216 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/19(金) 19:01:35 ID:???
「すまない、敷島!君達の足止めのおかげで・・・」
「そんな社交辞令なんか言ってる場合じゃねーぞ。戦自もそろそろ撤退する。
時間がないぞっ!」
「あぁ、分かってる」
「すまない、敷島!君達の足止めのおかげで・・・」
「そんな社交辞令なんか言ってる場合じゃねーぞ。戦自もそろそろ撤退する。
時間がないぞっ!」
「あぁ、分かってる」
時田の耳には、SOUND ONLYと表示された画面の向こう側でも、ここと同じく
大声が飛び交っているのが聞こえた。
大声が飛び交っているのが聞こえた。
「だが、俺たちは技術屋だ・・・何か、いい案はないか?」
「言うと思ったぜ。いいか、よく聞けよっ!」
ヤツの武器はあの変てこな触手だけだ!前のヤツみたいにビームは持ってねぇっ!」
「言うと思ったぜ。いいか、よく聞けよっ!」
ヤツの武器はあの変てこな触手だけだ!前のヤツみたいにビームは持ってねぇっ!」
彼の作戦とはこうだった。
JAは、使徒に対して当然近接戦闘を挑む必要になるが、それにはあの鞭をさける必要がある。
先の戦自の攻撃で使徒の鞭は、後方からの攻撃に対して、鞭での反撃は行わずに
わざわざ反転して向きを変えて攻撃してくることが判明した。
そこで、JAを使徒の後方に投下、以降常に使徒の後方から攻撃、殲滅する。
JAは、使徒に対して当然近接戦闘を挑む必要になるが、それにはあの鞭をさける必要がある。
先の戦自の攻撃で使徒の鞭は、後方からの攻撃に対して、鞭での反撃は行わずに
わざわざ反転して向きを変えて攻撃してくることが判明した。
そこで、JAを使徒の後方に投下、以降常に使徒の後方から攻撃、殲滅する。
217 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/19(金) 19:14:44 ID:???
「とにかく速力が武器だ。ヤツは胴体が長い分、反転に時間を要する。
お前のジェットアローンなら、やれるだろ?」
「・・・すまないな、色々と」
「謝るのは負けたときだぜ?とにかく、今から戦自を撤退させる!あとは頼んだぞ!」
「とにかく速力が武器だ。ヤツは胴体が長い分、反転に時間を要する。
お前のジェットアローンなら、やれるだろ?」
「・・・すまないな、色々と」
「謝るのは負けたときだぜ?とにかく、今から戦自を撤退させる!あとは頼んだぞ!」
――――使徒の足止めのために死者が出ている。
その事実は、ついさっきまで時田の胸を強く締め付けていた。
世界を守り抜く人々の命の重さ、そして、自分とジェットアローンに託される希望の重さ。
その事実は、ついさっきまで時田の胸を強く締め付けていた。
世界を守り抜く人々の命の重さ、そして、自分とジェットアローンに託される希望の重さ。
『謝るのは負けたときだ』・・・敷島の言葉が頭に響く。
「(・・・ジェットアローンで・・・世界を守る・・・)」
彼のいる管制室内では、戦闘準備のために多くの仲間が駆け回っていた。
ここ、ジェットアローン強羅制御管制施設は、JAによる戦闘の現地指揮のために
急遽、二週間前から建造が始まったものだ。お世辞にも広いとはいえない。
次々に送られてくる情報をたくさんの端末に処理していく職員のなかには椅子のない者すらいる。
ここ、ジェットアローン強羅制御管制施設は、JAによる戦闘の現地指揮のために
急遽、二週間前から建造が始まったものだ。お世辞にも広いとはいえない。
次々に送られてくる情報をたくさんの端末に処理していく職員のなかには椅子のない者すらいる。
219 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/19(金) 20:27:57 ID:???
「(俺が・・・俺が震えていてどうする・・・!みんな必死なんだ・・・!
俺が、・・・ジェットアローンを信じなくてどうするっ・・・!)」
「(俺が・・・俺が震えていてどうする・・・!みんな必死なんだ・・・!
俺が、・・・ジェットアローンを信じなくてどうするっ・・・!)」
『時田さん、JAの起動準備完了しました。投下地点はどうしますか?』
スピーカーから聞こえてきた加藤の声に、現実に引き戻される。
先ほど敷島から聞かされた作戦が、時田の頭の中で一気に再構築されていく。
先ほど敷島から聞かされた作戦が、時田の頭の中で一気に再構築されていく。
「よし、さっきの話は聞こえてたな?いいか、使徒がCポイントを通過したら、
その後方に投下だ!」
『了解っ!』
「冷却班!補助冷却装置の設置、今から配備できるか?」
「えっ!?補助冷却装置は第3新東京市にありますから、急げば強羅までもってこれますが・・・」
「では、至急手配してくれ」
「まさか、時田主任・・・!」
「あぁ、みんな、高機動モードだ」
その後方に投下だ!」
『了解っ!』
「冷却班!補助冷却装置の設置、今から配備できるか?」
「えっ!?補助冷却装置は第3新東京市にありますから、急げば強羅までもってこれますが・・・」
「では、至急手配してくれ」
「まさか、時田主任・・・!」
「あぁ、みんな、高機動モードだ」
220 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/19(金) 20:38:47 ID:???
