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後悔なんて、あるわけないだろっ…!

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匿名ユーザー

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後悔なんて、あるわけないだろっ…! ◆.pKwLKR4oQ



一瞬にして本来の姿に戻った草原の真ん中で満月は動けずにいた。
もう既にUWW消滅により胡桃の蔦の拘束から解放されているが、目の前で起こった出来事をなんとか把握しようと手一杯だった。

最初に空が割れ砂漠が消えて、次の瞬間には辺り一面は草原になった。
おそらくかがみのUWWが何らかの形で維持できなくなったために空間が元に戻ったのだろう。
それを為したのは禍々しい刀を携えて夜叉の面を被った白装束の乱入者。
その乱入者に出会い頭に斬られた竜は落下の衝撃もあって地面に頭から突っ込んで軽く痙攣していた。
だがそんな光景もかがみの変貌に比べたら生易しいものだ。
かがみは先の吐血をきっかけに先程の威勢の良さは見る影もないほどに衰弱しているのが遠目でも見て取れた。

「あ、あんた……いったい、何――ッ!?」

だが白夜叉はそんな瀕死のかがみにさらなる追い討ちを掛けていた。
それは刹那の交差。
白夜叉が一足でかがみとの距離を詰めたかと思ったら、次の瞬間にはもう二人はすれ違っていた。
そしてかがみの右腕は握っていたカード諸共斬り潰されていた。

「ぎゃああああああああああ!!!???」

その一部始終を満月は見ていたはずだが、何が起こったのかすぐには理解できなかった。
それほどまでに白夜叉の手際は迅速で鮮やかすぎた。
当の斬られたかがみが数秒遅れてから反応した事からも白夜叉の凄さが垣間見える。
僅かな時間でこの場にいる全員は次元の違う強さを見せつけられていた。

「よし、これで動け――」
「ダメ、マシロ君! 避けてえええええ!!!!!」
「ARUARUUUUUUUUUUU」
「ガッ!?」

「六芒星の呪縛」のカードが破壊されたために身動きが取れるようになったマシロはすぐに満月の元に向かおうとした。
だがそれは叶わなかった。
先程白夜叉に斬り伏せられた竜が息を吹き返して暴れ始めたのだ。
もう飛ぶ力も残っていないのか地面を跳ぶようにのたうち回るだけだが、その巨体では依然として十分すぎる脅威だった。
竜がその巨体をうねらせて跳ねるたびに草原の大地は震え、盛大に土を巻き上げて抉れていった。
まだ回復していないマシロはそれに巻き込まれて吹き飛ばされた上に、今までの積もり積もったダメージと相まって意識を手放してしまった。

「マシロ君、しっかりして!」

だが幸いにも吹き飛んだ先が満月のすぐ近くだった。
すぐさまマシロの傍に駆け寄った満月が覗き込むと、度重なる戦闘で負傷と疲労のダメージはあるが命に別条はなさそうだった。
だがこの場は現在進行形で暴れ竜がのたうち回っている危険地帯。
それに加えていつのまにかかがみもいなくなっているので無理にこの場所に留まる理由もない。
すぐにでも離れた方がいいと思って周囲の様子を確認しようと満月が頭を上げると、目の前に白夜叉がいた。

「あっ!?」

だがよく見てみると目の前の人物は厳密には白夜叉ではなかった。
白夜叉はその特徴的だった面を暴れ回る竜に弾き飛ばされていた。
そして白日の下に晒されたその素顔は満月とマシロの知る者だった。

「ア、アカギさん……?」
「やあ、助けに来たよ。満月ちゃん」

それはかがみとの戦闘に赴く時に別れたきりのアカギ(零)だった。
だがその呼びかけは疑問にならざるを得なかった。
満月の知っているアカギ(零)は黒髪で正義感に溢れる青年だった。
それに対して目に前にいるアカギ(零)は見事な白髪で、さらに以前よりも顎と鼻が尖っているように見える。
その上その身に纏った空気も狂気じみたものへと変貌しているように思えてならなかった。
右手の刀から発せられる禍々しさと白装束に付いた返り血がその変貌ぶりを一層際立たせていた。

