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**習作  ──川は流れて、どこどこ行くの  人も流れて、どこどこ行くの──  子供が五人、川べりで歌っています。 長い葉で作った緑の舟は、浮きつ沈みつ川上に向かって、やがて見えなくなりました。 突然、風が木の葉をざわつかせ、辺りの音をさらって行ってしまいました。 四人の子供は先を争うように、家に向かって駆け出しました。  阮二は生暖かいものを感じて目を覚ましました。 着物の背中のところが、汗でぐっしょりと濡れています。 よっと勢いをつけて起き上がり、着物を脱ぎました。 くろいものがするっと落ちました。 それを石の床に生えている手に握らせて、いつものように湯浴みに向かいました。  こんなに涼しい日は、格別に気持ちいいのです。 「コケコッコー!」  今朝も妻は鶏小屋で元気に鳴いています。 その声を聞きながら、ゆったりとお湯に浸かりました。 手の届くところに、芽を出したばかりの若草が露をつけています。 阮二はほほえんで抜いてあげました。 すると、そこからまた草が生えました。 もう一度、ほほえんで抜いてあげました。 今度は萎びた女の手が生えました。 やはり、ほほえんで抜いてあげました。 「コッコッコッコッコ……」  妻は飛び跳ねています。 八月の盛りですから、滝のように汗が流れています。 汗が落ちた地面から、赤黒い芽が出ました。 それはどんどん伸び、地面はどんどん掘り進められました。 ふと見ると、阮二の娘が兄の首を絞めていました。 阮二はほほえみました。 三人の子供は今日も元気です。  ある日、赤黒い植物は花をつけ、やがて人間の頭をつけました。 それをなでると、くろいものがすっと落ちました。 それはお湯に溶けます。 さらになでると、いくらでもくろいものが落ちました。 時間はいくらでもあるのです。  今日は郡の役所に出仕しなければなりません。 それなのに、くろいものは次々と落ちるのです。 仕方がないので、役所の机に生えている手にそれを握らせました。 夕刻になり、路傍の白い花は夕陽をうけてきらきらと染まっています。 今日もいいことをしました。  家に帰ると、三人の子供が妻を蹴っていました。 阮二も一緒になって、妻を蹴りました。 ううっと低い悲鳴がこぼれます。 風がさあっと吹き、戸口をがたがたと鳴らしました。 阮二は娘に命じて、三人分の食事を作らせました。  それからしばらくして、二人の子供のうちの一人が飛びました。 文字通りではないのですが、確かに飛ぶことができるようになったのです。 これでもう、くろいものが落ちることはないでしょう。 魂の交感は大きな効果をもたらしました。 仕方がないので、もう一人の子供を石の床に生えた手に握らせました。 手は子供ごと、どこか見えないところへ沈んでいきました。  このところ、妻の具合がよくないのです。 阮二は妻を心配しました。 早く元気になってほしかったので、薬を求めにいきました。 しかし、どの店を回っても、買い求めるべき薬はありませんでした。 とぼとぼと家に戻ると、残った子供、そう、飛んだ子供が妻を埋めておりました。 阮二は頭に血が上って、子供を切ってしまいました。 阮二は一人になりました。 よかったですね。

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