ナレーション | 銀河播種計画、絶滅に瀕した人類が選択した宇宙移民プロジェクト。 |
超大型船団からプライベートの小型船まで、多くの船が新天地を目指し宇宙を旅している。 | |
それは長空間航法フォールドのもたらした銀河の大航海時代だった。 |
アルト | 俺をバルキリーに乗せろ! |
オズマ | このお!ノリでほざいてんじゃねぇ!ガキが!! |
シェリル | 見つけたわ。早乙女アルト。 |
トライアングラー(オープニング)
ランカ | キャアーーーーー! |
オズマ | やらせん! |
アルト | &ランカ& | シェリル | あっ! |
オズマ | うわっ!! |
オズマ | ……デルタ1。艦の至近でバジュラを押さえた!援護射撃を要請する! |
カナリア | カナリアだ。いつでも出られる。発進許可を。 |
ジェフリー | モニカ君。 |
モニカ | 混乱しているみたいで、大統領府からの発進許可が出ません。 |
ジェフリー | んん……。 |
オズマ | くそ、無能な政治家どもめ! |
ミハエル&ルカ | 隊長! |
オズマ | ミシェル、ルカ。こっちの押さえにも限界がある。お前達でやれるか! |
ルカ | はい!って無茶ですよ、こんな。 |
ミハエル | やります。 |
ミハエル | !? |
アルト | ミハエル? |
ミハエル | あいつ…。くっ。 |
アルト | 当てやがった。くっ……。 |
オズマ | よくやったミシェル。 |
ミハエル | 当然のことをしたまでです、隊長。 |
オズマ | フ、後で一杯奢ってやるぜ。 |
オズマ | 何!?んあああーー!! |
ルカ | 隊長! |
シェリル | キャァ!やめてよ。冗談じゃ…。 |
アルト | シェリル、こっちだ! |
アルト | だあああーー! |
シェリル | きゃあああ~~。 |
オズマ | ミシェル、ルカ。バジュラを追うぞ!……。 |
アナウンス | フロンティア行政府よりお知らせします。全艦に避難警報が発令されました。 |
市民の皆さんは速やかにシェルターに退避してください。 | |
一般人 | またかよ。 |
一般人 | どうなってんの。 |
シェリル | 何なのよ一体。 |
アルト | 知るかよ、クソ。 |
アルト | あいつにまた助けられるなんて。 |
アルト | ?離せよ。おい。 |
ランカ | ん。あ、ご、ごめんなさい。 |
あ、あれ?え、うそ。いやだ。どうして? | |
エイ。あれ?エイ!エイ、エイ、エイ! | |
アルト | いい加減に……。 |
ランカ | ……よーし。エーイ! |
ほら、大丈夫。 | |
シェリル | 怯えてる女の子の一人や二人俺が守ってやる、くらい言えないわけ? |
アルト | うるせーな!できる状況ならいくらでも言ってるよ!! |
シェリル | あっ…。 |
アルト | (けど、今の俺には……) |
シェリル | とっとと出ましょ。その方がお互いの精神衛生上よさそうだし。 |
アルト | 無理だ。ここは非常用の退避壕だ。ドーム内には通じてない。 |
シェリル | ちょっと、それって閉じ込められたってこと!? |
ランカ | エェ~!? |
ルカ | 隊長、軍の機体です。 |
ミハエル | 遅いんだよ、相変わらず。 |
アルト | は~。 |
シェリル | ったく、暑いわね。 |
アルト | & | シェリル | &ランカ | うわああーー! |
シェリル | いったー。何なのよもう。 |
ランカ | ん?シェリルさん!! |
シェリル | ん?……。 |
アルト | つー……。 |
シェリル | 私の生で見たのよ。そのくらいで安いと思いなさい。 |
アルト | ぬかせっ!だいたい、ステージとかでいろいろ見せてんだろ! |
シェリル | ……それとプライベートは別なの!いやらしい目で見ないでよ、この変態! |
アルト | 誰が変態だ!! |
