688 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 21:31:14 ID:???
薄暗い中でも、金髪は目立つものだ。一目で彼女だとわかる。
薄暗い中でも、金髪は目立つものだ。一目で彼女だとわかる。
「…これはこれは、、、赤木博士…」
NERVからも代表者が出席するとは聞いていたが、技術部長じきじきのお出ましとは……
おそらく隣に座っているのは葛城作戦部長だろう。時田に静まりかけていた緊張感が一気に戻ってくる。
おそらく隣に座っているのは葛城作戦部長だろう。時田に静まりかけていた緊張感が一気に戻ってくる。
「質問よろしいでしょうか?時田主任」
「えぇ、それはもちろん」
「えぇ、それはもちろん」
会場内のほかの招待客の視線も、この金髪の女性に自然と集まる。
「先日頂いた仕様書を拝見しましたが…二号機に搭載される新型N2リアクターの出力は、一号機の
約2倍近いとの記述がありましたが、それに見合う冷却系は備えているのでしょうか?」
約2倍近いとの記述がありましたが、それに見合う冷却系は備えているのでしょうか?」
当然、想定していた質問である。おおよそ最初に疑問が集まるのはN2リアクターの安全性だ。
無論、時田たちも何の知恵なしに新型N2リアクターを搭載したわけではない。当然だ。
無論、時田たちも何の知恵なしに新型N2リアクターを搭載したわけではない。当然だ。
「まず、新型N2反応炉は発電機構が一号機とまったく異なっており、熱効率面でかなり改善しています。
出力は倍ですが、排熱量も倍、というわけではありません。
加えて、二次冷却装置には冷却材による液冷のほか、ペルチェ効果を用いた大型サーモモジュールが
取り付けられており、余剰電力をこのサーモモジュールにまわすことで強制冷却も可能です」
出力は倍ですが、排熱量も倍、というわけではありません。
加えて、二次冷却装置には冷却材による液冷のほか、ペルチェ効果を用いた大型サーモモジュールが
取り付けられており、余剰電力をこのサーモモジュールにまわすことで強制冷却も可能です」
もともとN2を搭載する初のJAになる予定だった二号機。
その冷却システムに盲点は、ない。
その冷却システムに盲点は、ない。
689 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 21:32:58 ID:???
「しかし、JAは使徒との近接戦闘を想定した兵器。万が一の場合、冷却装置の故障による炉心融解の
危険性がないともいえないのでは?いくら放射性のないN2とはいえ危険なことには変わりありません!」
「しかし、JAは使徒との近接戦闘を想定した兵器。万が一の場合、冷却装置の故障による炉心融解の
危険性がないともいえないのでは?いくら放射性のないN2とはいえ危険なことには変わりありません!」
これも想定済みの質問だ。もっとも、JAが三度も使徒戦に勝利したことで、この手の疑問を投げかけてくる
人物は少ない。先の質問も含めて、あくまで社交辞令的な質問ともいえる。
人物は少ない。先の質問も含めて、あくまで社交辞令的な質問ともいえる。
「そうですね。しかし、JAは一号機、二号機ともに、一次冷却系に異常が発生した場合はESSが、
二次冷却系に異常が発生した場合はECCSが作動するようになっています。
万が一のことがあったとしても、NERVの足を引張るようなことはありませんよ」
二次冷却系に異常が発生した場合はECCSが作動するようになっています。
万が一のことがあったとしても、NERVの足を引張るようなことはありませんよ」
「では、冷却や動力、駆動系ではなく、先に紹介されていた制御系が故障した場合には?」
殴られた拍子にプラグが抜けました、などということはないのか。
リツコに限らず誰もが感じるであろう戦闘ロボットの不安面である。
リツコに限らず誰もが感じるであろう戦闘ロボットの不安面である。
「JAの制御システムは、ほかの部分とは独立した特殊なケージ内に収められています。
ケージは特殊合金とカーボンフレームで構成されていて、耐熱・耐衝・耐放射能に非常に優れたものです。
無論、システムそのものにも冗長性がありますので、仮に故障したとしても問題はありません」
ケージは特殊合金とカーボンフレームで構成されていて、耐熱・耐衝・耐放射能に非常に優れたものです。
無論、システムそのものにも冗長性がありますので、仮に故障したとしても問題はありません」
JA内部の重要部分には、もともとSSTO(単段式宇宙往還機)用に開発された技術が多く詰め込まれている。
厳しい環境下での運用という面に限れば、リツコたちが思っている以上に優れているのだ。
厳しい環境下での運用という面に限れば、リツコたちが思っている以上に優れているのだ。
「では、通信系は?」
突然、疑問を投げかける声が変わる。質問したのはリツコの隣で今まで黙っていたミサトだ。
690 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 21:47:57 ID:???
