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Second――夜明けのスタンスチェンジ ◆KYxVXVVDTE



 朝が来た。
 殺し合いをやってようと何してようが、太陽は普段と同じように世界を照らす。
 都市に立ち並ぶビルを。森に並んでいる木々を。
 無惨にも棄て置かれた死体を。そして、今もまだ苦しみ生き抜く参加者達を。
 海岸に立つ緑の髪の少年もまた、その光を受けている。
 名をリゼルグ・ダイゼルというその少年は、海岸に来てからずっと揺れる波間を見続けていた。
 どこかで時を固定されてしまったのか、少年はそこから動こうとしなかったが――

 ふと、何かに気付いたように顔を上げた。

「……、…………?」

 何かを呟くと少年は、身を翻して走り出す。
 ……まさかばれてはいないだろうが、一応覚悟しておく必要があるかもしれない。
 何故なら彼は、私を殺した張本人なのだから。
 心の声にまで注意を払って別人に扮しても、隠し通せないことって、けっこうありますよね。……よねー?

◇◇

 ギャルゲ高校に向かって駆けている最中、リゼルグはずっと後悔していた。

 どうしてもっと早く気付かなかったのだろうか?
 心の奥に感じていた違和感の正体に。

 頭を冷やして考えてみたら、それは誰でも気付くようなこと。

 木で出来た五角形の物体――聞いた話では、チェスと同じような日本のボードゲームの駒。
 いくら人と同じサイズにまで大きくなったからといって、

 そんなものが人を乗せて飛ぶか?
 口も無いのに喋るか?

 いや、有り得ない。

「もしかしてあれは、O・Sだったんじゃ」

 O・S(オーバーソウル)――物に霊を宿らせる、シャーマンだけが使える技術。
 もし主催がそれを使えるとしたら。喋ったり飛んだりする不思議さも、霊が憑衣していたとすれば説明がつく。

「それに、あの時……蓮君とあの植物が死んだ時彼らの霊が見えなかったのも、主催がシャーマンの事を知ってたのなら当然の措置だ。
 死んでも霊として活動できる僕らがここに居るのが何よりの証拠じゃないか。何でもっと早く気付かなかったんだ――」

 走りながらも聞こえてきた放送に耳を傾け、リゼルグは自分の考えに確信を持った。
 死者が多すぎるのだ。73人。単純に考えれば霊も73体居なければいけない。
 なのに、リゼルグがこれまで移動して来た中で見た霊の数はゼロ。

 おかしい。リゼルグと道蓮はどこかで、霊を見ていなければおかしい。

 考えれば考えるほど膨れ上がっていく推測に、リゼルグの体は動かされていた。
 ――確かめないといけない。
 いくら筋が通っていても、実際に確かめないことには推測は推測の域を出ないからだ。

 だからリゼルグは、雪広あやかやスペードの2と再び会うかもしれない危険を犯して、ギャルゲ高校の校庭に翻してきたのだ。



「――――いい推理ですねー。前提が完全に間違ってることを除けば、概ね正解ですよ」


「でしょう? そう言ってもらうと、探偵を目指す僕としては嬉しいよ。
 さすがに、こんなオチだとは思ってなかったけどね」

 そして――結論を出してしまうと。リゼルグの推理は間違っていた。

「逃げてきて正解でした。まさかこんなに早く気付かれるなんて、思っていませんでしたから」

 リゼルグの手の中にある木片――肉片と一緒に校庭に散らばっていたものから、声が発せられている。

 さらに周囲に散らばる木片を観察すると、機械のようなものが木片から晒けだされていた。

「霊については、私も知らされていないので何も言えませんが……私に分かることだけは、話しましょう。
 誰にもばれなければ隠し通そうとしていた、私が逃げてきた本当の理由を」

 スピーカーの向こうの女性はか弱い声でそう言った後、リゼルグにことのあらましを語り始めた。


「この“将棋の駒”は、このゲームのために社長が作らせた物でして……えっと、他にも遊び心で色々作ってたみたいでした。
 エリア一つ更地にしかねない爆弾をミニサイズにしたり、棒の束に強力な催眠作用を付加してみたり、呪いの装備を作ってみたり、車椅子を高速飛行させたり。
 それで私……ちょっとした出来心というか、
 放送まで暇な時間が長かったので、このスピーカーを仕込んで誰かとお喋りしようとしたんです」

 女性はクローバーの4と言う名前で、半ば強制的に放送役として主催に連れてこられていたらしい。
 しかし、本当に役割はそれだけ。放送までの6時間、彼女はずっと何も出来ないことになっていた。
 その退屈な時間を有効に過ごすため、彼女は色々な手を打っていたのだそうだ。
 支給品をデイパックに振り分ける作業の際に忍び込み、桂馬にスピーカーを仕込んだのもその一つだったのだとか。

