第4721回D-BR杯にて


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目次

登場人物




1.決戦前の戦士達


 バトルロイヤルの会場はいつになくにぎわっていた。
「おい、こりゃあやばいぞ。誰が勝つんだよ」
「俺は何気にゲームウォッチとか行くと思うんだが」
「バーカ、あの最強団長のエルだろ」
復帰した直後にチャンピオンになった朧月夜。新生でありいつの間にか勝利をあげているゲームウォッチ。D-BR杯での勝率が高い漆戸雅子。エル=レイシスは瞬刃騎士団の団長。
まさに、ドリームカードと言えたこの対戦。掛け金の倍率が一定という異常事態にもなっていた。
まず会場に現れたのは真っ黒い姿をした謎の人物、ゲームウォッチだった。びーびーと妙な音を鳴らしているが、会場の歓声にかき消されてしまった。
「まだ、タイトルはとってないが隠れた実力者なのは確かだよな」
「影が薄そうで実は目立ってたりするし、分からない存在だよ。まさに謎ってとこか」
 観客の中で口ひげを生やしたおっさんが一人だけやけに歓声を上げていた。
 続いてやってきたのは逞しい体つきをした騎士だった。水色の髪をかきあげ、観客席のどこかに手を振っている。全身から発しているオーラが彼を歴戦の戦士だとものがたっていた。
「おいおい、ローザ姫がいるじゃねえか」
「じゃあ、その隣にいるのがサーナかよ」
 客席の中で恐ろしいほどの美人が一生懸命手を振っていた。その光景を見ていた観客はどよめき、一瞬そのまわりから人気が消えた。ローザ姫に何かするわけではないが、サーナはおろかエルの目線が怖かったからだ。
「ロマンスカーをよろしくお願いしまーす!」
 三人目に入場してきたのは漆戸雅子だった。ロマンスカー車掌の制服を着て、首元にある水色のリボンが揺れている。テーマソングはもちろん、ロマンスの神様。おしとやかに手を会場に振っている。
「ま、真北が来てるぞ!」
「相本もか!」
 車掌同士ということか、その中でもビッグネームである島田真北と相本由香が漆戸の応援に来ていた。このドリームマッチの重要さが彼の登場でひしひしと伝わってくる。このD-BR杯は絶対に簡単なものにはならない。無傷で帰ることは許されない。誰もが疲労し、傷つき、その中で立っていたものだけがチャンピオンになれるのだ。
「がんばれー! 朧月夜!」
 入場より先に野太い声が会場に木霊した。
「うるさいの、黙っておれ」
 紫色の髪をした、一見お姫様のような朧月夜。初見で彼女が実は前回のチャンピオンだと言われたら誰も信じないだろう。芯が細い体に、真っ白い肌。一発でも攻撃が当たれば死んでしまいそうだ。
「長い間出場してなかったが、復帰したとたんVだもんな」
「やっぱ強えよ、ブランク関係ないな」
 会場に四人全てが揃った。戦闘開始までもう少し。この後、すさまじい戦闘が繰り広げられるのは必須。だが、四人は楽しそうに何やら話しをしていた。
「ロマンスカーに姫を乗せたいのだが」
「大歓迎ですよ!」
「その姫様とロゼッタはどうなのじゃ?」
「そ、そんなことは知らん」
「ビービー!」
 これからはじまるのが戦いではないように、四人は和んでいた。違う世界で生きてきた四人が再会を楽しむように。



