闇伝 外道対外道11


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爽やかな朝を迎えた、イタリアはローマ。
陽気なイタリアンどもが闊歩するその町並みの一角で、フレアリンと杷羽は苓を待っていた。
「少し早く着すぎちゃったカナ? カナ?」
「遅いよりはマシじゃないですか? まだ時間はありますし、ゆっくり待ちましょう」

とは言うものの、家の外では良家のお嬢様そのものにしか見えない外見容姿の杷羽と、
見る人が見れば魅力的なフレアリンの二人が街頭で人待ちをしているその姿は、野郎から見れば
「声をかけないことのほうがむしろ無礼。万死に値する」と言われても反論のしようがないほど。

見れば、誰が最初に声をかけるか、互いに牽制し合い、のっぴきならない状況になりつつあった。
「・・・なんか空気が重い。というか檻に入れられたパンダさんの気分」
「ほへ? 体の調子が悪いのかな? 水道のお水は飲んじゃいけないよって言ったのに飲んじゃったりした?」

…この人は、周りからの視線に気が付いていないのだろうか。
そういう楽天的な思考は時として羨ましく思える時もあるが、少なくとも今はその時ではない。
「・・・苓さん、早く来ないかな」
「ところでワワちゃんは、あのおにーさんとはどういう関係なのカナ?」
「出来の悪い兄の友人です。どういう経緯かは知らないけど、何時の間にやらそうなってた、って」
「へぇ~、ワワちゃんにはおにーさんがいるんですか~。どんな人なんすか?」
「一言で言えば、馬鹿です」
「ほへ~、おバカさんですか~・・・ワワちゃんは苦労してるんですねぇ」
「まぁ、いいとこも、ないわけじゃ、ないんだけどね・・・そういうリンさんは?」
「私ですか? 昔はパパとお姉ちゃんがいたけど、今はママと二人なんスよ。あー、うー、見解の相違?
 ってヤツなので気にしなくていいのです」
そんな他愛もない会話で盛り上がる二人を他所に、牽制合戦は路地裏で血で血を洗う抗争に発展していた。

その喧騒を掻き分けて、やってくる男が一人。
「すまない、遅くなったか・・・」
「いえ、丁度です。さすが苓さん、バカ兄とは大違い」
「おはよーっす! 結局昨日はどうし・・・ってなんでそんな露骨に目を逸らすんですかぁ!?」
「いや、別に、どうという事は、ない」
「むくー! それは絶対なにかあった顔です! ほれほれ、さっさとゲロって楽になるのです!」
「・・・明らかにシスターの発言とは思えないセリフがさらっと出てきますよね・・・」
苓としては、昨日の今日。彼女の双子の姉にあれだけの事をした後では、直視出来ようはずもない。

「さて、行こうか杷羽ちゃん。世話になったな、ありがとうフレアリン」
「そんなことないです! 久しぶりに誰かと一緒の夜が過ごせて楽しかったです!」
「それでは、また縁があったら会いましょう。またいつか、どこかで」

「さよーならなのです! また今度イタリアに来ることが会ったら会いに来て下さいな!」
「・・・そう、だな。機会があればな」

路地裏の抗争は勝者のないままに終わりを告げる。
杷羽と苓は、一路ドイツを目指しローマを後にする。
そんな二人の背中を、フレアリンは、ただただ名残惜しそうに見つめるばかりであった・・・。

「そういえば、バカ兄は今どの辺なんだろ。というかちゃんと来れてるのかな」
「少なくとも死んでることはあるまい。あれでなかなか律義者だ、ドイツへ向ってはいる事だろう」
「ま、そうよね。とりあえず、さっさと行って終わらせましょう。もう休みもそんなに取れないし」
そんなことを話しながら、二人はドイツへ向う。

一方、ドイツは黒い森。

「・・・コルベッキが討たれた、と」
司令室、というよりもラボといったほうが差し支えない部屋で、ファウストが諜報兵の報告に
驚き半分、得心半分の表情で尋ねる。
「ええ、間違いありません。シグナルロストした地域を探したところ、明らかに人体の造形としては
 ありえないほどに破壊されていましたが、DNAデータがサンプルと一致しております」
「アレが討たれる程となると・・・相手の情報を採取できなかったか、或いは身体的欠陥を引き継いで
 自滅したか、かしらね。ま、一つの実験にはなったかしら」
元々劣等感の塊だっただけあって、完璧だのなんだのと持ち上げてやれば何でもやるような軽い男だ。
データさえあれば幾らでも複製できるところまで知恵が回らない程度には、処置をしておいたわけだが。

