Taking democracy to the stars

最終更新:

evenewsjapan

- view
メンバー限定 登録/ログイン
担当 Kapp
記載日 2008/12/20
原文 http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/7785647.stm

イギリスのニュースサイトBBCで『星々にせまる民主化の波』という題材でEVE Onlineが取り上げられました。EVEではみなさんご存知の通り、The Council of Stellar Managementという、プレイヤーの投票によって選ばれた代表者たちで構成される議会が発足し、EVEのゲーム内容に様々な影響を与えています。実社会の経済学者で、EVE Onlineでの経済分析と構築に携わるPetur Oskarsson氏は、この動きをどのように見ているのでしょうか。


Taking democracy to the stars


アイスランドは、世界でも最も古く民主主義が成立した国家として知られている。
そう、彼らは現に今も最古の国会議事堂で政治を行っているのだ。

つまりは、アイスランドで開発されたEVE ONLINEの世界で世界初のバーチャルな民主主義が誕生したとしても、それは何ら不思議なことではないのである。

CCPによって提唱されたThe Council of Stellar Management(EVE Online 惑星議会)は、今ちょうど2回目の議員選挙を行っているところだ。プレイヤーの投票によって選ばれた9名から成るこの議会は、アイスランドにて2週間にもおよぶミーティングでお互いの意見を交わすことになる。そしてこの議会における決定が、直接ゲームの内容に影響を与えるのである。


- 始まりのとき -
現実世界と同じように、EVEにおける民主化への動きはゲーム内で起こったあるスキャンダルがきっかけとなった。2007年、当時EVEのプレイヤーでもあった、あるCCPのプログラマーがその立場を利用して自分の所属するアライアンスに有利な操作を行ったのである。

これを知ったプレイヤーコミュニティは激怒し、その怒りはゲームサービスそのものも破壊しかねないほどであった。これを受けて、CCPは即座に不正防止策を講じ、ようやく事なきを得たのである。そしてこの不正防止策の一環として惑星議会が発足し、プレイヤーコミュニティは自らゲーム世界の見直しができるようになった。

大勢のプレイヤーが集まってゲームをプレイするMMOゲームは、ひとつの人間社会とも言うことができる。当然、だれもいない社会には誰も魅力を感じないものであり、もしゲーム会社がプレイヤーを満足させることができなければMMOのゲーム世界はたちどころに廃墟と化してしまうのである。つまり、プレイヤーとCCPとの間の信用回復は必要不可欠であったのである。

この議会の選挙は実際にゲーム内で告知され、各立候補者はウェブサイトやブログ上で自身の公約(マニフェスト)を訴えた。
『僕の場合は、The West Wing(邦題:ザ・ホワイトハウス)から選挙活動のヒントを得たんだ』と、惑星議会の第一回選挙で当選を果たし、議長に就任したAndrew Cruse氏は言う。
彼は、 EVE Onlineの世界が巨大アライアンスに支配されることを望まないある小さなゲーム内企業の代表で、わずか45票で接戦に勝ち議席を獲得したのだった。

また、CCP側から惑星議会の設立に尽力したPetur Oskarsson氏は、CCPは彼らの積極的な参加ぶりに非常に驚いているという。
『議会の代表のみなさんは本当にすばらしい人たちばかりで、EVEのために本当に力を尽くしていただいています』と彼は我々(BBC)に語る。
また一方で議会の代表であるCruse氏も、CCPが非常に良く議会の意見に耳を傾けてくれ、今のところ期待以上のことをやってくれていると評価している。


- 力による政治 -
しかしながら、ゲームの民主化というものは現実と比較すると、どちらかというと慈善的な独裁政権にならざるを得ないものである。
いくら惑星議会が民主的に選ばれたといっても、CCPが彼らの要求を全て受け入れるという義務はどこにも無いのである。
『彼らは意見を出すことができますが、決定権があるということではありません』とOskarsson氏は言う。

