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カヨとゴーレム

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カヨとゴーレム ◆.pKwLKR4oQ



あたし

カヨ

なんか

あたしのいる場所が

禁止エリアになりそうだから

移動中

幽霊だから

ふわふわ

浮いている

ふわふわ

ふわふわ

ふわふ――あれ?

何か落ちている?

 ◆

森の中にポツンと放置されている物体がある。

円錐形のような物体に取ってが付いた形状の器具――拡声器だ。

この拡声器、元々は鈴木万吉という者に支給された道具だったが、万吉はこれを見るなり即行で捨てている。
実は万吉は知っていたのだ、パロロワの世界において拡声器が所謂死亡フラグに相当するアイテムであると。
パロロワ書き手である万吉はその事を良く知っていたのだ。

例えば殺し合いを否定する者が拡声器を持てば、同志を集めようとそれを使うだろう。
だがそれで首尾よく同志が集まれば良いが、もしも逆に殺し合いを行う者が集まれば、あっという間に惨劇の幕開けだ。
一方で殺し合いを望む者が拡声器を持てば、人集めを狙ってそれを使うだろう。
そうなると迂闊にも誘われたら最期、惨劇の幕開けだ。

だからこそ万吉は拡声器を一目見るや否や捨て去り、自身に降りかかるだろう危険から身を守ろうとしたのだ。

そしてその拡声器はそれから数奇な運命を辿る事になった。
実はその拡声器は主催者側が用意した物で、一般に売っている物よりも強度は段違いになっていた。
それはこの拡声器が幾度も起こった戦闘の余波を受けて吹き飛ばされ続けても壊れる事がなかった事例が如実に示している。

そして今この瞬間、そんな拡声器を見つけた者がいた。
だがその者は殺し合いを否定する者でも、殺し合いを望む者でもなかった。
その者は人間でも動物でも機械でもなく、寧ろ生きている者ではなかった。

つまり拡声器を見つけた者は幽霊だったのだ。

 ◆

『フグ田サザエ』

どこにでもいるような一般的な主婦。
そんな平凡そうなサザエだが、実はここに来る前にも別の殺し合いバトルロワイアルに巻き込まれている。
それは野比のび太という少年の愚かな願いによって引き起こされた殺し合い。
一人のぐうたらな少年と未来の道具が齎した変化は筆舌し難いものだった。

『食料を手に入れたければ誰かを殺して奪い取れ』

要約するとそのような趣旨の法律が定められた瞬間、サザエ達の日常は呆気なく崩壊した。
サザエもピストル片手に殺し合いの渦中へと飛び込んで行った。
本心はどうであれ、そうするしかなかった。
食料が手に入らなければ自分だけでなく家族全員が飢え死にしてしまう。
だからこそ一刻も早くサザエはここから脱出して日本に戻りたかった。

だがサザエの目の前には問題がいくつかある。

まずはどうしたらここから脱出できるか検討が付かない事だ。
地図を見る限りここは孤島。
正確な位置など全く分からない。

そしてもう一つが今もこの島で積極的に殺し合いを行っていると思われる二人の存在。
◆6/WWxs9O1s氏とジェシー・コクランだ。
6/はいきなり自分を斬りつけてきたし、ジェシーは仲間の振りをして不意打ちを仕掛けてきた。
どちらも危険な人物である事に間違いないとサザエは確信していた。
今まで6/の方は名前が分からなかったが、それも先程知り合った自称幽霊少女のカヨのおかげで判明した。
自称幽霊と言われたがいきなりこんな所に連れて来られて混乱しているとサザエは認識した。
そのカヨによれば少し前に6/と柊かがみという少女、それに竜が一緒に行動していたらしい。
二人で今までの事を話している最中にどちらも6/に会っていたので人相が一致したのだ。

「あー、テステス。あー、サザエでございま~す」

そして名前が判明したところでサザエは決心した。
6/とジェシーという危険人物の情報を一刻も早く多くの人に知らせると。
そのための道具はカヨが持っていた。
それは拡声器。
曰く、少し前に森の中で拾ったそうだ。
その辺りの事情はサザエにはどうでも良かったが、これは渡りに船だった。

「まず皆に伝えたい事が。◆6/WWxs9O1s氏とジェシー・コクランの二人には気を付けてちょうだい。
 二人とも進んで殺し合いをするような人で、仲間の振りをして襲ってきたりもするわ。
 あいつらは優しい顔の下ではどうやって殺そうか考えている極悪人なのよ」

