107 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:53:24 ID:LtwKzk04
 部屋はやけに静かだった。
 彼ともっと踏み込んだ関係になりたくて、なけなしの勇気を出して自分の部屋に誘った。
けれど勇気はそこで尽き果て、今は彼と二人でベッドに並んで腰掛けだんまりが続いた。
 お互い恥ずかしくて、怖くて、嫌われたくなくて、どこか少し距離を置いた関係。
私たちは恋人同士なのに、想いが通じ合って一月が経とうというのに、いまだにキス一つできていない。
手を繋ぐことで精一杯で、腕を組むことに躊躇してしまう。そんな関係。
せっかく恋人同士になれたのに、これじゃああまり前の関係と変わらない。
 だから、変えようと思った。
 顔を真っ赤にしながら告白してくれた彼。
 どれだけ想いを伝えることに苦労しただろう。
 だから今度は私の番。
 そう思ってがんばって放課後の帰り道、別れ際に彼を呼び止めて言った。
「あ、あの、ね? その……今日、一人、なんだ」
「え?」
「お、お父さんもお母さんもいなくて、だから……」
 数秒、言葉が詰まる。もうこれだけで顔から火が出てしまいそうに熱かった。
でも、ちゃんと言わなきゃいけない。一度大きく深呼吸。そして――
「今晩だけ、い、一緒に……いて?」
 このとき二人とも、きっと夕陽に負けない赤で顔を染めていただろう。
 そうして彼は家に宿泊の許可を貰うと、二人で私の家に向かった。
 ――そして、この有様だ。
 家に向かう途中、何度か会話をしたけれど部屋に入ってからは一度として口を開いていない。
感じないはずの空気の重さをずしっと感じてしまう。その重さで何もできないでいる。
口が開こうと思っても開いてくれない。私の勇気は、家に誘うときに無くなってしまい、
もう一欠けらも残っていなかった。
 自分が情けなかった。いつもそうだ。人と話すのが恥ずかしくて、口数が少なくって、
そんな自分が大っ嫌いで。
 でもそんな私を好きと彼が言ってくれた。照れた顔が可愛いと言ってくれた。
大人しくて物静かな君が好きだと言ってくれた。
 そんな彼に答えたくて、頑張って今日はもっと積極的になろうと決めたのに。決めたのに……。
 と、彼が動いた。

108 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:54:30 ID:LtwKzk04
「やっぱり、今日は帰るよ。……無理しなくて、良いから」
 彼の気を遣った様な優しい微笑みが私の目に映った。
 駄目だ。彼は優しいから。いつも私に無理をさせまいとしてくれるのは嬉しい。
だけど、今回は駄目だ。きっとこのときを逃したら私はもう一歩を踏み出すことができない。
 けどもう私には勇気なんて――
 ううん、違う。
 勇気は無いわけじゃない。一欠けらなんて大きいものじゃなくていい。
 一粒。そう、砂のように小さな一粒だけでいい。
 その一粒を必死で掴もうとする。掴もうとして――
「……え?」
 立ち上がりかけた彼の袖を掴んだ。いや、掴んだと言うほどでもない。摘むといった方が適切だろう。
震える親指と人差し指が、彼の制服の袖をなんとか申し訳程度に挟むように摘んでいた。
 彼の顔を見ようと今まで俯かせていた顔を上げる。が、彼の顔は水面のように揺らいではっきりと
その表情を窺うことができない。そのときになって、自分が泣きそうになっていることに初めて気付いた。
ぐにゃぐにゃと歪む視界で、彼の顔を正面から受け止める。
「……ょうぶだから」
「え?」
「大丈夫、だから」
 掴んだ一粒の勇気を振り絞って、ゆっくりと言葉を紡いでいく。声は緊張で震えてしまっていたけれど、
それでもはっきりと声に出す。
「私は、大丈夫だか、ら。だから……」
 あと一言。その決定的な一言を思い、頭も体も今までに無いくらい熱を帯びる。心臓の胸を叩く音が
聞こえてしまいそうで、彼の袖を摘んでいない方の手で胸を押さえつける。手を痛いくらいぎゅっと
握りしめる。言葉を続けようとして震える唇に気付き、震えよ治まれとばかりに強く噛み締める。
そして、言った。決定的な一言を、
「――しよ?」
 頬のてっぺんが熱い。
 彼はどんな顔をしているのだろうか? いやらしい女だって呆れていないだろうか?
一度言ってしまってから心を占めるのは消極的なことばかりで、頭の中がぐちゃぐちゃに
なってしまった。そんな混乱からはっとしたのは私の両腕を掴んだ彼の両手だった。
 彼は体ごとこちらに向き直し、視線の高さを同じにしてくる。
「本当に、いいんだな」
「うん……いい。君じゃなきゃ、やだ」
 一度確認すると、彼が顔を近づけてくるのが分かった。何をするのかは、すぐに分かった。
目を閉じる。溜まった涙が頬を伝った。
 私と彼のファーストキスは、ぎこちなくて、遠慮がちで、震える唇でほんの少し触れるだけの、
だけど優しいキスだった。