「アカギさん、その髪は……」
「それよりも…早くここから離れろっ…!」

満月の質問に対してアカギ(零)が返したのは答えではなく警告にも近い指示と二つのデイパックだった。
さっと中身を確認すると、一つは満月のもので、もう一つには青い宝石と裁縫セットが入っていた。
もう一つの方は竜を斬った時にアカギが奪ったもので、裁縫セットは元々マシロの支給品だったが拾われて入れられていた。
先程弾き飛ばされてデイパックをなくしたせいでアカギ(零)の所持していたデイパックはこれでなくなった。
だがそんな事よりも満月はアカギ(零)の指示の方が引っ掛かった。

「そんな……私達にアカギさんを置いて逃げろって言うんですか……?」
「ああ、そうだ…! 分かったらさっさとマシロを連れて行けっ…!」
「でも、アカギさん一人を残して行くなんて――」
「俺の気が確かな内に早く行け!!!」

その時になって満月はアカギ(零)の顔が歪んでいる事に気付いた。
何かに耐えているような、踏み止まろうとするような、そんな表情だった。
それを見たらなぜか反論できなくなってしまった。

「……分かりました。北にあるペットショップで待っています」
「待つ必要なんてないぞ」

満月は断腸の思いでアカギ(零)の言う通りにこの場から離れるためにマシロとデイパック二つを担いだ。
そして去り際に振り向いて別れの言葉を告げた。
それがしばしのものになると信じて。

「あの、私、アカギさんを信じていますから!」

そして背後から聞こえてくる大きな地響きで不安になりつつも満月はマシロを背負って気持ち早足で北へ向かった。
人一人を背負って徒歩での移動。
それは普段の満月からすれば考えられない行動だった。
いくらプリキュアの力を得たと言っても激戦を終えて間もなければ一般人でも厳しいものがある。
だが今の満月の足取りは病人とは思えないほどしっかりとしたものだった。

(やっぱり、あの説明は正しかったんだ……)

かがみもマシロも勘違いをしている。
満月に点滴されたオレンジの液体は厳密には人体に害を与えるものではない。
その正体はナノマシン。
マシロがよく知る乙HiMEになるために必要不可欠なものだ。
その本来の効力は高次物質化エネルギーによるエレメントやローブを具現、物質化。
それだけでなく平時でも利用者の体力向上や負傷・疾病に対する早期治癒といった能力を発揮する。
だがこれの正体がナノマシンだと知っているのは今この島には満月だけ。
実は支給品を調べた際に満月は説明書きを抜いていたのだ。
そのため後から見たマシロには「正体不明のオレンジ色の点滴」としか分からなかった。
説明書き無しでも分かりそうなものだが、意外と知識不足な面もあって気づく事はなかった。

では何故そのような事をしたか?

それは支給品を確認し合う前にマシロから乙HiMEの話を聞いてからだ。
これがあれば身体が弱い満月でも乙HiMEになれる可能性が出てくる。
もし正体を知ればマシロが余計な心配をするんじゃないかと思って咄嗟に説明書は伏せておいたのだ。
それが今回巡り巡って思いもかけない結果を生んだ。
正直なところナノマシンのおかげでどれくらい病状が改善したかは不明だが、今のところは特に問題はない。

これは満月も知らない事だが、普通ならナノマシンを体内に入れると何日か寝込む事もある。
そうならないのは偏に満月とナノマシンとの相性が良かったからだと思われる。
それでもさすがに点滴針を打たれてしばらくはぐったりと項垂れていたが。

(マシロ君、黙っててごめん。それにアカギさん……)

