闇伝 外道対外道5


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「さて・・・間者の報告によれば、懸念の一つであった赤婆の犬どもは離脱したそうだ」
「ほう。それは残念・・・赤婆の肝煎りというから、期待しておったがの」
「まぁ、それはいいでしょう。邪魔者が減ったというのは実に都合がいい。
 肝心要は、あくまでも御曹司の始末だ」
「少数の手勢でよくやるものだよ。流石は親父殿のカリスマ性を引き継いでいるだけのことはある」
「だが、とはいえ所詮は多勢に無勢。どこから調達してきたかは知らんが、雑兵でも数があれば
 何処に落ち延びようとも無駄なことよ」
「しかし・・・ヒガシよぉ、あの数、どこから引っ張ってきたんで?」
「私にも、それなりの伝手というものがあるのだよ。今はまだ、明かせんがね」
「まぁいいや。俺はやりたいようにやれりゃ、それでな」

「ダンタリオン」最高幹部にして最大戦力である「三本槍」。
いずれも前社長中村問答に劣らぬ実力の持ち主である。問答亡き後の事実上の頭目である彼らが、
現社長である回答と意見の相違から対立していることから今回の抗争は始まる事となった。

「ダンタリオン」はあくまでも殺人、殺しを生業とする者の集団である。
そのトップである社長が敵に情けをかけるなど言語道断とする大多数の先代派と、
現社長回答の心意気を良しとする少数の当代派では、対立が起きるのも当然の理である。
当初は静かないがみ合い程度であったが、先日の回答による「征雄」エージェントの引き入れにより
双方の対立は決定的な局面、つまりは直接対決へと移行していた。

数で言えば質も量も圧倒しており、本来であれば趨勢は瞬く間に決していたはずの対立を
当代派が均衡に持ち込むことが出来ていたのは、ひとえに回答とその側役に対し有効な手を
打つ事が出来ずにいたことと、「征雄」のエージェントが想定外の戦闘力を有していたことが大きい。
そしてどうでもいい事に、「征雄」エージェントにくっついている少女を攫ってあれこれしようと
画策したり、純粋か邪かは知らぬが拉致して交渉の道具にしようと赴いた連中が後を立たず、
そして二度と帰ってくることがなかったことも、非常に大きなアドバンテージを生み出していた。

幼女は超怖い。この時から各種裏家業はこぞって幼女を狙うのをやめたという・・・。

閑話休題。
均衡を生み出していた幼女・・・もそうだが「征雄」のエージェントが、突然回答の下を去ったという。
理由は分からない。彼らの後を追わせていた密偵も、音信を絶った翌日には頭部他が完全に圧壊したもの、
鋭利な刃物のようなもので全身を縦に両断されたもの、文字通り世界の何処からも消えたもの、
死に様は様々であったが、肉体がこの世に存在したまま絶命した密偵については、結局のところ
全て発見されることとなった・・・否、見せしめの意味もあろう。手出しするなら容赦一切無し、と。

理由は不明とはいえ、戦力激減には違いはない。この機を見逃すはずが無いのが先代派である。
元々あったはずの数の有利を、回答の資質・ヤンキーの破天荒・超怖い幼女という3つの要素により
均衡状態に持ち込まれていたのだから、2つの要素が抜けた今こそが大きな好機である。
幼女を襲えないのなら俺に殺し屋家業を続ける理由は無いと足を洗った連中を除いても、充分な
戦力差がある。さらにいえば、副社長である東山紀之國(通称ヒガシ)が何処からとも無く
連れてくる補充人員により、質はともかく量で劣ることはありえない。

血気逸る者たちが徒党を組み、次々と回答ら当代派に襲い掛かる・・・だが、裏稼業ではその力を
遺憾なく発揮できよう暗殺集団も、「友人らと楽しく放課後を過ごす高校生」をそう易々と
襲えるわけではない。
その「友人」が、かの十六聖天となればなおのこと。片方は所詮裏六位なのでどうとでもなるが、
だがもう片方は表十四位と言えども、女子高生と言えども、十六聖天に名を連ねる猛者であることに
違いは無い。さらに言えば、例え裏六位だろうと手を出せば他の聖天がどう動くか読めたものではない。
十六聖天に名を連ねる者たちがどれほどの力を持っているかは、裏の世界でも存分に知れている。
言ってしまえば、回答は本人達には無自覚の内に十六聖天という最強のボディガードを手にしたに等しい。

「なぁ回答、最近妙に付き合いがいいなぁ」
「何、別にどうこうしたわけじゃない。ただ、俺たちがこうしていられる、限りある時間を
 ただ一人で過ごすのも詰まらんと思ってな。それだけのことさ、いっけい」
「そっか。よし、じゃあ次はどこ行くか?」
嘘ではないが、真実でもない。いずれはいっけいや花子らとも、戦場で相見えることもあるだろう。