「それで、アッチはどうなってるのかしら?」
「ジュラフマー、でございますか?」
「そう、ソレ。どの程度まで出来たかしら」
「既に構想通りの建造は終了しており、後は稼動試験を行うのみです」
操機ジュラフマー。
暗黒躁魔17人衆を名乗る団体が小癪にも擁していた巨大機動兵装システム「躁魔機」を拿捕、
或いは鹵獲し回収した技術及びデータと、自身が持つオートマータ技術と「知」の神珠より得た知識を元に
建造した、現在考えうるあらゆる巨大機動兵装システムを凌駕する機動兵器。
暗黒躁魔の奴らが信奉する頂点の存在と、破壊と再生を司る神の名を合わせた、世界を統べるべきこの私を
守護するために建造された、ヒトの作りし機械の神。 ※注:麒麟とキリンを誤解しています。
忌々しき十六聖天が擁する巨大兵装への備えでもある

「そう、稼動試験、楽しみね。ジュラフマーが発つときが、我々が世を統べる時。楽しみだわぁ・・・」
「また、小型量産機のほうは既に量産化に着手しております」
「どの程度まで、用意できているのかしら」
「現状、中央ラインをジュラフマーに充てている事もあり効率はやや低迷してはおりますが、
 完品が現状20、最低限の稼動ができる機体は30といった所です」
「まぁ、妥当なところね。引き続き、よろしく頼むわ」
「畏まりました」

あのアンテサンサンがのさばっていた時には出来なかったことが、何でもできる。
なんと素晴らしいことだろう。これこそが、私の求めた、私のための組織だ。
何者がここに来るかは知らぬが、我が配下と無限の軍勢にて相手をしようではないか。
この次代を作るべき我々を阻もうとするのであれば、何者であろうと排除するのみ。

一方そのころ、フランスの某所。
「うむ、流石はワインの本場の仕込み場の酒樽。いいモン仕込んでんじゃねぇか」
「おさけははたちになってからなの!」
「そう固いこと言うなやタマ。とりあえずこの辺りいくらかビンに詰めて持って帰ろうぜ」
「らじゃーなのー!」
バカヤロウどもは酒蔵からワインを盗み出していた。

問答は夢を見ていた。

景色があるのに色がない。
人がいるのに息吹がない。
なにもかもがあるのに、なにもかもがない、灰色の世界。
その世界を、ただ一人、あるはずの何かを求めて、ひた走る。
どれだけ早く走っても、どれだけ長く走っても、何も手に入らない、灰色の世界。

何処までも走りぬけた先に見つけた、あの姿は・・・!?

「親父ぃーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

目の前に火花が散った。

「いつつ・・・ん、こ、ここは・・・」
「あうう、痛い・・・あ、社長、ようやくお目覚めですね」
「殺人か・・・あれから、どうなった・・・?」
「ニシキさん達は、仲間を連れて何処かへ行ってしまったようです」
「そう、か・・・」
見逃してもらった、ということだろうか。それとも、今のオレは殺る価値もない、ということか。
あの言葉が真意であるならば、今はまだその時ではない、ということか。

食事を取りにいく、といそいそと部屋を出る殺人を見送りながら、回答は考える。
あの時踏み込んだアレが「裏殺し」だったのだろうか。あの夢は、何だったのだろうか・・・?
あの常軌を逸した空間が親父の「裏殺し」だとしたら、俺は、あの世界に踏み込まねばならないのか・・・?

「ささしゃちょー、めざめたのならこれをたべるのだ! さぁさぁくえくえ!」
「あ、こら! 社長は目が覚めたばかりなんだから、程ほどになさい!」
「やれやれ、暢気なもんだねぇ・・・」
いい匂いと共に、食事と喧騒が部屋に運び込まれる。

全員無事なようで、何よりだ。
今はこの、ささやかな平穏を、楽しむことにしよう。
あの世界のことは、あとで考えることにしよう。
とりあえずは、この空いた腹を満たさねば。腹が減っては何とやら、だ。

ささやかで、賑やかな、久々に手の込んだ食事会。
こんな機会は、もう一度、あるだろうか・・・。

所変わり・・・ここは今では「新宿再開発区」と呼ばれる場所。
「さて、と。そろそろ追いかけっこは終わりにしようぜ」
「ふん、貴様は俺を追い詰めたつもりだろうが、残念ながら逆なんだな! 出てこい野郎どもぉ!」
暗がりの路地。確かに幾らでも隠れられそうな場所はある。
数では圧倒的に差、皆が得物を手にして、幾人かは攻撃に転用できるESP技能を有している。
この状況で、負けるわけがない。
「てめぇら! やっちまえぇ!」
「「「「「「「がってんだぃ!」」」」」」」