満月の両の瞳にはいつしかデイパックに眠る蒼い空を彷彿させる宝石のような涙が浮かんでいた。


【1日目 昼/C-5 北部】
【神山満月@満月をさがして】
【服装】いつもの普段着
【状態】軽傷、疲労(大)、ナノマシンにより身体能力やや向上
【装備】ピンキーキャッチュ@Yes! プリキュア5、ナノマシンの点滴@舞-乙HiME
【持ち物】基本支給品一式、DMカード「融合」@ニコロワ、竜のデイパック(基本支給品一式、蒼天の青玉@舞-乙HiME、裁縫セット@現実)
【思考】
1:ペットショップでマシロを休ませながらアカギ(零)を待ちたい。
2:マシロとアカギ(零)と一緒に都市で殺し合いを止めるための仲間を探す。
【備考】
※ピンキーキャッチュでキュアフルムーンに変身可能。変身中は病気が悪化しないようです。
※キュアフルムーンの容姿は原作のフルムーン状態です(金髪ツーサイドアップ16歳ver。ステージ衣装みたいなプリキュアっぽい服)。
※必殺技「キュアフルムーンソング」…歌っている間味方を支援する技。回復効果(中)。

【マシロ@舞-乙HiME (漫画)】
【服装】いつもの女装服
【状態】気絶中、ダメージ(大)、疲労(中)、満月に背負われている
【装備】ピンキーキャッチュ@Yes! プリキュア5
【持ち物】なし
【思考】
1:満月、ちゃん……。
2:満月とアカギ(零)と一緒に都市で殺し合いを止めるための仲間を探す。
3:満月が心配。
【備考】
※ピンキーキャッチュでキュアヴィントブルームに変身可能。
※キュアヴィントブルームの容姿はマシロとの違いは特になし(髪はカツラではなくなる。王族衣装みたいなプリキュアっぽい服)。
※必殺技「キュアダイヤモンドヴァルキリー」…味方の支援を受けて乙HiMEの力を使う技。光の羽と長剣を生成して、原作5巻のラストみたいな感じに服も変化する(支援する仲間が多ければ多いほど強くなる)。


     ▼     ▼     ▼


(ヤバッ、竜が足止めしている間に逃げないといけないのに……)

竜の最期の足掻きに紛れていち早く逃亡する事に成功したかがみ。
だが逃避行は順調とは言えなかった。
右腕喪失による出血だけなら応急措置の止血でなんとかなったかもしれないが、その直前の身体へのダメージが深刻すぎた。
つまりUWW破壊による身体へのダメージだ。

胡桃の固有結界、別名“unlimited walnut works”。
元々は胡桃と縁の深いシマリスが会得した奥義であったが、第3回カオスロワでシマリスによって6/に伝授されている。
それはFateシリーズに登場するアーチャーの宝具unlimited blade worksの胡桃版と言えるものだった。
アーチャーの場合は無限の剣が出てくるが、シマリスは愛する胡桃でそれをやってのけた。
そして結界内に相手を引き込んだところで、顕現させた無数の胡桃で滅多打ちにするスタイルが基本形だ。

だがその使い手である6/はUWWについて次のような感想を抱いていた。

『体力を大幅に消費するあの技』
『種のままのクルミをこんな速度で成長させるなど、本来自分の持っている能力を超えている』

元々が6/本人の奥義でないためか、どんな事でも出来るわけではないらしい。
と、ここで一つの疑問が湧いてくる。
今のかがみは身体が6/なので6/と同じ技が使える事は不思議ではない。
だが胡桃の蔦を出す事や胡桃で大剣を作り出す事は本来の力を超えているものではなかろうか。
さらにかがみはこの技は基本的にノーコストだと考えてガンガン使用していた。
不思議な事にこれだけ見ると「◆6/WWxs9O1sのUWW」よりも「柊かがみのUWW」の方が強力に思えてしまう。

その疑問に対する回答はずばりリミッター。

元々人体が普段発揮している力は本来の力の一部であり、基本的に全力を出す事はできないようになっている。
これは本当の意味で全力を出した場合、構造上人体そのものが耐えられないからである。
それを防ぐために脳が常にリミッターをかけて力をセーブしているのだ。
だがこれは正常な状態においての話だ。
今の6/の身体の中身は入れかえロープによって本人ではなくかがみになっている。
そのため6/が普段自分の身体にかけているリミッターは中身の入れ替わりによって箍が外れた不完全な状態になってしまった。
それに加えて男性と女性という性別の違いもこの乖離に拍車を掛ける一因であった。
つまりかがみは意図せずに本来の6/の限界以上の力を行使し続けて、6/よりも強力なUWWを行使する事が出来た。
だがそれは同時に6/の身体へ限界以上の負担を掛け続ける事でもあった。
そして本来の身体ではないために普通なら気付けるはずの身体が上げる初期の悲鳴を聞き逃してしまった。
さらにUWW破壊による衝撃のフィードバックも加わった事で、ついに◆6/WWxs9O1sの身体は限界を迎えてしまった。