シェリル | あんたよ。このイロガキ! |
アルト | 黙れ露出魔!! |
シェリル | なんですってえ! |
ランカ | あ、お、お腹空きませんか?私たまたますっごくおいしい点心を持ってるんです。娘々名物、まぐろ饅! |
アルト | & | シェリル | !? |
ランカ | や、やっぱり腹が減っては戦はできないっていうか、閉じ込められたらそのぉ、まぐろ饅…みたいな……その…。 |
シェリル | やっぱりかわいいわ、あなた。 |
ランカ | はぁーー。 |
キャシー | 外出するときは常に警備の者をとお願いしたはずです。 |
グレイス | いつも必ず仕事までには戻ってくるので。 |
キャシー | はぁ、大至急、彼女の現在地の特定を。 |
軍人 | ですが、オペレーターも手一杯のようで。 |
グレイス | あのよろしかったら、船内ネットワークの認証を貸して頂けませんか? |
キャシー | え?インプラント……。 |
グレイス | フロンティアでは違法でしたっけ?でも結構便利なんですよ。いろいろと。 |
アルト | 駄目だ。何度やっても復旧しない。 |
シェリル | 落ち着かないわね。自分の運命が人任せってのは。 |
ランカ | S.M.Sの人たち大丈夫かな…。 |
アルト | 知り合いがいるのか? |
ランカ | うん。お兄ちゃんが事務で働いてて、私もよく差し入れに。 |
アルト | S.M.Sか……。 |
シェリル | ねぇ。なんか空気悪くない? |
アルト | 皮肉ならもうやめろよ。 |
シェリル | 違うわよ。本当に息苦しいような。 |
アルト | & | シェリル | &ランカ うわああーー! |
アルト | くそ。循環系が停止してる。このままじゃ、あと15分ももたない。 |
シェリル | ちょっと、なんとかしなさいよ! |
アルト | 簡単に言うなよ。出来るんならとっくにやってるさ! |
ランカ | そんな……。 |
シェリル | 冗談じゃないわよ。 |
ランカ | え?あっ。 |
アルト | 馬鹿やめろ!外は真空だぞ!! |
シェリル | なら諦めて窒息するまで待てってぇの?そんなの御免よ。私は諦めない! |
シェリル | みんなは私を幸運だって言うわ。でも、それに見合う努力はしてきたつもりよ。 |
だから私はシェリル・ノームでいられるの!運命ってのはそうやって掴み取るもんなのよ! | |
グレイス | その通りです。 |
オズマ | 完了か……。 |
ルカ | はい。今回はフォールドで離脱したものもいないようです。 |
オズマ | ……血を流しすぎたか。 |
オズマ | 全機、帰還…せよ……。 |
ルカ | 隊長?隊長、応答してください、隊長! |
シェリル | いい?さっき見たことは忘れるのよ。 |
あんたがもしあの視覚データをネットに流したりしたら、社会的にも生物学的にも抹殺するわよ。 | |
そうね。でもただの記憶として、今夜一晩使うくらいは許してあげる。 | |
アルト | っ……。 |
シェリル | バーカ。んなわけないでしょ。 |
アルト | なにぃーー! |
シェリル | ねぇランカちゃん。 |
ランカ | あ、はい。 |
シェリル | あなた歌うのは好き? |
ランカ | は、はい! |
シェリル | なら素直になりなさい。チャンスは目の前にあるものよ。こんなサービス滅多にしないんだから。 |
アルト | ずいぶんとごゆっくりの救助だったな。 |
キャシー | それについては謝罪します。循環系が停止しているのが分かっていればもっと……。 |
アルト | 言い訳はいいから、とっとと出ろよ。 |
キャシー | はい。こちら完了しました。 |
キャシー | え?オズマ・リー少佐が負傷? |
ランカ | えぇ!?あっ。 |
キャシー | オズマ……。 |
ランカ | いやああ!!お兄ちゃん……。 |
キャシー | あなた、まさか……。 |
