ランカ | うわぁ~。 |
ランシェ | あなたはまさかそのために彼らを犠牲にしようと言うの? |
グレイス | 何がいけないの? |
私のインプラントネットワーク理論と、バジュラのゼロタイムフォールド通信を組み合わせれば、世界を変えられるのよ。 | |
ランシェ | でも、うっ……。 |
グレイス | 分からないわランシェ。そんな病気になってまでなぜあれをかばうの? |
ランシェ | ……。 |
ランカ | ママたちどうしたのかな? |
ブレラ | ケンカはだめって、いつも僕たちに言ってるくせにさ。 |
ランカ | あれ?えっと、あなた……。 |
ブレラ | 何言ってるんだよ、ランカ。 |
ランカ | ……。 |
ブレラ | そろそろ到着だ、ランカ。 |
ランカ | う、うん。 |
(今の……) |
ブレラ | ここが……。 |
ランカ | バジュラの星。 |
ライオン(オープニング)
議員A | また、アイランドを二つも放棄か。 |
議員B | これでフロンティアの環境平衡曲線は、自己復元不可能領域に突入する。 |
議員C | 短期的に見れば効率的です。 |
議員A | 姑息な延命手段だよ!所詮。 |
議員D | 閣下、やはり新統合政府に救援を求めるべきではないのですか? |
議員E | 旅をあきらめてギブアップしろと? |
議員A | それも一つの選択だな。S.M.Sが脱走した件も噂になり始めてる。沈む船から逃げるネズミのようだと。 |
一同 | ……。 |
レオン | 旅はまもなく終わるでしょう。 |
議員A | では……。 |
レオン | あきらめるのではなく、最良の、いいえ、それ以上のゴールをもって。 |
アルト | (もろいもんだよな。狭くて、息苦しくて、絶対逃げられない檻みたいだと思ってたのに) |
マルヤマ | 隊長、一つ質問があるんですが、いいですか? |
アルト | 言ってみろ。 |
マルヤマ | 隊長がシェリルとつきあってるってのはマジすか? |
アルト | い、いきなり何を!? |
マルヤマ | 噂ですよぉ。S.M.Sの脱走に加わらなかったのも、そのせいだって。 |
ジュン | うんうん。 |
アルト | プライベートな質問は却下だ。バルキリー乗りのジンクスを知らないのか? |
作戦中に女のことで人をからかうと、いきなり撃墜されるという……。 | |
マルヤマ | うわあぁーっ! |
アルト | マルヤマ!? |
マルヤマ | シェリルさん……。 |
アルト | え? |
アルト | なっ! |
ジュン | これはこれは。 |
マルヤマ | おぉ~~!隊長、あとでサインもらってください! |
アルト | はぁ……。 |
アナウンス | フロンティア行政府よりお知らせします。現在、船団内の酸素分圧が低下しています。 |
外出の際は必ず酸素マスクを携行してください。 |
アルト | 大変だったんだぞ、ごまかすの。 |
シェリル | へぇ~、ごまかさなきゃいけないんだ、私とのこと。 |
アルト | …別にそういう意味じゃ。 |
シェリル | いっ! たぁ… |
アルト | だから手出すなっつったのに。 |
シェリル | ……。だって悔しいじゃない。 |
私だってその…女の子なんだし? |
アルト | いいから座ってろよ。 |
今のご時世じゃ滅多に手に入らない新鮮な食材なんだぞ。 |
シェリル | うわぁ!とっと。 |
シェリル | ねぇ、乾杯しましょ、乾杯。 |
アルト | 何にだよ。 |
シェリル | 何でもいいじゃない。とにかく乾杯したいの。 |
アルト | はいはい、わかりました。 |
シェリル | ウフフ、かんぱぁい! |
アルト | かんぱ~い! |
シェリル | ン、ン、ン……。 |
アルト | おいおい一気かよ。 |
シェリル | こういうの、ずっと夢だったの。 |
アルト | え? |
シェリル | あ…ただの独り言。さぁ食べましょ。いっただっきまーす。 ぁむ |
やだ美味しい! もう、アルトのくせに生意気。 | |
アルト | おいおい、いくら酒じゃないと言っても、そいつは…。 |
シェリル | ぷはぁ |
アルト | って、予想通りかよ。 |
シェリル | うるはい!アルトのくせに。 |
アルト | あ~あ。 |
シェリル | ん。 |
アルト | あ? |
シェリル | ん~。 |
アルト | たく、しょうがねぇな。 |
シェリル | 帰っちゃだめよ。ずっと側にいなさい。 |
アルト | あぁ。 |
シェリル | んん……。 |
アルト | 急にはしゃいだり甘えたり、らしくないぜ。 |
無理もない、か……。 |
