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デスマーチ2ネタバレかも?

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takugess

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デスマーチ2ネタバレかも?


一読後の感想がこれ。未読の方はスルーどうぞ。



ノッカーを響かせても、ドアの向こうからは返事は返ってこなかった。少し待ち-もう一度。やはり結果は同じ。
廊下を慌しく通り過ぎていく人間は、さして多くはない。しかし、立ち止まっていると一瞬視線が向けられる気がして、少し居心地の悪さを覚える。
意を決し、再びノッカーを響かせ。そして
「ナヴァール、用があると聞いたのだが・・・。失礼する。入るぞ。」
力をこめると、ゆっくりとドアは開いた。部屋の中は、執務机では足りずそこかしこに書類が積みあがっている。だがそれぞれが
きちんと分類され重ねられているせいか、雑然な印象は受けない。部屋の主を探して机へと近寄り-ふと視線が止まった。
一枚紙の書類ではなく厚みのある冊子。派手な図案が記されたページが無造作に広げられている。
場違いな印象に不審げな表情を浮かべながら目を走らせていると、ドアが派手な軋み音を立てた。
「ああ、ステラ、来てくれていたのか。悪かった、待たせてしまったかな?」
閉じられた瞳がステラを捉える。
「いや、今来たばかりだから。で、何だ、用というのは?」
「ああ、これを-」
ばさり、と地図が広げられる。そして一緒に書類の束が差し出された。
「エストネル側の警備隊の一部を、レイウォール、グラスウェルズの国境方向に移動させる事にした。
増強が必要な地点をピックアップして、こちらの部隊から配置を考えてほしい。」
「わ、私が?」
「この間言ったろう?きちんと仕事はしてもらうよ。私も、任せられる人間がいれば頼める仕事はできるだけ頼みたい。」
「レイヴォールからきたばかりの人間が、こんなことを?」
ナヴァールの表情が和らいだ。
「君が陛下をどれほど大切に思っているかは、以前から知れ渡っているよ。問題はないさ。」

そのまま、ナヴァールは別の塔に手を伸ばし、目を走らせ始めた。ステラも言われたままに地図を見つめる。と、ナヴァールが
また別の束を取り、慌しくドアに向かった。開いて表に声をかける。
「アキナ!すまないが。マルセルが第4公文書室にいるから、これも追加でチェックをと渡してほしい。結果はいままでの分とまとめて報告でいいと。」
「了解しましたあ!」
ばたばたばた、という足音が、閉じたドアの向こうに消えていく。ステラは、なんとも奇妙なものを目にした、といった表情になった。
「マルセル-マルセル・ベルトランか?最近は、お前の懐刀などと言われているようだが・・・」
ナヴァールの顔に僅かに、楽しげな-どこかいたずらっ子のような笑みが浮かぶ。
「ああ、予想以上に切れ者だ。使い甲斐がある。」
ステラの目が点になった。
「・・・・・・切・・・れ・・・者・・・?」
故郷で彼の名前とセットになっていた通称-裏目軍師、を口にはしなかったが。
「ステラ。他人の評価を、鵜呑みにしないほうがいい。」
口調に含まれた厳しさに、ステラははっとナヴァールを見直した。その表情が、再び柔らかくなる。
「機会を見つけて、話してみるといい。文官出だが、なかなか侮れない読みをする。
あの男の問題点は、己の分析眼に視野がついていかないことだな。
こんなことは起こらないだろう、そんな行動をとる人間はいないだろうと、自分の読みを否定してしまう。
まあ、もしその読みを実行に移せるような人間だったら、私や君もおちおちしていられないかもしれないが・・・」
そのまま、しばらく、ぱらぱらと書類の音だけが部屋に響いていた。
やがて、ステラが立ち上がる。
「こんなところでどうだろうか?」
ナヴァールは地図に書き込まれた印を目に収めた。
「ありがとう。これからも、よろしく頼む」
「礼などいらない。仕事なのだろう?いつでも呼んでくれ」
ゆっくりと部屋を出ると-少し足を止め、さっきの赤毛の少女の足音の方向へと歩みを向ける。
ナヴァールは、白羽扇という東方宝具が記された冊子をぱさり、と閉じた。どこか僅かに歪んだような笑みを浮かべて-。

終.

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