396 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/08(木) 20:59:07 ID:???
突然のことに、日重工はちょっとしたパニックに襲われていた。
ほとんど、いや全職員がJA武装披露の様子をモニターで見ており、自分の配置を離れていたからである。
突然のことに、日重工はちょっとしたパニックに襲われていた。
ほとんど、いや全職員がJA武装披露の様子をモニターで見ており、自分の配置を離れていたからである。
「いったいどういうことだっ?」
「はいっ、たった今、国連軍より連絡、太平洋沖で、第3新東京市に向かう未確認飛行物体の接近を感知したとのことです!」
「みんな、自分の配置に戻れ!」
「はいっ、たった今、国連軍より連絡、太平洋沖で、第3新東京市に向かう未確認飛行物体の接近を感知したとのことです!」
「みんな、自分の配置に戻れ!」
鳴り響く警報の下、先ほどの恍惚感は一瞬で吹っ飛び、あわただしくJA出動準備に入る日重工の面々。
「装備はどうしますかっ?」
「何言ってる!当然、このまま出動させるぞ!何のための武装なんだ!」
「分かってますよ、主任!確認しただけです!」
「何言ってる!当然、このまま出動させるぞ!何のための武装なんだ!」
「分かってますよ、主任!確認しただけです!」
多くの指示の放送が飛ぶ中、時田と加藤は急いで中央管制ルームへ向かう。
「予想上陸時間は28分後!」「戦略自衛隊より連絡、航空隊の出動準備完了まであと13分!」
「国連軍が迎撃を開始した模様!」「状況をサブモニターにまわせ!」
「国連軍が迎撃を開始した模様!」「状況をサブモニターにまわせ!」
さらにあわただしさを増していく。今回の使徒の移動スピードは第四使徒と同等、いやそれ以上に高速だ。
本来であれば強羅にある管制所で光学補足しながら戦闘指揮をとるのだが、今回は強羅まで移動する時間も惜しい。
本来であれば強羅にある管制所で光学補足しながら戦闘指揮をとるのだが、今回は強羅まで移動する時間も惜しい。
「強羅管制所へは行かずにここで指揮をとる。各種モニタリングデータのリアルタイム表示を頼む!」
「了解。強羅からのデータをそのまま写せ!回線の帯域を目いっぱい空けるんだ!」
「了解。強羅からのデータをそのまま写せ!回線の帯域を目いっぱい空けるんだ!」
加藤がすばやく通信網の再構築を行っていく。
また、国連軍からのデータをもとに敵侵攻予測進路が画面にトレースされていく。
また、国連軍からのデータをもとに敵侵攻予測進路が画面にトレースされていく。
「おそらく敵は飛行状態のまま芦ノ湖上空を突っ切ってくるつもりですね」
「そうか。となると、配置は必然的に第3新東京市の対岸になるな」
「そうか。となると、配置は必然的に第3新東京市の対岸になるな」
397 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/08(木) 21:15:17 ID:???
「国連軍より映像きました。メインスクリーンに出します!」
「国連軍より映像きました。メインスクリーンに出します!」
一瞬画面が白くなった後、映し出される第五使徒の姿。
「なんだあれは・・・」
「もはや生命体の域をこえた形状だな・・・」
「もはや生命体の域をこえた形状だな・・・」
ブルーの正八面体からなる、まるで何かの結晶のような姿の第五使徒。
第三、第四と、まだ理解できる範囲であった使徒の形状も、今回は誰もが想像できない姿を模していた。
第三、第四と、まだ理解できる範囲であった使徒の形状も、今回は誰もが想像できない姿を模していた。
「ジェットアローン空輸準備完了!」
「よし、芦ノ湖をはさんで第3新東京市対岸に降下、ハンマーとシールドを装備した状態で戦闘準備だ!
それから、補助冷却装置は湖岸に設置、芦ノ湖からの給水ができるよう準備しておけ!」
「よし、芦ノ湖をはさんで第3新東京市対岸に降下、ハンマーとシールドを装備した状態で戦闘準備だ!