だからこれはある意味かがみの自業自得とも言える結果だった。
もちろん当のかがみ、竜やマシロや満月、況してやアカギ(零)がこの事情を知るはずもなかった。

(とにかく! あの乱入者の狙いが私か6/か知らないけど、今あいつの相手をするのは自殺行為よ!)

どういう魂胆か夜叉面の乱入者はかがみに敵意いや寧ろ殺意を向けていた。
これが6/の誤解フラグか、それとも今までの所業に因るものかは定かではないが、明らかに話し合いに応じる気配はなかった。
だからと言って今のかがみの状態ではどう見ても敵う相手ではない。
今は一刻も早く安全に身を休める事が出来る場所まで逃げ果せる事が肝心。
一応行き掛けの駄賃にデイパックなどを拾ってきたが、中身の確認は身を落ち着けてからだ。

「きゃ!?」

少しでも早く逃げる事だけ考えていたために足元への注意が疎かになっていたのだろう。
それに加えてここは所々に暗がりや木の根っこが点在する森の中。
不覚にもかがみは何かに躓いて転んでしまった。
だが今のかがみは極度の疲労と大量の出血で体力は既に限界である。
いつもならこの程度の転倒など笑って済ませるが、今は致命的なロスになりかねない。

「痛ッ……ったく、何に躓い――え?」

それは人間の足だった。
腐葉土の上に倒れたまま首だけ後ろに回すと人間の下半身が見えた。
さらに視線を移動させると、その人物が見覚えのあるSMの女王様風の衣装を身に付けている事に気付いた。
そしてさらに視線を上半身に移動させると、一瞬かがみは心臓が止まるかと思った。
ライトピンクのロングヘア/眼鏡/巨乳/天然系ドジっ娘/優等生/曰く、歩く萌え要素。



「うそ、みゆき……なの……」



それは紛れもなく数時間前に行方が分からなくなった高良みゆき、その亡骸だった。
既に放送でその死は知っていたが、実際に対面すると多少なりと思うところはある。
ぱっと見で外見は数時間前と全く変わりなかった――ただ一点を除けば。

「ひっ!?」

その唯一変わった箇所は瞳。
あの慈愛に満ちた薄青紫色の瞳に灯っていた光は消え失せ、今はただ虚ろな視線を送るだけ。
あたかも惨めに生き延びたかがみを呪うかのような空虚な瞳に変貌していた。
目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。
死してなおみゆきの瞳は雄弁に語っているようだった――ナゼワタシガシンデアナタガイキテイルノと。

そしてその呪いが届いたかのようにかがみは絶望する事になる。
もう地に伏した己の身体を立ち上がらせるだけの力が残っていない事が分かってしまったからだ。


     ▼     ▼     ▼


「静かな気持ちだ、怒りも奢りも感じない……ア、ル……」

よく分からない言葉を吐きながら竜はようやく地面へと倒れ伏した。
今まで散々暴れ回っていたが、今度はもう起き上がる事はないだろう。
両手両足は根元から斬り落として、長い胴体にはいくつも深い傷を刻んだ。
いくら化け物でもこれだけ致命傷を負わせれば再起不能だろう。
だが改めて辺りを見渡してみると竜の状態に負けず劣らずその惨状は凄まじいものだった。
草が一面に生い茂っていた平原の原型は欠片も見当たらず、周囲はすっかり荒れ地と化していた。
せっかく作った二つの墓も跡形もなくなり、おそらく眠っていた死体も地面ごと掘り返されたせいで原形を留めていないだろう。