JAは言うまでもなく無人遠隔操作型のロボットだ。エヴァとは異なりパイロットに負担をかけるようなことはない。
遠隔操作ゆえに陸戦兵器として運用するには多くの問題点が立ちはだかっていたのも事実だが、
現実に使徒殲滅に成功した今、通信系の問題はあまり重要ではない。
JAは言うまでもなく無人遠隔操作型のロボットだ。エヴァとは異なりパイロットに負担をかけるようなことはない。
遠隔操作ゆえに陸戦兵器として運用するには多くの問題点が立ちはだかっていたのも事実だが、
現実に使徒殲滅に成功した今、通信系の問題はあまり重要ではない。
「そうですね、JAは無線による遠隔操作を実現していますが…無論、使徒からの攻撃には十分耐えうる強度の
通信アンテナを内蔵していますし、通信装置も暗号化されたデジタル通信が2系統、補助用のアナログ通信も
ついています。特に問題になるような点はありませんが…」
通信アンテナを内蔵していますし、通信装置も暗号化されたデジタル通信が2系統、補助用のアナログ通信も
ついています。特に問題になるような点はありませんが…」
思わぬ質問にうろたえつつも、時田は答える。一方ミサトは、そう、とだけ返事を返すとそのまま質問を終えた。
いつもの雰囲気とは違うミサトに少し違和感を覚えた時田ではあったが、再びリツコが質問を投げかけたことで
そのことは忘れてしまった。
いつもの雰囲気とは違うミサトに少し違和感を覚えた時田ではあったが、再びリツコが質問を投げかけたことで
そのことは忘れてしまった。
その後、しばらくリツコからの技術的質問が続いたのち、政府関係者、各国の首脳からもいくつか質問をうけたが、
無論リツコに比べればたいした疑問ではない。こなしているうちにあっという間に時間が過ぎる。
無論リツコに比べればたいした疑問ではない。こなしているうちにあっという間に時間が過ぎる。
「では、そろそろ時間ですので公試運転のほうに移りたいと思います。では、会場の皆さんは管制室のほうへと…」
職員の誘導にしたがい、管制室への移動が始まる。
実演会のためだろうか、急ごしらえと分かるカーペットや観葉植物など、普段の研究室の無機質感を取り除く努力が
いたるところにチラホラと見られる。
とは言っても、さすがに研究一筋の人間が多い施設である。お世辞にもセンスがあるとはいえないようだ。
実演会のためだろうか、急ごしらえと分かるカーペットや観葉植物など、普段の研究室の無機質感を取り除く努力が
いたるところにチラホラと見られる。
とは言っても、さすがに研究一筋の人間が多い施設である。お世辞にもセンスがあるとはいえないようだ。
691 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 22:08:39 ID:???
「ミサト、さっきは何かあったの?ずいぶんとおとなしかったじゃない」
「あぁ、あれね…」
「ミサト、さっきは何かあったの?ずいぶんとおとなしかったじゃない」
「あぁ、あれね…」
パンフレットと双眼鏡を片手に第一研究所実験管制室へ向かう。
「いずれはエヴァが前線に立って戦う日が来るわけじゃない?」
「そのためにエヴァが建造されたんですもの、それはそうよ」
「そのためにエヴァが建造されたんですもの、それはそうよ」
リツコは歩きながらパンフレットを丹念に読んでいる。きっと内容に落ち度がないか粗探ししているのだろう。
「なんかさ、ちょっと考えちゃったのよね。アタシ達、子供たちに戦争を強要してるわけじゃない?」
「戦争じゃないわよ。あなたも分かってるでしょう?私達が生き延びるためには使徒を倒すしかないのよ」
「それはわかってるんだけど……」
「戦争じゃないわよ。あなたも分かってるでしょう?私達が生き延びるためには使徒を倒すしかないのよ」
「それはわかってるんだけど……」
普段とは違う、友人のあまりに神妙な雰囲気に、リツコは顔を上げてミサトを見遣る。
692 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 22:11:48 ID:???
