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ねえ、キスして

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ねえ、キスして ◆YOtBuxuP4U




「え……?」

 聞こえ

 なかった?

 キスしてって

 言ったの

 あたしに

×××

 静かで清潔な、C-4病院2階のとある病室の中。
 放送からずっと沈黙を保っていたアキは、不意にぶっきらぼうな口調で、そばにいた少年に要求をした。
 口づけの要求。しかも、まだ年端もいかない、出会ったばかりの少年、ネギ・スプリングフィールドに。

「アキ、さん? どうしたんです?」

 重い空気の中、どうにかしてアキに声をかけようと思っていたネギは、思いもよらないアキの言葉に動揺を隠せない。
 アキは恋人のトモを失って、それで悲しみに暮れていたのではないのか。
 どうしてそれが、ネギに「あたしにキスして」と頼むことになるのか。
 分からなかった。分からなくて、動けなくなった。
 がばっ、とベッドからアキが立ち上がり。今度は逆に、ネギを押し倒す。

「わ、アキさん、ちょ」

 持っていた杖を取り落とした。
 からん、と杖が音を立て、同時に華奢なネギの体はかんたんにアキに押し倒されてしまう。
 どさり、背中に冷たい床の感触。腰のあたりに重さがかかる。
 ネギはアキに、馬乗りになられてしまった。
 そこから、無言で。アキはネギの頭の横に手をついて、前かがみになっていく。
 ネギの視界に映っていた天井の蛍光灯が見えなくなる。アキの長い髪の毛がネギの顔に垂れてくる。
 ふたりの目が合う。心臓が早鐘を打つ。
 駄目だ。
 これ以上は、駄目だ。
 ネギの思いとは裏腹に、だんだんと二人の顔が近づいていって。
 ぽた、と。
 涙の粒がネギのほっぺたに落ちて音を立てた。
 アキは、泣いている。
 声を出さずに……泣いている。
 そこでネギは、我に返った。

「駄目です、アキさん!」

 渾身の力を込めて、ネギはアキの肩を押した。
 密着する直前だった二つの唇が、再び少しだけ離される。
 なんで? と、アキがかすれた声で言った。
 そのときネギが見たアキの顔をなんと言えばいいのか。悲しみと、絶望と、恐怖がないまぜになったあと、すべてを諦めて投げやりにして、それでもどうしようもなく寂しくて。
 誰でもいいから温めて欲しい。
 そう、アキの瞳はネギに訴えている。

 ネギは悟った。アキは――トモのことを忘れようとしたのだ。
 トモの死について考えるのがつらくなって、つらくなって、それでも感情があふれ出して止まらなくて。
 他の男と。ネギとキスをすることによって、トモへの愛を忘れようとしたのだと。
 だけど……それは、間違った解決法だと、ネギは思う。

「アキ、さん」

 ネギは少し起き上がって、アキの肩に手を回す。
 小さな手で優しくアキを抱きしめて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「こんなのは、違います。悲しみを忘れて軽くしようなんて、考えないでください。
 いくら時間がかかっても、いいんです。アキさんの中から生まれてくる想い、思い出を、全部受け止めてあげて。
 それは、アキさんの心の中にいるトモさんからの、メッセージなんですから。逃げちゃ、駄目です」

 でも、つらいよ、とアキが呟く。ネギはそうですね、でも、と続ける。 

「つらかったら、僕も一緒に受け止めます。今は病院内の見回りに出てる、ゼロさんも。アキさんの味方で、大切な仲間です。
 つらいことも、楽しいことも、分け合えるのが仲間なんです。だから、心配しないで。いまはトモさんを――愛しきってあげてください」

 ネギが言葉を終えると、一旦その場が静かになって。
 数秒の沈黙のあと堰を切ったように、大粒の涙がアキの瞳からこぼれ落ちていった。
 ごめんね、ありがとう、ごめんねを繰り返した後。
 涙でぐちゃぐちゃになった声で、アキはトモの名前を叫び続けて。
 そのあいだずっとアキを抱きしめてくれるネギをぎゅっと抱き返して、寂しさつらさを分け合って。

 アキはこの殺し合いの世界で、初めて人の優しさに触れたのだった。

×××

 一方、ゼロは。

「これは……?」

 病院内の見回りをする過程で立ち寄ったある場所で、驚くべきものを見つけていた。
 そこは病院の3F、最上階にある院長室。
 妙に豪華なその部屋の棚に入っていたのは、2種類のファイルだった。
 ずらりと並ぶファイル。
 色は赤と黒があり、赤に対して黒は少ない。
 赤いファイルの背表紙には、参加者名簿に乗っている名前が。
 黒いファイルの背表紙には、「エミット」や「メタモン」「ポテト」など見慣れない名前が載っていて。
 おそるおそる1人のファイルを取り出して、開いてみると――