だが不思議と今のアカギ(零)はその事に対して心を動かす事はなかった。

「お前、いったい……何者……アル?」
「義賊アカギだ」
「え、天狗じゃ、ないアルか!?」
「俺は人間だっ…!」
「そのちょっと尖った鼻に、化け物じみた強さ、どう見ても天狗アル」
「残念だが俺は正真正銘ただの人間だ…」

確かに今のアカギ(零)は人によっては天狗という化け物に見えるかもしれない。
そう思わせるほどアカギ(零)の周囲に漂っている空気は異質だった。
まるで闇から這い出てきたような不気味さを醸し出している。
その答えを聞いて竜は少し意外な表情をしていたが、すぐに何かを悟った様な表情になっていた。

「ふっ、夜叉かと、思ったら天狗……天狗かと思ったら、人間だった……アル。全く、滑稽、アル」
「どういう意味だ?」
「最初は、竜が天狗に倒さ、れるのも、一興か、と思った、アル……でも、人間……だったアル……」
「それがどうした!?」
「ふっ、やっぱり昔話みたいに化け物は人間に退治される運命だったという事アル!
 全く!!! 本当に人間は争い続けないと死んでしまう狂った生き物アル――ッ!!!!!」

それが竜の最期の言葉だった。
その言葉の意味を知ろうとは思わなかった。

「……行くか」

しばらくして竜の亡骸を見ていたアカギ(零)は興味が失せたかのように南西へと足を向けた。
目的はマシロと満月を痛めつけていた男の始末。
あの竜の暴走による混乱の中でいつのまにか姿を消していたが、どこへ向かったかは見当が付いている。
なぜなら地面に真新しい血痕が盛大に点々と残されていたからだ。
さらに右腕からの出血は尋常ではなかったので瀕死の状態でそう遠くまで移動しているとは思えなかった。

そして程なくしてアカギ(零)は少し離れた場所で右腕が無い血塗れの男の死体を見つけた。

「結局ここで力尽きたか」

細かに確認するまでもなく先程の男に間違いなかった。
その死体の周囲には先程紛失したデイパックとその中身が散らばっていて、なんとか生き延びようともがいた形跡があった。
目に映る光景から察するにタイムふろしきを使おうとしたようだが、どうやら失敗に終わったらしい。
無理な使用が祟ったせいかタイムふろしきが煙を上げて燻ぶっているのが何よりの証拠だ。
これでもうタイムふろしきは使い物にはならないだろう。

とりあえず周囲に散らばった道具を拾ったが、その時アカギ(零)に電流が走った――!

「……ぁ、お、俺は――ッ」

今更になってアカギ(零)は自分が為した所業に恐ろしさを感じていた。

(お、俺は! いったい、何をしているんだ…!?)

アカギ(零)はこれまでの出来事を思い出していた。
いきなり訳も分からないまま巻き込まれた殺し合い。
そこで最初に出会った若輩の軍人リュウタロス。
リュウタロスには自分に支給された三八式歩兵銃を貸した。
若輩でも曲がりなりにも軍人なので銃の扱いは手慣れていると考えたからだ。
だが怪しい洞窟前で赤いタキシードの男に会って…………二手に別れた。
そして次に出会ったのは緑色の不思議な生物ペットントン。
そのペットントンはすぐにMAXに殺されてしまったが、代わりにマシロと神山満月のプリキュアコンビと出会う事が出来た。
それから惨たらしい死体を見つけて、近くで竜を見かけたから二人は先行して向かって行った。
しかし合流するつもりで竜がいたと思しき場所に着いたら、竜も二人の姿もどこにもなく見知らぬ男二人の死体があるだけだった。
詮方なく二人が戻ってくる事に期待して二つ目の支給品スコップで二人分の簡易墓を作った後に、名簿を眺めて思考を巡らせていた。

(そこまでは割と思いだせる…。しかし、それからの記憶は曖昧だっ…)

トラックに轢かれたり、赤いタキシードの男がいたり、そんな気はするがはっきりとは思いだせない。
確かなのはいつのまにか気絶して、目覚めたら髪は真っ白になって近くに刀が刺さっていた事だけ。
しばらくは自分の身に起きた変化に戸惑うばかりだったが、すぐにそんな事どうでもよくなった。
どういう仕組みか刀を手にした瞬間から妙に気持ちが昂って力が溢れてくる気がした。
またこの刀が紅桜という名刀である事や刀の振るい方も知らず知らずの内に会得していた。

