ジョージアに集まりだしたゲーム産業

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evenewsjapan

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2009/01/07
ジョージア州に集まりだしたゲーム産業担当:Kapp   →原文

アメリカのジョージア州アトランタではゲーム会社に対して税金をはじめ様々な「優遇」があるようです。CCPはここに新拠点を築き、更なるEVEの拡大を図ります。

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Eve Onlineはゲームではない。いや、これは別に書き間違いではない。数十万のゲームプレイヤーを虜にするこのゲームは、もはやゲームとは言えなくなっているのだ。 それは、ひとつの人間社会であり、実経済学の巨大な実験場でもあるのだ。誰の目からみても、それがゲームではないのは明らかだ。

EVEOnlineの開発会社、CCPへの取材旅行は、まるでお化け屋敷の見学ツアーのようであったが、ひとつまじめな目的があったのだ。それは、この3月に実装されることになるEVEの大型拡張アップデートが、間違いなく史上最大で最高のものになるということを確かめるというものだった。EVEOnlineは、何万年もの未来の、5000にもおよぶ星系からなる広大な宇宙を舞台に、プレイヤーがそれぞれの生きる道を選びながら、企業を立ち上げたり、時には1000人以上のプレイヤーを巻き込む戦争をおこしたりするオンラインゲームだ。

2003年のサービス開始以降、ゲームシステムは複雑に進化し続け、今や独自の経済市場を持つまでになった。
ゲームマスターとして、プレイヤーをサポートするSveinn Kjarval氏は、EVE Onlineを単なるゲームではなく、なんのしがらみもない、自分の好きなことが実現できるひとつの世界であると表現する。



1997年に3人のアイスランド人によって設立されたこの会社は、2007年末にアメリカ・アトランタのストーンマウンテンに北米の拠点を設立し、アトランタにゲーム産業のひとつの波紋をもたらした。世界有数の独立系ゲーム開発会社であるCCPは、現在360名の従業員をかかえ、そのうち100名がストーンマウンテンのオフィスに在籍している。そしてさらに数十名が翌年以降も採用される予定となっている。

CCPのCEOであるHilmar Petursson氏は、アトランタはゲーム産業の誘致に非常に積極的で、ゲーム開発の拠点を置くには非常に適した場所であり、これからも多くのゲーム会社がこの地にオフィスを設立することになるだろうと評価する。またCCPは、ここアトランタで12年間ゲーム開発を続けてきたWhite Wolfと経営統合を行い、そしてここに新しい拠点を設立したのである。

ジョージア州経済開発局の広報であるAlison Tyrer氏は、当局は「合衆国でもっとも優れたゲーム誘致政策を展開する」というスローガンのもと、エンターテイメント業界の誘致に取り組んできたと説明する。彼女によると、より良い環境でゲーム開発が行えるよう、ゲーム会社は最大で30パーセントの税額控除を受けることが可能であると言う。

州政府の発表によると、CCPを含めて現在少なくとも50社のゲーム会社がジョージア州にあり、1400名が地元から雇用された従業員であるという。さらに、ジョージア州で学ぶ1600人の学生を対象に、ゲーム業界に就職するための専門コースやカリキュラムが用意されているとのことだ。さらに州政府は、フルタイムで勤務するデジタルエンタテイメントの専門家からなるAsante Bradfordと呼ばれる組織を結成し、国家的なエンタテイメント産業の構築に真剣に取り組んでいる。『まあ、フルタイムでこんな役職の人間を雇うのはアメリカ広しといえどもうちの州くらいなもんですね』とTyrer氏は語る。



ところで、MMORPGで1100万ものプレイヤーを獲得するというひとつの事件を巻き起こしたBlizzardのWorld of Warcraftと比較すると、Eve Onlineはまだまだ小粒であるといわざるを得ない。

しかし、アナリストは、EVEが業界随一の高い成長率でシェアを伸ばし続けている点に注目している。リリースからの5年間に、合計8個もの無料拡張パックをリリースし、いまや30万人ものプレイヤーを魅了までに成長してきているのだ。全体の40%近くがアメリカからの接続で、プレイヤーの平均年齢は28歳となっている。