ランカ | ありがとね、ブレラさん。私のわがままにつきあって、こんな所まで。 |
ブレラ | 記憶のないサイボーグにとって命令は絶対。それを遂行することが存在意義だった。 |
だがお前の歌を聴いたとき、俺の中に何かがあふれた。戦闘マシンであるはずの俺に。 | |
これはその礼だ。だから気にするな。 | |
ランカ | ブレラさん。 |
もう一度聞いてもいい?あの曲のこと。 | |
ブレラ | あれは記憶だ。 |
ランカ | え? |
ブレラ | 空っぽな俺に残されていた唯一の。 |
ランカ | それって……。 |
!? | |
ブレラ | バジュラの防衛部隊だ。 |
本当に大丈夫なのか? | |
ランカ | うん。きっと届くと思う。これまでだってやれたんだから。 |
パイロット | これは!? |
モニカ | ランカさんの歌です。 |
ジェフリー | ここからが正念場だな。 |
オズマ | はい。 |
キャシー | モニカ、こっちにも回して。観測を手伝うわ。 |
オズマ | 頼むぞ。連中は必ず動くはずだ。 |
ランカ | (懐かしいな。そう、よくこうやって一緒に) |
ブレラさん、このハーモニカ。 | |
ブレラ | お守りだ。お前の願いが届くように。 |
ランカ | !? |
ブレラ | っち! |
ランカ | キャァァーーーー! |
アルト | アルト早乙女中尉、入ります。 |
レオン | 呼び立ててすまなかったね。 |
アルト | いえ。 |
ビルラー | 僕が呼んでもらったんだよ、アルト君。ビックリしたかな?う~んそういう顔してるよ。 |
レオン | 先ほど、探査機が微弱なフォールド波を捕らえてね、ランカ君の歌だと判明したよ。 |
アルト | ……。 |
ビルラー | そう、ついにわかったんだよ、バジュラ本星の位置がね。 |
アルト | それをなぜ自分に。 |
ビルラー | 期待しているからねぇ。これから我々が行わなければならない戦いで、心置きなく働いてもらいたいんだ。 |
アルト | 戦うのはかまいません。自分はそのために残りました。ですが、その前に伺っておきたいことがあります。 |
レオン | 何だね? |
アルト | 戦いの目的は、フォールドクォーツを手に入れるためですか? |
ビルラー | ほほう、なるほど。彼らは星間物質や恒星から、フォールドクォーツの原料を集めて廻る修正があるからね。 |
レオン | だが、我々は何よりもまずは、生き延びなければならないんだ。 |
そしてバジュラを殲滅しなければならない、人類の未来のために。 | |
アルト | 人類の未来? |
レオン | バジュラは人間を抹殺しようとしているんだよ、ランカ君を足掛かりにしてね。 |
アルト | !? |
ブレラ | 所詮は相容れない生き物だということか。 |
ランカ | そんなことない、だって……。 |
ブレラ | 口を閉じていろ、来るぞ! |
レオン | 我々は脳で思考する。そして相手がどれだけ異様だろうと、脳を持つ生物ならば、少なくとも行動原理は理解できる。 |
だがバジュラは違う。ようやく判明したんだよ。脳を持たない彼らが、なぜ生物として成立しているのか。 | |
アルト | !? |
レオン | 彼らは頂点、より正確に言えば、フォールド波を放つ腸内細菌のネットワークで情報伝達を行う。 |
アルト | ! |
レオン | そしてそのネットワークは、バジュラの群れ全体にも拡大され、一個体が一つのシナプスのような位置づけになっている。 |
そう、バジュラには個体や自己といった概念はない。一つの群れ、一つの種族で一個の生物のように振る舞うのさ。 | |
ビルラー | これなら言語、いや、そもそも他者とのコミュニケーションすら不要だ。 |
フォールド波によるネットワーク生物。それが、バジュラなのだよ。 | |
アルト | でもランカは、あいつの歌はバジュラに通じていたはずだ。 |
レオン | ならば、なぜそれが可能なのか考えてみたことはあるのかね?あの細菌は決して我々の腸に生着しない。 |
それどころか脳を冒し、死をもたらすというのに。 |
アルト | !! |
レオン | 例外があるとすれば、生まれる以前、母体内で感染し、バジュラとの共存を選んだ。 |
また、バジュラ側も彼女を利用しようとした。そうとしか考えられない。だから、バジュラはランカ君を狙うのだよ。 | |
彼女は人類とバジュラをつなぎ、そして、我々を滅ぼす尖兵となるだろう。 | |
アルト | !! |
ブレラ | 心配するな。俺の命に代えても、お前は絶対に守る。 |
ランカ | でも、でもそれじゃ駄目なの。なんとか止めたいって、戦わないで済むようにしたいって、だから来たのに! |
