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私、最低ね

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私、最低ね ◆.pKwLKR4oQ


「はぁ、これからどうしよう……」

太陽が天上で燦々と輝く正午を少し過ぎた時分。
そんな明るい天気とは裏腹に凄惨な殺し合いが繰り広げられる孤島。
さらにその中央付近に空いたクレーターから程近い森の中にある一本の大木。
その根元に桃色の髪に眼鏡を掛けた知的な一人の少女が背を預けて腰を下ろしていた。
一見殺し合いには似つかわしくない少女は今しがた流れた放送を聞き終えると、ふっと溜息をつきながらおもむろに頭を抱えていた。
常ならば淡い桃色の髪と豊満な身体からどこかふんわりした雰囲気をまとう少女であるが、今はいつもと幾分様子が違う。

それもそのはずで、この少女は身体こそ歩く萌え要素と称された『高良みゆき』であるが、現在その内に宿る精神は変態仮面と称された『柊かがみ』になっている。

さて一部の例外を除いて大半の参加者が聞き及んだ死者と禁止エリア+αを発表した先程の放送。
それを聞いたほとんどの参加者は大なり小なり考えるところがあったが、殊にかがみにとっては今後の方針を揺るがしかねないほど深刻な内容だった。

その原因は今のかがみにとって絶対に無視できない名前が死者として名前を呼ばれたからだ。

その死者とは先程まで行動を共にしていた『竜』――ではない。
あの別れ際の様子から謎の白夜叉に殺された事は放送を聞くまでもなく分かり切っていた事だ。
他にもサザエさんやハクオロなどその筋では有名なキャラも死んだが、これもかがみにとっては特に気にかける情報ではなかった。

今のかがみにとって絶対に無視できなかった名前とは自分と最も縁が深いであろう『◆6/WWxs9O1s』に他ならなかった。

しかし無視できなかった理由は単にこの会場内で一番関わりがあったという事ではない。
今はこうして高良みゆきの身体に収まっているが、少し前までかがみは◆6/WWxs9O1sの身体に収まっていた。
そして代わりに元々の柊かがみの身体には◆6/WWxs9O1sが収まっていたはずだ。
もし仮に放送で呼ばれた◆6/WWxs9O1sがかがみの身体に収まっていた◆6/WWxs9O1sだったならば――。

「全く、冗談じゃないわよッ!!!」

自身の帰るべき器の消失という最悪の事態を想像するとつい愚痴が零れてしまう。
全てはあの忌々しき入れかえロープで◆6/WWxs9O1sと精神が入れ替わってしまった事がそもそもの発端。
あの不幸な事故さえなければここまでややこしい状況に頭を悩ませる事もなかったはずだ。
ただこの島には◆6/WWxs9O1sが二人いるのでまだ最悪の事態だと決まったわけではない。
だが胡桃の固有結界内で体験した走馬灯らしきものを考慮すると、最悪の事態になっている気がしてならない。

(こうなったら癪だけど、さっきの放送で言っていた「報酬を得る権利」に賭けるしかないか)

とりあえずこのまま悩んでいても埒が明かないので、最悪の事態を想定しつつこれからどう行動するか考えた方が賢明だ。
そうなると差し当たって問題なのは自身の名乗りだ。
せっかく高良みゆきの身体を手に入れる事に成功したのだ。
マシロ達と再会した時の事を考えると、『柊かがみ』とは別の名前を名乗った方が何かと好都合だ。
もちろん馬鹿正直に『高良みゆき』と名乗る手もある。
だがその場合1回目の放送で死を宣告されたみゆきがなぜ生きているのか、その理由を説明しなければならない。

実は放送が出鱈目だった?
実は死んだふりをして社長の目を誤魔化していた?
実は自分でもよく分からない?

(それとも敢えて名乗らずに済ますか? いや、思い切って記憶喪失って事にするのは……?)

