328 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/03(土) 00:45:59 ID:???
―― 一方で・・・
―― 一方で・・・
雨の降りしきる第3新東京市、その郊外の日重工第ニ研究所。
かつてはJAのためのケージビルだけだったここは、この数週間で大きく様変わりしていた。
二度にわたる使徒襲来、そしてその撃破。
第三使徒殲滅によってその必要性を認められたJAは、第三使徒戦後、
日本政府から予算がおり、より大規模な施設へ改築された。
そして、・・・。
かつてはJAのためのケージビルだけだったここは、この数週間で大きく様変わりしていた。
二度にわたる使徒襲来、そしてその撃破。
第三使徒殲滅によってその必要性を認められたJAは、第三使徒戦後、
日本政府から予算がおり、より大規模な施設へ改築された。
そして、・・・。
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時は先週にさかのぼる。
第二研究所内、第一会議室。
各部署の管理職を務める人間が、時田の来室を待ちかねていた。
時は先週にさかのぼる。
第二研究所内、第一会議室。
各部署の管理職を務める人間が、時田の来室を待ちかねていた。
バタンっ
ドアが開き、時田が入ってきたと同時に職員は彼に詰め寄る。
「主任!一体どういうことなんですか!」「指揮権を日本政府経由でNERVへ返上って!」
「ジェットアローンは勝利したじゃないですか!」「政府だって我々の必要性を知っているんでしょう!」
「ジェットアローンは勝利したじゃないですか!」「政府だって我々の必要性を知っているんでしょう!」
様々な声が飛ぶが、その内容は一律、数時間前より流れ始めた噂――日重工は、国連並びにNERVへ
指揮権を返上したらしい、というもの――であった。
指揮権を返上したらしい、というもの――であった。
「皆、まず、落ち着いてほしい」
彼の声にしぶしぶ席に戻る職員達。
そのまま彼の言葉を待つ。
そのまま彼の言葉を待つ。
「これから話す内容は、館内放送を通じて全職員にも通達する。
何か質問があっても、話終えるまで待っていてくれ。」
何か質問があっても、話終えるまで待っていてくれ。」
329 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/03(土) 00:48:12 ID:???
「聞いている職員もいるようだが、我々日重工は、本日を正午を持って、
正体不明の敵生体、通称「使徒」の迎撃作戦の全指揮権を、日本政府経由で、
NERVに返上することになった」
「聞いている職員もいるようだが、我々日重工は、本日を正午を持って、
正体不明の敵生体、通称「使徒」の迎撃作戦の全指揮権を、日本政府経由で、
NERVに返上することになった」
噂で聞いていたとはいえ、真実を改めて聞きうなだれる職員達。
「突然で申し訳ないが、これは日本政府、内務省からの要請なんだ。
事実上、我々には抗議する権利はない」
事実上、我々には抗議する権利はない」
誰もが、失望していた。自分達のジェットアローンは確かに勝利したはずだったのだ。
国にしても、特別予算を組んでくれた第三使徒戦後の扱いとは、ひとく差がある。
国にしても、特別予算を組んでくれた第三使徒戦後の扱いとは、ひとく差がある。
「さらに、国連経由でNERVから、我々日重工へ、我々のジェットアローンを、
使徒戦の第二迎撃体制へと組み込みたいとの要請があった」
使徒戦の第二迎撃体制へと組み込みたいとの要請があった」
大きく動揺する職員達。まさか、NERVは自分達の息子を奪う気なのか?
「そして、私の独断で申し訳ないが・・・その要請を今日、正式に受理した」
さらに動揺の広がる職員達。自分達の信じていた時田が、彼らのの不安を的中させたのだ。
彼らの怒りが頂点に達する。
彼らの怒りが頂点に達する。
「主任一体どういうつもりなんですか!俺達のJAを売るつもりなんですか!」
立ち上がった一人の職員が、時田に向かって叫ぶ。
それに誘発されてか、続々と立ち上がり怒鳴り始める職員たち。
それに誘発されてか、続々と立ち上がり怒鳴り始める職員たち。
「JAは我々の息子だといったのは主任、あなたですよっ!」
「自分の息子を捨てるんですか!」「あなたは我々の努力を裏切るつもりなんですか!」
「自分の息子を捨てるんですか!」「あなたは我々の努力を裏切るつもりなんですか!」
館内放送のスイッチは入ったままだ。怒号は館内全てに響き渡る。
330 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/03(土) 01:00:18 ID:???
時田は下を向こうとする。が、思い直して正面を見つめる。
時田は下を向こうとする。が、思い直して正面を見つめる。
「まだだ、もう少し私の話しを聞いて欲しい、頼む」
彼の声には、いつもの熱意が含まれている――それに気づいた職員達は
彼の言葉のとおり、そのまま椅子に座り時田から次の言葉がつむがれるのを待つ。
彼の言葉のとおり、そのまま椅子に座り時田から次の言葉がつむがれるのを待つ。
「今後、使徒戦は、国連軍による第一次迎撃、戦略自衛隊とJAによる第二次迎撃体制、そして、
いずれの作戦も失敗し絶対防衛線を使徒に突破された場合、
NERVの決戦兵器、エヴァンゲリオンが最終迎撃にあたることになる」
いずれの作戦も失敗し絶対防衛線を使徒に突破された場合、
NERVの決戦兵器、エヴァンゲリオンが最終迎撃にあたることになる」
戦略自衛隊までもが迎撃体制に組み込まれている。
日本政府は何を考えているのか?職員たちに新たな不安が広がる。
日本政府は何を考えているのか?職員たちに新たな不安が広がる。
「そして、我々、日重工は第二次迎撃体制において、戦術指揮権を担当する事になる。
一連の戦略指揮権はもちろんNERVだが」
一連の戦略指揮権はもちろんNERVだが」
時田の言っている事が飲み込めない職員達。
「分かりやすく言うと、我々は戦闘における現地での指揮権はそのまま継続、ということだ。
まぁ、その、NERVは私達の息子を扱うことなど、・・・・・とてもじゃないができそうにないしな」
まぁ、その、NERVは私達の息子を扱うことなど、・・・・・とてもじゃないができそうにないしな」
そういってにやりと微笑む時田。意味を理解する職員達。
「じ、じゃぁ指揮権返還というのはかたちだけ・・・?」
「・・・そのとおりだな」
「・・・そのとおりだな」
黙ってうなずく時田。
まさかの事態。つまり、NERVは事実上ジェットアローンを認めた、ということ。
そうなれば、状況は違ってくる。職員達の顔に満面の笑みが浮かび始める。
まさかの事態。つまり、NERVは事実上ジェットアローンを認めた、ということ。
そうなれば、状況は違ってくる。職員達の顔に満面の笑みが浮かび始める。
331 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/03(土) 01:14:33 ID:???