「でも、僕に駒ごと植物を切られたことによって、内蔵していたスピーカーが外に出る事態が起こった」

「これでは主催に――キングハートと社長に、私が参加者と話していたことがばれてしまうかも……もしばれたら、死刑確定ものじゃないですか? だから、逃げて来たんです」

 偶然にもほぼ同じ時期に主催が参加者と接触する機会を作ったため、その期に乗じて社長の一人を殺害。
 上手くすりかわって会場に入り込み、主催から逃げて来たということだった。
「――だから今は、あなたと同じくこの島のどこかにいるんです」

 クローバーの4はそう言うと、小さく深呼吸をしたようだった。
 リゼルグの持つスピーカーに、吐息の音が伝わってくる。

 ノイズにも似たその音を聞いて……では無いが、リゼルグは二、三秒して顔をしかめた。
 思わぬところから手に入った情報。本当の主催の名前。社長が複数人いること。
 しかしリゼルグは――そんなことは関係なく、ある一点に疑問を持って、クローバーの4に問いかけた。

「――本当に?」
「はい、本当です」
「本当かなぁ」
「疑り深いですね」
「でも、本当だとしたらさ」
「はい?」


「僕は君のことが、許せないんだ」

 突然。リゼルグの声のトーンが、何の前兆も無しに黒く染まった。
 校舎の教室から雪広あやかやスペードの2が、一度でもその姿を捉えていたならばこう思うだろう。

 ――あそこだけ、まだ夜だ、と。


「君は主催側に居た。なら当然、参加者の動きも全部把握してたはずだよね。
 桂馬が君だったんでしょ? なら君は、あの植物が蓮くんを殺すことになるということも、薄々感付いてたはずだ」

 実際はレッドベジーモンが桂馬を発動した時点では、雪広あやか一行はクレア・スタンフィールドと戦闘していた。
 だから、クローバーの4は起こる未来を予測出来なかった。全ての参加者の動きを把握していても、一人一人の支給品が何なのかまでは分からない。
 偶然が重なり回避不可能となったのが、あの惨劇である。

 だがリゼルグは、そんなオチは付けたくなかった。

「どうして止めてくれなかったの? 君は止めれたはずだ。だって、見てたんだから。
 僕がワイヤーを持ってることも解ってたはずだ。なら、蓮くんを殺したら植物ごと切られるかもしれないことも、分からない訳じゃなかったはずだ。
 なのに、なんで見殺しにしたの? なんでそんなに余裕でいられるの? 君はこの島に逃げて来たんだろ? だったら君も――参加者になったってことじゃないの?」

 光を失ったままの目が、まだリゼルグの夜が明けてないことを伝えている。

 矢次ぎ早に質問を浴びせるのは、あの事故が事故だったと認めたくないからだろう。
 誰かのせいにしないと、自分を支えられない。
 リゼルグはそういう性質を、少なからず根本に持っているのだ。
 再び、唇が大きく動く。
「僕の両親はハオに殺された。ハオのことは今も憎んでる。僕の手で殺してやりたい。
 そして僕には君が、ハオと同じに見えるんだ。高いところから見下ろして僕を見下して、ほくそえんで。 その余裕な態度が、僕は凄く憎らしいんだ!!」

「あの、どうしたんですかいきなり……熱くならないでくださいよ。大きな声出されると困るんですけど」

「……今もこうして僕とお喋りするのが、君は楽しいみたいだけど。本当の理由だとか何だとか言ってさ。
 ふざけないで欲しいな。それで楽しめるのは、君だけだ」

 ――言葉の応酬がそこで、ピタリと止んだ。

 ほぼ時を同じくして、雪広あやかとスペードの2が怪しい洞窟に向かうことを決める。

 このまま時が止まっていたなら、3人は再会出来たのだが。
 しかし沈黙の時間は、すぐに破られる。

「……へぇ、言ってくれるじゃない。なら、これも分かるよね。私は、このマイクを潰して証拠隠滅も図れたんだよ?」

 沈黙は俗に言う嵐の前の静けさだったのか。不機嫌な声で丁寧語を捨てたのは、クローバーの4。

「でもそうしなかったのはね、リゼルグ・ダイゼル。そっちの方が、楽しいと思ったからだよ」
「……………………」
「それなのにさ、何? さっきから口答えばっかり。私は逃げても主催側だった者。あんたは惨めな参加者の一人だろ?
 それも、仲間が一人逝ったくらいでキレて心変わりしちゃうようなヘタレな参加者。
 つまんない。もっと派手に発狂しちゃえば良かったのに。今のあんた、見ててつまんないよ」