一般に、MMORPGは、サービス開始の初月に急激なアカウント数の伸びがあり、そこからプレイヤーが他の新しいゲームに移るなどして、尻つぼみにアカウント数が推移していく。しかし、Eveは、独自のバイラルマーケティング戦略と、口コミ広告効果によって、常にアカウント数を維持し、さらには成長を続けている。Eve Onlineと、WOWなどの他のMMOとを比べた時に、もっとも大きな違いは、Eveがただひとつのサーバーで運営されているということだ。他のゲームは、数千のプレイヤーが収容できるいくつかのサーバーに分割して運営されるのが普通である。『我々は、ひとつの同じ世界で全てのプレイヤーがゲームができるという点で、他のMMORPGより一歩ぬきんでているのです』と、Kjarval氏は語る。氏によると、このゲームサーバーはロンドンに保管されており、アイスランドからコントロールしているとのことだ。

また、CCPが多くの熱狂的で忠実なファンから支えられているという事実を、他のゲーム会社がうらやましがっていることは疑う余地がない。EVE Onlineのプレイヤーの5分の1は、サービス開始から5年間、ゲームを続けてきているのである。CCPの従業員たちは、CCPは成長の方向にむかってまっすぐに進むことができると確信している。

EVEはインターネットからクライアントソフトを無料でダウンロードし、月額15ドルのプレイ料金でゲームを遊べることができるが、これに加えて、3月10日より、世界的にゲームソフトの販路を展開するアタリ社によって、店頭でもパッケージ版が購入できるようになる。そしてこの動きは、次の大型拡張パックのリリースに同調するタイミングで行われる。

CCPのリードエコノミストのEyjolfur Gudmundsson氏は、3月の拡張パックの一番の目的を、プレイヤーに新しいゲーム体験を提供することとし、現在、アイスランドとアトランタの開発チームで総力をあげて開発に取り組んでいると説明 する。拡張パックでは、船をプレイヤーが自由に設計して組み立てることができるようなり、奥深いカスタマイズを楽しむことができるとのことだ。また、同時にリテールパッケージ版が、店頭に並ぶことで、さらに多くのプレイヤーがEVEに参加してくれるようになることを氏は期待しているという。

レイキャビクの港を見渡す丘に建てられていた古びた魚の加工場を利用して設立されたCCPは、2008年の初めよりはじまったアイスランドの貨幣価値の下落と、銀行システムの破綻により引き起こされた経済危機の中で、見事に成功を収めることができた。『我々の収入は、ドルおよびユーロベースで入ってきていますので、経済危機の影響を受けることなくうまくやってこれました。従業員たちもよくやってくれました。』とGudmundsson 氏は言う。



CCP本社のオフィス内は、レゴブロックやボードゲームで散らかっており、従業員たちは、20フィートもあるタンクのそばでビリヤードを楽しむ。またクリスマスシーズンには、事務員が真っ赤なサンタ帽子でクリスマスを祝う。さらに、彼らの子供たちは学校が終わると自由にオフィス内で遊ぶことができる。もちろん遊び好きな彼らではあるが、仕事はまじめに真剣に取り組んでいる。

3月の拡張パックの実装後、開発チームは、次のゲーム開発プロジェクトにとりかかることになる。それは、 White Wolfの作品である「World of Darkness」の世界観を取り入れたオンラインゲームプロジェクトだ。『我々のビジネスは、メンバーが非常に長い時間サービスを利用し続けるという点で、Facebookのようなものだと考えています。私たちが、より良い仕事を続ける中でゲームを拡張し続けるかぎり、私たちの製品とビジネスは価値ものとして利用し続けられるでしょう』とHilmar Petursson氏は語った。


※訳者注:Facebook :全米の企業・大学・高校をつなぐアメリカのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)。2004年2月にサービス開始。2006年7月現在、登録者数は800万人以上。


















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