その日は酷い嵐だった…
次郎の手に握られた刀が、そして地面に散らばった鏡の欠片が、稲光を反射して青く光る
眼前には、戦闘能力を奪われた無力な少女
「アナタなんかに…!アナタなんかに何がわかるの!?」
「わかんねぇよ」
地面に手を伏せ、泣き続ける少女の言葉を、次郎はあえて突き放す
「…勝たなきゃ意味がないの!アリスはその為に…その為につくられたの!!」
そう叫びながら、散乱する鏡の欠片を手にした少女は次郎に体当たりをする
「…だからってお前は自分を信じてた仲間を裏切るのか?アリス、俺はお前が背負ってる物
が
何なのかは知らねぇ。事情もしらねぇ。けどな…」
欠片を押しこまれ、傷口からさらに血が流れ出す。だが次郎はその痛みに耐えながら言葉を
続ける
「仲間ってのは…仲間ってのはどんな事があっても裏切っちゃなんねぇんだよ!
裏切っちまったら、もう仲間じゃなくなるんだよ!
その時、お前は一人ぼっちになるんだ!お前はそれでいいのか!?
あれを見ろアリス!そう、あれだ。あそこで無残に倒れてるアイツらは何だ!?」
次郎の指さす方には、無残に引きちぎられた鎖鎌と、代わり果てた姿の田中茂を筆頭に
数多くの聖天が倒れていた
十六聖伝外伝 残光 ~第五章 アリス・ザ・ワンダーワールド序章~
最終更新:2008年10月27日 20:54