だが残念ながらどれも相手を信じ込ませるには今一歩信憑性に欠けるものばかりだと言わざるを得ない。
下手をすればそこから疑いの目を向けられて殺されてしまう可能性も大いにあり得る。
とはいえ相手と出会っておきながら名前を名乗らないなど、それだけで不審な目で見られてしまう。
だからと言って記憶喪失のような演技を常に維持し続けられる自信もない。

(そうなると偽名が一番お手軽なのよね。でも、問題が一つ)

古今東西、相手に偽名を用いる場合において最も避けるべき状況は相手がこちらを知っている場合である。
今回は当然ながらみゆきの情報を知っている者に偽名を使えば一発で露見してしまう。
だが幸いな事にこの島に来てからかがみはすぐにみゆきと合流している。
しかも合流してからみゆきが落下して死亡するまでに面識のあったアムンゼンと竜は死亡済み。
さらに元からの知り合いであるこなたともう一人のかがみも同じく死亡済み。

だがこの島にはまだ一人だけ元々みゆきと面識のある人物が生き残っている。

(ああ、黒井先生さえ死んでいたら完璧だったのにっ!)

その人物とは黒井ななこ。
かがみも在籍していた陵桜学園でみゆきのクラスの担任を務めていた。
さらに付け加えると優等生であるみゆきは黒井先生から非常に信頼されていた。
しかもいい加減なように見えて割としっかりしているので、どこかでボロが出ると誤魔化すのは困難だろう。
だが逆に考えれば生前のみゆきの知る最後の一人である黒井ななこさえ死んでしまえば――。

(――って、私、最低ね。こんな簡単に知り合いの死を願うなんて……まあ、そんなの今更か……)

自分が知り合いの死を願っている事に気付いたというのに、かがみは自分でも驚くほど落ち着いていた。
だがそれもある意味仕方のない事なのかもしれない。
つまりとっくに柊かがみは戻れないところまで来てしまっていたのだ。
それはマシロと対峙した時か、この島に放り込まれた時か、それとももっと以前から――。

(……とりあえず黒井先生の事は置いておきましょう。この広い島でそうそう出会う事もないだろうからね)

となると、次の問題は偽名をどうするかである。
だがもう既に都合の良い偽名は見つけていた。

(どこの誰かは知らないけど感謝しておくわ――『ゼロ』さん)

152人の名前が記された名簿に載っている中で重複している名前『ゼロ』。
しかも12時の時点でどちらも生き残っているので、もし片方のゼロの知り合いに出会っても別の方だと言い逃れる事が可能だ。
ただ名前がゼロというのは日本人的にどうなのかと一瞬考えたが、すぐ身近に数字とアルファベットで構成された名前の奴がいる事を思い出して些細な懸念は解消した。
よくよく考えてみればそれ以外にも明らかに本名ではない参加者も少なからずいるので、然程問題にはならないように思えた。

(よし、名前はこれでいいとして次は――)

こうして『柊かがみ』は『ゼロ』という偽名を背負って新たな一歩を踏み出し――。

(――服装ね。この格好も魅力的でそそるけど、さすがにね……)

現在のかがみが身に付けている服装はSMの女王様っぽい服。
見事に嗜虐性に溢れていて個人的には気に入っているが、この先誰かと出会った際に円滑な対応を望むなら着替え一択だろう。
斯くして何かしらの服装を手に入れるべくかがみ改めゼロは行動を開始したのだった。

だがこの時かがみは知らなかった。
みゆきが落下して死亡した際にその場に居合わせた人物の存在を。
『ゼロ』を信奉する隠れ真性ロリコン、ジェレミア・ゴットバルトの存在を。


【1日目 日中/D-5 クレーター付近】
【柊かがみ(変態仮面)@パロロワクロスネタ投下スレ】
【服装】SMの女王様っぽい服、黒のブラジャー&パンティー
【状態】ほぼ健康、外見は高良みゆき、マシロと満月への強い執念
【装備】なし
【持ち物】基本支給品一式、大量の下着、コルト・ガバメント(7/7)@バッカーノ!、惚れ薬@ゼロの使い魔
【思考】
基本:やりたいようにやる。
0:どこかで服を調達する。
1:6/の代わりに服従してくれる犬を作る。
2:マシロと満月に復讐する。
3:脱出方法を探す。
【備考】
※誰かに会った際には『ゼロ』という偽名を名乗るつもりです。

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後悔なんて、あるわけないだろっ…! 柊かがみ(変態仮面) ゼロをたずねて幾千里


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