おいらの見る月夜 戻ることのない幸せな時間


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 とても、幸せそうに笑っている二人の男女がいた。
 それを見ていると、こっちも幸せになれるほど、二人は心底幸せそうだった。
 この日本は浮浪者に溢れ返り、誰にも見取られずに死するものがたくさんいる。そんな、日本の中でも二人は楽しそうだった。
「カオス!」
「おう、早津か」
「相談なんだが、ちょっといいか?」
 早津の相談は、とてもじゃないが夢物語のようなものだった。それは、漠然としたもので、ただこの日本を変えたいというものだった。
「俺は、安心して暮らして生きたい。この日本はそれがないんだ。俺は亜璃と共に生きていきたい。だけど、こんな日本じゃ幸せなんかになれない」
 ああ、こいつは馬鹿だ。カオスはそう思わずにはいられなかった。
 違うだろ、早津。お前はこんな日本でも彼女と一緒なら幸せなんだろう?
 それでも、カオスはそんな早津の為に日本を変えてやりたいと思った。
「俺が大人になって、なんとかできるもんならやってやるさ」
 もう、何十年も前の話だ。
 暫く経ち、カオスはすべてを無に返す能力を身につけることになる。そして、日本を文字通り変える為に、麻薬や武器に手を付け、ミッドナイトタワーを完成させた。
 早津は変わった。
 亜理が死んだのが原因だと言うが、政府の人間、関係者を片っ端から刀で切り殺し、カオスと共に戦場を駆け抜けた。
 鬼気迫る表情。それに、断固としたもの。
 このまま、早津と一緒にいてはいけない。この男は、世界を滅ぼす。
 カオスは早津を戦闘不能状態までに追い詰め、そして海に流した。
 酷く早津は怯えていた。カオスに怯えていたわけではない。殺しをやめられない自分に怯えていた。
 そして、早津は悪夢を払拭させる為にカオスのところに向かった。殺しをやめられない自分に怯えていたという過去はカオスに怯えていたものに摩り替わり、実はカオスに怯えていない自分がいて、それは実際に会ってからより実感するものだった。
 そして、血が踊りだす。
 亜璃を殺した人間という生物を全て殺してやる。
 カオスに出会い、彼の血を見たことで殺丸は覚醒を遂げた。それは誰よりも血を求め、命を奪ってきた男のなりの果て。
 殺丸は気がついていなかった。
 自分が奪った命の尊さに。
 奪われた存在の大きさが、それを忘れさせてしまっていた。
 本当の声を知らぬまま。
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