それから、補助冷却装置は湖岸に設置、芦ノ湖からの給水ができるよう準備しておけ!」
スクリーンには、大量の誘導ミサイルの攻撃を受けながら、傷一つつかないままに
悠然と飛行を続ける第五使徒の姿があった。
悠然と飛行を続ける第五使徒の姿があった。
「ATフィールドの展開なしでもダメージゼロ・・・今回も、敵の表面の強度は異様に丈夫そうですね」
「そうだな。だが、それ以上に攻撃手段が分からない。加藤はどう思う?」
「確かに・・・今までのと違って攻撃に使えそうな器官を有してませんね」
「そうだな。だが、それ以上に攻撃手段が分からない。加藤はどう思う?」
「確かに・・・今までのと違って攻撃に使えそうな器官を有してませんね」
第三使徒はその形状から攻撃手段を割り出す事が出来た。
もちろん予期していなかったビームによる攻撃もうけたが、それでも一発しか放っていない。
第四使徒も、戦自の足止めで、エネルギー収束させた鞭で攻撃することが判明した経緯がある。
もちろん予期していなかったビームによる攻撃もうけたが、それでも一発しか放っていない。
第四使徒も、戦自の足止めで、エネルギー収束させた鞭で攻撃することが判明した経緯がある。
「戦自に連絡。なるべく敵の攻撃手段を明らかにしたいから協力を頼むといっておいてくれ」
あと数分で敵は上陸し、そこからは日重工と戦略自衛隊による第二次迎撃体制の管轄である。
大量の誘導爆撃にも一切反撃せず、ただ淡々と飛行を続ける第五使徒。
全く攻撃手段の予測できない敵に、時田は漠然と不安を感じていた。
大量の誘導爆撃にも一切反撃せず、ただ淡々と飛行を続ける第五使徒。
全く攻撃手段の予測できない敵に、時田は漠然と不安を感じていた。
422 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/12(月) 18:26:02 ID:???
『目標、上陸しました!依然、第3新東京市を目指し侵攻中!』
『国連軍航空隊は撤退!まもなく日重工と戦自による第二次迎撃体制に移行します』
『目標、上陸しました!依然、第3新東京市を目指し侵攻中!』
『国連軍航空隊は撤退!まもなく日重工と戦自による第二次迎撃体制に移行します』
使徒接近に伴い、NERV本部もあわただしさを増している。
国連軍のこれでもかという誘導爆撃も全く効果がなく、それ以上に、まるで生命とは思えない形状が、
いつもは余裕なNERV職員たちの心に、僅かばかりの警鐘を鳴らしていた。
国連軍のこれでもかという誘導爆撃も全く効果がなく、それ以上に、まるで生命とは思えない形状が、
いつもは余裕なNERV職員たちの心に、僅かばかりの警鐘を鳴らしていた。
「エヴァは?」
「零号機、初号機、ともに発進準備は出来ています!」
「零号機、初号機、ともに発進準備は出来ています!」
ミサトも前々回、前回の汚名を晴らそうと気合が入っている。・・・だが。
「敵の侵攻速度が思いのほか速いわね・・・日向くん、対空迎撃システム起動、第3新東京市を戦闘形態に移行して。
それから、エヴァ零号機を西のD-19、初号機を南のA-6に配置してちょうだい」
「え?しかし、まだ・・・」
「なんか嫌な予感がするのよ・・・」
「・・・分かりました。 迎撃システム起動、対空迎撃戦用意!」
それから、エヴァ零号機を西のD-19、初号機を南のA-6に配置してちょうだい」
「え?しかし、まだ・・・」
「なんか嫌な予感がするのよ・・・」
「・・・分かりました。 迎撃システム起動、対空迎撃戦用意!」
のちに、図らずもミサトの女の勘の鋭さは証明されることとなる。
「碇、今度もジェットアローンが勝つと思うかね?」
「・・・彼らには負けてもらわなければ困る」
「そうか?俺としては、チルドレン達を戦場に出すのには、どうも納得がいかないがね」
「・・・冬月・・・そんな良心など役に立たん。我々の目標は、あくまで使徒の殲滅だ」
「人類補完計画もな」
「そうだ。誰もがなしえなかった神への道だ。多少の犠牲が出る事はやむを得ん」
「それが、自分の息子でもか?」
「・・・問題ない・・・」
「・・・彼らには負けてもらわなければ困る」
「そうか?俺としては、チルドレン達を戦場に出すのには、どうも納得がいかないがね」
「・・・冬月・・・そんな良心など役に立たん。我々の目標は、あくまで使徒の殲滅だ」
「人類補完計画もな」
「そうだ。誰もがなしえなかった神への道だ。多少の犠牲が出る事はやむを得ん」
「それが、自分の息子でもか?」
「・・・問題ない・・・」
423 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/12(月) 18:47:05 ID:???