「エヴァも遠隔操作できないかな、なぁんて思っちゃったりしてね」
「それは作戦部から技術部への正式な要請ととらえればいいのかしら?」
「エヴァも遠隔操作できないかな、なぁんて思っちゃったりしてね」
「それは作戦部から技術部への正式な要請ととらえればいいのかしら?」
少し茶化しながら、ミサトを覗き込むリツコ。
「そりゃぁね。余力があれば。でも、エヴァってパイロットが直接エントリーしなきゃ動かないんでしょ?」
「それはどうかしら?まだエヴァには分からないことが多いから…」
「それはどうかしら?まだエヴァには分からないことが多いから…」
父の敵をとるべく、使徒への復讐を誓ってきたミサト。当然、JAは、その復讐を邪魔する存在であった。
一方で、遠隔操作で決して犠牲者を出さないというコンセプトに基づいて作られたJAが戦いつづけるのを
見つづけているうちに、自分が子供達を戦場に立たせるという事実――そして、罪悪感を意識せざるを得なくなっていた。
かつてセカンドインパクトという惨禍で、10代という貴重な時間を失った少女時代。
今自分がやっていることは、サードインパクトを防ぐ、という名目で、子供達から10代を奪っていることでもあるのだ。
一方で、遠隔操作で決して犠牲者を出さないというコンセプトに基づいて作られたJAが戦いつづけるのを
見つづけているうちに、自分が子供達を戦場に立たせるという事実――そして、罪悪感を意識せざるを得なくなっていた。
かつてセカンドインパクトという惨禍で、10代という貴重な時間を失った少女時代。
今自分がやっていることは、サードインパクトを防ぐ、という名目で、子供達から10代を奪っていることでもあるのだ。
「忘れなさい、ミサト。
彼らがやっていることも、貴方がやっていることも、人類の平和を守ることには間違いないわよ。
中途半端な悩みを持つほうが、あの子たちにとっては不幸になるわ」
「…中途半端な悩み、か。そうね。もしあの子たちを守るとしたら、アタシがやらなきゃいけないことだものね」
彼らがやっていることも、貴方がやっていることも、人類の平和を守ることには間違いないわよ。
中途半端な悩みを持つほうが、あの子たちにとっては不幸になるわ」
「…中途半端な悩み、か。そうね。もしあの子たちを守るとしたら、アタシがやらなきゃいけないことだものね」
NERVという超法規的組織に守られた自分と、何の後ろ盾もないものの信念だけで戦いつづける時田と日重工。
立場の違いとはいえ彼女の自分への懐疑は、もはや無視できないものになっていた。
立場の違いとはいえ彼女の自分への懐疑は、もはや無視できないものになっていた。
693 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 22:14:57 ID:???
【本編とは関係ないよ】
前回投下した設定が以外に好評のようで……嬉しい限りです。
ちょっとやりすぎたかななんて不安に思っていたので。いつも読んでいただき本当にありがとうございます。
【本編とは関係ないよ】
前回投下した設定が以外に好評のようで……嬉しい限りです。
ちょっとやりすぎたかななんて不安に思っていたので。いつも読んでいただき本当にありがとうございます。
さて、前回に続き、同じように補足説明です。。。(すいません!)チラシの裏ということで。
<チラシ>
劇中ではN2がなんなのか明示されていませんでしたが、(No Nuclearとかいろいろ諸説あるようですが、)
本FFのなかでは、極めて放射性の低い(半減期が短い)核反応の一種、ととらえて進めていきたいと思います。
やっぱりN2地雷とかきのこ雲でしたし、核反応のイメージを意識してるのは間違いないと思いますので。
(もしほかになんかオフィシャルの記述とかあったら知りたいので是非教えてください!!)