 リゼルグとは違って声のトーンも大きさも変わってないのに、口調だけでこうも変わるものなのか。
 突然の豹変、槍のように突き刺さる言葉にリゼルグは、

「……そこまで言われるのは心外だな」

 と返すしかなかった。
 さらに追い討ちをかけるように、クローバーの4は口を開く。

「蓮きゅん蓮きゅんってね、BLの類じゃないんだからいつまでも引きずってんなよ。
 復讐は幸せから最も遠い生き方だから、私、嫌いなんだ。見せんな、そんな姿。吐き気がする」


 リゼルグの眉がピクリと動く。雪広あやかとスペードの2は階段を降りる最中だった。
 せめてここで叫んでいれば何かしらの手掛りを残せたかもしれない。
 しかしそれより早く、クローバーの4が皮肉めいた言葉を浴びせる。

「まあせっかくお喋りも出来たことですし? 一つ、あんたに特大の情報をプレゼントしてあげるよ。
 本当は私の身の安全と情報で取引しようかと思ってたけど別にいいや。気分悪い時ってなんか暴露したくなるしさ――」

 この発言が、最後だった。

「このままだと雪広あやかは死んじゃいますよ? だってスペードの2は、主催側から送られたジョーカーなんですから」

◆◆

 リゼルグ・ダイゼルは現在、怪しい洞窟に向かって全速で駆けている。
 分かれてから時間が経っていて、雪広あやかとスペードの2がまだ学校内にいる可能性は低かった。
 校舎内を隅々まで探して時間を浪費するのに比べれば、放送で示された怪しい洞窟に向かった方が出会える確率は高い。
 そう判断して、リゼルグは校舎を振り返ることもせずに走り出したのだ。

(僕はクローバーの4に騙されてるのかもしれない)

 疑念が頭をよぎって止まない。
 しかし、初対面でしかも襲われかけた相手に、何も言わず付いていくスペードの2に違和感を覚えなかったと言えば嘘になる。

 確かめる必要は、ある。

(僕のわがままであやかさんを危険に晒しているとしたら――そんなの、耐えられない。
 勝手に死ねばいいなんて思えるほど、僕は自分の意思を貫けない)

 なぜ、そんなことにも気付けなかったのだろう。
 リゼルグは2回目の後悔を、同じ状況で感じていた。

 名目上は、ジョーカーを捕まえて主催の情報を手に入れると言うことにでもしよう。
 とにかくスペードの2に確認を取るまでは、全てのことは後回しだ。

「またそうやってスタンスを変える。だからあなたはつまらないんですよ」

 そんな声が聞こえた気がしたが、無視した。
 聞こえる訳がない。スピーカーはもう、バラバラに切り裂いたのだから。

 誰もいない平原を、リゼルグは駆けて行く。

 朝が来た。


【1日目 朝/G-3】


【リゼルグ・ダイゼル@シャーマンキング】
【服装】緑の服
【状態】健康、復讐心、焦り
【装備】ウォルターのワイヤー内蔵手袋@HELLSING

【持ち物】基本支給品一式×2、不明支給品0~2
【思考】
1:スペードの2がジョーカーなのか確認する。再会のため怪しい洞窟へ。
2:ここにいる全て(主催者も参加者も含めて)皆殺し。
3:騙されてるのかも。



※主催者が支給品を自作したり、改造したりした可能性があります。
※ロワで死んだ人の霊はシャーマンにも見えてないみたいです。蓮の持ち霊だった馬孫も蓮が死ぬと同時に消えました。

◇◇

「さてと。私からのバレンタインチョコはこんなものでしょうか」
『バレンタイン?』
「なんか、貴方と同じ神様を祝う日らしいですよ。企業戦略の一種でもあるみたいですけど」
『そうですか』
「それにしても…………神様は何か違和感を感じません? 私に」
『ん? ええ、確かにそうですね。ずいぶんと知りすぎています、貴方は』
「やっぱりそうですよね。自分でも怖いんですよ、この知識。メタ視点っていうらしいんですけど」
『ふむ』
「“シャーマンが居るから主催が霊に付いて知らないといけない”のと同じ理屈で、
 “書き手がいるから主催がメタ視点を持ってなきゃいけない”という理屈らしいんですけど、私にはさっぱりですよ」
『……それで、メタ視点を手に入れるとどうしてそんなに知識を得ることが出来るのですか?』
「私に聞くんですかー? 神様のくせに。まあ、いいですよ、教えてあげます――あの世あたりで」
『?』

「メタ視点を下手に持っちゃうと、自分の死期が見えちゃうんですよね」

 偶然、◆6/wのデイパックの中に入っていたハズレ支給品である画鋲がクローバーの4に刺さった。

「さようなら」

 それを見て神は、一言呟く。

『――私は、メタ視点を持ちたくないものです』


【クローバーの4@七並べ 死亡】

※主催はメタ視点を持っているかもしれません。
※◆6/w氏(カオス)の2つ目のハズレ支給品は画鋲でした。


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そんなオチ リゼルグ・ダイゼル ユメノアト
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