『日重工より連絡!ジェットアローンを旧箱根エリアに降下、迎撃はそこで行うとのことです!』
『戦略自衛隊の航空部隊、まもなく目標と接触します!』
『日重工より連絡!ジェットアローンを旧箱根エリアに降下、迎撃はそこで行うとのことです!』
『戦略自衛隊の航空部隊、まもなく目標と接触します!』
いよいよ日重工と戦自による第二次迎撃体制が展開される。
いまだに敵が攻撃手段を見せない事に、ミサトも、時田同様、不安を感じていた。
いまだに敵が攻撃手段を見せない事に、ミサトも、時田同様、不安を感じていた。
「いい?各種センサーは全部使徒を捕らえるようにして。もしかしたら、攻撃の兆候ぐらいはあるかもしれないわ」
「了解!」
「了解!」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「・・・」
「・・・」
「・・・あのさ・・・綾波は、・・・怖くないの?」
「何が?」
「・・・つまり、その・・・エヴァが出てるってことは・・・は、初めての実戦になるかもしれないじゃないか・・・」
「・・・そうね」
「・・・だから、さ、その、・・・戦うのが、怖くないの?」
「どうして?」
「・・・だってさ、死ぬかもしれないじゃないか」
「・・・死ぬ?」
「そうだよ・・・前の戦闘で、自衛隊の人が何人も亡くなったって・・・ミサトさんが言ってるの、聞いちゃったんだ・・・」
「・・・あなたは、死ぬのが怖いの?」
「当たり前じゃないか・・・僕は、まだ死にたくないよ・・・」
「そう・・・」
「これで、・・・死ぬのかな・・・」
「・・・貴方は、死なないわ。・・・私が、守るもの」
「・・・え?」
ピピっ 『レイ、シンジくん、まもなくJAが使徒との戦闘に入るわ。一応、起動に入って』
「は、はい!」「了解」
「・・・」
「・・・」
「・・・あのさ・・・綾波は、・・・怖くないの?」
「何が?」
「・・・つまり、その・・・エヴァが出てるってことは・・・は、初めての実戦になるかもしれないじゃないか・・・」
「・・・そうね」
「・・・だから、さ、その、・・・戦うのが、怖くないの?」
「どうして?」
「・・・だってさ、死ぬかもしれないじゃないか」
「・・・死ぬ?」
「そうだよ・・・前の戦闘で、自衛隊の人が何人も亡くなったって・・・ミサトさんが言ってるの、聞いちゃったんだ・・・」
「・・・あなたは、死ぬのが怖いの?」
「当たり前じゃないか・・・僕は、まだ死にたくないよ・・・」
「そう・・・」
「これで、・・・死ぬのかな・・・」
「・・・貴方は、死なないわ。・・・私が、守るもの」
「・・・え?」
ピピっ 『レイ、シンジくん、まもなくJAが使徒との戦闘に入るわ。一応、起動に入って』
「は、はい!」「了解」
綾波レイ、14歳。彼女もまた、過酷な運命を背負わされた存在である。
424 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/12(月) 19:36:55 ID:???
「JA、降下完了!」「「損傷個所なし!」「各駆動系、異常なし!」
「主冷却装置、正常に稼動!」「リアクター起動開始」「熱量102で安定、全動力伝達!」
「JA、降下完了!」「「損傷個所なし!」「各駆動系、異常なし!」
「主冷却装置、正常に稼動!」「リアクター起動開始」「熱量102で安定、全動力伝達!」
すでに起動段階の部分では、制御OSや各種パーツの調整も相まって、ほとんど問題は起こらない。
「続いて高機動モードへ移行します!」「給水チューブ接続、補助冷却装置、稼動開始!」
「システム、高機動モードへ」「リアクター、通常臨界突破!」「高機動モード、移行完了!」
「よし、そのまま微速前進、旧箱根町付近で待機だ」
「システム、高機動モードへ」「リアクター、通常臨界突破!」「高機動モード、移行完了!」
「よし、そのまま微速前進、旧箱根町付近で待機だ」
高機動モードは、実験、実戦を総計しても、まだ7回しか使っていないのだ。
無事にシステムのモード移行が出来た事に、職員達がほっと息をつく。
無事にシステムのモード移行が出来た事に、職員達がほっと息をつく。
「目標は?」
「戦略自衛隊が現在攻撃中ですが、いまだ反応らしい反応はありません!」
「とんと無視、か。JA戦闘可能域到達までにはどれぐらいかかる?」
「進行速度が可変しているのでなんともいえませんが、早ければ、あと五分後には・・・」
「戦略自衛隊が現在攻撃中ですが、いまだ反応らしい反応はありません!」
