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10^3

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

10^3 ◆KYxVXVVDTE



 序文

 だれでも一律1000AR
 一律1000ARでお望みの人のところへお届けします
 運行時刻は3時間に1回となっております
 繰り返します、運行時刻は3時間に1回きりとなっております
 ずっとバス車内にたむろする行為は禁止です
 バス車内での殺し合い行為も禁止です
 なお、1000ARお持ちでない方は乗ることができませんのであしからず

 乗り降りにお気を付け下さい
 忘れ物のないようご注意下さい



 それではごゆるりと――by、猫バス運送(株)社長


◆◆◆◆


 その隠し扉が開いたのは、まさに偶然の連続が起こした奇跡だった。

 第一。ある冒険家が罠に落ち、猫屋敷の地下を探検していたこと。
 第二。その地下に、ある生霊の本体が眠っていたこと。
 第三。生霊が本体に戻り、焔の神を手に入れたこと。
 第四。猫屋敷が焼き尽くされた時、まだG-5が禁止エリアになっていなかったこと。
第五。その、ギリギリの時間の中で――
 ある探検家が、「隠し部屋へのスイッチ」を、押してしまったこと。

「隠し扉か……? 面白い。イフリート、破れ」

 時は遡ること5時間弱、時間帯にして朝。
 猫屋敷を退いたあと、G-5・山頂にて隠し扉を見つけた六条御息所は、
 本来ならもう数個カギを必要とするはずの鉄の扉を、イフリートで消し飛ばして中に入った。

 ――それは本来、G-5・山頂より流れる川によって隠されていた扉。
 しかし、スペランカー先生が水攻めのスイッチを押したことで、
 川の水はそちらの方に割かれ、自然と水かさは減っていく。

 隠し扉は、その仕掛けによって露出するよう作られていたのだ。
 考えてみれば、広大な猫屋敷の地下を埋め尽くすほどの水が現れたとすると、
 それがどこから来たのかという疑問が残ってしまう。

 答えは川だったのだ。
 誰も気付かないうちに、着々とフラグは積まれていたのだ。

「ニャア」
「む? 何だ、この猫は」

 そして、また一つ。
 隠し部屋に入ってすぐの所に、猫がいた。
 ときに昔の日本では、犬より猫の方が高貴な存在である。
 六条御息所は不思議に思いつつも、丁重にその猫を抱きあげる。

「……ニャー」
「脅えずとも良い。わらわは人間の女しか殺さぬ」

 猫屋敷からはるばる逃げてきたのだろうか、少し体に汚れのついているその猫は、
 首輪に書かれた名前を見る限り「アーサー #@∴@」というらしい。
 六条御息所には片仮名のアとサがぎりぎり読めるくらいだが、
 なんとなく同じ意味を指した言葉のような気がする。
 二種類の言葉が使われているところで飼われていた猫なのだろう。

「うむ。猫、わらわにはよく読めぬが、お主には立派な名前があるようじゃな」
「…………ニャアッ!!」
「!?」

 と。親交を深めようと話しかけた六条御息所を、高貴な猫は気に入らなかったのか。
 手を噛み、すり抜け、地に降り立つ。
 痛がる六条御息所には何の目もくれず、
 すらりと背筋を伸ばして、勝手にとてとて歩き始める。

「……わらわは猫にまで嫌われるのか?」

 とてとて。無視して歩く猫。

「ひどい……」

「…………ニャア」

 流石に落ち込む六条御息所。
 すると呆れたような顔をして、猫は六条御息所を振り返った。
 尻尾をふりふりしてつつ、片前足を上げて招き猫のポーズをとる。

「……?」

 ふりふりふりふり。

「……ついてこい、ということなのかえ?」

 こくり。
 頷くと猫は、再び歩き始める。
 数秒遅れて、六条御息所も歩き出した。
 イフリートは少し大きすぎるので、一旦デイパックに納めておく。

 無視されていたわけではないのが分かって嬉しかったのもあるが、
 隠されるように配置された扉や、案内役の猫。
 この先に何があるのか、六条御息所は純粋に興味があった。
 しばらくごつごつとした道を歩くと階段があり、
 一人と一匹はそこを静かに降りてゆく。
 湿った空気の中には、動物の死霊がちらほら紛れている。
 この空間は猫屋敷の地下と繋がっているのか?
 しかし、山頂を入り口とするこの空間は、高度で見れば猫屋敷の遥か上にある。
 どちらかと言えば別の空間の可能性が高いだろう。
 と、いうことは。

