シン役 | ここは反統合勢力の島か。 |
ミランダ | 私は風の導き手。ざわつく風が聖なる廻りを遮って、だから私には分かった。 |
ミランダ | 血塗られた戦人が目覚めると、風が濁る。マヤンの風が濁る。カドゥンが草の裏にすくうようになる。 |
ミランダ | 目が覚めたのなら、早く島から立ち去れ。 |
シン役 | くだらない。俺と一緒にもう一人いたはずだ! |
ミランダ | …これは。 |
シン役 | 触るな。もう一人はどこだ。どこにいる! |
ランカ | あんた一人だったよ。 |
シン役 | 何!? |
ランカ | 流れ着いたのは一人だけ。 |
ミランダ | マオ。 |
ランカ | あははは。それっ! |
トライアングラー(オープニング)
徹子 | ではこの鳥の人はシン・工藤氏の伝記を元に映画化した訳ですね。 |
ミランダ | はい。シェリルさんのイメージソングもとても素敵で、クランクインが待ち遠しいです。 |
徹子 | 魅力的なサラを期待しています。本年度ミス・マクロスのミランダ・メリンさんでした。 |
ナナセ | なんか悔しいですね。こっちは手渡しのプロモーションしかできないのに。 |
ランカ | でもね、エルモさんが言ってたの。歌ってそもそも人から人へ、口伝えに広められるものなんだって。なんか素敵じゃない? |
ナナセ | そうですよね。きっといますよ。あのディスクを見て、ランカさんのこと好きになってくれる人が。 |
ランカ | うん。 |
社長 | ランカちゃん!はぁはぁ。ニュースですよ。ビックニュースです! |
アルト | 映画? |
ランカ | そうなの。監督さんがね、私のディスクを見て気に入ってくれたんだって。 |
アルト | へぇー、良かったじゃないか。 |
ランカ | でも私、今までお芝居なんてしたことないし、ホントにうまくできるか心配で心配で。 |
アルト | まぁ~無理だろうな。 |
ランカ | あ~やっぱり意地悪だよぉアルト君。こういう時はウソでもできるって言おうよ。 |
アルト | 思わざれば花なり、思えば花ならざりき。 |
ランカ | ? |
アルト | 頭で演じようとすれば、必ずどこかに嘘が残る。考えずただひたすらに感じて、その役に成りきれってことさ。 |
ランカ | すごいよアルト君。お芝居のことも分かるんだぁ。 |
アルト | ま…まぁな。どっちにしろ、セリフも無い端役なんだろ。 |
ランカ | それはそうだけどぉ。 |
シェリル | ちょっとアルト!いつまで電話してんのよ!! |
シェリル | 出番よ! |
アルト | 分かってる。すぐ行く。 |
アルト | 悪い。軍から広報の仕事がまわってきたんだ。じゃあな。 |
ランカ | う、うん。 |
アルト | っく。何だって親父の言葉なんて……。 |
シェリル | アルト、早く!! |
スタッフ | 本番行きまーす。 |
スタッフ | はいほんばーん。 |
ランカ | 今のシェリルさん……だよね。 |
ランカ | はぁ。一緒にいるんだ。 |
レオン | で、LAIの技術者の意見は? |
レオンの部下 | 反応速度から見ても、無人機では有り得ないとのことでした。ただ…。 |
レオン | ただ? |
レオンの部下 | EXギアシステムを使っても、あの出力と運動性には生身の人間は耐えられないだろうとも。 |
レオン | 面白いね。 |
ランカ | うわぁ~すごーい!島がまるごとセットになってる。 |
ミハエル | ようこそマヤン島へ。 |
ランカ | え?あ、どうして。 |
ボビー | SMSが撮影に協力してるのよ。ほら、バルキリー出てくるでしょ、たくさん。 |
ランカ | うわぁうれしい。じゃあもしかしてアルト君も? |
ミハエル | あいつは別の仕事。いろいろまずいらしくてね。 |
ボビー | さぁさぁランカちゃん、メイクの続きしましょ。おっ? |
ミハエル | おぉ、主演女優さまのお着きだ。 |
助監督 | ですから、監督がどうしてもこの曲じゃイメージに合わないと。 |
音楽P | でも、もう5回もリテイク出してるんですよ。これ以上は……。 |
助監督 | サラが歌う風の歌は、この作品の要です。 |
そちらがねじ込んだシェリルの歌を主題歌にするんですから、風の歌に関しては妥協しませんよ! |
ミランダ | あらぁ、あなたミス・マクロスの。ふ~ん、出るの。役は? |
ランカ | マヤンの娘Aです。 |
ミランダ | まぁ素敵。私の映画を台無しにしないよう、せいぜいがんばってちょうだい。 |
シェリル | 聞き捨てならないわね。妥協で私の歌が使われるの? |
音楽P | ……ミス・シェリル。 |
ランカ | えぇ?アルト君? |
音楽P | だ、妥協だなんて、滅相もない。 |
