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其四


其五と対照的な作風で、好例になる詩。
この詩も情景描写が豊かで、読者がすんなり感情移入できるような美しい作だ!

春の陽気に心が浮き立ち、車を馳せて遠出するときの期待や高揚感や
木々の葉の間から漏れる柔らかい光と、影が描く美しい世界。
ケイ康でなくとも浮き世を忘れて清浄な気持ちに浸れる。

俺がよく分かるのは

習習谷風
吹我巣琴

という五、六句目。
美しい景色ももちろんそうだけど、風に吹かれたときには
心を覆っているものがすべて吹き飛ばされて、
ただそこにある自分の心がさらけ出されるような気分になるんだよ。

形容しがたい複雑な心境に襲われて立ち尽くしているときに、
うぐいすが鳴き交わす声が聞こえてくる。

それを聞いていると、仲良く談笑した兄と自分を思い出して、
惜別の情にかられるといった展開になっている。

どこが其五と対照的になっているかといえば、主題がどこかということなんだ!
其五では情景描写から琴の話に移り、
最後に〝そういう素晴らしいことも、兄上がいないのでは…〟と締めくくっている。
前に述べた内容が素晴らしければ素晴らしいほど、
兄がいないことによる喪失感も大きくなる。

ただ、この詩においては惜別の情というより、
その前の描写がメインになっていると思う。
浮世離れした情景はケイ康自身の目指した理想の世界。
兄を思い出す題材という形で、詩に自分の好みを表現したんだろう。