「ふむ……わらわの体が置かれていた、あの地下。あれは少し広すぎた。
 更には何かを守るようにして、沢山の霊どもや生物がいた。
 なのに何も無いとはおかしいと思っておったが……なるほどのう」

 階段を降りると、曲がりくねった狭い通路。
 入り組んだ迷路のような道を進みながら、六条御息所は感慨にふける。

 つまり、あの広大な地下の全てが、この部屋を隠すための囮だったのではないだろうか。
 ああまで広大な設備があれば、
 隠し部屋はあの地下のどこかに隠されている、と考えてしまうのが道理。
 それを逆についた発想だ。
 例えば隠し部屋へのスイッチがあるとしたら。
 それは地下に眠らせておいてもいいが、実際の入り口は猫屋敷とは別の場所に配置する。

 更には、さりげなくこの地区も猫屋敷も禁止エリアに指定する。
 こうすることで、隠し部屋に辿り着く可能性を極限まで排除しているのだ。
 そこまでしてこの部屋に隠したかったものには、全く見当もつかないのだが。

「そういえば、もうそろそろここは禁止エリアになるはずじゃが……」

 六条御息所はふと思い出し、首輪に手を伸ばす。
 確かに付けられているひんやりとした感触の首輪は、今だ反応を見せない。

 随分も歩いてはいないが、隠し扉のある位置は、地図によればエリアの北西隅あたり。
 既に隣のエリアの地下まで進んでいるのだろう。
 六条御息所はそう結論づけた。

「ニャー」

 分かれ道に出る。
 が、猫がしっかりと正解のルートへと六条御息所を導いていく。
 賢い猫だ、と思った。
 自分もこれくらい賢くて冷静であれば、人を呪うなどということは無かったかもしれない。
 六条御息所が他の女を呪っているのは、結局の所、自分に自信が無いからでもある。
 自分が上に立てないと思っているから、他の者を全て引きずり下ろす。
 他人は他人、自分は自分であると……そう簡単には割り切れないのは、
 六条御息所に限らず、当たり前のことなのだが。

「分かっているのだよ……呪って呪って呪い殺して、
 その果てに自分が愛されることになっても、それは本当の愛ではないことは。
 じゃが。もはや止まらない。止められないのじや。
 愛が知性で消せないように、この気持ちはもう、わらわには消せぬ」

 憎い。
 憎くて、憎くて仕方がない。
 ひとり占めにしたいのだ。
 自分が一番深く繋がっているはずの、大事な大事な愛する人に、
 他の女が群がる所を、想像しただけで炎が沸き上がる。
 心の臓から広がる炎は、六条御息所の体を焼き付くすだろう。
 それでも構わなかった。
 自分が一番で居続けるためなら、
 心も、体も、魂もくれてやろう。
 その火を絶やさないための、薪になろう。

 六条御息所が歩む道は、そんな道だ。
 いつか必ず身を滅ぼす、線香花火のような道なのだ。
 しかし、いくら水をかけても、空気を閉ざしても、その炎は消えない。
 燃え尽きるそのときまで。
 決して、その想いは絶やさない。
 妖しく、硬く、光り続ける。



 六条御息所は歩いた。長い時間を、耐えまなく歩いた。
 分かれ道をいくつもくぐり、階段を降り続け、
 どんどん沈んでいく道の先にあったのは、生きた猫の車。
 スペランカー先生が探し求めた、宝物だった。


◆◆◆◆


「女の所へ」

 口にしてたった八文字。
 六条御息所の猫バスへの願いは、それで終了した。

 猫バス。
 見つけた当初はその価値が分からなかったものの、
 車内にあった説明書きを読んで、六条御息所はその有用性を理解した。
 参加者への配慮か、わざわざ様々な言葉で記された説明書きには、こう書かれていた。

