シンジきゅん受け系SSまとめ

リツコ×シンジ 3

最終更新:

matome_x_shinjikyun

- view
管理者のみ編集可
 いつも通りの端正な顔、凛とした声、フォーマルな服装、
 短いスカートにダークベージュのストッキング……薄暗い場所で見ているが、
 目の前の女性はシンジの中で赤木リツコを構成する全てが揃っている。

「あの……リツコさんですよね?」

 左右に視線を動かして小声で尋ねる。勿論、手は口に当てられた札を握っている。
 握り締めている。リツコからの金なのか、客からの金なのか。

「他に誰に見えて?」

 軽口を叩いた口元はやはり赤く塗られ、そしてニッコリと形良く笑った。

「行きましょう」

 颯爽と歩き出した後ろ姿もやはりリツコだ。それがわかった所で
 どうする事も出来なく、シンジはその後ろを小走りで追い掛ける。
 背負っていた緑の鞄から財布を取り出して金をしまう。
 これはただの報酬。そう割り切らないと、彼女の後ろを歩く事が出来ない。

「面白いわよね、こんな夜中の挨拶がお早うなんて」
「えっ?」
「思った事無い? もう暗いのに、ちっとも早くないのにお早うなんてって」

 歩みを進める度にどんどんネオンが華やかになってきた。
 そんな中、突然の話題は余りにも自然過ぎて不自然な物。
 瞬きを2、3度してから漸くシンジが答えた。

「……僕も、そう思います」
「本部では大勢で徹夜しても、その時間から来る人なんて居ないから…
 …もし居たら、やっぱりそうやって挨拶するのかしらね」
「た、多分……」

 歩幅が違うからかリツコの足が速く感じる。
 先程の道へ行くまでに感じた視線とはまた別の、しかし好奇心に満ちた視線が多い。

「皆間違って、こんばんは、なんて言ったりしないのかしら」
「僕1回言っちゃった事有ります。慣れてからは無いですけど」

 沢山の視線を極力気にしないように。
 そう心掛けないとシンジは着ているというより着られている
 ワイシャツの裾を掴んで走り出してしまうかもしれない。
 対してリツコはリズムを乱す事無くヒールを鳴らしている。
 どこに行きたいのかはわからないが、この歓楽街を歩きなれているのか
 道を探す様子も見せない。

「あら、やっぱりやっちゃうのね。注意とかされた? 
  それって、どの位前かしら?」
「えっと……」
「つい最近ではない、もう長い間働いているのね」
「っ!」

 少し長い誘導尋問だったと漸く気付いた。
 背を向けているリツコの表情は見えないが、きっと笑っているだろう。

「誤魔化しても無駄よ。全部知っているもの」

 案の定リツコは口の端に笑みを乗せながらシンジに教えてやった。

「まさか本当に働いてるなんて、と正直思ったけどね。
  諜報部から聞いていたわよ、学校が休みの前の日に、
  ほぼ毎回夜中にシンジ君が抜け出してるの」

 随分と歩いた気がする。普段ならそろそろどこかに入る頃だろう。
 歩いている道の左右はライトに夜や性を連想させる店ばかりになっている。

「ミサトからどれだけお小遣い貰っているかは知らないけれど、
  こんなに定期的に『買う』事なんて出来ないでしょう? 
  でも諜報部も面倒なのは嫌いみたいね。売春、それも未成年でパイロットの少年が。
  聞いただけでも相当の面倒事ね。だからか、ある程度まではちゃんと尾行しても、
  誰かに買われたらその人が保護者って事にして放置しているみたいよ」

 急に夜風がシンジに対してだけ冷たくなった気がした。

「放置……」


 その言葉の所為で。





記事メニュー
目安箱バナー