“紅桜”。
その正体は単なる刀ではなく「対戦艦用機械機動兵器」と呼ばれるものである。
「電魄」と呼ばれる人工知能を有し、戦闘の経緯をデータ化し、学習を積む事でその能力を向上させていく脅威の兵器。
だが紅桜の恐ろしいところは使用者に寄生してその身体を操る事だ。
実際にこの刀の元持ち主は最終的には精神と肉体を支配されて暴走している。
頭脳・運動神経も優れていると言っても一般人の域を出ないアカギ(零)が普通でいられるはずがなかった。
初めて得た純粋な力を前にしてさすがのアカギ(零)も冷静ではいられなかった。
そして同時に悪を糺す力を得た自分は以前のように義賊として行動するべきだと強く思った。

(そうだ、だから俺は二人に加勢しようと探し回って……)

そもそもアカギ(零)がUWWを破壊してまで乱入してきた理由はかがみの殺害だった。
当初マシロと満月に加勢しようと彷徨っていたが、UWWで隔離されていたので二人を見つける事は出来なかった。
そんなこと知る由もないアカギ(零)は近辺を一回りしてから二つの墓の傍に戻っていた。
その時ふと風に乗って歌が聞こえてきた。
穢れきった場の空気を浄化するかのような澄んだ歌声。
小さくてか細いが、とても優しくて張り詰めた空気を弛緩させるような柔らかな歌声。
それでいて、どこか力強さも感じられる歌声。
そこで風に流れてくる歌を頼りに辺りを探ってみると、空中に不自然な亀裂が走っているのを見つけた。
よく耳を澄ませると歌声はその亀裂――UWWのヒビから聞こえていた。
音源が分かるや否やアカギ(零)は急いでそこに目を当てて向こうの様子を観察した。

そして飛び込んできた光景は竜が満月目掛けて突進する危機的状況だった。

そこからは今思い出しても酷いものだった。
己の奥底から溢れ出た激情に押し流されるままに刀を振るった。
敢えて言い訳をすれば二人を助ける義賊にならんがために必死だったのだ。
だがその行動の果てに残ったのは竜と男の無残な死体だけ。
なぜか本来の目的であったはずの助けた二人は理由を付けて遠ざけていた。
いや違う、ただ単に怖かったのだ。
あのまま二人をこの場に残しておけば、ふとした弾みで自らの手で傷つけてしまう気がしてたまらなかった。

「……………………」

しばらくアカギ(零)はただ黙ってその場に佇んでいた。
一見無防備にも見える態勢で立ち尽くした後、アカギ(零)の表情には落ち着きが戻っていた。
だがそれは以前のものとは違って、どこか危険な気配を漂わせるものだった。

「◆6/WWxs9O1s……変わった名前だな……」

ふと興味本位で男の首を斬ってみたところ、首輪の裏面には装着主と思われる名前が記載されていた。
自分が殺した相手だと言うのに「少々奇妙な名前だな」という感想だけで特に興味は湧かなかった。
その時点でもう既に◆6/WWxs9O1sに対する関心はなくなっていた。

だがアカギ(零)は知らない。
その名前を持つ人物の性を。
その名前を持つ人物が辿ってきた運命を。

そして誤解王と称された◆6/WWxs9O1sが最期に残した誤解を。

「初めての人殺しか…後悔なんて、あるわけないだろっ…!」

誰に言うでもなく呟くと、再び夜叉の面を被ったアカギ(零)は歩き出した。
ちなみに最後の支給品である雪夜叉の衣装はなんとなく惹かれるものがあったので身に付けていた。
本当は正体を知られたくなかったからなのかもしれないが、今となってはどうでもいい。
それよりもこれからだ。
どこへ向かうかは決めていないが、どこであろうと義賊としてこの紅桜を振るうまでだ。
さりとて満月達が向かったペットショップには何故か行くつもりはなかった。
それが本当に正しい行為であるかは誰にも分からない。
ただ生者一人と死者一人を等しく嘲笑うかのように一陣の風が吹いていた。