シェリル | 冗談よ。この映画のために書き下ろした曲じゃないんだから、はまらないのは当然よねぇ。 |
シェリル | 監督さん。なんだったらそのサラの曲、私が書きますけれど? |
監督 | ……。 |
助監督 | 少し考えさせてください、とのことです。 |
シェリル | 必要ならいつでも言ってください。いい作品を作りましょ。 |
ミランダ | シェリルさん! |
シェリル | あら。 |
ミランダ | あ、あの私、主演の…あ。 |
シェリル | ちゃんと登って来てるのね。 |
ランカ | はい。 |
シェリル | ほらアルト。あんたも何か言ってあげなさいよ。 |
アルト | ……よぉ。 |
ランカ | どうして? |
アルト | 命令さ。例のこいつのドキュメンタリーもSMSが全面協力とかで。 |
助監督 | 失礼ですけど、あなた、早乙女アルトさんでは? |
アルト | あ、あぁ。 |
助監督 | あのう、映画に出てくださいませんか? |
アルト | ええ!? |
助監督 | 見ましたよ、あなたの舞台。桜姫東文章の桜姫。 |
アルト | ……。 |
ランカ | 桜姫? |
ミーナ | あ~ん、美人! |
モニカ | 本当にこれアルト君なの? |
ラム | 3年前の公演です。桜姫東文章。 |
キャシー | 歌舞伎の演目の中でも、屈指の濡れ場がある作品で、彼が演じた桜姫は、いまだ多くのファンを持つそうよ。 |
ミーナ | もったいなぁい。それがどうして戦闘機パイロットに? |
キャシー | さぁ。いろいろあるみたいよ。彼にも。 |
社長 | お願いします。あなたが出てくれれば、ランカちゃんの出番を増やしてくれるそうなんです。 |
立ってるだけでいいそうですから。どうか~。 | |
アルト | 勘弁してくれ。俺はもう芝居はやめたんだ。しかも女装なんて……。 |
ミハエル | 逃げんのか? |
アルト | ち、違う! |
ミハエル | ランカちゃんのためだぜ。それに、その方がお前も楽になるんじゃないのか?いろいろと。 |
アルト | 分かったような口を利くな! |
ミハエル | はぁー。 |
ランカ | 驚いたぁ。アルト君が歌舞伎のおうちの跡取りだったなんて。 |
シェリル | そう?私は知ってたけど。触れられたくないみたいだから、突っ込むのをやめてたけど。有名人よ、嵐蔵・早乙女は。 |
ランカ | ルカ君も? |
ルカ | 一応、先輩家を継ぐのが嫌で、お父さんと大喧嘩してパイロットになったらしいって。 |
ランカ | そうなんだ。 |
ルカ | ランカさん? |
ランカ | えぇっと。ちょっとね。 |
ルカ | あぁ…。 |
助監督 | どうした? |
スタッフ | シーン47で問題が……。主役の彼、水中撮影は契約に入ってないからやらないって。 |
助監督 | なに!?で、監督は? |
スタッフ | あぁさっき釣竿持ってウロウロしてましたけど。 |
助監督 | マオ役のユウちゃんも遅れてるし、この撮影呪われてるのかぁ。 |
スタッフ | カドゥンの呪いっすかね? |
助監督 | 馬鹿言ってないで監督探してこい! |
スタッフ | あ、はい。 |
アルト | おい、あんた。 |
助監督 | はいはい、今度は何!…あ!? |
スタッフ | 急いでください。もう撮影が……。 |
運転手 | あぁ? |
スタッフ | うわぁああ! |
ランカ | うわぁーー。綺麗ー。 |
監督 | おぉ! |
レオン | 約束どおり、監視はつけてませんよ。 |
グレイス | これが問題のバルキリーとバジュラに関して、我々が知るデータだ。 |
レオン | 引き換えに、こちらは何を。 |
レオン | なるほど。頂いた情報が真実という保証がない限り、何も約束はできませんが。 |
グレイス | フ。この船はエデン原産の生物、ヒュドラを移入していたな。 |
レオン | それがどうか? |
グレイス | いずれ分かる。バジュラの本当の恐ろしさをな。 |
ランカ | え? |
助監督 | アクション!! |
ルカ | これが最新のVF-25。 |
子供たち | うわぁ。 |
子供たち | すげぇ。 |
子供たち | かっこいい。 |
ルカ | 撮影後、CGでVF-0に加工されちゃうんだけどね。 |
アルト | おいルカ。ランカは見なかったか? |
ルカ | ランカさんなら岬の方に。 |
アルト | 分かった。 |
シェリル | でぇ?結局女装するの? |
アルト | 断った。 |
シェリル | なぁ~んだ、残念。せっかく伝説のお山(女形)が見られるかと思ったのに。 |
ボビー | ンフフ。 |
アルト | その代わり、水中撮影のスタントを引き受けてきた。シンの代役だ。 |
ルカ | それって、シーン47のことですか? |
アルト | あぁ、そんなことを言ってたなぁ。 |