数十分後。追う男、獅堂 宗次は戦闘でつけてしまった衣服の埃を払い落としながら呟く。
「やれやれ、数だけでどうにかなると思ったのかね」
「つ・・・つよ、すぎ、る・・・ガクッ」

原始的ながらも確実に、縄で窃盗グループを捕縛して警察機構に引き渡す。
「さて、そろそろ戻るか・・・っと、着信だ。はいは~いっと」
<あ、宗次君? 麒宮です。今何処にいるの?>
「ああ、今新宿。オーダールーム寄って戻るとこだけど、何か買って帰ろうか?」
<ううん、私もオーダールームに向うところだから。後で一緒に買い物しましょう>
「おっけ。じゃ、向こうで」
<ええ、また後で>
モバイルの着信を切る。
「さて、オーダールームにとっとと向うか。遅れると麟音うるさいからなぁ・・・」

iボックスからリフボードを取り出し、今や廃墟となった東京都心の空を舞う。
800年くらい前までは世界有数の都市だったそうだが、今ではもうその面影は残っていない。

横浜ベイエリア。
極東共栄圏有数の大都市圏となったこの街の地下深くには、ESP犯罪及びMMMICS犯罪に
抗する為に結成された地下組織がある。
関係者にしか明かされないエントランスを通り、オーダールームにメンバーが集う。
「やっと来た。遅いよ、宗次君」
「ぬぅ、すまん麟音。で、ノリエラ隊長。わざわざこんな時間に呼び出した理由はなんです?」
「わざわざ来てもらってすまないわね、二人とも。特に麒宮さんは直接関係があるわけではないのに」
「構いません。私がここに呼ばれたということは、それなりの理由があると思っていますから」
「それで、俺らを呼んだ理由は何なんです?」
「簡単に言えば、御指名よ。あなたと、彼女と、アレを、ね」

オーダーは至極明快。MMMICS同士での決闘である。
だが、相手がその辺のゴロツキであれば一蹴する話だが、それが「エヴァリュエイター」を自称する
MMMICS犯罪界の重鎮ともなれば話は別だ。
思惑など知るべくも無いが、決着を早々につけられるのであれば、それに越したことはない。
指定された時刻まであと数時間。場所は旧EU圏上空。今からでも充分間に合う。

<はいほーマスター! 中身も外見もバッチリしっかりメンテ済みなのですよ!>
「やかましいわソーレッタ! おやっさん、すんませんこんな時間に」
「いいってことよ。コイツをイジるのが今や俺らの一番の楽しみなんだからよ」
「で、ソーレッタ、調子はどうだ?」
<はいな! SGSドライブもヘンネル・シュレイン・ルイールも問題なっしんぐのフル回転です!
 今日も元気いっぱいなのです!>

「うっし、それじゃ行くか、麟音」
「ええ、分かったわ、宗次君」
<はいは~い、おあついおふたりさん、ごあんな~い♪>
宗次と麟音は、連れ立って愛機ディヴァイザー・アルダレストに乗り込む。
「SGSドライブ出力安定、HSLへの魔力供給も問題なし。いつでも行けるわ」
「了解。トランスゲート開放、リニアレール稼動を確認・・・ICS正常作動を確認・・・そいじゃ行くぞ!
 OMA1宗次、ディヴァイザー出撃します!」
言うや否や、超音速の壁を突きぬけ、宵闇の空を鋼鉄の魔導騎士が飛翔する。

約9000kmの距離を2時間強で突き抜ける一行だが
「っ!? いきなりかよ!」
急制動をかけ、飛来する弾丸を避ける・・・のだが
「今のは・・・魔力弾だと!?」

この世界には、この機体に搭載されているHSL以外に魔力機関も魔力発散機構もありえない。
そもそもこの世界には、魔法なんて非科学的なモノは存在するはずがない。
だが、目の前のヤツ、エヴァリュエイターのMMMICSは、今間違いなく魔力弾を放った。
「ちぃ! どういう仕組みしてやがる!」
<解析したのです! 組成のごく一部、コクピットかメインドライブの辺りにハルモニウムが
 検出されたのです!>
「ハァ!? つーと何だ? アイツも次元跳躍経験者だとでも言うのか?」
「そんなことより目の前に集中! 私達は決闘しに来たのよ!」
「りょーかい! とりあえずアレをボコって中の人に聞きゃ解決するわな!」