【竜@まんが日本昔話  死亡確認】


【1日目 昼/D-4 森の中】
【アカギ(宇海零)@賭博覇王伝 零@マガジン】
【服装】普通の服、血塗れの白装束@金田一少年の事件簿
【状態】疲労(中)、白髪化、アカギに改名される、得体の知れない高揚感
【装備】フムカミの指輪@うたわれるもの、紅桜@カオスロワ、雪夜叉の面@金田一少年の事件簿
【持ち物】基本支給品一式×3、スコップ@現実、詩音のスタンガン@ひぐらしのなく頃に、首輪(◆6/WWxs9O1s@クロススレ)
【思考】
1:義賊として紅桜を振るう。
2:なんとなく今はマシロと満月には会いづらい。
【備考】
※かがみ(外見◆6/WWxs9O1s/◆6/WWxs9O1sという名前だと思っている)は死んだと思っています。
※タイムふろしきは燃えて使えなくなりました。
※雪夜叉装束一式@金田一少年の事件簿→雪夜叉の面@金田一少年の事件簿と白装束@金田一少年の事件簿


     ▼     ▼     ▼


「ア、アハハ、アハハハハハハハハハハ、あっ、違ったわね。ウィキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ!!!!!」

地図上のD-5に広がる森の中。
その南西部のクレーター付近で一人の少女が笑っていた。
だがそれは陽気なものではなく、どこか邪悪な笑い声だった。

「まさか土壇場で成功するなんて! あいつらの言う事も満更じゃなかったのね!! これって、まさに奇跡や魔法じゃない!!!」

誤解から始まったプリキュアとの二度に渡る激戦を制したが白夜叉に瀕死の重傷を負わされた変態女王――柊かがみは生きていた。
だが今のかがみの姿は◆6/WWxs9O1s氏ではなく、全く似ても似つかない姿になっていた。
今の外見はピンクの髪に眼鏡に巨乳のナイスバディ――歩く萌え要素と謳われた高良みゆきの姿だった。

(とりあえず奪ったデイパックにタイムふろしきが入っていたなんて運が良かったとしか言いようがないわ。それにアムンゼンの死体からこのロープを回収しておいて正解だったわ)

竜の最期の足掻きによる混乱の最中、かがみはアカギ(零)のデイパックと、アムンゼンの死体から入れかえロープも回収していた。
もしもタイムふろしきだけだったら自分を健康な状態に戻すまでに出血死していただろう。
もしも入れかえロープ(使えないけど)だけだったら死体のみゆきと入れ替わったところで即死亡していただろう。
幸いな事にみゆきが死亡したのは数時間前であり、死体の状態は良好で目立った外傷はなかった。
あとは賭けだった。
死者蘇生が許されるのはカオスロワを除けば一部の例外だけ。
だから普通にみゆきにタイムふろしきを被せても、みゆきが生き返る事はない。
だが身体を“生きていた時に近い状態”にまで戻すまでなら可能性はある。
同時に入れかえロープも使用できる状態まで時間を戻せば全ての準備は完了だ。
あとはその状態でみゆきに入れかえロープを持たせて自分もロープを握るだけ。
その結果、かがみの心はみゆきの身体に宿る事になった。
こうして身体はみゆき/中身はかがみという参加者が誕生したのだった。

タイムふろしきと入れかえロープ、そして高良みゆきの死体。
この3つがあって初めて実現する事が出来た、まさに奇跡の魔法。

(さて、これからどうしようかしら。一応アムンゼンに取られた手鏡以外の支給品はあるけど……)

元々かがみへの支給品は3つ。
一つはクララの手鏡。
だがこれは入れかえロープの騒動でアムンゼンが取り出していた。
二つ目はコルト・ガバメント。
UWW内の戦いでは使う機会がなかったが、“高良みゆき”の身体でも扱えるのは助かる。
そして三つ目の支給品。
実はこれの存在に気づいたのは少々前なのだが、実際に使うかどうかずっと悩んでいた。