2.試合開始は穏やかに


「前回優勝したのは朧月夜です! 果たしてタイトルを防衛できるでしょうか!?」
 場内にアナウンスが流れ、四人それぞれが握手なりをして距離を取る。
「はじまりだな」
 エルは今にも飛び出しそうな闘気を放つ。
「よろしくお願いします」
 そんなエルにかわり、瀬戸は随分と控えめだ。
「ふむふむ、楽しみじゃ」
 朧月夜はわくわくしているようで、周りの三人を見て頷いている。
「びーびー」
 ゲームウォッチは相変わらず謎だ。
 場内にベルが何度も鳴った。カンカンカンと試合開始を鳴らす合図だ。一瞬、場内がシンとしたがすぐに大爆発が起こったような歓声が四人の体に降り注いだ。
「ふぅー、すごいなこりゃ。おーいローザ様」
 エルがローザの方に手を振るが
「聞こえないだろうな」
「ぬう、我も真似じゃ。おーい、おいらよ!」
 目の前のエルを真似して朧月夜もおいらに手を振った。
「なんだあ!?」
 手を振っていたエルがずっこけた。
「化け物か、あの男」
「ふふふ、我の自慢の相棒じゃからな。おいらよ! 見ておれー」
「おおーがんばれー!」
 風が一つ吹いた。
「おろ!」
 エルと朧月夜の間に吹いた風。そして、それは朧月夜の顔面にヒットした。
「FALL IN LOVE ロマンスカーの神様♪ ってね」
 その素早い攻撃は瀬戸の帽子によるものだった。風を切るほどのスピードで帽子が飛んできて、それがまた瀬戸の手に戻ってくる。ブーメランの要領で攻撃を加えたようだった。
「こんな技がくるとはの。それにいきなり瀬戸がくるとは思わんで油断したわ」
 ちょっと赤く腫れたおでこを朧月夜は痛そうに摩っていた。
「お返しじゃ」
 指をパチンと叩くとそこに光り輝く玉が浮かび上がり、もう一度指を叩くとを瀬戸に向かって飛んでいった。
「うわあ、速いよ!」
 手でガードをしたが、ダメージがあったようだ。ひやーと今度は瀬戸が手を摩る番。
「攻撃の間に隙ができてるってな」
 目の前にいたエルがあっという間に距離を詰めていた。そして、さきほどできた腫れたおでこにでこピンを一撃。
「くぅ~」
 軽いダメージであったが、精神的なものは大きかったようで、朧月夜はおでこを抑えて蹲ってしまった。
「そこで止めだな。じゃあな、チャンピオンってうわ!」
 蹲った朧月夜の首筋に手刀を叩き落そうとしたところ、エルの体が燃え上がった。
「ファイアアタック」
帽子や小さい玉、でこピンなんかの攻撃とは違う、本格的な攻撃。場内がわっと沸く。
「油断したのは俺の方か」
 エルが方膝を着くほどのダメージを負い、朧月夜と瀬戸の目が変わった。
「やばいの」
「あの人、いきなり全力ですね」
 瀬戸がまた動く。そして、ゲームウォッチに蹴りの二段撃。表情が読み取れないので、ダメージがあったかどうかは分からない。
「我も行くでな」
 さきほどと同じ光の魔法を放つが、ゲームウォッチはビービーとしか言わない。
「なんじゃ、あやつ。効いてるのかわからんぞ」
「強敵ですね……」
 ゲームウォッチに攻撃の標準をあわせた二人。
「だが、一般的にはチャンピオンが強敵なんだぜ」
「びーびー!」
 エルとゲームウォッチは朧月夜を狙ってきた。
 そして、戦いは終末に向かっていく……。

