ランシェ・メイ | どうしたの? |
ランカ | ママがいないの。 |
ブレラ | お仕事が大変だから、みんな帰してくれないんだよ。 |
ランシェ・メイ | 寂しいの? |
ランカ | うん。 |
ランシェ・メイ | そう。ならいい方法があるわ。 |
ランカ | ママ…。 |
キャスター | さあ、いよいよこの日がやってまいりました! |
我らが希望の歌姫ランカ・リーさんの活躍で、第7次超長距離フォールドは大成功を収め、 | |
我が船団はついにあのバジュラたちから解放されました。 | |
その成功を記念し、全会一致で議決された祝日が今日、 | |
我々を自由に導いたあの曲「アイモ」にちなんで名づけられたアイモ記念日なのです。 | |
そしてここブロードウェイでは、グラス大統領とランカさんのパレードが行われ、道行く人々に、あ…。 | |
一般人 | ランカちゃんは? |
一般人 | おやじはいらねぇよ。 |
大統領 | ランカ君はどうなってる。 |
ボディーガード | 現在問い合わせ中です。 |
大統領 | わざわざ彼女の学校を会場にしたんだ。午後のコンサートには必ず間に合わせろ。いいな。 |
ランカ | ごめんなさい。大統領さん。 |
ランカ | あいく~ん。あいく~ん。 |
ブレラ | なッ! |
ランカ | あっははははは。ふふふふふ… |
ブレラ | 何がおかしい。 |
ランカ | ご、ごめんね。だってブレラさん…。あはははは。 |
矢三郎 | (心配でしたら、早乙女のお屋敷へ御出でください) |
アルト | くっ…。 |
矢三郎 | お待ちしていましたよ、アルトさん。 |
アルト | うわあ~っ! |
矢三郎 | 戻ってくれて、うれしいですよ。 |
アルト | 戻ってきたわけじゃない。 |
矢三郎 | 同じことです。理由はどうあれ、2度と近づかずと誓ったこのお屋敷の敷居を跨いだのですから。 |
アルト | くっ…。 |
ミーナ | なぁ~~~っ!なんでこんな日にワッチの当番なのよぉ! |
ボビー | しょうがないでしょぉ。勢いでフォールドして、予定宙域よりだいぶ手前にとんじゃったんだから。 |
モニカ | 未踏星域の探索も重要任務よ。 |
ミーナ | もぉ~。 |
ラム | いいなキャシー中尉は、しっかり休暇とってさ。 |
店主 | おつりですよ。 |
キャシー | どうも。 |
キャシー | は~い。スーパーチリチリドッグでいいのよねぇ。あーん。 |
オズマ | おいっ。 |
キャシー | 11時、ビルの角。 |
オズマ | …。たく、こいつめぇ。あーん。ん、おー辛い! |
キャシー | えーホントに? |
オズマ | ハハ。 |
ランカ | あはははは。 |
ブレラ | いつまで笑っている。 |
ランカ | ごめんなさい。だって驚いたブレラさんなんて初めて見たから。あはは…。 |
ランカ | ありがとう。 |
ブレラ | ん? |
ランカ | ありがとう、私のわがまま聞いてくれて。 |
ブレラ | 言ったはずだ。俺はお前を守ると。その言葉を違えるつもりはない。 |
ブレラ | どうした。 |
ランカ | う、ううん。なんでもない。行こう。 |
ミハエル | おい、クラン。無理がないか、この姿勢。 |
クラン | うるさい!調べ物の代わりに私の言うことを聞く約束だろ! |
ミハエル | はぁ。しょうがないなぁ。午後のスタントまでだぜ。 |
クラン | 分かってる。 |
で、あいつは行ったのか? | |
ミハエル | ようやく重い腰をあげたよ。 |
クラン | 優柔不断なやつだ。 |
ミハエル | まったく。 |
クラン | でもま、あちこち手を出す不実なやつよりマシだがな。 |
ミハエル | …ますますもって同感だね。 |
矢三郎 | こちらですよ。 |
アルト | 母さん…。 |
シェリル | アルト。 |
何しに来たの。 | |
アルト | な、その…。お前、体の具合は。 |