「まだ続きはあるんだ。
この指揮権の委託は、NERVの副司令冬月教授・・・いや、今は教授じゃないんだが、
名前を聞いた事もある人もいると思う・・・とにかく冬月さんの意見だ」
「まだ続きはあるんだ。
この指揮権の委託は、NERVの副司令冬月教授・・・いや、今は教授じゃないんだが、
名前を聞いた事もある人もいると思う・・・とにかく冬月さんの意見だ」
冬月教授・・・かつて京都大学で形而上生物学の権威として世界に名を知らしめた天才の一人。
セカンドインパクト後に、その表舞台から姿を消し、NERVの副司令となっていた人物。
そして、NERVで唯一、ジェットアローンの存在を否定しなかった人物。
セカンドインパクト後に、その表舞台から姿を消し、NERVの副司令となっていた人物。
そして、NERVで唯一、ジェットアローンの存在を否定しなかった人物。
「そして、冬月副司令からさらに、我々との技術者の相互交換の申し出を受けた。
つまり、技術面での提携、というわけだ」
つまり、技術面での提携、というわけだ」
まさか、という顔が一同に現れる。そう、まさか・・・
「当然、現在日重工に在籍している、戦自の技術研究部とも情報交換を行うことになる。
もちろん、三者の各々の極秘事項の保持は認められているが、まぁ協力体制には変わりない」
もちろん、三者の各々の極秘事項の保持は認められているが、まぁ協力体制には変わりない」
誰もが予想し得なかった事態。
NERV、日重工、そして戦自技研の三つ巴の関係が、まさかの協力体制。
NERV、日重工、そして戦自技研の三つ巴の関係が、まさかの協力体制。
「さらに、NERV指揮下になったことで国連から我々にもJA開発推進予算が組まれることも
本日付で決定された」
本日付で決定された」
もはや開いた口がふさがらない職員達を尻目に、子供っぽい笑みを浮かべながら話を続ける時田。
「今後、ジェットアローンと日重工は、ここ第3新東京市を拠点とし、JA二号機の開発もここで行う。
将来的には、国連軍、NERVとの共同軍事作戦の展開も予定されている」
将来的には、国連軍、NERVとの共同軍事作戦の展開も予定されている」
NERVとの共同作戦、それは、つまりエヴァとジェットアローンとの共同作戦・・・
332 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/03(土) 01:30:02 ID:???
「いいか、皆、NERVの一連の姿勢は、・・・私達をライバルと認めたということに他ならない。
これは、日重工とNERV、エヴァとジェットアローンの勝負なんだ」
「いいか、皆、NERVの一連の姿勢は、・・・私達をライバルと認めたということに他ならない。
これは、日重工とNERV、エヴァとジェットアローンの勝負なんだ」
NERVに、エヴァには遥かに及ばないと言われたジェットアローン。
それが、今、彼らにはジェットアローンが脅威として見えているという事実。
情報交換によるアドバンテージの解消、純粋な技術力の勝負。
それが、今、彼らにはジェットアローンが脅威として見えているという事実。
情報交換によるアドバンテージの解消、純粋な技術力の勝負。
「だがしかし!勘違いしてはいけない!俺達の目標は世界を守ることだ!」
時田の声が響く。いつの間にか、「我々」が「私達」となり「俺達」へと変わっている。
もはや時田の、いや彼らの熱はとまらない。
もはや時田の、いや彼らの熱はとまらない。
「・・・これからが真の戦いだ・・・!皆・・・これからも、俺に協力してくれ・・・・」
時田が頭を下げようとする。が、その前に職員達に囲まれる。
「主任っ!」「ライバルだぜっ!ライバル!」「JAもついにここまできましたね!」
「次の使徒も俺達の息子でやっつけてやりましょうよ!」「もう時田主任に一生ついていくぜ!」
「こうなったら三徹でも四徹でもいくらでもやってやりゃぁ!」「絶対に世界を守るんだ!」
「次の使徒も俺達の息子でやっつけてやりましょうよ!」「もう時田主任に一生ついていくぜ!」
「こうなったら三徹でも四徹でもいくらでもやってやりゃぁ!」「絶対に世界を守るんだ!」
(まるで、子供だな――いや、前にもこんなことがあった・・・)
時田の記憶がフラッシュバックする。
そう、たしか、あれは――第三使徒線直後、戦闘報告会議の帰り、開発部に立ち寄ったとき。
そう、たしか、あれは――第三使徒線直後、戦闘報告会議の帰り、開発部に立ち寄ったとき。
(俺達は・・・家族なんだよな、きっと。
・・・ジェットアローンという絆でつながった、家族・・・)
館内放送により全館に伝わったこの模様は、そのまま全職員のお祭り騒ぎへとつながった。
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