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或る貴公子の悲劇-9


「子建…邪魔するぞ、子建」

「え?」

 曹植は、後ろから呼びかける声に振り向いた。

「ああ、貴方か」
「すまなかった」
「何がです? 別に貴方は謝らなければならない事はしていない。ご立派な方です」
「気が塞いだら、話を聞いてやると言ったのは…」
「あぁ」
 曹植の声は、見境のない怨念で震えている。
目の焦点は定まらず、相変わらず肩で息をしている。

「それは、結局私が相談しなければ知らぬふりということでしょう」
「……。」
「貴方はご立派に武功を遂げられ、四海に名だたるご立派な方だ。
 出来の悪い弟に情けの一つもかければ、仁者の誉れも得られますか」
「……。」
「結局のところ、貴方は私がどうなろうと知ったことではなかった。
 どうなのです。違うのですか」
 違う、と言おうとする口が開かない。
「もう、よろしゅうございます。
 魏王は薨去なされ、貴方にも果たすべきお役目がおありのはず。
 こんな所で何をなさっておいでなのやら」