ランカ | お兄ちゃん。お兄ちゃーん。なんで怪我してるの? |
ランカ | パイロットはやめたって、もう絶対私を一人に、危ないことしないって言ってたのに!! |
アルト | ランカ……。 |
ランカ | 死んじゃだめ。だめだよお兄ちゃん。どうして?どうしてそんなことするの? |
私あのことちゃんと内緒にしてるよ。だから、いや、やああああーー!! | |
アルト | おい! |
オズマ | そうか。こんな事にならないように、仕事のことは隠してたってのに。 |
ルカ | 隊長。 |
アルト | 何なんだ、あいつ。 |
オズマ | ランカは親しい人間の死や怪我に対して、異常なまでに反応するんだ。 |
カナリア | ディソシエイティブ・アムネジア(Dissociative amnesia)、解離性健忘。 |
外傷後ストレス障害等をきっかけに、特定の体験の追想が不可能になる。 | |
だが、その体験を想起させ得る要因によって、強い不快感や恐怖感を引き起こす。 | |
オズマ | つまりは一種の記憶障害さ。 |
カナリア | ランカはもう回復した。かまわないか?家に帰したが。 |
オズマ | いつも世話をかけるな、カナリア。 |
カナリア | 気にするな。チームだ。 |
アルト | 特定の体験って? |
オズマ | ランカは昔、肉親をすべて失っているんだ。親兄弟すべてをな。 |
アルト | でも、あんたは。 |
オズマ | 俺はランカの本当の兄じゃない。11年前、あの子の家族を守れなかった、無能なパイロットさ。 |
オズマ | ランカはそのことを忘れている。あの忌まわしき事件を。 |
アルト | だったら、なんでパイロットなんかやってんだ。そのせいであの子は! |
オズマ | 守るためだ。 |
アルト | 守る?だからって、何もかも隠して、それが守るって事なのかよ!! |
オズマ | ならどうしろってんだ、あぁ!! |
お前の家族はバジュラに引き裂かれて死んだと、そのせいでお前は心に傷を負ったと、そう言えってのか? | |
ルカ | 隊長、傷口が。 |
カナリア | ミシェル、ナースコール。 |
ミハエル | 了解。 |
カナリア | ルカ、見て。そっちのモニター。 |
ルカ | はい。 |
アルト | 俺なら全てを知っていたい。他人に自分の運命を任すのは真っ平だ!教えろよ。 |
あいつらは、バジュラってのは一体何なんだ! | |
オズマ | 聞いたらもう戻れないぞ。 |
アルト | 構わない。 |
オズマ | 24時間の猶予をやる。もう一度よく考えろ。自分が何をしたいのか、何のために、何をかけて戦うのかをな。 |
ルカ | すみませんアルト先輩、今まで黙ってて。S.M.Sに所属していることは、保安のために秘密にって。 |
でもこれで学校だけじゃなく、部隊でも一緒に飛べるんですね。 | |
アルト | そうなれば今度はお前が先輩か。 |
ルカ | やめてくださいよ、そんな。 |
ミハエル | あぁ、やめておけ。 |
ミハエル | アルト、お前また逃げてくるのか? |
アルト | 逃げる?誰がだよ! |
ミハエル | 見損なうなよ。これまで丸一年以上、お前と飛んでるんだ。今のままじゃ、いづれ自分が死ぬか、誰かを殺す。 |
俺は巻き添えになるつもりは無いぜ。一応友人として忠告しておく。 | |
ルカ | ミシェル先輩。 |
キャシー | 接触者に関する報告書です。 |
レオン | !?この子は…。 |
キャシー | どうかしたの?レオン…えと、三島首席補佐官。 |
レオン | レオンでいいよ。勤務時間なら30秒前に終わっている。 |
キャシー | え? |
レオン | もうプライベートの時間だ。 |
キャシー | あ……だめよレオン。お父様がもし……。 |
レオン | 大統領閣下はもうお帰りだよ。 |
キャシー | でも…。レオン……。 |
テレビ | うわぁ、ゴージャスですね。 |
