十六聖天外伝 失楽園の章 二十二話


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「フン、まだ戻ってこないだなんて、アナタの僕、やるじゃない」

吸血皇アルハザード・インペールメント事、串刺しメタルと
彼女の能力全てを合成させた、合成神獣が消えた血の空間を目をやり
その美しい銀色の髪をかきあげる

アンサンブル・カーテンコールにすべての能力を合成させ
現状、合成神獣が勝利し帰還するか、破壊されでもしない限り一切の能力が使えないはずの
ワンダーワールドであったが、その顔には余裕が浮かんでいた
それもそのはずである

満身創痍のアリスと、魔力を使い果たし、魂による強化無しでは身体能力は常人以下のデスメタル
片や、人体改造に加え、ジークフリードと特訓を繰り返し
並の剣豪や拳士では歯が立たないレベルの技量を誇っているワンダーワールドである

「力を無くし、従者を無くした貴女達に何が出来るというのかしら」

激しいボディーブローがデスメタルの肋骨に突き刺さり
そのまま彼女の軽い身体はゴロゴロと地面を転がった

「やっぱりね。この程度の攻撃で、あっさりと地面に這いつくばる
 能力にかまけるだけで、自身を鍛え上げようともしない
 そんな人間に私は負ける訳にはいかないのよ」

地面に倒れたデスメタルの頭を片腕で掴み、さらに投げ飛ばしながら
ワンダーワールドは言葉を続ける

「貴女の僕も薄情ね。能力を全て使った貴女を置いて戦いに行くなんて」

地に伏したデスメタルに止めを刺そべく、歩き出したワンダーワールドの耳に
クスクスという笑い声が聞こえる

「死を目前に気でも狂ったのかしら、ゴキブリさん?」
「…って言ったの」
「ゴキブリに人の言葉を喋れという方が無茶なんでしょうけど、聞こえないわ
 見苦しいから、もう死んじゃいなさい」

ワンダーワールドの拳が、デスメタルの頭蓋を貫いた

「…なに?」

頭蓋を貫いた…はずであった
頭蓋を貫くことなく、デスメタルの手によって止められていた
身体能力では常人を遥かに下回るデスメタルの手によって…

「まだそんな力が残っていたの?流石にしぶといのね、ゴキブリさん」

でもこれは避けれるかしら?という言葉を残し
ワンダーワールドの姿が景色に溶け込んだ
気配を殺し、世界と一つになると同時に、高速で移動する…
ジークフリードに学んだ技術の一つである
少なくとも、一切の能力を使えないデスメタルに避けれる攻撃ではない

だが、それすらアッサリ回避されたのだ

「…ッ」

「私は…小さい頃からこの眼のせいで色々嫌な目にあった…」
「この眼は力を与えると同時に、私の力を奪う」
「だから、私はこの眼を閉じる」
「ジョーカーは常に2枚ある」
「串刺しメタルには、こう言ったの。その化け物を足止めして、って」
「貴女はこの手で斃したいから」

眼を閉じたデスメタルの体が揺らぎ
ワンダーワールドの身体が、くの字に曲がり宙を舞う

金色の魔眼…。その凄まじい力により、肉体には常に負荷が与えられ
本来ならば日常生活もままならない。そんな負荷の中で少女は十数年生き続けていた
その目を閉じることによって、魔眼の負荷は消失し、抑えられていた力が解放されたのだ

「クリムゾンブロウの仇、ブラックパイソンの仇…今ここで」
「そんな…!眼で追えな」
「Schlag…(打撃)」
デスメタルの姿が消え、空中でワンダーワールドの身体が何度も跳ねた

「Aussterben!Ermorden!Kaltmachen!Umbringen!Zerfallen!」

デスメタルの憎悪のこもった声と、衝撃音だけが断続的に響き渡り
ピンボールのように、ワンダーワールドの体は跳ねまわった

「Strafe(制裁)」

―同時刻 晴海

『馬鹿な…先ほどまで、慌てふためいて…!』

そうか。全ては演技だったのか…。私の油断を誘うための…

「私は敗れたのですか」

バチバチと断線したケーブルが火花を上げている
ホクバツゼッタイオーはもう間もなく、爆発するのだろう
剥き出しになったコクピットから、自身を倒したハワワイガーの姿が見える

「これが私を倒したモノ、か…。この天才軍師である私が、他者に敗れるとは…」
(いいえ、他者ではありません)
「幻聴ですか。私もいよいよ迎えが来たと見えます」
(いいえ、幻聴でもありません。私は貴方のもう一つの可能性。貴方は私のもう一つの可能性)
「なるほど、そうか、そういう事でしたか。フ…フフフ…ハハハハハハ!やはり私を超えるものは何処にもおらず
 私を超えれるのは私だけ…そう、私だけなのです…ハハハハハハハ」

炎に包まれ、天に還るホクバツゼッタイオー
それはこの戦いの勝者が、十六聖天である事を告げていた

…さようなら、もう一人の私
「ハワワイザー、何かいったであるか?」
「はわわ~。何でもないですぅ。さっさと帰るですぅ」

夜空に輝く星と化したハワワイガーを見上げて
残されたアルスラー達は、疑問を口にしていた

「…暴走を続けるベノムタイガーはどうなる」
「これは…なんというか困りましたね…アルスラーさん」

十六聖天外伝 ~失楽園の章~  23話
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