102 :名無しさん@ピンキー:2010/04/09(金) 00:28:56 ID:bfmO0Drs
>>101を気弱娘に変換するとこうなった。

「私に……もっと……もっと文才があれば……ッ!」
 彼女は、一人自室でみ悶えていた。いや、別に変な病気というわけではなく、ただ単に、好きな人に
想いを告げる為の文章――いわゆるラブレターという奴を書いてみたはいいものの、それがあまりに
あまりな出来にしかならなかった為、み悶えているだけなのだ。
 ……。
 ある意味では、病気かもしれない。
「……手紙なら、と思ったのに」
 彼女が想いを寄せる男は、文芸部の部長などをやっている、文系少年だった。普段は教室の片隅
で本を読んでいる彼は、だがしかし、別段根暗というわけでもなく、クラスでは副委員長などをやって
いて、行事などの際には頼りにならない委員長を補佐する取りまとめ役を務めている。その手腕は、
結構中々どうしたもので、その凛々しさもまた、彼女が彼に惚れた所以の一つだったりするのだが――
「やっぱり……わたしなんかじゃ、釣り合わないよね……」
 そんな、クラスでも割と人気者の彼に対して、彼女はと言えばだ。
 彼と共通している部分と言えば、普段は教師雨の片隅で本を読んでいるという事くらいで、後は
似ても似つかない。端的に言えば、彼女は根暗な文学少女だった。クラスにも友達は一人しかおらず、
その友達も他の友達よりも自分を優先してくれるというわけではなく、よって彼女はいつもクラスでは
一人で過ごす事が多かった。
 別に、その事を寂しいと思った事は、なかった。実際、友達関係の維持に時間や労力を費やすよりは、
その時間を本を読む事に充てたいと、彼女はそう思う人間だった。
 だがしかし、彼はそんな彼女の事も、クラス副委員長として気にかけていたのだろう。彼女に言わせ
れば、そんな理由でも無ければ、あんな事はありえない、という事になる。
「それ、読んでるんだ」
 ある日の事だ。最近四冊同時に発売された、とあるライトノベル寄りの新書本を読んでいた時に、
彼女は突然話しかけられた。
「俺もその人の小説好きなんだよね。君はどのシリーズが好き?」
「え……」
 本から目を上げれば、そこには彼がいた。
 にっこりと微笑んで、彼女の瞳を見つめる彼がいた。
 その瞬間、彼女は自分の頬が熱くなるのを感じた。
「俺はやっぱり言葉の掛け合いが好きだから――」
 彼はとあるシリーズ名を上げ、如何にその主人公が恵まれた環境にあるのか、という事を
切々と語っていたようだったが、その内容については、彼女はあまり覚えていなかった。
 覚えているのは、二つだけ。
 彼のまぶしい笑顔。
 それから
「あんまり、こういう話できる人、いないんだ。良かったら、また話させてもらっていいかな?」
 そんな言葉。
 それ以来、彼女は彼と時々話をするようになった。
 話をする、と言うと語弊があるかもしれない、それはもっぱら彼女が聞き手に回り、彼が喋っている
だけという様子だったが、彼もそれで楽しそうだったし、何より、彼女自身、それが、その時間が
とっても楽しく、嬉しく、そして愛しかった。
 好き。
 その気持を自覚するまでに、さして時間はかからず――
「……どうすれば、伝わるんだろう……」
 そして今に至る。
 彼女は、生来の自分のコミュニケーション能力の不足を恨んだ。
 もっとも、自業自得なので、恨んだ所で恨みの持って行き場所は無いわけだけれど。
「はぁ……」
 手紙で気持ちを伝えてみようと思い、書いてはみたものの……結果は惨憺たる物だった。
いかに文章を読むのが好きでも、書くとなると話は変わってくる。彼女はそれを痛感させられた。
「……どうしたらいいんだろう……こんなに……」
 こんなに、好きなのに。

                                                       -続くのか?-

最終更新:2010年04月28日 19:01