テレビ | こちらの石、市場で見かけることは滅多に無い貴重なお品なんです。 |
テレビ | え今回はご覧の皆さんにだけ特別にイヤリングもセットでお付けいたしします。 |
テレビ | え?イヤリングまで?本当にいいんですか? |
テレビ | もちろんです。ほら、このようにセットで付けていただくと、より一層引き立ちますでしょ? |
テレビ | 本当ですね。これならドレスにもとっても合いそう。 |
シェリル | イヤリング!まったく。これでまたあいつに会わないといけなくなっちゃったわ。 |
ニュース | 一連の船団襲撃事件の戦死者の合同葬儀が行われる予定です。新統合軍幕僚本部によれば、戦闘による死者は28名。 |
葬儀に先立ち、グラス大統領は遺族に対して十分な補償を約束するとして……。 |
ミハエル | (アルト。お前また逃げてくるのか、親父さんや家から) |
アルト | 違う。俺は、違う!! |
ランカ | 『アーイモ、アーイモ……』 |
アルト | ん? |
アルト | ランカ。 |
ランカ | あ、アルト君。 |
アルト | いい歌だったな。 |
ランカ | 私ね、子供の頃の事なんにも覚えてないんだ。けどこの歌だけ覚えてるの。私のたった一つの思い出なんだ。 |
アルト | そっか。 |
ランカ | それでね、時々この丘に歌いに来るの。ここなら誰も聴いてないから。 |
アルト | 聴いてない?それでいいのか? |
ランカ | え?うん。今まではそう思ってたんだけど。 |
素敵だよねシェリルさん。凄く羨ましい。 | |
私あそこに閉じ込められたとき凄く怖かった。このまま誰にも知られないで、何もできないで死んじゃうんだって。 | |
そしたらね、私はここにいるよって、それを出来るだけ沢山の人に伝えられたらなって、そう思うようになって……。 | |
アルト | 無理だな。 |
ランカ | え?そうだよね私なんか。 |
アルト | そうやって、出来たらとか自分なんかって言ってる内は、絶対に! |
ランカ | あー。意地悪だね、アルト君。 |
アルト | よく言われるよ。 |
ランカ | 私みーんなに伝えたいの。だから聴いてくれる?私の歌。 |
アルト | ッフ、好きにしろよ。 |
ランカ | ありがとう、アルト君。 |
アルト | そうさ。俺は……。 |
新統合軍 | 盟友たちに敬礼! |
ジェフリー | 彼は勇敢な兵士だった。恐れず、怯まず、その命を賭して、譲れぬ者のために戦い、力尽きた。 |
だがこれは終わりではない。彼の肉体は、やがて我が肉となり血となり、大気となって我らの命を燃やすだろう。 | |
だから今は眠れ、我が友よ。さらばだ。また会おう。 | |
オズマ | 敬礼! |
オズマ | 民間軍事プロバイダーである俺達の死は戦死じゃない。事故死扱いだ。あそこに墓碑が建てられることも無い。 |
船団を挙げての葬儀もなく、身内にすら詳細な事実が伝えられることはない。 | |
アルト | 御誂え向きさ。俺は俺一人の力で生きる。死ぬ時も一人だ。それでいい。 |
オズマ | 明朝、0800までに宿舎に入れ。 |
アルト | Yes sir! |
オズマ | フ。それは明日からだ。 |
ルカ | えへ。せ~んぱい。 |
あ、先輩、宿舎までの道って分かります? | |
ミハエル | ったく、馬鹿野郎が。こうなったらトコトンしごいてやるからな。 |
ランカ | ひゃ、114番ランカ・リーです。よろしくお願いします。 |
面接官 | ではランカさん、君がこのミス・マクロスフロンティアに志望した理由を教えてもらえますか? |
シェリル | 素直になることにしたんだ。 |
ランカ | はい。 |
ダイアモンド クレバス(エンディング)
予告 | 新たな世界に踏み込んだアルトとランカ。立ちはだかる試練は生まれいずる試練なのか。 |
次回「ミス・マクロス」古の歌、銀河に響け。 |