クラウディア-4


<理性>を恋人にすることの素晴らしさについて、
出来るだけ多くを語らなければならない。
彼女は神が産み落とし、神によって育てられた貴婦人で、
持ち合わせた容姿の美しさをとっても、理知的で深遠たる知識をとっても、
ローマ皇帝に仕えるにしても申し分のない女性といえる。

彼女を恋人にして、その規定する指針の通りに行動するならば、
彼女は最上の助言を与えてくれるし、
それに伴う心身の安定は他の要因によっては得られがたい。
いかなる迷いや若さゆえの狂気に惑わされることもなく、
道を踏み外しかけている危機から自身を救うこともできるし、
賢者であり君主たるに相応しい叡智を得ることができる。

多くの人は<運命>を女神と称揚しては高みに祭り上げるが、
それは大きな間違いに他ならない。
<運命>は大きな輪を持っていて、
気まぐれにそうであらざるべき人を天上高く引き上げたかと思えば、
気がつくと輪を回転させ、彼を地上の泥の中に沈めてしまう。
そうなってしまえば、どのようなことになるか分かるか。

それまで良き友人と称し、命まで捧げるといって
近づいてきた人が100人いたとすれば、
そのうちの1人でも残れば神に感謝しなければならない。
なぜなら、運命に引き上げられた<そうであらざるべき人>に対する人々の愛は、
偽りの愛に他ならず、富と名誉によって保障されたものだからだ。

泥の中に叩き落されたとき、
つまり逆境の運命に立たされたときこそ、価値ある瞬間だといっていい。
その人がその人であるがゆえに友情を向けてくれる<友>や、
運命の与える物共を重んじず、
木々が天から与えられる水を恵みとするように、
ただありのままに享受すべきなのだという
分別を自覚できるのはこの時期だからな。

良き恋人となった<理性>はそうした助言を与えてくれるし、
他人としての<理性>の助言以上に、心の内に溶け込んで理解しやすいものだ。
また、<理性>は他の恋人と同じように、時として薄情なものではなく、
片時も離れず自分の傍らにいてくれて、
少しでも道を踏み外しそうな時には気遣わしげな言葉で導いてくれるし、
分別を弁えない行動に出てしまえば、他の誰よりも断固として叱責してくれる。

<理性>が愛想を尽かして離れていくのは、
悪事に慣れ、罪の意識すら失ってしまったその時だけだ。
これほど恋人とするのに適切な女性が他にいるだろうか。
チェーザレ・ボルジアは<運命>によって
あわや偉業を成し遂げるかという境地に引き上げられ、
同じく<運命>によって身を滅ぼした。

チェーザレの世継ぎであるべき俺は同じ過ちを繰り返さず、
この最良の王妃を傍らに伴い、
古の賢人王にも劣らない君主となることをここに誓おう。
<気高さ>の眷属たるクラウディアも、以前の俺よりも、
こうした俺をより確かに愛してくれるはずなのだ。

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最終更新:2009年01月01日 20:38