『高機動モード』・・・それは冷却液の流速を限界まで引き上げ、リアクターぎりぎりの性能で
ジェットアローンを動かすモードだ。
前の使徒戦では、JAの冷却性能そのものに問題があったが、今回はリアクターの冷却装置には問題はない。
しかし、言うまでもなく高機動モードには大量の冷却水が必要となる。
『高機動モード』・・・それは冷却液の流速を限界まで引き上げ、リアクターぎりぎりの性能で
ジェットアローンを動かすモードだ。
前の使徒戦では、JAの冷却性能そのものに問題があったが、今回はリアクターの冷却装置には問題はない。
しかし、言うまでもなく高機動モードには大量の冷却水が必要となる。
「しかし、主任!冷却水の水源がありません!芦ノ湖では遠すぎます!」
「前の使徒にN2地雷を使って出来た湖があるだろう、あれを使うんだっ」
「ですが、あまりにも・・・」
「・・・俺達がJAを信じなくてどうするっ!」
「前の使徒にN2地雷を使って出来た湖があるだろう、あれを使うんだっ」
「ですが、あまりにも・・・」
「・・・俺達がJAを信じなくてどうするっ!」
時田の言葉に、一瞬の静寂が訪れる。が、それもすぐに指示の嵐に変わる。
「第二研究室に連絡しろ、至急補助冷却装置の準備だっ!」
「はぁ?何度も言わせるな、リアクターの制御はB-7だ!」
「五分、いや三分でやるんだ!急げっ!」
「はぁ?何度も言わせるな、リアクターの制御はB-7だ!」
「五分、いや三分でやるんだ!急げっ!」
おのおのが、ある者は端末に向かい、ある者は通信で指令を出す。
そうしている間にも、モニターの使徒を現す輝点は第3新東京市に近づいていく。
そうしている間にも、モニターの使徒を現す輝点は第3新東京市に近づいていく。
「使徒、Cポイントを通過!」
『時田さん、こちら加藤です。OSの高機動モードでの起動準備完了しました』
『時田さん、こちら加藤です。OSの高機動モードでの起動準備完了しました』
「よしっ、ジェットアローン、降下だっ!」
221 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/19(金) 20:49:00 ID:???
「しかし・・・まさか戦自が動くとはな」
「しかし・・・まさか戦自が動くとはな」
主モニターに映し出されている第四使徒を見ながら冬月はつぶやく。
彼が見下ろす下、発令所の面々は忙しいとは言えないまでも情報収集のために手を動かしている。
彼が見下ろす下、発令所の面々は忙しいとは言えないまでも情報収集のために手を動かしている。
「またあの農協マシンが出てくるわけぇ?
使徒を一匹倒したくらいでいい気になっちゃってるんじゃないわよ」
「あら、ミサト、酷い言い様ね。NERVよりも先に戦果あげたのは事実よ」
「アンタ・・・端末握りつぶしながら言うのやめてくれる?」
「それにしても、ずいぶんと日本政府はしぶりますね」
使徒を一匹倒したくらいでいい気になっちゃってるんじゃないわよ」
「あら、ミサト、酷い言い様ね。NERVよりも先に戦果あげたのは事実よ」
「アンタ・・・端末握りつぶしながら言うのやめてくれる?」
「それにしても、ずいぶんと日本政府はしぶりますね」
エヴァとの通信や情報解析を担当する青葉は、マヤがいないオペレータ席でコーヒーを飲みながらつぶやく。
「国家予算だって割いてるのにな。
まぁあのロボットが使徒に負けたら自動的に指揮権もこっちにくるさ」
まぁあのロボットが使徒に負けたら自動的に指揮権もこっちにくるさ」
日向は、青葉以上に仕事がない。ルービックキューブを組み立てている。
「エヴァのパイロットは?」
「ファースト、サードともにエントリープラグで待機させています」
「かわいそうだけど仕方ないわね」
「ファースト、サードともにエントリープラグで待機させています」
「かわいそうだけど仕方ないわね」
NERVの作戦局は、暇の極である。
222 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/19(金) 20:55:39 ID:???
「冬月・・・」
「冬月・・・」
碇ゲンドウが司令席に帰ってくる。
「碇、早かったな」
「委員会には作戦行動中と断った。老人の愚痴に耳を貸す暇はない」
「(嘘をつきおって・・・暇以外の何ものでもないだろう?)
委員会の焦りが伺えるな」
「ふ・・・問題ない」
「委員会には作戦行動中と断った。老人の愚痴に耳を貸す暇はない」
「(嘘をつきおって・・・暇以外の何ものでもないだろう?)
