おいらの見る月夜 世界を滅ぼす魔人


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 あぐらをかいていたさぐれが体を曲げもせずに消え、目の前に立っていた。
「すまねえな。俺の為だ」
「な、なんじゃ?」
 階段に響いたのはさぐれが朧月夜の頬を叩いた音だった。
 何が起こったのかわからず、朧月夜はそのまま階段から落ちそうになる。だが、その肩をおいらががっしりと掴んでいた。
「大丈夫か?」
 その手は熱く、でも優しく肩を抱いていた。
「こい、本物のお前」
 さぐれが笑っていた。楽しそうに、あのめんどくさそうな表情が一変としていた。
「会いたかったよ。そうだよ、これこれ。俺が相手したかったのは。いやあ、出てきて正解だったな。すごい殺気が感じられたからよ、何かあると思ってね。実はさっき見てたんだよ、君らの戦いね。めんどくさかったけど、ボスが見張れってよ。ああ、すごい良いよ。久々だよ、これ。ボスと同じかな。そんくらいの殺気だよ。ねえちゃん、嬉しいね。この男、ねえちゃんの為だったら世界も滅ぼすよ。おっと、興奮すると口が回っちゃってよくねえな」
 ゆらり、そしてまた消えて今度はコンパクトな一撃をおいらに叩き込み、また消える。
「効かない。うん、コンクリート。いや、衝撃を吸収する意味じゃゴムや防弾チョッキに似てる感じだ。ああ、人間とはほど遠いよ、あんた」
 さぐれが消えたと思うと、どんどんとその体に攻撃を与えていく。休みもなく、目に見えることもない。コンパクトな一撃から、大降りなものまで。その大降りな攻撃すら早くておいらには避けることができない。だけど、おいらはただただ黙って身動きせずに、どこか一変を見ていた。
「埒が明かないな。こんな攻撃、何万発いれようが意味がない」
 天井に蜘蛛のようにくっついていたさぐれは長い槍のようなものを持っていた。
「地獄の使者より授けられた槍、ケルベロス。普通の槍なんかじゃあんたの腹筋は通らないと思うんでね」
 強い足の力があるのだろう。だから、さぐれの一撃は重く、その姿は見えない。それはゆらりとした動きからのギャップも作用され、受ける側は何もわからない。だからこそ、この槍の一撃は強く、ましてや一度も攻撃を避けていないおいらが避けることなど不可能な一撃。そしてそれは月の守りすら触れるだけで壊してしまう男の攻撃。何もすることはできない。
 だけど何故だろう、こんなに不利なはずなのに、なんでこんなに安心して見ていられるのか。
 あっという間だった。槍が刺さる前に、おいらがその槍を当たり前のように掴みあげ、そのまま槍をもっていたさぐれを地面にたたきつけたのだ。
「俺は怒ってるんだ」
 そして、すでに戦線離脱しているさぐれの顔面を踏みつける。さきほどの一撃でさぐれの背骨は粉々になっていたようだ。
「お前がしたことについて、俺は怒っている!」
 さぐれの意識はすでに吹っ飛んでいる。そして、顔面はどんどんぐしゃぐしゃになっていく。このままだと、死んでしまう。
「やめるんじゃ、おいら!」
 死んでもかまわない存在なはず。
 なのに、何故か止めていた。
――この男、ねえちゃんの為だったら世界も滅ぼすよ。
 さぐれが放ったあまりにも非現実でリアルな言葉。さぐれが死ぬのを恐れたのではない。この男が自分の為に誰かを殺めるといったことが恐ろしかった。
「朧月夜……」
 おいらの拳は止まっていた。さぐれが生きているかどうかは分からない。だけど、怒りは収まっているかのようだった。
「ばか者!」
 朧月夜はおいらを叩かずにはいられなかった。
 こんなことを求めていない。やめてほしい。
 おいらは呆気にとられた顔をしていた。
「主に命ずる! 我が許すまで、主は怒るな!」
「な、なんだ、そのめちゃくちゃな命令は!」
「我は大丈夫なのじゃ、多少のダメージなどあっという間に回復するでの! そんなことで主が怒るということは我のことを見くびっている証拠! 次、こんな暴走などしたら、絶対に主を我の愛人などにせぬぞ!」
 ぐっとおいらは息をのんだ。
「我慢できるか分からないが、なんとかがんばってみる」
「ぬ、そうじゃ。それに怒ってもらいたかったら我がいうでの。それまで我慢じゃ! 我慢!」
「めちゃくちゃな」
「うるさい! 行くぞ!」
 さっさと先を行く朧月夜。殺丸がおいらの肩を軽くポンポンと叩いて続いていった。
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