「はなちゃんはいいなぁ」
「なんで?」
「おあねちゃんが、ふたりもいて」
「ひーちゃんには、おあねちゃんいないの?」
「いるよ」
「そうなんだ。よかったね」
「けど、みたことないよ、おあねちゃん」
「そうなんだ」
「うん・・・」
「じゃあ、はながおねえちゃんになってあげるよ」
「ほんと?」
「うん、ほんと」
「ありがとう、はなちゃん」
「…!」
不覚ですわ。あんな夢を見るなんて
指を鳴らして従者に着替えを持ってこさせると、私はそれに袖を通し
朝食を持ってくるように言いつけ、窓から空を見上げた
鳥…鳶だろうか。自由に飛んでいるそれを見上げ
「…私は鳥籠の鳥ね」
と自嘲気味に呟いた。
カビ臭い家の掟に縛られて当主に担ぎだされた私を待っていたのは
作法に始まり、当主の心得、聖天士としての心得、能力の正しい使い方etcetc
それらは細かくスケジュール管理され、自由なんかそこにはなかった
「お嬢様、お稽古のお時間です」
「フン…今行くわ。下がりなさい」
本当に、何もかも下らない。十六聖天を代々輩出していたのはもう100年も前の話
それを今更、たまたま私が100年ぶりに能力に目覚めたからと言って、この始末
仮に私が十六聖天になったとしても、それでアナタ達生活がどう変わるという訳でもないのに…
◆
武道の先生の指導の元、私は戦闘技術を学ぶ
父も母も、私が強くなるたびに大喜びだ
知っているのだろうか、アナタ達の娘は強くなる度、その倍は傷を負っているという事を
今日も教師として来ている男は「敵が突きを繰り出したらこう捌け!」「敵が左に避けたらこうしろ!」等
得意気に語っている
くだらない…。実践とはそんな型に嵌ったものじゃないはずだ
「先生?お話はもう結構ですわ。一度お手合せ願えないかしら」
教師として来ている男は、笑いながら了承した
生意気な小娘をたしなめてやろう、と言ったところだろうか
馬鹿な男…
半刻後、男は“化け物”と吐き捨て逃げるように屋敷から飛び出していた
朱鷺、絶滅した今では誰もが大事に保護している鳥
だけどその実、鳥追歌では、一番憎き鳥と呼ばれた鳥
私はその鳥の事を想い「まるで私のようだな」と感じた
十六聖天外伝 ~朱鷺の檻の章~ 序
クリムゾンブロウ曰く「和服系のAVはモデルもそうだが、乱れ方が大事だな」
ブラックパイソン曰く「見えすぎれば良いというものではない。それは人生においても言える事」
最終更新:2009年03月04日 02:57