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彼等は誰も守れない

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彼等は誰も守れない ◆KV/CyGfoz6



◆6/WWxs9O1sは今までに、数え切れないほど死に、数え切れないほど死なれてきた。
その数え切れない死の中に、全く同じものは存在しない。
目の前の少女が感じている兄の死もまた、自分が知るどの死とも違うものなのだろうと彼は思う。
少女の悲しみを、苦しさを、本当の意味で理解することはできないのかもしれない。
けれど、少女の気持ちに寄り添うことはできるはずだと6/は信じる。
だから彼は叫ぶ。

「みんな殺して自分も死ぬなんて、そんなこと言うな!!」


黒井ななこは、この島で教え子を亡くした。
彼女はその死を哀しんだ。高良みゆきと柊かがみ、泉こなたを殺した人間を憎んでいないと言えば嘘になる。
でも、復讐をしようとは思わなかった。
人を傷つけてはいけない。殺してはいけない。
これだけは絶対に間違ってはいないという確信と、絶対に譲れないという信念がななこにはあった。
だから彼女は叫ぶ。

「やめるんや! 人殺しだけは絶対にあかん!!」


ランキング作成人は、多くのパロロワを読んできた。
その中には現状とよく似たシチュエーションも当然ある。この場を切り抜ける方法はいくつか思いついた。
だが、作成人はそのどれも選ばなかった。
自分も目の前の少女も、今この場では〝創作上のキャラクター〟ではなく〝生身の人間〟だ。
パロロワでのセオリーなんて関係ない。自分の想いで動かなければ駄目なんだと作成人は感じた。
だから彼は叫ぶ。

「俺は殺し合いなんてしたくないんだ!!」



そして、彼等の想いは


「マハ、ザン、ダインッ!!!」


赤根沢玲子に拒絶され、打ち砕かれる――――





玲子が放ったマハザンダインは、辛うじて残っていたブラック・マジシャンの体力を削り取り
その存在を消し去ったうえ、後ろにいた作成人を吹き飛ばした。

「サク!!」

ななこが悲鳴に近い声で作成人を呼ぶ。
だが、倒れた作成人は動かない。
6/も、ライダーの強化服のおかげで怪我は無いものの疲労を隠せずにいた。
『本気で再起不能にするんじゃなくて戦意をなくす程度』なんて言っていたが、そんな余裕はもはや無い。
戦闘開始から既に十数分。
不利なのが自分たちであるのは明らかだった。


「私は誰も許さない」

玲子が言う。
その瞳と言葉の冷たさが、少女の絶望の深さを物語っていた。

「みんな死んでしまえばいい」

言って玲子はチェーンソーを構える。
6/たちは気づいていないが、玲子にも余裕が無かった。
先程のマハザンダイン。
あれで玲子のMPは尽きた。もう魔法は使えない。
ここまで優位に立てていたのは魔法とチェーンソーという二つの武器があったからこそ。
MP切れを悟られる前に決着を着けなければ、今度は自分が不利になる。

「さっさと私に殺されて」

玲子が走る。標的はこれまで一切攻撃に参加していない女性、黒井ななこ。
呼んでも反応の無い作成人に気を取られていたななこは、玲子の動きに反応できず立ち尽くす。
一気に詰まる距離。
唸るチェーンソー。
ななこを切り裂くための攻撃――それを受けたのは、二人の間に割って入った6/だった。

「なっ!?」

玲子が驚きの声を上げる。
チェーンソーが当たったのは、偶然にも6/の首輪。
ライダーの強化服にも仮面にも守られていない首は生身だ。
刃の位置を少しずらせば首を切断できると玲子は判断したが、次の瞬間
チェーンソーは弾き飛ばされるように手から離れてしまう。


「……っ! 二人とも早く俺から離れろ!!」


6/が叫ぶ。
それはただの警告ではない、悲痛な叫びだった。
反射的に6/と距離を取った玲子。6/に突き飛ばされたななこ。

そして響く、爆発音―――

結論から言えば、玲子はチェーンソーの位置をずらす必要などなかったのだ。
チェーンソーが与えた衝撃はそれだけで、首輪の爆発を招くにはじゅうぶんだったのだから。


6/の、首から上だけが、宙に舞った。



【◆6/WWxs9O1s氏@パロロワクロスネタ投下スレ  死亡】





気絶していた作成人が意識を取り戻して最初に見たのは、宙を舞う仮面ライダーの仮面だった。
仮面から、見覚えのある色の髪と、噴き出す血が見える。
仮面だと思っていた物が6/氏の頭部だということを、作成人は理解したくないのに理解してしまった。