「とんと無視、か。JA戦闘可能域到達までにはどれぐらいかかる?」
「進行速度が可変しているのでなんともいえませんが、早ければ、あと五分後には・・・」
ただでさえ、使徒迎撃の作戦立案には頭を悩ませている時田だが、今回の使徒はさらに、敵の攻撃手段がまったく分からない。
予想できれば何とかなるものの、あの形態ではどのような攻撃を繰り出すのか、人間の経験論では図れるものではない。
しかも、相手は空中を飛行するタイプだ。今のところ、中空での機敏な動きは見せていないものの、それがないとも言い切れない。
前回、第四使徒も空中を滑空するタイプであったが、あくまで移動手段として、低空飛行していただけだった。
が、今回の使徒は、明らかに空中移動を基本としているようだし、見る限り着陸する可能性が極めて低い。
予想できれば何とかなるものの、あの形態ではどのような攻撃を繰り出すのか、人間の経験論では図れるものではない。
しかも、相手は空中を飛行するタイプだ。今のところ、中空での機敏な動きは見せていないものの、それがないとも言い切れない。
前回、第四使徒も空中を滑空するタイプであったが、あくまで移動手段として、低空飛行していただけだった。
が、今回の使徒は、明らかに空中移動を基本としているようだし、見る限り着陸する可能性が極めて低い。
――おそらく、初の地対空迎撃戦。
スクリーンを見つめる時田の額に、大粒の汗が浮かぶ。
425 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/12(月) 19:52:44 ID:???
「ちくしょう、なんでだよっ!」
「ちくしょう、なんでだよっ!」
VTOL航空部隊が展開し使徒を牽制しつつ、大型航空機が誘導爆撃を打ち込む。
何度も繰り返された行為だ。
何度も繰り返された行為だ。
「・・・ATフィールドは?」
「相転移空間確認できず。おそらく発生していません」
「N2を使いたいが、政府からは許可が下りねぇし・・・ちくしょう、手詰まりだな」
「相転移空間確認できず。おそらく発生していません」
「N2を使いたいが、政府からは許可が下りねぇし・・・ちくしょう、手詰まりだな」
もとより物理攻撃で使徒にダメージを与えられるなどとは考えていない。
が、敷島にとって、無力なことほど腹立たしい事はなかった。
敵は、自分達の必死の攻撃に対し、ATフィールドを展開せずとも傷一つ負わず、反撃もしない。
ほとんど無視といってもいい状態だ。
が、敷島にとって、無力なことほど腹立たしい事はなかった。
敵は、自分達の必死の攻撃に対し、ATフィールドを展開せずとも傷一つ負わず、反撃もしない。
ほとんど無視といってもいい状態だ。
「ジェットアローンは?」
「すでに戦闘準備が完了、旧箱根町周辺で待機している模様です」
「すでに戦闘準備が完了、旧箱根町周辺で待機している模様です」
時田からの通信で、敵の攻撃手段を明らかにして欲しいという要請があった。
自分は使徒にダメージを与えるどころか、それに応えることすら出来ずにいる。
セカンドインパクトの世で、各国の固有軍や国連軍をおさえ、世界最強の軍と謳われた戦略自衛隊。
だがしかし、今、使徒という正体不明の敵を目の前にして、現実、無力なのだ。
指揮する立場として、なんとか旧友の要望にこたえようと敷島は知恵をめぐらしていた。
自分は使徒にダメージを与えるどころか、それに応えることすら出来ずにいる。
セカンドインパクトの世で、各国の固有軍や国連軍をおさえ、世界最強の軍と謳われた戦略自衛隊。
だがしかし、今、使徒という正体不明の敵を目の前にして、現実、無力なのだ。
指揮する立場として、なんとか旧友の要望にこたえようと敷島は知恵をめぐらしていた。
「特科隊と航空隊に連絡!15秒後、第1小隊が誘導爆撃を行ったら、残りの隊はそのレーザー誘導を追尾、
同一点に連続攻撃をしかけろ!うまくいけば、一点突破できるかもしれねぇ」
「分かりましたっ!」
同一点に連続攻撃をしかけろ!うまくいけば、一点突破できるかもしれねぇ」
「分かりましたっ!」
数秒後には隅々まで伝わる指示。部下達の士気は悪くない。が、敵がどうにも強すぎる。
「連続攻撃、開始しました!」
大きな爆音に、世界は揺れていた。
426 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/12(月) 20:00:28 ID:???