委員会の焦りが伺えるな」
「ふ・・・問題ない」
「使徒、強羅絶対防衛線に差し掛かりました」
「上空を飛行中のJA輸送機より連絡、これよりJAを降下するとのことです」
「上空を飛行中のJA輸送機より連絡、これよりJAを降下するとのことです」
主モニターには、ゆっくりと侵攻してくる第四使徒の姿が映っている。
NERVは第一種警戒態勢とはいえ、日重工に戦闘指揮を奪われている以上
傍観者に徹する事しか出来ない。
NERVは第一種警戒態勢とはいえ、日重工に戦闘指揮を奪われている以上
傍観者に徹する事しか出来ない。
「さぁて、ボロボロの農協ロボでどこまで戦えるか見ものだわ」
・・・だが、この一分後、ミサトはJAの姿に目をむくことになる。
230 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/21(日) 23:50:55 ID:???
ガシィィィィィィィィィィイイイイインっ!
ガシィィィィィィィィィィイイイイインっ!
着陸地点から数キロも離れていない管制室内に、彼ら自慢の”息子”の地響きが響き渡る。
「JA、降下完了しました!」
「損傷個所なし」「各接続部、駆動系、以上ありません」「主冷却装置作動開始」
「リアクター起動開始」「熱量103で安定、全動力伝達!」
「損傷個所なし」「各接続部、駆動系、以上ありません」「主冷却装置作動開始」
「リアクター起動開始」「熱量103で安定、全動力伝達!」
「JA、起動!!システム、オールグリーンですっ!」
いくら実戦投入可能な機体だろうと、ジェットアローンが戦場にたつのは、まだ二度目だ。
いささか不安があったものの、とりあえず正常に起動したことに、時田は胸をなでおろす。
いささか不安があったものの、とりあえず正常に起動したことに、時田は胸をなでおろす。
「よし、続いて高機動モードへ移行する!給水チューブを接続しろ!」
ジェットアローン後部の冷却水タンクに、補助冷却装置から伸びている冷却チューブが取り付けられる。
「エア抜き完了、補助冷却装置、稼動開始します」「二次冷却水の流量、順調に上昇中」
「システムは高機動モードへ」「ポンプの圧力、最大」
「システムは高機動モードへ」「ポンプの圧力、最大」
スクリーンに映し出されるJAからは大量の水蒸気が噴出され始めていた。
「リアクター稼動、臨界突破!ジェットアローン高機動モードへ!」
231 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/22(月) 00:19:02 ID:???
管制室にいる誰もが息を呑む。
管制室にいる誰もが息を呑む。
「・・・システム、エラーなし! ・・・高機動モードに移行完了しました!」
瞬間、制御管制室内に男たちの歓声が響き渡る。
システムモニターを食い入るように見つめていた時田も顔に笑みがやどる。
システムモニターを食い入るように見つめていた時田も顔に笑みがやどる。
「よし、なんとかうまくいったな。では・・・」
マイクを握る手に力がこもる。
「JA歩行、全速前身っ!敵使徒の背後をとれっ!」
マイクを握る手に力がこもる。
「JA歩行、全速前身っ!敵使徒の背後をとれっ!」
ガシンッ――ガシンッ――ガシンッ――ガシンッ――
使徒を倒すため、再び、箱根の地を踏みしめるJA。
父親から命を受けた彼は全力で走り出す。その姿は前回とは比べ物にならない。
人が走っているようだとは行かないまでも、前回のそれよりはるかに躍動感あふれるJAの動き。
疾走するJAの姿は、管制室内の日重工職員に留まらず、戦自の兵士をも感動させた。
皆が夢にまで見ていた理想の動き、それを今目のあたりにしたのだ。無理もない。
父親から命を受けた彼は全力で走り出す。その姿は前回とは比べ物にならない。
人が走っているようだとは行かないまでも、前回のそれよりはるかに躍動感あふれるJAの動き。
疾走するJAの姿は、管制室内の日重工職員に留まらず、戦自の兵士をも感動させた。
皆が夢にまで見ていた理想の動き、それを今目のあたりにしたのだ。無理もない。
232 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/05/22(月) 00:21:30 ID:???
ガシンッ――ガシンッ――ガシンッ――ガシンッ――
ガシンッ――ガシンッ――ガシンッ――ガシンッ――
「ま、まもなく使徒と接触します」
JAの光学センサー、すなわち視覚部分をモニターしていた職員が声を発する。
と、今までJAを見つめていた職員たちは、はじかれたように自分の仕事に戻る。
と、今までJAを見つめていた職員たちは、はじかれたように自分の仕事に戻る。
「熱量185から上昇、イエローです!」「脚部アブソーバ全開!」
「ろ過装置、五番と七番を予備に切り替えます!」「超音波センサー、敵の位置を補足!」
「ろ過装置、五番と七番を予備に切り替えます!」「超音波センサー、敵の位置を補足!」
いくつかの計器が警告を示すランプをともらせているが、まだ前回に比べれば余裕もある。
マップスクリーンでは、使徒の輝点とJAの輝点が重なろうとしていた。
マップスクリーンでは、使徒の輝点とJAの輝点が重なろうとしていた。
「使徒と接触します!」
「JA、速度を落とせ!敵の尾をつかむんだ!」
「JA、速度を落とせ!敵の尾をつかむんだ!」
――戦いは、まだ始まったばかりである。