光翼煌くディヴァイザーと、仄暗いオーラを纏うエヴァリュエイターのMMMICSの激突。
それは32世紀の現行最新鋭技術で作られたMMMICSの枠を遙かに超えた、もはやアニメや創作の域に
達していた。惜しむらくは、この決闘を観戦できる者が、この場にいないことであろう。

赤熱の波動が空を焼き、暗黒の砲撃が雲を切り裂く。
超音速の襲撃と魔力障壁が激突し、負の波動に満ちた爪撃は光翼の羽ばたきと光子魔力シールドに阻まれる。
「んなろぉ! なかなかやるじゃねぇか!」
「・・・あの機体、出所は何処なのかしら。この子の魔導炉は宗次君があの世界から持ち帰ったものだけど、
 それじゃあ、あの機体の魔導炉はどこから・・・?」
「そういうのは任せた! つかこちとらとっくにESP SEED全開でやってるってのに付いてくるって
 アレどんだけなんだ! こちとら既にマッハ4突破で稼動してんだぞ!」
<ふむむ・・・う~むむむ・・・! わっかりましたぁ! あの機体、魔力とESPで時間を圧縮することで
 こっちの超速度に付いて来てるんですよ! とてもじゃないですが人間業じゃないのです!>
「時間系のESPなんて聞いたことねぇぞ! ったく、こんなのいつか以来じゃねぇか!」

煌き放つ鋼鉄の騎士と、妖気漲る鋳鉄の砲撃手の、超次元的激突。
そこに、声がする。
<流石だね、調律の騎士と太陽の戦神。このまま向こう側へ発つのも詰まらないから、せめて君らの力を
 見せてもらおうと思ったけど・・・予想外。せっかくだから、君達も招待することにしたよ>
今のは、エヴァリュエイターの声か!?
驚く間もなく、エヴァリュエイターのMMMICSから発せられる負のオーラが強まり、そして
「魔法陣とか、バカじゃねぇのか!? おいテメェ! まさか魔道士だとか言うなよなぁ?」
<君にそれを言われるとは心外ですねぇ。君は異世界からシルフ式魔力機関を持ち帰ったというのに>
「やっかましいわ! つかテメ、何するつもりだ!」
<言っただろう? 君達を招待するのさ。僕が長年捜し求めていた、時の連環を操る魔導器が存在する
 ココとは異なる世界へ、ですよ!>

言い終わるのと、同時だった。
空間展開式の魔法陣が世界を切り取り、抉り取る。
「またかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

世界が切り替わる。切り取られた世界が、別の世界に繋がる。
宗次にとっては二度目の異世界体験なわけだが・・・。

「・・・っつつ・・・麟音、ソーレッタ、無事か?」
「私は大丈夫。ちょっと揺れに酔っちゃっただけ」
<・・・システムオールグリーンです! まだまだ元気ですよぉ~! って、わわわぁ!?
 なんだかよくわかんないんですがいきなり囲まれてるのです!>
ようやく復活したモニターには、一機のバカでかいロボットと、それを守護するように飛び交う
ややデカめのロボットが、50機は居るだろうか。

「ったく、なんでこう、ツキがないのかねぇ・・・?」
「ふぅん・・・確か前は、アスティアさんと言いましたっけ? あの娘の真上に落ちたんでしたよね?」
「それは今全くもって関係ないだろうがぁ! とりあえずアレは何なんだってんだ!」
<ふ~む・・・いろいろ探知したり回線に割り込んだりしてみたんですが、すんごいザルなんですよ・・・
 もう千年以上前のFWとかカウンターウィルスとか、こんな程度のセキュリティじゃ簡単すぎて
 つまんなかったんですけど・・・ここ、旧EU圏、というより今まさにEU圏なのです!>
「「・・・はぁ?」」
<さらに、お空を飛んでるチャチい衛星のシステムを占拠して調べてみたんですが、世界地理が
 ほぼ1000年前と一致するのですよ! タイムトラベルですよ、タイムトラベル!>

「はぁ・・・魔法世界に続いて1000年前にタイムスリップ、何なんだ俺の人生って・・・?」
「付き合わされる私が嘆きたいわよ・・・」
ジュラフマーとジュ・ゲイムの群れの只中で、嘆息漏らす二人であった。
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