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**或る貴公子の悲劇-5  それから、いくらかの時が流れた。 建安十九年。文学は曹父子のもとで新たな転換期を迎えていた。 曹植はその中心にいた。名だたる文人と歓談を交え、日夜新たな思潮を語り合っていた。 それでも、彼にとって特別な時間だったのは、曹彰と話す時間だった。 「詩を作った。評してくれんか」 「……。」 「どうだ?」 「…兄上、韻というものをご存知ですか?」 「!!」  文事はわからん、と豪快に笑い、はるか遠くを見つめながらおもむろに言う。 「…幸せそうだな」 「えっ?」 「幸せそうだ」 「ええ!」  嬉しそうに何度も頷く曹植。 心からの言葉を発する時、曹彰は決まって遠くを見つめていた。 曹彰の目には、千里の彼方の空が映っていた。曹植は兄のそんな目が好きだった。 「人は一人では生きていけん」 「……。」 「一人でいるとな、人は寂しさに耐えかね、 傍に人がいないことを自然だと思おうとするようになる」 「……。」 「人を拒んだり、自分の胸の内だけで捏ね繰り回した 偏狭な理屈を絶対のものだと信じ込んだり」 「……。」 「今のお前は、そういう事がない。良いことだ」 「ありがとうございます」 「もしも気が塞いだら、俺に言え」

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