「・・・戦略自衛隊より連絡、迎撃に失敗。撤退するとのことです」
「・・・戦略自衛隊より連絡、迎撃に失敗。撤退するとのことです」
敷島の尽力空しく、敵は反撃することなく自らの進路に沿って悠然と飛び去った。
「・・・そうか」
おそらく今頃悔しさに唇をかみ締めているであろう旧友の事を思う。
今回は敵の反撃がないために死傷者が出ていないのが、せめてもの救いだ。
今回は敵の反撃がないために死傷者が出ていないのが、せめてもの救いだ。
「使徒をJAの光学センサーがとらえました!」
「よし、メインスクリーンの映像に出すよう切り替えろ!」
「よし、メインスクリーンの映像に出すよう切り替えろ!」
遥か遠く、先ほどの爆撃の熱で揺らいでいる中心に、不気味に青く光る使徒の姿があった。
「接触まであと一分」
今回の迎撃地点はすぐ山が目の前にある。前のように走りこんで敵との間合いをつめるわけにもいかない。
敵が空中を移動している以上、ここで我慢強く待機するほかない。
時田は、使徒がJAの攻撃範囲内に入った瞬間に、ハンマーによる打撃を試みようと考えていた。
敵が空中を移動している以上、ここで我慢強く待機するほかない。
時田は、使徒がJAの攻撃範囲内に入った瞬間に、ハンマーによる打撃を試みようと考えていた。
が。
「も、目標に高エネルギー反応!爆発的に上昇していきます!」
「なにっ!」
「なにっ!」
――まさか、という一瞬の想いが頭をよぎる。
そして、次の瞬間。
――ドッカァァァァァァァァァアアン!
427 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/12(月) 20:49:09 ID:???
一瞬スクリーンが白に染まり、そして続く巨大な倒壊音。
メインスクリーンの映像が切れたことで、大パニックになる管制室内。
一瞬スクリーンが白に染まり、そして続く巨大な倒壊音。
メインスクリーンの映像が切れたことで、大パニックになる管制室内。
「何が起きたぁっ!?」
時田が叫ぶ。
「て、敵のビーム攻撃ですっ!胸部に直撃した模様っ!!!」
「胸部最終装甲版、完全に融解!」「リアクター圧力、急激に上昇っ!安全装置作動しません!」
「胸部最終装甲版、完全に融解!」「リアクター圧力、急激に上昇っ!安全装置作動しません!」
まさに予想だにしていなかった事態。超長距離からの高エネルギービームによる攻撃である。
ありえないほどの運動エネルギーと熱を持ったビームが、JAの胸部を直撃、彼を後方に吹っ飛ばしたのである。
ありえないほどの運動エネルギーと熱を持ったビームが、JAの胸部を直撃、彼を後方に吹っ飛ばしたのである。
「敵のデータを解析するんだっ!第二射があるかもしれん!それまでにJAを立ち上がらせろ!」
今までの二度の使徒戦で、冷静になることの重要さを認識していた時田は、すかさず管制室内に指示を飛ばす。
だが、モニタを見つめる職員から次々と悲鳴が上がる。
だが、モニタを見つめる職員から次々と悲鳴が上がる。
「ダメです!下半身の電力伝達回路に異常発生!油圧ポンプの圧力も上がりません!」
「リアクターの強制停止システムが作動開始しました!あと10秒でリアクター完全に停止します!このままでは立ち上がれません!」
「制御システム、応答ありません!衝撃によって何らかのエラーが発生した模様!」
「リアクターの強制停止システムが作動開始しました!あと10秒でリアクター完全に停止します!このままでは立ち上がれません!」
「制御システム、応答ありません!衝撃によって何らかのエラーが発生した模様!」
と、メインスクリーンに、駒ケ岳光学観測所からの映像が届く。
映し出された映像には、芦ノ湖の波打ち際に大の字で寝そべっているジェットアローンがいた。
映し出された映像には、芦ノ湖の波打ち際に大の字で寝そべっているジェットアローンがいた。
「目標、予想進路に沿って再侵攻開始しました!第二射の兆候ありません!」
倒れてもがいているジェットアローンの上を悠々と飛行していく第五使徒。
―― ジェットアローン、 初の敗北であった。
432 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/13(火) 01:35:43 ID:???