劇中ではN2がなんなのか明示されていませんでしたが、(No Nuclearとかいろいろ諸説あるようですが、)
本FFのなかでは、極めて放射性の低い(半減期が短い)核反応の一種、ととらえて進めていきたいと思います。
やっぱりN2地雷とかきのこ雲でしたし、核反応のイメージを意識してるのは間違いないと思いますので。
(もしほかになんかオフィシャルの記述とかあったら知りたいので是非教えてください!!)
で、JAは両機ともにN2リアクター、つまりN2炉心による核動力炉を持ってます。
ただ、原理的には軽水原子炉とかとちょっと違って、放射能がないので一次冷却水でタービン回してます。
そして、二次冷却水が冷却とか圧力調整とか。ポンプで直接水が使えるのもそのためってことにしておきます。
あんだけコンパクトに収まるのは、原子炉と違って放射線遮蔽壁が必要ないからかもしれません。。。
考えてみると、結構夢の装置のような気もw
ただ、原理的には軽水原子炉とかとちょっと違って、放射能がないので一次冷却水でタービン回してます。
そして、二次冷却水が冷却とか圧力調整とか。ポンプで直接水が使えるのもそのためってことにしておきます。
あんだけコンパクトに収まるのは、原子炉と違って放射線遮蔽壁が必要ないからかもしれません。。。
考えてみると、結構夢の装置のような気もw
694 :199-200 ◆/Pif9px8OM :2006/09/11(月) 22:16:55 ID:???
あとESSは緊急停止装置、ECCSは緊急炉心冷却装置、両方とも実際に原子炉についてる装置から名前借りました。
ペルチェモジュールはPC自作パーツのひとつから思いつきました。(前々から使いたかったのです。)
あとESSは緊急停止装置、ECCSは緊急炉心冷却装置、両方とも実際に原子炉についてる装置から名前借りました。
ペルチェモジュールはPC自作パーツのひとつから思いつきました。(前々から使いたかったのです。)
それからJAについては、スペースシャトルとかをちょっと意識しています。
最近知ったのですが、シャトルには5系統のコンピュータが搭載されていて、多数決で判断するそうです。
しかも、そのうち1系統はバグを防ぐため、ほかの4系統と違ったプログラムなんだそうです。
ちょwMAGIじゃん!と思わずにはいられませんよね。
最近知ったのですが、シャトルには5系統のコンピュータが搭載されていて、多数決で判断するそうです。
しかも、そのうち1系統はバグを防ぐため、ほかの4系統と違ったプログラムなんだそうです。
ちょwMAGIじゃん!と思わずにはいられませんよね。
スペースシャトルも実際の運用で問題点が露呈して、年月とともに改良してきてますし、
現場も巨大ロボットの建造現場に一番近い感じがするんじゃないかなと思ってます。個人的には。
現場も巨大ロボットの建造現場に一番近い感じがするんじゃないかなと思ってます。個人的には。
あと、JA一号機と二号機の関係は、エンタープライズ号とコロンビア号の関係みたいなものと思うとよいかもです。
エンタープライズ号は宇宙にいってないので知らない方も多いと思いますが…。
エンタープライズ号は宇宙にいってないので知らない方も多いと思いますが…。
それから、時田は制御システムは頑丈なんだぞ!とか言ってますが、第五使徒戦で、
最初に一撃でJAがやられてしまったのは、その制御システムのメモリをしっかりと固定してなかったからです。
いや、固定してたけど弱かったと。だから、外れてしまった。
それで、今度はがっちり固定しようってことになって、ボルトとか樹脂とかで固めてます。
…そんな舞台裏もあるといいなとも思ってしまう。
最初に一撃でJAがやられてしまったのは、その制御システムのメモリをしっかりと固定してなかったからです。
いや、固定してたけど弱かったと。だから、外れてしまった。
それで、今度はがっちり固定しようってことになって、ボルトとか樹脂とかで固めてます。
…そんな舞台裏もあるといいなとも思ってしまう。
</チラシ>