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**或る貴公子の悲劇 「っっ…くぅっ……」  歯を食いしばり、嗚咽を漏らす曹植。 「何か嫌なことでもあったか」  優しく問いかける。曹植はぶるぶると首を振った。 「母上とお前が話しているのを聞いた」 「……。」 「辛いのは、よくわかる」 「……。」 「気が塞いだら、俺に言え」  曹植は何も言わず、さめざめと涙を流し続けた。 曹彰も何も言わず、ただ隣に座っていた。 賢い弟は、自身の道に外れた兄嫁への懸想がどれほど狂気じみたものか、自分で痛いほど分かっている。 叱り付けるのは母の役目であり、兄の役目はこれでよいのだという確信があった。

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