「あはははははははははは」

玲子の笑い声が、哀しみと絶望に向かいかけていた作成人の心を現実へと引き戻す。
6/の死だけを映していた作成人の目が、生きて動いている二人の姿を映した。
6/が持っていたデイパックから落ちた鉄パイプを拾い上げる玲子。
座り込み、逃げることさえできずにいるななこ。

このままでは、ななこ先生が殺されてしまう。

その直感は、確信だった。
作成人は立ち上がる。
身体中に激痛が走るが、そんなことに構ってはいられない。
作成人は、近くに落ちているチェーンソーに気づく。

―――ランキング作成人は、選んだ。



玲子は、血だまりの中から拾い上げた鉄パイプをななこに向けて振りかざした。
相手はただの女性だ。これで殴るだけで死ぬだろう。
一撃では無理かもしれないが、殴り続ければ死ぬ。
さっき死んだ奴のように、首輪に打撃を加えれば、すぐかもしれない。
後ろで倒れている男はもう死んでいるかもしれないし、生きていてもこの女を殺した後で殺せばいいだけだ。

「イデオが寂しくないように、先に行っててください」

そう言って鉄パイプを振り下ろそうとした玲子の耳に、チェーンソーが上げる唸りが届く。

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

慌てて振り返る玲子。
チェーンソーを持ち、走る作成人。
玲子はとっさに鉄パイプを構えるが、そんな物でチェーンソーの攻撃を防げるわけがない。
作成人が玲子の身体をチェーンソーで切り裂く。
崩れ落ちるように倒れる玲子。

「……殺して、やる……」

玲子は、そう呟いた。

「殺すんだ……みんな、みんなっ……」

必死に立ち上がろうとする。
だが、立てない。動けない。
玲子の負った傷は致命傷だ。
それでも玲子は、自分が死ぬとは思っていない。
自分が死ぬのは、この島にいる人間を一人残さず殺し尽くした、その時だ。
それまでは死ねない。それまでは死なない。
まだ二人しか殺していないのに、こんな場所で死ぬなんてことは有り得ない。

「みんな…死んでしまえ……」

早く殺さないと。
イデオが待っているのだから。

「……まずは、あなたから…です…………」

サクと呼ばれる男、彼が三人目。
玲子はその瞳に絶望と憎しみを宿し、その視界に次の殺すべき標的を捉え、そして――――息絶えた。



【赤根沢玲子@真・女神転生if…  死亡】





ガシャン、と音を立て、作成人の手からチェーンソーが落ちる。
血や服の布を巻き込んだチェーンソーは、二度と動かないだろう。
これが武器として誰かを殺すことはもう、ない。

「サク……なんでや……?」

座り込んだままのななこが、死体になった玲子を見つめながら問う。

「なんで殺したんや」
「6/さんを殺したのはあの子でしょう?」
「仇討ちのつもりやったんか?」
「それだけじゃありません。殺さなきゃ、貴女が死んでたんですよ」
「うちのためや言うんか? うちはそんなこと、望んだ覚えはないで」
「この子に殺されればよかったとでも言うんですか」
「殺してまで生き延びようとは思わへん」
「先生はそれでいいかもしれませんけど、だったら残される俺はどうなるんですか。
 この子だって、あのままじゃ人を殺し続けてたんですよ」
「殺すんが正解やったって言うんか?」
「殺されるのが正しかったって言うんですか!」

作成人を睨みつけようと視線を上げたななこは、そこで初めて作成人の顔を見て、息を飲んだ。
涙を流してはいない。
それでいて、見ているだけで苦しくなるような顔を、作成人はしていた。
人間にこんな表情ができるということ自体、ななこは知らなかった。