たとえ一時の戯れとしても、今のこのときを楽しむ自分もまた自分。
裏稼業にてその手を不法の血に染める者には本来ありえないはずの時間を過ごす。
親父は何を考えて、自分をこの普通の日の当たる世界に置こうとしたのか・・・。

自分は親父を、三本槍を、尊敬している。父を喪い、三本槍と敵対する今でもその気持ちは変わらない。
幼少の頃から親しくしていた者たちを葬らねばならないこの心痛は、あるべきものだろうか、
それとも、ないべきものだろうか・・・その答えは未だ見つからない。

いつかこの疑問に決着が付くときが来るのだろうか。

さてさて・・・で、ヤンキーどもはどうしてるかというと・・・空の上にいた。
国内で内輪の決着をつけると共に、再生アポカリプス・ナウ(仮)を潰しにかかる、両面作戦のため
一路独逸へ移動している最中である。
「やはり金銭面の都合を勘案して、ちびっこはスーツケースに突っ込んでおくべきでは
 なかったんだろうか」
「・・・ホントにやってたら殺すくらいじゃすまさないから」
「迷惑だ。静かにしろ」
不自然なまでにガラガラな機内には、多少の兄妹喧嘩であれば迷惑と感じるほどに短慮な者は
乗り合わせてはいないようで、騒がしいながらも実に穏やかなときが流れてゆく。
「なぁ、大概こういう時って何か襲ってきたり爆破テロが起きたりするのがセオリーだよな」
「物騒なことを言うな。オマエがそういうことを言うと大抵リアルに起こるからやめてくれ。
 後が面倒だ」
「まぁまぁそう言いなさんなって。あくまでもよくある展開ってだけのことじゃねーか」
「そんなよくある話、で墜落したらたまったもんじゃないわ。いいから静かにしてて、一生」
「ほう・・・我が妹よ、あそこの主翼の端っこあたりにロープで繋いでやろうか」
「おうよ、やらいでかぁ!」
「仲がいいのはよく分かったから、黙って座ってろ馬鹿兄妹」
「えろうすんまそん・・・」「ごめんなさい・・・」

「・・・で、だ。苓、杷羽を頼む」
「承知した。・・・すまんな、せめて安定した足場があれば手伝いも出来るのだが」
「なに、気にすんな。その代わりそのじゃじゃ馬は頼んだんだぜ?」
「任せておけ」
「へ? 何のこと・・・?」

次の瞬間、彼らの乗る飛行機は・・・爆砕する。

「何かあるかもとは思っちゃいたが、ねぇ・・・」
「まさか、こんな大物がこんな辺鄙な雲上で出るとは、な」
「なに、あの馬面のひと・・・?」

「空の覇者たる我々の断りも無く、未だにこんな無粋なもので大空を汚そうとは・・・不届千万」

「おいあの馬なんかブツブツ言ってるぞ。アブない人か?」
「確かにアブないね・・・関わらないほうがよさげ。でもバカ兄とは気が合うんじゃない?バカ同士」
「よくもまぁ落下しながら冗談が吐けるなお前ら。とりあえずアレは、情報どおりであれば、
 元中国地方、ラ・ピュタの尖兵・・・いや、あの気迫、気概から察するに幹部か」
「まった、これからひと暴れするってのに、面倒なのにエンカウントしちまったもんだなぁ・・・
 馬で空飛ぶってと、ペガサスとかその辺か?確か完全に狂ってからゼロで挑むとアイリスがどーのとか
 言い出すと記憶しているが」
「そんなシリーズ全体でも屈指の駄作の話をする余裕はないぞ、翠。やっこさん殺る気マンマンだ」

「何かあるかもとは思っちゃいたが、ねぇ・・・」
「まさか、こんな大物がこんな辺鄙な雲上で出るとは、な」
「なに、あの馬面のひと・・・?」

「空の覇者たる我々の断りも無く、未だにこんな無粋なもので大空を汚そうとは・・・不届千万」

「おいあの馬なんかブツブツ言ってるぞ。アブない人か?」
「確かにアブないね・・・関わらないほうがよさげ。でもバカ兄とは気が合うんじゃない?バカ同士」
「よくもまぁ落下しながら冗談が吐けるなお前ら。とりあえずアレは、情報どおりであれば、
 元中国地方、ラ・ピュタの尖兵・・・いや、あの気迫、気概から察するに幹部か」
「まった、これからひと暴れするってのに、面倒なのにエンカウントしちまったもんだなぁ・・・
 馬で空飛ぶってと、ペガサスとかその辺か?確か完全に狂ってからゼロで挑むとアイリスがどーのとか
 言い出すと記憶しているが」
「そんなシリーズ全体でも屈指の駄作の話をする余裕はないぞ、翠。やっこさん殺る気マンマンだ」