「日重工より連絡!JAによる使徒迎撃作戦失敗!指揮権をNERVに移譲とのことです!」
「日重工より連絡!JAによる使徒迎撃作戦失敗!指揮権をNERVに移譲とのことです!」
NERVのモニタにも、大の字に倒れているJAの姿が映っている。
胸部の装甲は見事なまでに溶けきり、煙を上げている。
胸部の装甲は見事なまでに溶けきり、煙を上げている。
「総員、第一種戦闘配置。対空迎撃戦用意」
ゲンドウが低い声で命令を出す。が。
「ちょっと待ってください、司令」
ミサトが口を挟む。
「なんだね、葛城一尉」
「目標は、のうきょ・・・いえ、JAに対し、先制攻撃を放ちました。これは今までの使徒に見られない特徴です。
また、目標の攻撃能力は、現段階でのエヴァの防御能力を遥かに上回っているものと推測されます。
以上の理由より、エヴァ二体での目標の殲滅は困難を極めると予想されます」
「目標は、のうきょ・・・いえ、JAに対し、先制攻撃を放ちました。これは今までの使徒に見られない特徴です。
また、目標の攻撃能力は、現段階でのエヴァの防御能力を遥かに上回っているものと推測されます。
以上の理由より、エヴァ二体での目標の殲滅は困難を極めると予想されます」
早口でまくし立てるミサト。それを黙ってゲンドウは聞いている。
「そこで、可及的速やかにエヴァ両機を回収、18番リニアレールよりR-18からJAの救出に向かわせ、
JAの修復ののち、エヴァ両機を含む計三体での作戦行動による撃破が最も確実と考えます」
JAの修復ののち、エヴァ両機を含む計三体での作戦行動による撃破が最も確実と考えます」
ミサトの意外な意見に、リツコや冬月に限らず、日向や青葉をも顔を見合わせる。
「・・・使徒殲滅の作戦担当は、葛城君、君だ。全ての戦術、戦略指揮権は君にある。好きにしたまえ」
「ありがとうございますっ」
「ありがとうございますっ」
433 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/13(火) 01:39:12 ID:???
いつもとは調子の違うミサトに、発令所内の誰もが口をあけて彼女を見つめる。
迎撃を放棄してJAを救出??そんなバカな。
しかし、当のミサトは、身を翻すと、すぐに日向へ指示を出し始める。
いつもとは調子の違うミサトに、発令所内の誰もが口をあけて彼女を見つめる。
迎撃を放棄してJAを救出??そんなバカな。
しかし、当のミサトは、身を翻すと、すぐに日向へ指示を出し始める。
「いい、とりあえず弾幕はって。あと、18番の用意お願いね」
「え、あ、はい、分かりました」
「え、あ、はい、分かりました」
あまりの展開についていけなかった日向だが、ようやくミサトの目を見て、事態を飲み込み始める。
「シンジくん、レイ?作戦中止、二人とも一回戻って。回収地点はシンジくんは2番ルート、レイは67番ルートを使って」
「え?戦わないんですか?」
「えぇ、とにかく説明してる暇はないの。急いで向かって」
「「了解」」
「え?戦わないんですか?」
「えぇ、とにかく説明してる暇はないの。急いで向かって」
「「了解」」
こうしている間にも、使徒は芦ノ湖を通過し、まもなく第3新東京市に侵入しようとしていた。
「目標、第3新東京市南ブロックに侵入しました!」
「零号機回収完了!そのままR-18に連絡します」
「零号機回収完了!そのままR-18に連絡します」
先にレイ操る零号機が回収される。シンジの操る初号機も2番回収地点まであとわずかだ。
だが、そのとき。
だが、そのとき。
「目標内部に高エネルギー反応っ!!!先ほどと同じ現象ですっ!!!」
「まずい!シンジくん、急いで!」
「まずい!シンジくん、急いで!」
滑り込むようにして回収ゲートに乗る初号機。
「2番!緊急収容!」
434 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/06/13(火) 02:00:35 ID:???
一気に初号機の影が地下へ消えていく。だが、その直後。
一気に初号機の影が地下へ消えていく。だが、その直後。
―― バシュゥゥゥゥゥゥゥン!
ついさっきまで初号機のいた場所は、第五使徒のビーム砲の直撃により跡形もなく蒸発していた。