109 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:55:41 ID:LtwKzk04
「ふっ……んっ、はぁ……ちゅ、っん……」
 何度か拙いキスを繰り返し、徐々に深く端無いそれへと変わっていく。
 軽く触れるだけだったものが強く押し付けるものへ。
 触れ合う時間は刹那の瞬きから息の続く限りへ。
 私も彼も今までの分を取り返すように、がむしゃらに相手の唇をむさぼり続けた。
 私のだか彼のだか分からない、荒れた鼻息も口の隙間から漏れる吐息も、どれも熱くて蕩けそうだった。
 と、突然彼が私の下唇に吸い付いた。
「んんっ……!?」
 思わぬ快感に、背中にぞぞっと震えが駆け抜ける。その後も彼は何度も何度も嘗めるように私の下唇に
吸い付き咥えた。
「はぁ、はぁ……っんぅ……! あ、んっ……ふぁ、あ……っ!」
 連続して与えられる甘い刺激に、頭の中がふわふわと夢心地になり、白く霞み掛かってゆく。
 私はいつの間にかベッドの上に倒れ、彼に組み伏せられていた。
 でもそんなことはどうでもよくて、ただそこにある情欲を喰らうことに上手く回らない頭で集中した。
何十回と重ねたキスでもう口の周りは唾液でべとべとだった。
「んぁ、ふ……っ! ひゃっ!」
 唇の気持ちよさに集中していたせいで、胸を這う感覚に思わず声を上げてしまう。
「ご、ごめん。痛かった?」
 彼が心配そうな顔で見つめてくる。
「だい……じょうぶ。はぁ、ん……ちょっと、びっくりした……だけ」
「本当?」
「うん。だから……はぁ……つづ、けて?」
 私の言葉に、恐る恐るながらまた手を胸に添え、ゆっくりと撫で回していく。
 それは胸を撫でるというより制服のセーラーを撫でているという方が正解で、どちらかというと
くすぐったい。
「もう、すこし……つよくして、だい、じょうぶ……ふっぅ……だから」
「分かった。……これくらい?」
「うん……はっ、あぁ……」
 今度は制服に皺が付いてしまいそうなほど強く揉みしだく。新たな快感にさっきまでよりも
少し声が大きくなる。やがて彼の動きは大胆になっていき、揉みやすいように私の両腕を頭の横に動かし
両手で大きく円を描くように捏ねくり回す。
「ん、んんっ……! はぁ、あっ……っんん!」
 大きく動かされることで下着もずれ、それが乳頭を微かに擦らせてぴりぴりと痺れるような刺激を
与え続ける。その刺激に二つの乳首は固く起立し、より過敏に刺激を感知するようになる。
「ひっ、ん、ぅ……あ、んっ! ン、ンン……ゥンンッ!」
 熱い吐息を漏らすだけだったのが喘ぎ声も増え、急に声を出すのが恥ずかしくなりシーツを手繰り寄せ
口に押し付けて声を出さないように必死に我慢する。
 顔も彼から反らすように横に向け、両目をぎゅっと瞑る。だがそうすることで感覚がより鋭敏になり、
背筋をぞくぞくっと寒気に似た震えが走る。