(これを使えば確実に服従してくれる犬は作れる。でも時間制限だし、そもそも薬に頼るのは……)

その支給品とはずばり“惚れ薬”。
服用してから最初に見た人物を好きになるというある意味定番なアイテムだ。
確かにこれを使えばマシロだろうと満月だろうとあっけなく屈するはず。
だがそれはかがみのプライド的に納得いかない結末だった。
薬の効力が半日しか効かない事もあったが、なによりそんな薬で簡単に済ませたくなかった。

(でも、これを使っていれば今頃あいつらは私の忠実な犬に……んー、背に腹は代えられないか……)

とりあえずこの件は保留。
何にしてもマシロと満月にはきっちりと落とし前を付けておきたい。
二度も追い詰めておいて取り逃がすなど思い出しただけでも悔やまれてならない。
だが今すぐ再戦するのは軽率だ。
みゆきの身体ではUWWは使えないから戦力的に大幅なダウンは否めない。
そうなると強力な武器を手に入れるか、もしくは徒党を組む必要がある。
これなら惚れ薬に関しては新たな仲間もとい手駒に使うという手もある。
それに今の姿格好なら少量でも手駒に誘惑できるかもしれない。
一応下着は手持ちから一番エロそうな黒を選んでおいたから案外簡単に悩殺できそうな気もする。

(うふふ、待っていなさい、マシロに満月。必ずあんた達を私に服従させてやるわ!!!)


【1日目 昼/D-5 クレーター前】
【柊かがみ(変態仮面)@パロロワクロスネタ投下スレ】
【服装】SMの女王様っぽい服、黒のブラジャー&パンティー
【状態】ほぼ健康、外見は高良みゆき、マシロと満月への強い執念
【装備】なし
【持ち物】基本支給品一式、大量の下着、コルト・ガバメント(7/7)@バッカーノ!、惚れ薬@ゼロの使い魔
【思考】
基本:やりたいようにやる。
1:6/の代わりに服従してくれる犬を作る。
2:マシロと満月に復讐する。
3:脱出方法を探す。


【全体備考】
※C-5の一部が荒れ地となり、竜とアムンゼンとジェシーの損壊した死体が放置されています。
※D-4に◆6/WWxs9O1s@クロススレの死体(首輪なし)と入れかえロープ(使用不可)が放置されています。
※アカギ(宇海零)への不明支給品→三八式歩兵銃、スコップ、雪夜叉装束一式
※柊かがみ(変態仮面)への不明支給品→クララの手鏡、コルト・ガバメント、惚れ薬
※アムンゼン(その3)への不明支給品→入れかえロープ、フリーザー、タイムふろしき


【雪夜叉装束一式@金田一少年の事件簿】
ファイル3 雪夜叉伝説殺人事件に出てきた衣装。
雪夜叉の面と白装束(服の上から羽織る事が出来る)のセット。

【蒼天の青玉@舞-乙HiME】
マシロが所持する伝説のロストGEM。
マスターが認証しさえすればそのままマイスターローブを纏う事ができる。

【惚れ薬@ゼロの使い魔】
水のメイジであるモンモランシーが調合した薬。
飲んでから最初に見た異性に熱烈な好意を抱くようになる。
但し効果持続時間は半日。

【ナノマシンの点滴@舞-乙HiME】
乙HiMEに必要不可欠なナノマシンを体内に取り入れる点滴装置。
ナノマシンとは超極小サイズの小型マシンで、見た目はオレンジ色。
高次物質化エネルギーによってエレメントやローブを具現・物質化するだけでなく、平時でも利用者の体力向上や負傷・疾病に対する早期治癒といった能力を発揮する。
なお男性の精子が体内に入るとナノマシンは分解・無力化されると同時に抗体を発生させて再定着は不可能になってしまう。


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きっと奇跡も、魔法も、あります! マシロ [[]]
きっと奇跡も、魔法も、あります! 神山満月 [[]]
零 ~ロワに降り立った天災~ アカギ(宇海零) 標 ~スター~
きっと奇跡も、魔法も、あります! 柊かがみ(変態仮面) 私、最低ね
きっと奇跡も、魔法も、あります! GAME OVER


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