第1話
武者修行に付き合って!!
[メイカのアッシュ落っことし大作戦]
とある日の朝。
いつものようにセイン・ヴィレッジは平和だった。
―――というか,クリア後の筈なのにフェイナが生き返ったり,ラルシュの過去の姿であるシレンスが別に存在したり,ラ・ギアスに他の世界から色々な人がやってきていたり。
地上とつながって以来,ラ・ギアスのSain†Gardenご一行はもっと賑やかになっていた。
もっとも,アッシュこと
アシュスノウ=ライドを起こしに行くメイカこと
メイカ=シャロンの様子が,今日はいつにも増して一段と慌ただしい。
それもそのはずだ。
彼女について階段を駆け上がり共にアッシュの部屋へ駆け込みに行っているのは他でもなく・・・シレンスによく似た青年。
とはいえ,耳が尖っておりさらにノースリーブでそのスリーブ部がダメージングなジャケットに紅い革のロンググラブ装備など,あからさまにラ・ギアスのにんげ・・・
住民ではないことは確かだが。
「・・・さぁ着いたわ,今日こそしっかり起きて貰って・・・」
「メイカちゃんに服従して貰いますか・・・」
ベッドの上に,青毛の青年が気持ちよく寝息を立てて横になっている。
「・・・すー・・・すー・・・」
ピーチクパーチク
「・・・Zzz・・・」
ピーチクパーチク
「・・・・・・幻覚結界,発動します」
プスプス・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・メラメラメラメラメラメラ!!
ズゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!
「・・・ん・・・;;
あち・・・あづ・・・・・・
あちゃちゃぢゃちや゛ゃちゃぢゃちゃぢゃちゃぢゃ!!!!!?????」
その青年の安らかなる睡眠は,目の前に広がる灼熱の炎のせいで途切れざるを得なくなった。
―――無論,ベッドそのものを燃やしたのではなく,熱を感じる神経を直接刺激するような幻覚を結界と共に発生させた・・・いわゆる魔法とかスキルとか精霊術とかそう言う物の分野の術である。
青毛の青年,アッシュの体からはもう汗が滝のように噴き出して体の悲鳴をそのまま表していた。
それを尻目にメイカとシレンスにの青年は笑って部屋から脱出。
「きゃははははははははは!!」
「いよっしゃ,目覚まし君119号起動実験はうまくいったな!!」
「名付けて『煉獄ヘルファイアリーインフェルノ君』!
{実験の結果,ベッドも燃えず本人にのみ異常なまでの刺激を与えることに成功。
汗が滝のように噴き出し,こうかはばつぐんだ!
追伸:フェイナさんが見たら爆笑間違い無しでしょう♪}」
「こりゃ傑作だ!
前回の『ハイパー死者の目覚め』に続いて効果覿面!
アッシュの寝坊,こういうの日替わりで続けりゃなんとか直りそうだなww」
「うんうんw
地上から呼び寄せた時にはホントに実力者なのか分からなかったけどこうなるともうあたし確信しちゃうなぁ♪」
「だしょぉ??」
暫し平和かつ,腹黒さとおもしろさに陰謀の混ざった妙な会話が続く。
ただしそれから10分後,メイカはアッシュに『エドゲイン君』の自由落下プログラムでさんざん懲らしめられたとか。
その日の午後・・・。
「何だと!
アッシュ・・・本気か?」
「ああ,紅牙が俺の実力を見込んでのお誘いだからな」
「・・・そうか,父さんにはもう伝えたのか?」
「大丈夫だ,シレンスさん経由で伝達してある」
「そうか・・・なら,俺ももしかすると後を追うかも知れないから,その時は本気でかかって来いよ」
「わかってるって」
唐突にアッシュが兄レイダーこと
レイダーフロウ=ライドに切り出した話。
それは紅牙がかつて栄華を極めていた頃から出場し続けている武闘大会,
『バトルロイヤルR』への参戦表明だった。
ただしはじめ本人は乗り気ではなかったために,メイカの説得のこの一言によって決心を無理矢理迫られた形なのだが。
{「あたしも紅牙達みたいに強くてタフな女になるの!!
だからアッシュ,暫くあたしの武者修行に付き合ってくれる!?」}
結果的にアッシュはいつもの如くメイカに押されて負けたらしい。
それを隠すためにさっきの青年
聖良紅牙に推薦を貰ったという理由を捏造したわけであり,今に至る。
―――かくして,アッシュ達はバトルロイヤルRの会場を巡業しつつ,現在本家での本戦バトルにエントリーすべく,紅牙からかなり厳しい指導を受けている・・・とのこと。
メイカがバトルロイヤルRに顔を出す日は,もう目の前まで迫っていた・・・。
[つづく。]
最終更新:2009年02月27日 03:19