また、This Gaming Life 誌でゲームの社会的役割について執筆しているJim Rossignol氏は『CCPは、技術的に開発者がどこまで対応できるかという点で、ある程度独裁的にならざるを得ない。ゲーム開発者とプレイヤーコミュニティの対立は必然的で不可避なものである。なぜなら、プレイヤーの要求はいつでも開発者の想像をはるかに超えるものだからだ』と説明している。

Oskarsson 氏は、EVEの経済システムを構築するという非常に重要で難しいプロジェクトに携わる人物だ。
『EVEにおける私の主な目標は、経済システムを出来る限りシンプルに、わかりやすくすることなんだ』『私が政治哲学に興味があるかって?Thomas HobbesやJacques Rousseau、Emmanuel Kantなどの著書は一通り読んでるよ』

しかし、そんな彼もアイスランドで古くから続く議会システムをEVE Onlineに取り入れることはやめたようだ。『やろうとはしたけどもね、ほとんど使い物にならないことがわかったんだ。』

彼はこの6ヶ月間、議会の代表者たちが有権者たちに対してより責任が持てるような仕組み作りに力を注いできた。ただ、このEVEにおける民主化の流れは、他の仮想世界へ伝播するようには見えない。というのも、他のほとんどのMMOゲームではゲームプレイヤーがいくつかのサーバーにわかれてそれぞれの世界の中でコミュニティ社会を形成することになるからだ。
たとえ、World of Warcraftに数百万のプレイヤーがいたとしても、数十のサーバーでコミュニティが分断され、1つのサーバーにはわずか数千人しかプレイヤーが集ることができない。
このような分断されたコミュニティ社会においては、おそらくEVE Onlineからはじまる民主化の波は伝播しないだろう。

その点、EVE Onlineは、ただ一つのゲーム世界の中に実に20万人以上のプレイヤーが集まって社会を形成しているのである。(他にはSecond Lifeなどがある)
『EVE Onlineはたったひとつのサーバー、ひとつの宇宙で構成されているのです』とRossignol氏は強調する。
『EVEの社会における議会の役割は、非常に大きなものになります。なぜなら、1人のプレイヤーに与える影響は、ひいてはこのたったひとつの宇宙にいるプレイヤー全員に影響を与えることになるからです』

また、EVE Onlineは、プレイヤーが場合によっては他のプレイヤーとの接触を避けることができるような他のオンラインゲームとは全く異なるアプローチで世界観が構築されていることも特徴である。
『我々はこのようなタイプのゲームを、「シングルプレイヤー同時接続型」と呼んでいます。なぜなら、これらのゲームは結局つきつめると、1人で遊ぶこととなんら変わりの無いものだからです』とRossignol氏は説明する。
『EVEの場合は、プレイヤー同士の交流がその根底にあるのです』

今、EVEにおける民主化は、現実世界と同じ問題に直面している。それは有権者の政治への無関心の問題だ。事実、議会選挙の投票率は、6ヶ月前の第一回の時に11%を記録してから、今回は8.5%にまで落ちている。
Cruse氏は、この投票率の低下を、この6ヶ月の間に多くの深刻な問題が解決したことの表れと見ているが、Oskarsson氏は、惑星議会を、有権者にとってより興味深い、意味のあるものにすることを次の目標ととらえてプロジェクトに携わっている。

またOskarsson氏は、彼のEVEで民主化システムを構築するという仕事が、彼の持つこれまでの現実世界における民主主義観を根底から覆すことになるかもしれないと言う。
『私は、何も無かった世界にひとつの民主化の小さな波を起こしました。これがどのように広がっていくのかを見ることによって、私は何かを教えられるような気がします』

『そう、これは現実社会に対するEVE Onlineへのメッセージなのかもしれません』とRossignol 氏はうなずいた。
『たとえCCPという政府が、国民(プレイヤー)から支持されない政府であったとしても、政府は国民1人1人に対して責任をもって政治を行いその内容に説明義務を持つ。それは健全な政府といえるのではないでしょうか』



----End of Article



















目安箱バナー