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或る貴公子の悲劇-6


 それから、また幾らかの時が流れた。銅雀台は変わらず堂々としていたが、色褪せていた。
父、曹操は相変わらず馬上で詩を詠み、気宇壮大である。
しかし、すでに頭は白く、威容は和らいでいた。はっきりと、老いていた。

「子建様の才は、いずれ鳳凰となられるお方のものと存じます」
「丁正礼殿の申す通りでございます。
はっきりと申しましょう、お父上を継がれるのはあなた様です」
 魏王の後継者をめぐり、いくらかの側近がしきりに曹植を持ち上げるようになった。
楊脩、丁兄弟はその筆頭であった。曹植は彼らを敬愛していた。
しかし、何かにつけて後継のことを話題に上らせる側近を、
どこか疎ましいとも思っていた。
ただ、純粋に語りたいことを語らえた昔が懐かしかった。
もう戻れない過去、死んでしまった友を思うと、気持ちが沈んだ。
曹彰は、今は曹操に付いて馬上の人となっている。
孤独が浮き彫りになった。

 曹丕は、感受性の強い弟を慈しんでいた。
しかし、後継のことが人々の口に上るにつれて、
どこかしこりのようなものを感じるようになった。
「曹沖が死んだのはわしにとっては不幸だが、お前にとっては幸運だな。ふん…」
 今になって、父の言葉が胸を突いた。
あれほど愛でた煌くような才も、鼻につくように思えた。