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**或る貴公子の悲劇-7
ある日のこと。
血と羊の乳を混ぜたような不快な夕焼けの空を眺めながら、曹丕と曹植は途切れ途切れに言葉を交わしていた。
「父上はまだ戻りませんね」
「ああ」
「……。」
「……。」
「今日の評定はいかがでしたか」
「なぜ、お前がそんな事を聞くんだ?」
「…その…いえ……」
「……。」
「……。」
「失礼致します…」
「ああ」
曹植の脳裏には、引き攣った兄の顔がこびりついていた。
後継の問題は、兄弟の情愛をも容易く引き裂く。
あの頃には戻れない。自分は、孤独と苦痛の中に身を置かなければならない。
そうした思いは、彼を酒へと走らせた。
日ごとに酒量が増え、言行も荒んでいった。
放言しては暴れ、心ある人は見るに耐えないと目頭を押さえた。
父、曹操は失望を隠そうともせず、いよいよ曹植の足下は崩れようとしていた。