110 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:56:48 ID:LtwKzk04
 だというのに、体の芯はずぅっとぽかぽかと火照っている。最初は胸の辺りが一番熱かったのが、
だんだんと下腹部へと移動していくのが分かった。今では私の臀部をむずむずと蠢いていて、
何かを求めるような切なさが襲う。その切なさをどうにかしたくて太ももの内股をもぞもぞと
擦り合わせる。少しは治まるが、それでもまだ足りない。もっと強い刺激が――
 そんな私の期待に答えるように、胸を揉んでいた片方の手がゆっくりと下腹部へと下りていく。
彼の手がスカートの端に辿り着くと、するするとスカートを捲り上げる。太ももから伝わるスカートが
たわむ感じと外気の冷たさに、彼に私のもっと奥の方を知られることへの恥ずかしさと興奮が入り混じり、
変に気持ちが昂ぶる。そして完全に太ももがスカートからの加護を失いその全てを晒すと、彼は
その太ももに手を滑らせた。
「はあ、ああ……んっ、ふあ……っ!」
 彼の手は私の触れて欲しい所ギリギリまで指でなぞると、すぐ膝の方へと戻る。その往復を何度かされ、
私はもどかしくて。その間も片方の手は私の胸に継続して刺激を与えるので、どうにかなってしまいそうで
無意識にシーツを強く握りしめていた。
「すごい……すべすべしてる」
「や、だぁ……っ! いわ、ないでぇ……はずか、しぃ……ぅんあっ!」
「でも本当のことだし……」
 そう言って太ももを撫でてばかりで、なかなか触ってくれない彼に痺れを切らし、撫でていた彼の腕を
掴むとそこに彼の手を押し付けた。
「んんぁっ!」
「あっ!?」
 思いがけず強く押し付けてしまい、電流が背中を突き抜けるような衝撃を受ける。
「大丈夫っ?」
「うん……あっ、もっと、そこぉ……触って、ぇ……!」
 あまりの強い衝撃に淫らな言葉をつい漏らしてしまう。
 その言葉に彼も高揚したのか、胸を揉みしだきつつショーツの上から割れ目に指を這わせる。
 先ほどまでより更に甘美な衝撃が体中を駆け巡る。
「んんっ! ふぁあ、んぁ! いい……いい、よぉ……ああっ!」
 もう恥ずかしいとかそういうのはどうでも良かった。ただただこのまま快感に身を任せて
しまいたかった。
 なにもかんがえられない。
 きもちいい。
 もっといじってほしい。
「あっ、そこっすご、あぁっ! もっと、いじっ、あぁあっ!」
 彼の這っていた指が陰核の上を撫でる。私の要求に彼は忠実に応え、そこを念入りに責める。
 軽くトントンと突付いていたと思うと、今度は潰さんばかりに強く押し付けてくる。
勃起して下着の上からでも分かるようになると、摘んだり転がしたりと更にバリエーションを増やす。