シェリル | 見ての通りピンピンしてるわよ。で、私になんの用? |
アルト | …。 |
ランカ・リーライブ in 美星学園「アイモ記念日」制定記念特別公演 |
ルカ | え?ランカさんが自分で探しに?大丈夫なんですか? |
ナナセ | ブレラさんがいてくれるから。それにランカさん最近元気なくて、少しくらい羽目を外した方がいいかなって。 |
ルカ | あい君、ランカさんのペットでしたよね。じゃあ僕、探すの協力しますよ。 |
ナナセ | え?わぁ、ありがとう。 |
ルカ | 詳しい特徴、教えてください。 |
ナナセ | えっとね…。 |
同級生 | ルカ、手伝ってくれ。 |
ルカ | はぁ。ごめんなさい。ナナセさん、またあとで。 |
ナナセ | うん。 |
ルカ | はーい、今行きます。 |
シェリル | 私、もう歌わない。歌手をやめるわ。 |
アルト | えぇ!? |
シェリル | 歌じゃ、もうやりたい事だいたいやっちゃったし、飽きちゃったのよ。 |
だから今度は違うことしてみようかなって。 | |
アルト | 待てよ。お前、言ってたよな。自分は幸運だけであそこまで行ったんじゃない。 |
努力して、努力してがんばって、自分で運命をつかみ取ったんだって。俺もランカも、お前があの時…。 | |
シェリル | ウソよ。あれは嘘。あの頃は私が私自身に嘘をついてたの。 |
アルト | くっ。ふざけんなよっ!お前は銀河の妖精、シェリル・ノームじゃなかったのかよ! |
シェリル | そうよ!私はシェリル・ノームよ。歌おうが歌わまいが、私は…。 |
アルト | …。今日美星でランカのライブがある。スタントで俺も飛ぶ。必ず来い。 |
レオン | これが? |
グレイス | ええ。フォールドクォーツの波動特性を解析してつくった新型弾。 |
あのディメンションイーターを汎用・小型化したものよ。 | |
レオン | MDイーター。これなら、またしばらくバジュラに通用しそうですね。量産は。 |
グレイス | 時間はかかるわ。でもこれは、あくまでオマケよ。 |
やっと長年の謎が解けたの。ランシェにもドクター・マオにも解けなかったクイーンの謎が。 | |
レオン | では、例の計画にGOサインを出してもかまいませんね。 |
グレイス | ウフ。そのために今日の会場をセッティングしたくせに。 |
レオン | フフフフフ。これからが本当のお祭りですよ。 |
矢三郎 | 役者ですね、なかなか。 |
美代さま。アルトさんのお母様です。もともとお体が弱かったのですが、アルトさんが12の時に。 | |
思い出します。よくそこの縁側でアルトさんの髪を梳いておられて、睦まじい姿でしたよ。 | |
シェリル | 私を匿ったのは、アルトにその頃のことを思い出させて、もう一度歌舞伎の舞台に立たせるため? |
ならお生憎ね。私じゃ役に立たないわ。 | |
矢三郎 | 私はまだ希望を捨てていません。 |
舞台に立つこと、人前で芸を披露することは、甘美な、あまりにも甘美な毒です。 | |
ご見物たちの注目を集め、煽り、誘い、あの熱狂、あの興奮、全てを支配する全能感。 | |
一度経験したら、簡単に忘れられるものではありませんよ。それはあなたもよく分かっているでしょ? | |
シェリル | …。 |
オズマ | ここまでやる気だったとはな。 |
キャシー | 今まで集めた証拠と合わせれば、彼は破滅ね。 |
オズマ | いいんだな。 |
キャシー | 覚悟はできてるわ。 |
ランカ | やっぱりいないのかな。 |
ブレラ | その辺りで道草を食っているんだ。案ずるな。きっと帰ってくる。…す、すまん。痛かったか? |
ランカ | ううん。でも、やっぱり思ったとおりだね。ブレラさんって、なんかお兄ちゃんみたい。 |
もしかして妹とかいたりする? | |
ブレラ | さあ。俺は過去の記憶がない。肉親の有無も分からない。 |
