真北の大冒険 > 第46話 大誤算

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横浜の波止場で日本人民軍と世界政府の激しい戦闘が繰り広げられている中で、島田真北が謎の黒スーツ男の魔術のようなものによって、心臓に痛みを感じ始めた。 「あかん、こうしている間にもう敵がこんなにいっぱいおる!」 世界政府の戦闘員が大勢詰めかけていく。すると自衛隊の衛生科が担架で真北を運んでいった。完全に形勢不利になった日本人民軍、しかし、更に悪夢は起きようとする。 「あれなんだ?」空に謎の飛行物体が見えた。 「H-55Φや!」 「やばい!」 H-55Φが5機現れた。 「来るぞ!」 H-55Φは徐々に日本人民軍に迫り、機銃を発射。 パパパパパパパパパパン!! 「ぐわぁっ!」 「うぐあっ!」 H-55Φの機銃掃射に日本人民軍は為す術無し。 「おのれっ!H-55Φめ!」星川は怒りに燃える。 するとH-55Φが再び人民軍兵の群れを襲う。 「こんなやつは」星川、手榴弾をH-55Φのエアインテークをめがけて投げる。 ババババババーン!! H-55Φから再び機銃が放たれる。しかし、その中の1機のエアインテークに星川の投げた手榴弾が入った。 バコォーン! 1機は大破、墜落。しかし、星川は機銃にやられていた。 「これはひどい」中原、星川が担架で運ばれるのを見てつぶやく。 だが中原のその隙を狙って、世界政府の戦闘員が背後から背中を蹴った。 「ぐわぁっ!」 波止場の末端にいた中原はそのまま海に落下。 「やった、これで敵の三羽がらすは全滅だ」と、その戦闘員はつぶやき、TSLへと戻っていった。 それから、日本人民軍が一方的に損害を被り、午前4時にもなると、もう勝敗の行方は目に見えていた。日本人民軍は惨敗を喫したのである。陽動作戦に引っかかり、新兵器TSLで意表を突かれ、黒スーツ男の妖術で真北は苦しめられ、そしてH-55Φで滅多打ちにされた。 午前10時、真北は横浜市内の病院で目が覚めていた。窓側で眠っていた真北に日が差す。 「どこや、ここは」 隣には戦傷した星川や中原もいた。 「あら、目が覚めましたか」と、看護師が真北に声をかける。 「ああ、どうも」 真北は病室のテレビの電源を入れる。すると受像器には世界政府についての報道特番が流れていた。 「どうやら負けたのか、俺たち」 半数以上の日本人民軍兵が戦死したという、非常に残念な知らせばかりが入ってくる。更にはっきりしないのが、世界政府の詳しい情報である。ニュースによれば200人の戦闘員を逮捕し、そのほかは撤収したというが、一体どれだけの戦闘員が参加したのかは定かではなかった。また、世界政府が勝っても、直接占領はせず、そのまま撤収したというのは、まさか影で日本政府を牛耳るつもりなのだろうか。今後も、彼らによるテロなどは起きないことは絶対にないはず。この日、真北は病床の中ずっと世界政府のことを考えていた。 3日後、体調の良くなった真北は病室に星川と中原を残し、退院、真北は大津には戻らず、東京近郊で慰安の旅しようとした。しかし、世界政府戦の影響で街中が重苦しい空気に包まれていた。その重苦しい空気が落ち葉の季節と重なり、真北は余計に憂鬱になった。 「(どうしよう、こんな男が浦安の遊園地に行っても楽しくないだろうなぁ・・・やっぱ帰ろう)」 と、真北は東京から夜行急行で大津へと帰ることにした。 翌朝、夜行急行で一晩を明かした真北、瀬田川橋梁を渡るところで目が覚めた。大津到着は近い。しかし、真北はまだ憂鬱のままだった。敗れて故郷に帰るのは辛いと思ったからだ。 真北は荷物と身だしなみを整え、列車を降りようとする。すると膳所駅付近で突然列車が止まった。何があったのだろうと真北は気になったが、どうやら線路内に人が立ち入ったという。5分後に列車は動き出し、大津に到着。真北はホームに降り立つ。曇り空で風は肌寒い。ちょうどもうすぐラッシュ時を迎える朝の大津、真北は自宅まで歩き始めた。 「あっ、そういえば、移り住んだんだな」 そう、真北が三崎口に居る間、島田家は仮設住宅を離れ、新築のマンションに移り住んだという。真北はそのマンションの住所を確かめ、歩く。 「楽しみだ、新しい我が家がよう」 真北は急に胸が躍るように快調に歩いていった。そしてマンションに着いた。 「確か313号室だっけ」 入り口はオートロックで真北は部屋番号を入力する。すると扉が解錠され、真北は中に入り、エレベーターで3階へと上る。そこから廊下を歩いて313号室に着いた。真北はインターホンを押す。 ピンポーン すると出迎えてくれたのは、母だった。 「ああ、お帰り」 「ただいま」 真北は入る。中は仮設住宅と比べ、ずいぶん広い。しかし、リビングの受像器から流れるとんでもないニュースが目に入る。 「なにっ!?」 そう、天知駿一が京急本線で自殺未遂をしたというニュースである。真北の心に激震が走る。 「まさか・・・まさかっ・・・」 幸い一命は取り留めた。あの敗戦の責任は全て自分にあるとして、天知は自ら命を絶とうとしたのである。それから真北は夜遅くまで布団に引きこもっていた。 続く

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