ブレラ | 見つかったか。 |
ランカ | あい君。 |
ブレラ | 待て、ランカ! |
ランカ | お願いあい君、みんなに伝えて。私、あなたたちに伝えたいことが……あっ。キャァァーーッ! |
ブレラ | ランカ! |
ランカ | お兄ちゃん……。お兄ちゃーーん! |
ブレラ | ランカーーッ! |
ブレラ | どけぇ!くそぉぉっ! |
グレイス | よくやったわ、ブレラ。 |
ブレラ | !? |
グレイス | トレーサーを切ったくらいじゃ、あなたと私のつながりは切れない。 |
ブレラ | 大佐…。 |
グレイス | バジュラには感づかれたみたいね。ほんとムカつく蟲ども。妹さんとの逃避行は楽しかった? |
ブレラ | 妹だと!?ランカが!? |
グレイス | そうよ、でももう魔法の時間はおしまい。12時の鐘が鳴るわ。 |
ブレラ | うわぁ、あっ…ぁぁぁぁっ……。 |
ルカ | 対症療法とはいえ、進行を遅らせる効果はあるんです。なのに……。 |
シェリル | 何よ今更、薬を飲むのをやめた分、私の力は強まってるんでしょ? |
人を道具として使うつもりなら、とことん冷酷になりなさい。 | |
ルカ | シェリルさん……。 |
シェリル | 優しいのは罪よ。それが同情だってわかっていても。 甘えたくなるから… |
矢三郎 | アルトさん。 |
アルト | あんなに小さかったんだな、親父。 |
矢三郎 | そう見えるとすれば、あなたが変わったんでしょう。これが最後のお願いです。 |
戻ってください。今なら先生もあなたの話を聞いてくれるはずです。 | |
アルト | できるわけないだろ。俺は軍のパイロットなんだ。俺たちが戦わなきゃ、みんな死んじまう。 |
矢三郎 | それが本当に、あなたの望んだ道なのですか?戦って殺すことが。 |
アルト | ……。 |
矢三郎 | アルトさん。私にはあなたが成り行きで戦っているとしか見えない。 |
あなたは敵がいてもいなくてもパイロットになったのですか? |
矢三郎 | あなたは根っからの役者です。その時々で望まれた役を演じてしまう。演じられてしまう。 |
もう一度よく考えてください。あなたの望み、あなたがなぜ、何を求めているのかを。 |
アルト | ランカ、俺は……。 |
クラン | アルト。 |
ランカ | (ごめんね、お兄ちゃん) |
みんな、私のせいで……。 |
グレイス | 待っていたわ、このときを。聞こえるわ、リトルクイーン。これで私たちは……深淵への扉が開く。 |
クラン | 私のところにも通達があった、ランカのこと。お前はどうするつもりだ? |
アルト | 遠いな。ずいぶん遠くに来た気がするよ。S.M.Sに入ったのはついこの前みたいなもんなのにな。 |
クラン | ……。 |
アルト | クラン大尉、あなたはどうしてS.M.Sに? |
クラン | 軍人になるのは一族の伝統だ。だから兵士になるのに疑問はなかった。そういうものだと思ってたからな。 |
アルト | 俺もそう思ってた。俺は役者になるもんだと。でも、空に憧れ、家から出た。パイロット目指して。 |
そして俺はあいつに出会った。あいつを守るためにS.M.Sに入ることを選んだ。 | |
戦うことを、守ることを、それからずっと。 | |
クラン | いきなり昔話か。 |
アルト | 確かに、俺は今まで逃げてたのかもしれない。いろんなものに気付かないフリをして。 |
アルト | でも、それも終わりだ。こんなちっぽけで、ほんの少しのバランスで壊れちまう世界。 |
でも、みんなここで生きてる。生き続けたいと願ってる。 | |
だから、ランカがバジュラの道具にされるなら、あいつの歌が俺達を滅ぼそうとするなら、俺はランカを殺す。 | |
クラン | アルト…それが、お前の愛か… |
シェリル | 分かっていたことよ。でも今だけ、もう少しだけ…… |
オペレータ | まだ光学分析段階ですが、Aクラスの居住可能惑星と推定されます。距離は30光年。 |
現在の備蓄エネルギーを全て吐き出せば跳躍可能です。 | |
レオン | よし、全船に通達。これよりマクロスフロンティアは、バジュラの母星に向け緊急フォールドを行う。 |
アナウンス | フロンティア行政府よりお知らせします。まもなく30光年の短距離フォールドが行われます。 |
クラン | ついに来たな。 |
アルト | あぁ。 |
レオン | あの星こそ、我らの約束の地だ。聖なる戦いを始めよう。 |
ノーザンクロス(エンディング)
予告 | 激突する人類とバジュラ。アルトたちの旅はついに最終局面を迎える。 |
次回「ラスト・フロンティア」決戦の歌、銀河に響け。 |