111 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:57:59 ID:LtwKzk04
 クリトリスを弄りながら彼はセーラーをブラと一緒に捲し上げ、私はあまり発育が良いとは言えない
乳房を露出させられた。そしてそこへ直にさっきまでやっていたように手を乗せた。彼の手は汗で
しっとり湿っており、少し冷たかった。軽く数回揉み上げると、彼はその中心にある小さな突起に
狙いをつけた。クリトリスを弄る要領で乳首も摘んで捻ったり転がしたり押し付けたり変化に富んだ
責めを続ける。更に彼は弄られていない乳首の方へ顔を持っていき、吸い付くように口に含んだ。
生暖かい息のかかる口の中で甘噛みされ、舌でピチャピチャとやらしい音を立てて舐められ転がされる。
「ああっ、やぁっ、ちくび、なめちゃっ、だめぇっ! だめ、なのぉっ!」
 乳頭の左右で違う刺激と、弄られ続けるクリトリスとの刺激に頭がおかしくなる。
 すごい。
 きもちいい。
 でもだめ。
 でももっとほしい。
 もっとほしい。
 だめ。
 ほしい。
 いじって。
 なめて。
 ほしい。
 ほしいっ。
 ほしいっ!
「やあっ! くるっ! なにかくるぅ! ふぁあぁ、ああっ! くる、よぉっ!」
 甘い痺れ。
 白く靄が掛かる頭。
 自分の体が自分の体で無いような錯覚。
 奥底から押し寄せてくる何か。
「ああぁっくる、くるぅううっ!」
 そして……
「あ、ああぁ――っ!」
 今迄で一番の、体を弓なりに反らせてしまうほど強い衝撃が全身を巡った。
「はぁ……ぁあ……はっ……はあ……」
「ご、ごめん。俺も無我夢中でやってて」
「はあ……んっ、はぁ……ううん……だい、じょぶ……はぁ……」
 彼はわたわたと慌てて私の容態を気にする。確かに、いきなりすごい声上げたあとぐったりしてたら
何かあったのかと思うだろう。
 それにしても、これがイくって事なのかな。すごかったなぁ……。
 あ……それに私、何か変なこと言わなかっただろうか……。うん、何か言った。すごく恥ずかしいことを
言ってた気がする。うぅ……なんか、すごく恥ずかしい……。
「えと……少し、休憩する? まだ疲れてるみたいだし」
「うん……ありがとう……ふぅ……」
 彼の優しさが身に染み渡る。
 そうだ、まだ終わりじゃない。まだ、彼と繋がっていない。

112 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 05:59:07 ID:LtwKzk04
 私が体を休めている間に、彼は彼で準備を始めた。
 制服を脱ぎ、避妊具を装着する。その時ちらっと彼のそのち、ちん……を見たが、あんな太い物が私の中に
入ってくるのを想像して、ぶるっと身震いしてしまう。ここまで来て、少し怖くなった。
 でもやめようとは思わなかった。確かに怖いけれど、ここでやめたら絶対に後悔すると思うから。
 私も十分に体を休め終わると制服を脱いだ。さんざん彼に触られたけれど、それでも恥ずかしかったので
彼には後ろを向いてもらい脱ぐことにした。そして全て脱ぎ終わると彼にこっちを向いていいように
呼びかけた。こっちを振り向いた彼は私の体を見て大きく目を見開くとそのまま硬直してしまった。
「あの……どこか変、かな……?」
「ち、違う違うっ。その……綺麗、だったから」
「う……」
 あんまりにもあんまりなストレートな褒め言葉に私は照れて顔を背けてしまう。
 背けていると、彼が近付く気配を感じ顔を上げようとしたが、
「ひゃっ」
 そのまま押し倒されてしまう。
「……いくぞ?」
「うん……」
「なるべく、優しくするから」
「うん、あのね、そのことなんだけど」
「? なに?」
「私はいいから、好きなように動いて」
「えっ?! でも」
「うん、痛いのは知ってる。だから……」
 なるべく彼に心配をかけないように、精一杯の笑顔で、私は言った。
「君だけでも、気持ちよくなって欲しいの」
「……おまえ」
「今は私も痛いかもしれないけど、いつか一緒に、気持ちよくなれるから」
 いつも私は自分から何かするような子じゃない。
 告白も彼からだった。
 だから、今回は自分が頑張ろうって決めた。
 それがどんな痛みでも耐えようと思った。
 彼に、気持ちよくなって欲しいから。
「だから……ね?」
 彼は少しの間、思案顔で色々考えていたが、やがて応えた。
「……分かった」
「ありがとう」
 その時の私の顔は、今までに無いくらいとびっきりの笑顔だっただろう。