「知っている人物であれば、その人物の名前を呼ぶことで猫バスは貴方を運びます」

 それを一つ目の条件として、様々な使用条件がつらつらと書いてある。

 首輪に付いている実体の無い金銭、「AR」というのが1000ARないと乗れないこと。
 三時間……六条御息所の言葉で言えば三刻ごとにしか使えないこと。
 そして、車中にずっと留まっていることは出来ず、また車中では誰も殺してはいけないこと。

 今、猫車が六条御息所を乗せて禁止エリアに浮いていることから鑑みても、
 この車の中だけは、殺し合いから切り放されているのだろう。
 禁止エリアであろうと、この車中に居る者は抜けることが出来る。
 しかし、目的地に付いてからずっと車中に留まっていたりすれば、
 問答無用で首輪が爆発する、ということだ。

 六条御息所の首輪には1000ARぴったりしか入っていなかった。
 回数制限も相当厳しいものだと思われる。

 しかし、それを差し引いても――「会いたい人物に会える」というのは、
 六条御息所にとって破格の意味を持った。

「ニャァアアゴ……!」


 のそり、と猫バスが、起き抜けに体を震わせる。
 説明書きには書いていなかったが、
 どうやら“女の所へ”という抽象的な要望にも答えてくれるようだ。
 もっともそんな要望、六条御息所くらいしかしないだろうが……とにかく。

「女……憎き、倒すべき、女のもとへ! わらわを運べ、わらわを連れて行くのじゃ!」

 道は、開けた。
 あとは誰でもいい、女の所へゆき、
 焼き切って、焼き尽して、焼き殺して、焼き払うだけだ。
 六条御息所はかっと目を見開く。
 眼前の眩しい太陽は、白く静かに燃え続けているのだろうか。

 ならばそれは偽物だ。
 本当の“炎”とは、黒く黒く黒く黒く――彗星のように、激しく動き続けるもの。

「さあ行こうぞ、女の所へ――」
「ニャー?」

 だから六条御息所は、止まらない。


「全速力じゃ!」「ニャア」

 嫉妬の焔がエンジンとなり、彼女を何処までも走らせる。

 実際に全速力を出すのは一人でも一匹でもなく猫バスなのだが、それはご愛嬌として。
 車中に入ってきた猫と共に、六条御息所は女の所へ。


 その先に誰が待っているのかは、まだ分からない。

【一日目 昼/G-5】

【六条御息所@源氏物語】
【服装】白襦袢
【状態】健康
【装備】なし
【持ち物】基本支給品一式、イフリート@ファイナルファンタジーⅧ、騎英の手綱@Fate/stay night、フラッシュ@スペランカー、ヴェーヌの不明支給品0~1
【思考】
基本:女を一人残らず殺す(夜は呪殺)
1:さて次は誰をわらわの焔で燃やしてくれようぞ。
2:阿呆な奴じゃ、L字ブロック。
3:この猫はどこから来たのだろう。
【備考】
※生霊として行動できるのは日がある程度沈んでいる時間です。


※猫バスがどの“女”のもとに向かうのかは次の書き手さんにお任せします。
※外見が女なら、バスも勘違いしちゃうかも。
※アーサー@コードギアスらしき猫が猫バス内にいます。


【猫バス@kskロワ】

 OP案その5において、参加者達を殺し合いの場に運んだ、トトロ出展のふしぎなバス。
 原作ではサツキをメイの元に送り届けていた。
 さすがに便利すぎると判断されたのか、猫屋敷の秘密の部屋に隠された上で制限も付いている。
  • 首輪に1000AR無い参加者は乗れない
  • 3時間に1回しか運行しない
  • 着いたらすぐ降りなければならない
  • 会ったことのある人物の所でないと連れていかない
 など。ただし、
  • 「誰かの所」とか「女の所」などの抽象的な要望には答える
  • 車内は禁止エリア無効、殺し合い禁止
  • 子供以外にも見える
 のように、良い待遇も受けている。
 「3時間ごとの運行」は分かりにくいが、
  • 「目的地に着いた時間帯」の次の次までは再び乗ることができない
 と捉えておk。
 日中に着いたら、日中と午後はお休みで夕方からまた乗れるようになる。


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上は大火事、下は洪水、これな~んだ? 六条御息所 ユメノアト



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