周囲を広大な森に囲まれた、おおよそ人が寄り付かないであろう場所に建つ
不釣合な程大きな邸宅。
赤レンガ造りに手入れの行き届いた庭。
中央には噴水まで設置されており、さながら貴族の屋敷のようである。
不釣合な程大きな邸宅。
赤レンガ造りに手入れの行き届いた庭。
中央には噴水まで設置されており、さながら貴族の屋敷のようである。
その屋敷の地下、長い階段を下った先にある部屋。
そこに佇む黒いゴシック調のドレスに身を包み、艶のあるブロンドの髪をなびかせる
小柄な少女。
彼女は部屋にある無数のモニターに映しだされる、様々な映像を無表情に見つめていた。
その時薄闇から乾いた足音が響き、少女は振り返る。
そこに佇む黒いゴシック調のドレスに身を包み、艶のあるブロンドの髪をなびかせる
小柄な少女。
彼女は部屋にある無数のモニターに映しだされる、様々な映像を無表情に見つめていた。
その時薄闇から乾いた足音が響き、少女は振り返る。
「あら、お早いお着きね」
「黒百合のように可憐なお嬢様の頼みとあらば、喜んでお呼ばれしますよ」
暗がりから現れた血のように赤黒い影。
影が少女に近づくと、モニターの薄明かりに照らされ少しずつ人の形が浮かび上がっていく。
影が少女に近づくと、モニターの薄明かりに照らされ少しずつ人の形が浮かび上がっていく。
黒のブーツに赤い軍服のような装束に身を包み、若干ウェーブのかかった銀髪の青年。
襟には階級章らしき刺繍が施され、胸には剣と鳥をあてらった銀の勲章。
知っている人間が見れば、それは軍のエースを示す勲章であることがわかる。
姫に忠誠を誓う騎士のごとく、青年は跪いて少女に対し深々と頭を下げる。
襟には階級章らしき刺繍が施され、胸には剣と鳥をあてらった銀の勲章。
知っている人間が見れば、それは軍のエースを示す勲章であることがわかる。
姫に忠誠を誓う騎士のごとく、青年は跪いて少女に対し深々と頭を下げる。
「うふふ、ありがとう。でも今回、貴方の心を動かしたのは別の女性(ヒト)ではなくて?」
顔を上げた青年に悪戯っぽい笑みを浮かべる少女。
「とんでもない。本心からそう思っていますよ?ですが…」
「今回のご報告には実に興味深い点がありましてね。わたし自身でいち早くそれを見たかったので」
「そうでしょうね。特に貴方にとっては…」
少女がホログラフ型のキーボードを操作すると、モニターの画像が切り替わってゆく。
青年はモニターに映し出された、白鳥のような純白と淡い碧色の衣装の20歳前後と思われる女性を見つめる。
青年はモニターに映し出された、白鳥のような純白と淡い碧色の衣装の20歳前後と思われる女性を見つめる。
「お嬢様が感知したエーテルの塊。そしてその力を操ったと思われるそよ風の如き麗しい女性…」
「貴方のお眼鏡に叶った…と言うところかしら?」
「ええ、実にそそられますね。愛情すら抱くほどに… 是非、口説き落としたいものですよ」
そういいながらモニターに拡大された女性を指でなぞる青年。
その口元は微笑んでいるようにも見える。
青年の動作を無表情に見つめ、ため息をつくと少女は再び口を開く。
その口元は微笑んでいるようにも見える。
青年の動作を無表情に見つめ、ため息をつくと少女は再び口を開く。
「あら、お盛んですこと。 でも女性を口説きたいならせめて前のファスナーぐらいは閉めておきなさいな」
「これは失礼を。 慎みのない愚息で申し訳ない」
咳払いしながらファスナーを上げなおす青年を横目にくすくすと笑う少女。
だがモニターに視線を戻した少女の目は、再び冷ややかな輝きを放つ。
だがモニターに視線を戻した少女の目は、再び冷ややかな輝きを放つ。
「組織としてはデュークの件ともどもしばらく静観、という結論が出ていることはお忘れなくね?」
「ええ、それは勿論。今回は表の顔で接触させてもらうつもりです」
青年はモニターから目を離し少女に一礼すると、踵を返して出口の扉へと歩き始める。
「ご健闘をお祈りしていますわ、ブレイズ…いえ、連合軍特務大尉殿」
少女の会釈を見送りに、ブレイズと呼ばれた青年は扉の向こうに姿を消していった。