3.やっぱり最後はボロボロに


 試合は朧月夜と漆戸、そしてエルとゲームウォッチが手を組む形になった。いつ裏切りが起こるかわからない危ういものであるが、お互いにとっての利益を考えるとそれ相応のものだ。
「見事に男対女だな!」
「まあ、攻撃とスピードが揃ったエルの方が有利っぽいな」
 観客もこの展開に固唾をのんで見守る。
「朧月夜に一斉攻撃だ、いくぞゲームウォッチ!」
「びー!」
 ゲームウォッチの返事がYESなのかどうかは分からないがエルが朧月夜の背後に回り
こみ、その正面にゲームウォッチが立った。
「やばいの」
「その通り」
 背後からのエルの攻撃を月の守りでガードするが、それでも衝撃が伝わる。そして、その直後にゲームウォッチのファイアアタックの連携。両面への月の守りのせいか、守りが薄くなり朧月夜の肉体にかかる負担が大きくなった。
「一度くらいは助けてやりますか!」
 ファイアアタックの攻撃を妨げるように、漆戸がゲームウォッチを突き飛ばした。炎の攻撃を耐え抜いた朧月夜はふらふらて意識朦朧だ。
「おろおろ~仕返しじゃ~」
「危ない、こっちじゃないよ」
 その攻撃は漆戸に向かっていったが、もうほとんど戦線離脱の朧月夜の攻撃なんて簡単に避けることができた。
「そうそう、こっちじゃないってな」
 避けたところに攻撃。さすが、歴戦の猛者だ。エルは一瞬の隙も逃さずに短いモーションで漆戸に攻撃を入れた。
「ファイアアタック」
「おおろっと」
 今度はさすがに避けた朧月夜。今まで居たところが激しく燃え上がった。
「朧月夜さん、連携いきましょうか!」
「そうじゃな、行くぞよ!」
 漆戸が先にゲームウォッチに仕掛ける。素早く間合いに踏み込んでから足を払い、ゲームウォッチを空高々に浮かび上がらせた。
「ふむふむ、絶景じゃな」
 パチンと指の音。はるか上空から光の玉がゲームウォッチに降り注いだ。
「ビー!」
 だが、やはり謎の男だ。どれだけダメージを与えようがそのポーカーフェイスを崩すことができない。
「あんなにダメージを与えたのに、まだやられないの?」
「これは、本格的にやばいの。我も全力をだそうか」
 朧月夜の周りを囲む空気が一瞬にして変わり、その体全体から鋭い殺気のようなものが放たれた。
「ここを狙ってたってね」
 髪の毛が逆立つ朧月夜の背後にまたもやエルが立っていた。
「大技を使うときに生じる隙を俺が見逃すかな?」
「おろおろ、うっかりしておったわ」
 バタンと朧月夜は顔面から倒れた。きゅーといった音がこの世に存在していたらそれが最も似合っていただろう。大の字に朧月夜は派手に倒れ、完全に戦線離脱してしまった。
「大丈夫かあああああああああああ!」
 おいらが救護班よりも素早く駆けつけ、強引に朧月夜を抱えると医務室に猛ダッシュしていった。
「あんな派手にぶったおれるとは思わなかったな」
ちなみにエルの繰り出した技は膝かっくんだった。
「ファイアアタック」
「おっと、昨日の友は今日の敵ってか」
 標的のチャンピオンがいなくなってか、ゲームウォッチの標的はエルに変わったようだ。
「ちなみに私はまだ敵ですよ!」
 漆戸の攻撃が飛んでくるが、すでに気配を感じていただけに簡単にエルは防いだ。
「じゃあ、昨日の友には落ちてもらいますかな」
 素早くほぼ視界に捉えるのが不可能なスピードでエルはゲームウォッチに手刀を落とした。
「びーびーびー」
 同じようにビービーと言ったが、今度はそのままひっくり返し、気絶してしまった。
「ちょっと力を入れすぎたが、あれで倒れなかったらどうしようかと思ったぜ」
 エルは額に浮かぶ汗を拭い、そして最後の一人を見た。
「ま、予想通りの人間が残ったってわけだ」
「私としてもそうですね」
 二人の会話に会場がざわめく。
「どういうことだ? 二人はこうなるのが分かってたみたいだぞ」
「そりゃ、普通に考えてみろ。チャンピオンは狙われるのが普通、そして常に全力を出してたらゲームウォッチが狙われるのも普通だ」
 漆戸とエルはお互い、向かいあいそして構えた。
「速いのは知ってます。そして、私が速いのも知ってるということも」
「悔しいが、俺よりも速いな」
 一瞬二人が消えるが、姿を現したときにエルが拳を振り上げるが、それよりも速く漆戸の蹴りがエルの鳩尾に入った。
「攻撃をさせたのはわざとだ」
 腹に入った足を持ち、バランスが崩れた漆戸に手刀を落とした。
「ちょうど、終わりってところだな」
 ふらっと、漆戸が倒れる直前、足が力強く前に出た。
「あ、あなた特急券持ってない!」
「しまっ」
 すでに体力が無くなりかけていたエルに、最後の最後に放たれた漆戸の全力のハイキックが側頭部にヒットした。スパーンという会心の音とともに会場がどっと沸いた。
「俺としたことが、姫様……」
 そのまま、悔しそうに目を閉じたエル。
 その瞬間に優勝が決まった。
「勝ち残ったのは漆戸雅子です!
漆戸雅子が見事にD-BR杯を制覇しました!」
 しかし、漆戸も限界だった。
 膝をつき、会場のファンに「本日もロマンスカーをご利用いただき、ありがとうございます。」と挨拶をしたが、そのまま立ち上がれなくなってしまった。
「嬉しいけど、もう動けないや。あはは」
 エルと同時に漆戸も救護班に運ばれていった。

……その後



 大激戦の終わりだったが、比較的に朧月夜は軽傷で済んでいた。最後の止めが膝かっくんだったからだ。無理なダメージはなくちょうどやられたという感じだった。
「大丈夫か? もっと寝てなきゃ駄目だ」
「もう、帰るぞよ。餅を食べたいでの」
「駄目だ! 一ヶ月はおかゆだ!」
「おろ~そんなの嫌じゃ~それに風邪じゃないのに」
 過剰なまでに心配するおいらに朧月夜は嬉しくもあり、はた迷惑でもあった。
 謎の男、ゲームウォッチは大ダメージを負っていたはずなのに会場のどこにも姿が無かった。医務室の関係者によると妙なきのこをつなぎを来た真っ赤なおっさんに食べさせられたらすぐに回復したという。
 エルはというと、さすがは屈強の騎士。姫様やロゼッタが迎えに来る頃には傷はほとんど完治していてすぐに護衛の為に帰っていった。その頑丈さは医者も舌もまくほどだった。
 優勝したのに、ダメージが残ったのは漆戸の方だった。
 普段はロマンスカーに乗っていて戦闘には縁がないせいだろう。動けない理由は筋肉痛が大きそうだが、エルやゲームウォッチにやられたダメージもかなりのものだった。
「おめでとう、漆戸」
 そんな漆戸にバトロイD-BR杯優勝のトロフィよりも嬉しいものが与えられたのは間違いなかった。
「すごいね雅子」
「ありがとう、真北さん。相本さん……」
 偉大な二人の英雄に漆戸は勝利をたたえられ、またD-BRの世界に飛び立つ。



あとがき

これで完結です。
次回はどんな話を書こうかなと模索中。
D-BR杯の詳細を書いていただいているとやりやすいです。
では、最後までありがとうございました。
どこかで感想なりいただけるとやる気でます。




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