「……違うんです。本当は、そんなのじゃないんです……
 正しいとか、正しくないとか、そんなこと関係なくて……俺はっ……」

何を言えばいいのかわからず、でも何かを言わなければならない気がして、作成人は言葉を探す。

「俺だって、殺したかったわけじゃない…… 殺そうなんて、思ってさえなかったんです……
 俺は……俺はただ、このままじゃ先生が殺されるって思って、そう思ったら、勝手に体が動いてて、
 気がついたら……」

必死に言葉を絞り出す作成人を、ななこは黙って見つめていた。

「殺意なんて無かった。人殺しになる覚悟なんて無かった。だけど俺は殺した!」

それが、事実だった。それが、全てだった。

「6/さんのためでも、きっと、先生のためでさえない。俺は、俺のために先生に生きてて欲しかった。
 そのために俺は殺した。俺は、自分の我儘でこの子を殺したんだ!!」

そして、これが真実。
作成人の本音。

誰にも死んでほしくないと思ったことに偽りはない。
けれど、全ての人を等しく守れるほど、作成人は強くもなければ綺麗でもなかった。
ななこが死ぬかもしれないと思ったその瞬間、
作成人は無意識のうちに玲子とななこを天秤にかけ、ななこを選んだ。
その結果、玲子は死に、作成人は人殺しになった。

「呆れて物も言えないですか? それとも、人殺しと会話なんてしたくないですか?」

自嘲気味に言う作成人。
立ち上がったななこはそんな作成人を、包み込むように抱きしめた。
ななこの行動に、作成人は驚きを隠せない。

「……サク」

ななこが呼ぶ。

「……はい」

作成人が答える。

「どんな理由があろうとも、人が人を殺すんは許されることやない」
「はい」
「やからうちは、サクのやったことを絶対に許さへん」
「はい」
「助けてくれてありがとうなんて、言わへんで。サクがやったことを認めることになってまうから、言わへん」
「はい」
「けどな、サク」

ななこが作成人の手を握る。
その手が震えていることに、ななこは安心した。
人を殺して平気でいられるような人間でないのなら、大丈夫だ。
ななこは決意する。


「うちは、サクと一緒に行く」


それだけを、伝えた。
作成人が何と言おうと、玲子の死は自分にも責任がある。
だから、玲子を殺した罪を一緒に背負うことをななこは決めた。
だが、それを作成人に伝えることはしなかった。それは相手の重荷になるだけ。

ななこは思った。
サクが自分を守ったのがサク自身の我儘なのだとすれば、サクの罪を一緒に背負うのは自分の我儘だと。


「……いいんですか?」

おそるおそる、といった感じで作成人が訊ねる。

「なにが?」
「俺は、もう人殺しです」
「けど、人殺しでも、サクはサクやろ?」

ななこは、作成人の手を握る右手に、作成人の背中にまわした左手に、力を入れる。
この体勢だと、ななこから作成人の顔は見えない。
それでもななこにはわかった。
作成人は今、泣いている。

もう少しだけこのままでいようと―――このままでいたいと、ななこは思った。






【B-5 平原/一日目午前】

【ランキング作成人@パロロワクロスネタ投下スレ】
【服装】クロス(十字架)が大きく描かれた服(ボロボロ)
【状態】全身打撲、疲労(大)
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、DMカード(聖なるバリア・ミラーフォース(二日目深夜まで使用不能)、
光の護封剣(二日目黎明まで使用不能)、ブラック・マジシャン(二日目午前まで使用不可)、他2枚)@ニコロワ
【思考】
 1:誰も死なせたくなかったのに、俺は……


【黒井ななこ@らき☆すた】
【服装】いつもの教師らしい服装(ボロボロ)
【状態】健康
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、カラオケ用機材一式@現実
【思考】
 1:殺し合いはあかん。
 2:サクと一緒に行く。玲子の死は自分も背負う。
 3:沙枝を見つける。


※6/氏と赤根沢玲子のデイパック、鉄パイプは付近に落ちています。
※チェーンソーは使用できない状態でランキング作成人の足下に落ちています。



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それでも守りたい命があるんだ! ランキング作成人 絶望を希望に変えろ
それでも守りたい命があるんだ! 黒井ななこ 絶望を希望に変えろ
それでも守りたい命があるんだ! ◆6/WWxs9O1s氏 GAME OVER
それでも守りたい命があるんだ! 赤根沢玲子 GAME OVER


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