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モウミンナ、イナインダカラ

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モウミンナ、イナインダカラ ◆.pKwLKR4oQ



この殺し合いに巻き込まれたある参加者?は少女を助けた時にこう言った。

――僕はまた本当の事を聞きそびれるところでした。

その少女は生きる事を諦めていた。
自分が生きていると周囲の人々に迷惑をかけるから。
自分のせいでみんな死んでしまうから。

――聞こえたんです、○○○ちゃんの本当の声。

でもそれは違った。

――助けてって。

本当は助けてほしかった。

――ひとりぼっちは嫌だって。

本当は孤独に死ぬなんて嫌だった。

――いいんですよ、辛い時は人を頼っても。

だから彼は優しく声を掛けた。

――泣きたい時に泣かないと、笑えなくなっちゃいますよ。

     ▼     ▼     ▼     ▼     ▼

「ではこれにて放送を終了する。また六時間後の私の放送を楽しみにしていてくれ。」

最初の放送と同様にいきなり始まった放送は禁止エリアと死者と多少の連絡を伝えると、また唐突に終わりを告げた。
ビブリはその放送を6時間前と同様に聞いて、禁止エリアと最初の放送よりも困難だったけれど死者の名前のチェックを終えた。
実のところ今回ビブリにとって死者の報告は然程大きな意味を持たなかった。
まず元からの知り合いがいないので、必然的にここに来てから知り合った参加者の安否を気にする事になる。
だが最も付き合いがあったアルフレッドは既に目の前で死んでしまった。
そして残る死者は、付き合いが浅かったミンウと、七並べの結果自分達を騙してよく分からないうちに死んでいた秋山深一。
どちらも今の段階でビブリが感傷を抱くには至らなかった。

「……………………」

そして今ビブリが最も気になっている相手は黄桜可憐だった。
森の中で出会って一緒に逃げて、自分と秋山とゼロと一緒に七並べをした間柄の彼女。
その彼女は今この場にはいない。
というよりも、ビブリには七並べで負けて秋山が去ってからの記憶がない。
秋山のメタモンによって気絶させられている間に禁止エリアを脱出していて、気が付いたら隣に秋山の死体が転がっていた。
よく直後にあった放送を聞き逃さなかったものだと思う。

「……………………」

いや冷静だったわけではない。
ただ単に目の前の状況に頭が追い付かずにいただけの話だ。
そしてようやく今になって改めて理解できた。
目の前で死んだアルフレッドも、なんだか知らないうちに死んだミンウや秋山も。

もう生きて会う事はない。

――モウミンナ、イナインダカラ。

「……………………」

ビブリは悲しかった。
だから泣いた。
だがビブリの身体を構成する物に水分は含まれない。
だからビブリは泣き声を上げる事は出来ても、涙を流す事は出来ない。
やはり泣くという行動は、涙を流して、泣き声を上げて、初めて泣くと言えるのはないだろうか。
元々ビブリがいた世界にはこんな悲しい事はなかった。
だからビブリは知らないのかもしれない。

本当に泣くという事がどういう事なのか。

「……………………」

そしてビブリは歩き出す。
当面の目標は黄桜可憐に会う事だ。
自分が気絶している間に何があったのか。
彼女なら知っているかもしれないからだ。
もしかしたら知らない方がいいのかもしれない。
だがそれでもビブリは知りたかった。

何も知らないまま、ただ悲しいだけなのは嫌だったから。


【1日目 日中/E-9 森の中・北側】
【ビブリ@ビブリボン】
【状態】傷心気味
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】
 基本:ビブリ コロシアイ シタクナイヨー ビエーンエンエン~
 0:カレンニ アイタイナ
 1:ビブリ オトモダチ ツクリタイナア~
 2:アルフレッド シンジャッタヨー グスン
 3:カレンモ アキヤマト ゼロモ ドウシチャッタノ~?
【備考】
※どこに向かうかは特に決めていません。


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