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**或る貴公子の悲劇-4  一方、曹丕は役所の仕事を終え、邸で妻を相手に他愛ない話などをしていた。 「今朝、子建と出会うたのだ」 「まぁ」 「それで、声をかけたらどうしたと思う?」 「どうなさったの?」 「あいつめ、いきなり背を向けて逃げ出したよ」 「まぁ…」 「あいつは、わからん」  ぶすっとして首を振る曹丕。甄氏はにっこりと笑うと、子供を諭すような口調で言った。 「でも、きっと今頃は反省なさっているはずですよ。」 「そうかな」 「聡い方ですもの」 「そうだな」 「ええ」 「あいつは、昔から風のような奴だった。奔放で、俺は羨ましいと思っていた」 「……。」 「もう少しでかくなったら、一緒に酒を飲むのが楽しみだ」  その日の夕方、曹植は曹丕に非礼を詫びた。 喉にこみ上げる嫉妬は陰をひそめ、胸もすっとしていた。 夕焼けの空は澄み渡っていて、どこまでも飛んでいけそうだった。

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