「橘右京……明和元年九月二十日生……コレステロール値異常なし、肺結核あり……これは、参加者の健康情報か……しかも、顔写真つきだ」

 次に、試しにMAXと書かれたファイルを開くと、顔写真に写っていたのは紛れもなくあのMAXだった。
 人違い、もといメカ違いではなかったらしい。
 載っているのは参加者の顔写真と名前、生年月日と住所、そしておそらく、殺し合い開催時点での健康状態のようだ。
 まぎれもなくそれは、殺し合い参加者たちのカルテだった。
 思えば、殺し合いが始まる前。
 ゼロやアキ、ネギはもちろん全員が、拉致されたうえで気を失い、首輪を付けられてしまったはず。
 そのとき他にも、色々と調べられていたとしても不思議ではない。

(つまり。参加者全員の「健康診断」が行われていた、ということなのか? この病院で?)

 断定はできない。
 仮にそうだとしても、こんな痕跡を残していく意味がないはず。
 ゼロが主催なら、参加者に見つからないよう会場の外にでも持っていくだろう。
 しかし――放送の時のテンションを考慮すると、あの社長という男は何を考えているのか全く分からない。
 何が起きても驚かずに、冷静に最善手を打っていくのが最適なのかもしれなかった。

「いま打てる最善手は……ネギとアキにこのことを伝え、ここに来てもらって……少しでも参加者の情報を手に入れること。
 いや、1つくらいはファイルを持って行ったほうが」

 考えた結果ゼロは、1つファイルを選んで持っていくことにした。
 一旦その場を後にし、ネギとアキのもとに向かう。

(それにしてもこの病院……広いなあ、横に)

 この病院は高くもないし、地下にも何もないみたいだが、ずいぶん敷地面積が広い。
 マップのC-4のマスは半分ほどが病院の敷地と言っても過言ではないだろう。
 3F院長室を出てから2Fの病室に戻るまでには、けっこうな時間がかかりそうだった。
 ゼロはほんの少し、げんなりした。

×××

 ゼロさんが

 戻ってきた

 ときには

 もう

 あたしは

 泣き止んでた

 それで

 ネギさんに

 トモとの思い出

 聞いてもらったり

 キスするふりして

 困らせてみたり

 そんな感じ

 ネギさん

 ちょっと

 かわいいかも

 それで

 ゼロさんが

 院長室に

 いろいろあったって

 言って

 バッグから

 赤いファイル

 あたしに

 渡してくれた

 開いてみたら

 そこには

 “トモの写真”

 カルテなんだって

 あたしは

 久しぶりに

 トモと再会した

 みたいな

 思わず

 止まってた涙

 もいっかい

 あふれちゃった

 ……あたし

 がんばるよ

 トモ

 だから

 見ててね



【1日目 昼/C-4 病院(2階病室内)】

【ゼロ@ボンバーマンジェッターズ】
【服装】なし
【状態】健康、疲労(小)、全身に大小の負傷、多少の焦燥感
【装備】なし
【持ち物】基本支給品一式、ゼロシステム搭載コクピット@新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
【思考】
 基本:この殺し合いを破壊して脱出する。
 1:ネギとアキを連れて、院長室のカルテで情報収集
 2:MAXを破壊する。
 3:メカードの仕業か?
【備考】
※参戦時期は第45話「ゼロとシロボン」以降です。

【ネギ・スプリングフィールド@魔法先生ネギま!(実写)】
【服装】スーツ
【状態】健康、疲労(中)、全身に大小の負傷
【装備】ゲイトの杖@ドラクエⅥ
【持ち物】基本支給品一式、ランダム支給品1~3(杖なし)
【思考】
 基本:皆と一緒にここから脱出する。
 1:キスするふりするのやめて欲しい
 2:桜子さん……

【アキ@あたし彼女】
【服装】普段着
【状態】健康、悲しみ
【装備】なし
【持ち物】基本支給品一式、トモのカルテ、ランダム支給品0~2
【思考】
 1:トモ、あたしがんばるね
 2:なんでカヨが?
 3:ネギさんかわいいな


【カルテ】
病院の院長室に置いてあったカルテ。
赤いファイルに参加者、黒いファイルに生き物系支給品の
「名前」「住所」「生年月日」「健康診断結果」「顔写真」が載っている。
正しい情報かは不明。

※病院は横に広いみたいです。

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オムニバス アキ  
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