これで少なくともこの周辺の参加者には◆6/WWxs9O1s氏とジェシー・コクランの危険性は伝わったはずだ。
サザエは一仕事を終えたような感じでふっと一息ついた。

「あと、それから誰かシン・アスカっていう人がどこにいるか知って――」

そして続いて口に出された内容はカヨから聞いた某参加者の事。
ここに来た当初カヨと一緒にいたマユ・アスカという人物。
残念ながらマユは既に死んでいるが、彼女には兄がいるらしい。
それがシン・アスカ。
その事を聞いたサザエは序でだとばかりにその事も拡声器を通して伝えようとしたのだ。

だがそれが叶う事はなかった。

その言葉が最後まで紡がれる前にサザエは背後より放たれた死の光によって命を奪われてしまったのだから。

 ◆

『カヨ』

どこにでもいるような一般的な女性。
そしてカヨにはトモという名前の彼氏がいた。
年頃のカップルらしくお互いの仲は順調で二人は幸せな時間を謳歌していた。

だがそんな時間は唐突に終わりを告げる。

交通事故でカヨが死んだのだ。

だがカヨは成仏しなかった。

トモへの想いゆえにカヨは自縛霊になった。

全てはトモの事を愛していたがため。

それからカヨの幽霊生活は始まった。
今までと違ってトモと触れ合う事ができなくなったのは残念だが、常に彼の近くにいる事が出来てカヨはある意味で幸せだった。
24時間ずっとトモの傍にいる事ができる。
それだけでカヨは幽霊である事に負い目など感じなかった。

だがそんな時間も唐突に終わりを告げる。

トモが新しい彼女を作ったのだ。

名前はアキ。

カヨはトモに新たな彼女ができてショックだったが、それでも彼女にした理由が「カヨに似ていたから」と知って嬉しかった。
なによりトモが死んでしまった自分をずっと想ってくれていると分かって一層幸せだった。

だからこそアキが許せなかった。
トモの隣に居座ろうとする不届き者は例え自分の身代りでも許せなかった。
しかもアキが図々しくもトモの愛を奪おうとしているなら尚更だった。

だからこの殺し合いに呼ばれて好都合だった。
ここでなら幽霊である自分は空も飛べる上、なぜか実体があるかのように行動できる。
密かにアキを殺してトモと一緒にここから脱出する。
それがカヨの当初の計画だった。
既にカヨは日本に帰ってからの影から見守る日々を思い出しただけで心が満たされるような気になっていた。

だがそんな時間も唐突に終わりを告げる。

トモが死んだのだ。

トモもこの殺し合いに巻き込まれている事は知っていたが、こうもあっさり死んでしまうとは予想していなかった。
よく考えれば特別な力もない一般人のトモが生き残れるほど、この場所は甘くない。
だがそうと知ってもカヨは悲しみに暮れた。
幽霊のプライドか知らないが、表面では何でもない風な顔をしつつも、実際は相当にショックだった。
しかもなぜかアキはまだ生きている。
カヨにはどうしようもなく理不尽に思えて仕方なかった。

そしてそんなカヨにさらなる衝撃的な光景が飛び込んできた。

トモの死体だ。

しかも腹は貫かれ、頭部は潰れて、首と胴体は別れているという酷いものだった。
ここまで酷い状態でもトモだと分かったのは見覚えのある衣服とカヨが四六時中トモの傍にいたからだ。
そんなトモのなれの果てを見てカヨの心には沸々と怒りが湧き上がってきた。

――復讐してやる。

カヨは誓った。
必ずトモをこんな目に遭わせた者を呪い、そして相応の復讐をしてやると。

そしてそれからしばらくして出会ったのが奇妙な髪形をした主婦サザエだった。
髪型同様自分が幽霊だと言ってもあまり気にしない変な人だった。
一風変わった人だと思いながら話を交わすうちに話題はどうやってここから脱出するかという話になった。
二人ともここからの脱出を願っていたのでそこに行きつく事は自然だった。
その時、サザエは脱出の助けになる首輪を取り出してカヨに見せたのだ。
それはもしかしたら何か分かるかもという淡い願いからの行動だったが、結局カヨも首輪の仕組みなど全く知らなかった。