ランカ | え?なら私と同じだね。私も昔のこと覚えてないんだ。 |
ブレラ | そんなお前がどうして歌うことを、歌手になろうとしたんだ? |
ランカ | それは…。歌が好き…だから。 |
ブレラ | 最近のお前は歌っていても楽しそうじゃない。 |
ランカ | …。 |
ブレラ | お前はなんのため、誰のために歌っている。 |
ランカ | (私、みんなに伝えたいの。だから聴いてくれる?私の歌) |
アルト | (好きにしろよ) |
ランカ | (私、みんなに伝えたいって、そう思ってた。ずっと思い込んでた。でも…、でも本当は…) |
確かめなくちゃっ! |
ミハエル | 行くぞ! |
アルト | おぉ! |
ミハエル | 今日は一段と凄いな、ランカちゃん。 |
アルト | あぁ。俺達もヘマできないな。 |
遅れるなよ、ルカ。 | |
ルカ | 分かってます。どれだけ一緒に飛んでると思ってるんです。 |
ミハエル | なら、一人でコソコソ動くなよ。俺達はチームなんだ。 |
ルカ | 先輩…。 |
アルト | アルト (見てろよ、シェリル) |
大統領 | おぉ! |
アルト | ミシェル! |
ミハエル | おーよ! |
ミハエル | 今だ、アルト! |
アルト | 行くぜーーっ! |
ランカ | (アルトくん。そっか、やっぱり私…) |
ランカ | みんな抱きしめて、銀河の果てまでー! |
シェリル | あの子…。 |
クラン | 逃げるな! |
ミハエル | で、どうだった、シェリルは。 |
アルト | ぴんぴんしてて拍子抜けさ。気まぐれも憎まれ口もいつも通り、つーかパワーアップしてたな。 |
ミハエル | 鈍いのもいい加減に罪だぜ。そろそろ答え出せよな。 |
アルト | …何がだよ。 |
ミハエル | とぼけんなよ。いくらお前でも、さすがに気付いてんだろ? |
この歌も、さっきの歌も、ランカちゃんがお前に向けて、お前のためだけに歌っているんだ。 | |
アルト | そんなこと…。 |
ミハエル | シェリルもだ。今あの子はとてもつらい状況にある。でもそれが分かった時、あの子は真っ先にお前のことを気にして…。 |
シェリル | (アルトには言わないで) |
ミハエル | …。 |
アルト | お前、何を知ってる。あいつに何が! |
ミハエル | …。 |
アルト | お前みたいな三股四股野郎に女のことで説教されるとはな。 |
ミハエル | 俺は臆病なんでね。人間なんざいつ死んじまうか分からない。特に俺達はパイロットだからな。 |
付き合うのは割り切った相手だけさ。本気になるのも、させるのも、おっかなくてな。でもお前は違うだろ。 | |
アルト | シェリル…。 |
ミハエル | あとは任せたぞ、アルト。 |
アルト | な、おいっ。 |
シェリル | アルト…。 |
ルカ | へぇー、これが…。 |
あぁ?船内にバジュラの幼生が、そんなバカな!? |
レオン | で、用件は何だったかな。 |
キャシー | レオン三島首席補佐官。あなたを特別背任、機密保持法違反、及び総攬準備罪の疑いで告発します。 |
オズマ | クーデターなんざ企んでいやがったとはなぁ。だがこれで貴様はジー・エンドだ。 |
レオン | 残念。少し遅かったね。 |
ミハエル | ナイスフォロー。 |
クラン | いいのか悪いのか、よく分からないけどな。 |
ミハエル | いいのさ、たぶん。みんな、誰かを好きでいたいんだ。 |
ランカ | はぁはぁはぁはぁ…。 |
(アルトくん、アルトくん、アルトくん。言うんだ、私。伝えなきゃ、私の気持ち!) |
アルト | あっ…。 |
ランカ | うそ…。 |
アルト | ランカ。 |
トライアングラー(エンディング)
予告 | バジュラに襲われるフロンティア。悲劇の幕が上がるとき、こぼれる涙は星屑となる。 |
次回「ダイアモンド・クレバス」鎮魂の歌、銀河に響け。 |