ルカ | 大胆ですねぇ。 |
シェリル | 何が? |
ルカ | キスシーンがあるんです。マオと。 |
アルト | …ええ!? |
ルカ | あ、先輩まさか知らずに……。 |
アルト | ……知ってたさ。 |
シェリル | へぇ~。じゃあ、するんだ。キス。 |
アルト | ……。なんてことないだろ。キスぐらい。 |
助監督 | えぇ!?本気ですか? |
監督 | うん。 |
スタッフ | 大変です。ユウちゃんの乗った車が。 |
ランカ | はぁはぁはぁはぁ。あぁ! |
ランカ | やだ……誰か。あ、いやぁぁぁぁーーーー!! |
アルト | !?ランカ。 |
ランカ | !! |
ランカ | アルト君……。 |
アルト | &ランカ | うわぁぁぁーーーー!! |
ランカ | イヤ…。死んじゃう。お兄ちゃん。イヤぁ。 |
アルト | 誰だ! |
ブレラ | ブレラ・スターン。 |
アルト | ブレラ……。 |
ランカ | ん……。 |
アルト | 目が覚めたか? |
ランカ | 私……あ!いきなりヒュドラに。どうして? |
アルト | 覚えていないのか? |
ランカ | あっ……もしかして。 |
アルト | あ、いや、俺は……。 |
ランカ | ありがとう。いつも、助けてくれるんだね、アルト君。 |
アルト | ……。 |
アルト | 涙を拭けよ。みんなが見てるぞ。 |
ランカ | うん。 |
ルカ | あぁ!来ましたよ。 |
アルト | &ランカ | ? |
社長 | ランカちゃん。ニュースですよ。ウルトラスーパービックニュースです! |
ランカ | 私がマオ!? |
社長 | しかも、ランカちゃんが歌っていた歌を、メインテーマとして使いたいって。 |
ランカ | えぇ!? |
アルト | 良かったじゃないか。これで……。 |
アルト | 待て。お前がマオ役ってことは、俺とお前が……。 |
ランカ | え? |
アルト | キス……することに……。 |
ランカ | キスって……エェーーーー!? |
グレイス | 疑われるような行動は禁じていたはずだ。お前は過去を取り戻したいのだろう?なら二度と勝手な行動はするな。 |
助監督 | 気をつけろよ! |
ボビー | どうしてすぐ引き受けないの?アルトちゃんとキスするの、イヤ? |
ランカ | ……。 |
シェリル | まだ決心ついてないみたいね。 |
アルト | 仕方ないだろ。事が事だし。 |
シェリル | そう言うアルトはどうなのよ。 |
アルト | え? |
ランカ | 怖いんです。私にできるのかなって。キスのことも、お芝居のことも。私、マオのことよく分からなくって。 |
ランカ | お姉さんが、サラが好きになった男の人のことを好きになって、それで自分から…キスまでしちゃって。 |
ボビー | まだ本気で恋をしたことがないのね。ランカちゃんは。 |
アルト | 俺ならやれるさ。 |
シェリル | そうよね。大したことないものね。キスなんて。 |
アルト | あぁ。でも、あいつにはきっと……。 |
アルト | シェリル、お前……。 |
シェリル | フフ。本気にした?フフフフ。やだぁもう。何をマジになってるのよ。 |
自分で言ってたじゃない。キスなんて大したことないって。 | |
アルト | ってシェリル、てめぇ!! |
シェリル | アハハハハハ。 |
ランカ | ……。 |
ボビー | ランカちゃん? |
ランカ | 監督、やらせてください。私にマオを! |
ランカ | あぁ!っぱぁ。 |
アルト | 本当に、いいのか? |
ランカ | 今なら分かる気がするの。マオの気持ちが。 |
助監督 | ではシーン47、カット11。アクション! |
アルト | んん!? |
ランカ | シン。お姉ちゃんのこと好きなの?私を見て。私だって、あなたのことを……。 |
オズマ | 因縁か。お前がドクターマオの役をやることになるなんてな。 |
シン役 | 聞こえるよサラ。君や、そしてマヤンの人々の歌が。 |
ランカ | やっぱりシンは、鳥の人ね。 |
アイモ~鳥の人(エンディング)
司会 | それでは出演者の方々にご挨拶いただきましょう。まずは主演のミス・ミランダメリン。 |
司会 | そしてマオ役を射止め、フレッシュな歌声で我々を魅了してくれた、ミス・ランカリー。 |
シェリル | 答えてあげなさい。 |
ランカ | え? |
シェリル | みんなあなたを呼んでいるのよ。 |
ランカ | え? |
監督 | 昨日までの君は何者でもなかったが、伝説は今ここから始まる。 |
アルト | (おめでとう、ランカ) |
予告 | スターダムへ登り始めるランカ。だがその道は、アルトたちとの距離を広げていき……。 |
次回「ミッシング・バースデー」戸惑いの歌、銀河に響け。 |