だがその首輪を見た時、カヨは驚愕した。

金属製の首輪を観察すると裏側に文字が刻まれている事に気付いたのだ。

そこに刻まれた名前は――『トモ』、カヨの彼氏の名前、この殺し合いに巻き込まれて死んでしまった恋人の名前だった。

カヨは頭が真っ白になった。
確かにサザエから死人から首輪を取ったという事は聞いていたが、まさかその死人が少し前に発見したトモのものだったとは。
サザエはカヨからもらった拡声器で何か話しているが、もうカヨには何も聞こえていなかった。

――コロス。

その単純な思考に至った時、カヨはデイパックから己に支給されたもう一つの道具――いや兵器を取り出していた。
そしてその兵器を起動させると、釈明の言葉など一切聞かないままサザエを殺害した。

その兵器の名前は――ゴーレム。

 ◆

『ゴーレム』

元はユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形であり、「ゴーレム」とはヘブライ語で「胎児」という意味を示す。
その伝承を元に数多の者がこの泥人形を作り上げようと苦心してきた。
そしてついにゴーレムを完成させた者が現れた。
ユダヤ人の天才科学者カメル・ミュンツァーだ。
この時完成したゴーレムは正確には「シャーマン専用有人操縦型ロボット」と示す方が適切だが、この際細かい事には目を瞑ろう。
実はこのミュンツァー博士が作ったゴーレムは特殊だった。
シャーマンが持つ巫力、それを蓄積する内蔵巫力によって動く仕組みなのだ(シャーマンや巫力に関してはググるなりシャーマンキングを読むなりしてくれ)。
そして巫力バッテリーとも言うべき内蔵巫力はここでの初期値は大幅に減衰させられていた。
どうもこの殺し合いで支給された大型ロボットに属する物は須らく何らかの弱体化措置が施されているようだ。
一部のロボットが生身の人間にボコボコにされていたのもこれが原因かもしれない。

ゴーレムを支給されたカヨは当初これを使う気はなかった。
確かにアキを憎んではいたが、別にこれを持ち出すまでもないと思っていたからだ。
だが状況は変わった。
恋人であるトモの死、そのトモを死んだ後も甚振ったサザエ、さらには今ものうのうと生きているアキ。
それらの要因が重なる事でカヨの理性の箍は外れ、ついに凶悪な兵器が表に出る事になった。

最初の標的は目の前にいたサザエ。
ゴーレムが放った光線状の巫力波はサザエに何が起こったのか気付かせる間もなく荷物諸共消滅させた。
だがカヨは知らないが、サザエは数時間前に不死の薬を飲んで不死者になっている。
時間制限が付いていたとはいえまだその効力が切れるまで猶予があったはずだ。
実はサザエがカヨに殺された瞬間、サザエの魂はゴーレムに吸収されたのだ。
魂が無ければ復活する事は不可能、それゆえに不死者であったはずのサザエは死を迎えたのだ。
しかも仮初ではあるが不死の魂を吸収した事でゴーレムの内蔵巫力は大いに満たされる事になった。

こうして妄執に囚われた博士の遺産は同じく妄執に囚われた少女によって使役される事になった。

 ◆

あたし

カヨ

あたし

許さない

トモを殺した奴

絶対に許さない

そして

アキ

あなたは

あたしが

殺してやる

【フグ田サザエ@カオスロワ  死亡確認】
※サザエのデイパック及び持ち物は巫力波によって消滅しました。
※拡声器は巫力波の直撃は受けなかったのでカヨが回収しました。
※C-6の中心に拡声器によってサザエの言葉が伝わりました(伝わった範囲は周囲1マス以内、詳しくは他の書き手に任せます)

【1日目 午前/C-6 豪邸付近の森の中】
【カヨ@あたし彼女】
【服装】白装束
【状態】幽霊、ゴーレムに搭乗中
【装備】ゴーレム@シャーマンキング、火の玉
【持ち物】基本支給品一式、拡声器
【思考】
 1:アキを祟る――寧ろ祟るだけじゃ飽き足らない、トモと付き合った事を後悔するぐらい殺してやる。
 2:トモ殺したヤツは絶対に許さない。
 3:シン・アスカに会ったら、ウザ子(マユ・アスカ)のこと、教えてあげよっかな。
 4:幽霊が死んだらどうなるんだろ
【備考】
※幽霊ですが夜が明けても消えたりしないっぽいです。


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あたし幽霊 カヨ Lの名推理/幽玄なる巨人
【誤解連鎖】 サザエさん GAME OVER


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