく。

【ハクオロ@あの作品のキャラがルイズに召喚されました  死亡確認】

【全体備考】
※B-5ペットショップにハクオロの死体、ハクオロのデイパック、ヒノカグツチ(使用できる状態ではない)が放置されています。
※ペットショップの一室の窓が破壊されました。


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B-5周辺顛末記 楠沙枝 歪んだネガイ
B-5周辺顛末記 パトラッシュ 歪んだネガイ
B-5周辺顛末記 チビすけ 歪んだネガイ
B-5周辺顛末記 ハクオロ GAME OVER
生身で… 赤根沢玲子 それでも守りたい命があるんだ!
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