113 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 06:00:19 ID:LtwKzk04
 私たちはその後、軽くキスをして彼は指を割れ目へと伸ばす。
 くちゅ……と、湿った音が部屋にやけに大きく響いた。
「ふっ……く、ぅ……あぁ……」
 下腹部に異物感を覚える。それが彼の指であることは分かっていたが、それでも少し居心地の悪い
感じだった。けれどもそんな感じなどすぐに薄れていく。彼が少しでも私の感じる痛みを和らげようと
一生懸命に膣をほぐす。彼の指がぐにゅぐにゅと私の中で蠢いている。指の腹が敏感な部分を摩るとき、
思わず甘い吐息が口から漏れてしまう。
「あ、少し濡れてきた」
「んぅ……言わなくて、いいってばぁ……はぁ、あ……」
 そうこうしている内に更に一本、指が挿入されぐにぐにと押し広げるように膣を弄る。
「は、ああ……んっ……」
 そうして一通りほぐすと、遂にその時がやってきた。
「……じゃあ、本当にいいな?」
「うん……きて」
 彼の亀頭が、入り口を探そうと押し付けて割れ目に沿うように撫でる。
「ん……はぁ、ああ……」
 その動きに腰がびくっと震える。そしてようやく探し当てたらしい彼が前へと挿入していく。が――
「くっ、ぅんんっ!」
 突然体が割れんばかりの痛みが襲った。目に涙がじわりと溜まるのが分かった。
「お、おいっ」
「だい、じょう……ぶ……くっ。だから、つづけて」
「でも」
「お願い……やめないで。ううっ……それが一番……嫌、だから」
「……分かった」
 その後も彼はどんどん押し進めていく。その間も私は自身の肉を削ぎ落とさせていくような痛みに耐えた。
「くっ……全部、入った、ぞ」
「うん……すごく、熱い……」
「ああ、お前の中もすごく熱くて……気持ち良い」
 最後の気持ち良いはなんだか申し訳なさそうに口にした。それでもそれを言ってくれて私は嬉しかった。
 ああ、ちゃんと私で気持ちよくなってくれた。
 それが一番嬉しかった。本当に。
「ねえ……私は、大丈夫だから……動いて」
「……いいんだな」
「うん」
「……動くぞ」
 そう宣言すると彼はゆっくりとピストン運動を開始した。
「ひ、ぃいああ……あぁ、んんぅ……!」
 最初に入れたときほどではないがそれでも痛みが強烈なのは変わりなかった。

114 :一粒の勇気:2008/03/09(日) 06:05:56 ID:LtwKzk04
 やがて彼も自分の欲求に逆らえなくなったか、徐々に前後運動のスピードを上げていく。
 早く動くことで私の千切れるような痛みも更に劣悪になる。
 正直、泣きたかった。泣き喚いて、止めたいって言いたかった。
 でも言いたくなかった。それが私の覚悟だから。
「はあ、はあ、好きだ、お前がすきだっ」
「くっ、うん、私も……うぅっ、君が好きっ、大好きっ!」
「くっ、出すぞっ!」
「うん、きて! いっぱい出して!」
 彼が大きく一突きすると膣でびくびくっと脈動するものを確かに感じた。

※ ※ ※

「大丈夫か」
「うん、もう大分平気」
 お互いに初体験を終え、今は二人で寄り添うようにベッドで包まっている。
 シーツには私が汚したであろう赤い斑点がぽつぽつと浮かんでいた。
 それを見て私は彼に見えないように静かに微笑んだ。
 良かった。
 頑張って、一歩を踏み出せて。
 あの時、彼の袖を掴めて。
 私は、あの時の一粒の勇気に心の中で感謝した。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
 私は彼の腕の中で、ゆっくりと眠りについていった。

最終更新:2009年10月25日 13:41