強さを求め、最強を目指した男。それがおいらだ。
「うっひょー! さすがアマゾンは鍛えるとこ多すぎて困るぜ」
ピラニアがうようよするようなアマゾン川をおいらは全裸で泳いでいた。
「いていていて! 噛むなこの!」
噛み付くピラニアを拳骨一発で黙らせてやる。鍛えている場所を噛むだけなら、問題ないのだが鍛えられないところを噛まれればさすがに我慢できない。
にごった水から飛び出て、犬のように体をぶるぶるさせて水をはじき飛ばす。
「うりゃうりゃうりゃ!」
体脂肪一パーセントの肉体美がアマゾンの木漏れ日に映し出される。
「おろ!」
誰かの叫び声がした。聞いたところ、若い女の声だがどうにも妙な叫び方だ。
「どうしたどうしたー!」
アマゾンには危険がたくさんある。ましてや、若い女だ。トラやアナコンダなんかに襲われでもしたら、ひとたまりもない。おいらの絶叫がアマゾンを駆け抜け、兎よりも聴力の高い耳が女の所に導いた。
「大丈夫か、女ぁあ!」
見ると、そこには足を怪我した綺麗な女性が尻餅をついていた。
「おお、助けが来てくれたのか。どうも、慣れない土地ゆえに、足を滑らせらしくない叫びを……おろろろろろろろろぉおおおおおおおお!」
「どうした、女ぁあああああ!」
何かに驚き、女は失神してしまった。何かいるのだ、このアマゾンに。何か未知なる危険な生物がいてもおかしくない。
「どこだ、どこにいる」
当たりを見渡し、気配を窺う。こういうときは、何も見ないほうがいい。目に頼っていては目先のものしか感じとることができない。広範囲に敵の存在を察知したいとき、目を閉じ、空間を感じ取るのだ。どくん、どくんと自分の心臓の音、そして女の微かな息遣いが聞こえてくる。だが、それ以外に何もない。
「おんな、まだ意識はあるな。虚ろだが、微かにあるはずだ。何を見た」
「う、うう……素っ裸の魔人。ま、またに得体の知れぬ凶器を……おろ」
「くそ、完全に気を失ったか」
言葉とは裏腹においらはわくわくしていた。得体の知れぬ魔人、それにまたに凶器。久々に面白そうな相手が現れた。
「かかってこい、股魔人!」
その時、ふとアマゾン川に映る自分の姿が目に入った。
「俺かぁああああああああああああ!」
最終更新:2008年12月12日 23:02