「ほう・・・そこのガキども。この状況でその余裕・・・楽しませてくれそうだな」
「しゃあねぇな・・・じゃ、ちびっこは頼むぜ、苓」
「任せておけ・・・向こうで待ってるぞ」

「今生の別れは済んだか?まぁ、今ここで済ませて無くても地獄の果てで幾らでも会えようがなぁ!」
「やかましい! 来いよ馬野郎!」
翠は空を蹴り、馬面の男に肉薄する。苓は杷羽を背負い、地上へ向う。
苓には継続的に空中に留まる術は無いが、翠には武術の一貫で習得した技術と体質で浮遊できる。
だから空中戦は翠の役目。これはコンビを組んで以来決めていた役割分担でもある。
二人の間に言葉は要らない。生きてまた会うと約束したのだから。

「その粋や良し・・・だが、圧倒的な力の前では、多少の風の術力など意味が無いということを
 思い知らせてくれようぞ!・・・来たれ金剛の槍雨、ダイヤモンドランス!」
「は!たかがダイヤの槍如きでこのオレをどうにかできると思うなよ!」
翠は徒手空拳で無限とも思える金剛の槍を砕き、割り、折り、避け、受け、払い、薙ぎ、落とす。
その一挙手一投足が極まるにつれ、翠の体からは赤い輝きが零れる。
「なんだよ馬面オヤジ? この程度が持ちネタかぁ? ハ!つまんねぇぞぉ!」
「その忌々しき闘気、その禍々しき燐光・・・貴様、まさか!」
「ああ、そのまさかよぉ! ハーフだけどなぁ!」

馬面の男・・・ラ・ピュタ航空部隊「イカロス」部隊長が一人ペガススは翠の強烈な連撃をもらい、
毒虫を噛み潰したが如き苦悶の表情で睨みつける。
(ちぃ・・・まさか生き残りのスコットランド人とこんなところで鉢合わせるとは・・・だが、
 この地球上でもっとも厄介な人種と名高いスコットランド人といえど一人、しかも我に利のある空・・・
 勝てぬ道理など)
「ありはしない!って顔してるぜぇ~?どうしたよ?最初の活きの良さはどこいったんだぁ?なぁ?」

空中散歩の戯れに空を汚す飛行機を落としただけのこと。ここまでの事態に遭遇するとは露ほどにも
思いはしていなかったペガススには、想定外すぎる事態に精神面のダメージも大きく負う事となった。
「ぐぬぬぅ・・・ならば、これならどうだぁこのくそがきゃあああああああああ!!!!」
翠の周囲、それも全方位にこれでもかというくらいにダイヤモンドランスを召喚し・・・
「はぜろ!つぶれろ!はちのすにしてやるわああああああああああ!!!!!!!」


金剛の槍が噛み合い、ギチギチを音が鳴る。
複雑に絡み合う金剛の槍は、ダイヤを最も美しく輝かせるというブリリアントカットの形を為していた。
「はぁ、はぁ、くそがきがぁ・・・大人をナメてかかるからこうなるんだ・・・分かったか」
金剛石の槍の塊が、大海原に向けて落ちてゆく。

子供相手にムキになりすぎたか・・・肩で息をするペガススの肩を叩くものがいる。
帰還が遅いので哨戒と散策に来た同志だろう。
「ああ、すまなかった。少し厄介なガキの相手をさせられ・・て・・・」

「おいっす!元気?っておいおい疲れてるね~。もう若くないんだから無理しないほうがいいんじゃね?」
「ばかなああああああああああ!!!!貴様は先ほど我が奥義ブリリアントコフィンを喰らって
 水没したのではないのかぁ!」
「そんなご大層な技の割にはただの全方位攻撃だったんで、捌くのめんどいしとりあえず喰らってみたけど、
 いやーやっぱ全身穴だらけってのはあんまいい気分じゃないねー。服もボロボロだし。つかさ、
 食ったばっかの昼飯が胃から出ちまったからさ、腹減ったよ。何か食うもん持ってね?」

ペガススは気が狂いそうになる衝動を抑えるのに必死だった。

「何だよシカトかよ・・・まぁいいや。その辺の島に生ってる実でも採って食うか。
 じゃなおっさん達者でな~ ・・・やる気なら、いつでも、どうぞ?」

ペガススに、追撃する気力は、もはや微塵も残ってはいなかった。
生かされた、見逃された、脅威とすら思われなかった・・・たかがガキと侮った者相手に。
この後、己の慢心を恥じたペガススはさらなる修練を積み、技を磨き、北条護国の奪還と
ラ・ピュタの横暴侵略を阻止せんと迫り来る十六聖天の前に立ちはだかることになるが、
それはまだ先の話である。

そして翠も、腹ごしらえのために寄った名も無き島で、ひと悶着起こすが、それもまた別の話。
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