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恋とズガンと召喚獣

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恋とズガンと召喚獣 ◆KYxVXVVDTE


島の北方にある都市の、さらに北端。海の見える位置にひっそりと、韓国料理店が佇んでいた。
 店内には広い間隔で四角いテーブルが配置されており、韓国らしい赤を基調とした民族的な装飾から生まれる圧迫感を、程よく弱めている。
 そして、この場には、3人の人間がいた。

「そうだな……これは、恋の過程だ。様々な形のピースを組み合わせて、列の――心のスキマを埋めていって。
 でも、全て揃ってしまうと消えてしまうんだ。積み重ねてきた愛の印を、自らの手で消す。まるで、興冷めしてしまったかのように。不完全だからこそ、お互いを埋め合うように、恋が育まれてくっていうのにな。
 だけど、だけどな、それは必要なことなのさ。
 愛は溢れすぎると、火傷しちまうからな。二度と続けられなくなるよりは、よっぽど良いことなんだ。
 ここまで語れば、もうお前らにも分かるだろう――?
 恋はテトリスに似ている。なぁ、そうは思わないか?」

「まったく分からないわ、どうでもいいから私を崇めなさい」
「崇めておいた方がいいぞ。それがバトルロワイアルというものだ」

 一番奥のテーブルに、携帯機のテトリスに没頭する男が座っていて。
 店の中央に、その男を見据える、二人の男女が立っている。

 韓国料理店の中でテトリスをしていた恋の元に、響とルーファウスがやってきて数分が経とうとしていた。

「いやー、驚いたぜ、俺は。名簿みたら知り合いもいないし、支給品は毒薬とこのテトリスゲームだけだぜ? 恋は障害のある方が燃え上がるけどさ、これはないって」

「それがバトルロワイアルというものだ、男よ」

「そうかい。しかしそのスーツださいっすねぇ! ……いや、冗談はいいとしてどこ製だい? なんで七色に光ってんの?」

「七色は七色よ。仕方ないじゃない」

「そうか? まあ、楽しく恋が出来るならそれでいいさ」

 響とルーファウスが店に入って恋に話しかけてから、ずっとこんなやりとりが続いていた。
 お互いを、信用するに値する相手かどうか判断するための雑談。そのはずだったのだが、
 恋の独特でよく分からない比喩によって、既に雑談すら成り立たなくなってしまっていた。
 ただ一方的に、響達にストレスが貯まっていくだけの会話。
 何が恋だって? 意味がわからなさすぎる! すでに何度も、そんな言葉を言いかけていた。

 それでも、2対1であるという気の大きさから、我慢してはいたのだが……ついに、響の頭の中で何かが切れた。


「――もう、いいわ! あなたと話をする気はないわ。やってちょうだい、ルーファウス」

「……ああ、わかった」

 ルーファウスは響に言われ、デイパックから銃を取り出す。何のへんてつも無い、ただの拳銃。
 両手でしっかり握り、銃口を恋に向ける。


「――なんだよ、いきなり?」

「悪いが、ただ座ってテトリスをしているだけでは生き残れないのだよ。さらばだ」

「おいおい、ちょっと待てよ、恋に焦りは禁物だぜ?」

 恋は突然の死の危険に慌て、テトリスの携帯機を置くと両手を挙げる。
 しかし、ルーファウスは恋の言葉など、既に聞きたくなくなっていた。



 ――ズガンッ!
 ルーファウスが拳銃の引き金を引き、
 恋の頭はなすすべなく吹っ飛ぶ。

 1人の犠牲者が出て、この話は終わり。

 その、はずだった。


◇◇◇◇◇


「支給品は、だいたいの場合3つ。いくら俺でも、パロロワの常識くらい知ってるぜ?」

 恋は、無傷だった。
 ルーファウスの手元が狂った訳でも、恋が銃撃を避けた訳でもないのに。

「ばかな! なぜ生きている!」

 ルーファウスは驚き、響は怪訝な目で恋を見つめる。
 そして一瞬の後、二人は視認した。何やらオレンジ色の物体が、恋の前にいつのまにか浮かんでいるのを――

「なぜ生きているかって? 文字通り、こいつが“まもって”くれたのさ。紹介するぜ、ラブたんだ」

 ハート型の、シンプルなデザインをした物体――いや、目があるのが見えるから、生き物だ。
 しかし、その生き物がどんな生物なのか、響とルーファウスには理解できない。

「ラブカスは、恋の象徴のようなポケモンなんだぜ。恋を語る俺に、ふさわしいとは思わないか?」

 恋は、自分に支給されていた3つ目の支給品を、隠していたのだ。

 ラブカス、ランデブーポケモン。
 ポケモンの中でもそこまで強くない種だし、“まもる”もまた、ポケモンを知っていれば恐れるまでもない技だ。
 だが、ポケモンが存在しない世界の人間に――相手の攻撃を必ず無効化できる技を持つその生き物は、驚異でしかなかった。

 ラブカスがルーファウスと響を、くりくりとした愛らしい目でにらみつける。
 防御力こそ落ちないものの、ルーファウスと響は未知の存在にたじろいだ。

 いや、正確には――ルーファウスのみが、一旦距離を取った。


「七色光線!!」

 高嶺響は、退かなかった。



「ラブたん、まもる」

 両眼から放たれた七色光線を、恋のラブカスはまもりきる。
 しかし、それは響の予測の上。突然出てきた生き物には驚いたが、冷静になればなんてことはない。
 先の七色光線は、ただの予測の確認にすぎなかった。

「あなたがいくら抵抗しようと――主催を倒して主催になりかわる、この響様には敵わないのよ!」

 恋に向かって挑発の言葉を投げ掛けながら、響は心の中で安堵した。
 恋に向けて撃った七色光線を、ラブカスがかばうようにしてまもったからだ。
 予測は、恐らく当たっている。

(やはり――あの変なハート型は、自分を守っているにすぎない! 前面に出すことで気付かれないようにしているようだけど、高嶺響のこの目はあざむけないわ!)

「ルーファウス! 同時にあの男を狙うわよ! あの変な奴は、1方向しか守れない!」

「お、おう、分かった」

 ルーファウスに激を飛ばして銃を打たせ、同時に響は七色光線を放つ。

 これで恋は、少なくともどちらかを自分の身で受けるしかない。
 光線と銃弾、別々の角度から加えられるそれらを全て守るには、ラブカスの体は小さすぎるからだ。
 もし避けられようと、連続で攻撃を加えれば、いずれは――


「ラブたん、れいとうビーム」

 沈黙を続けていた恋が、待っていたかのように言葉を発した。

 続けて、響の頭に――何かで殴られたような、衝撃が響いた。



◇◇◇◇◇


 ルーファウスは、見ていた。
 恋が、座っていたイスを掴んで、高嶺響に投げつけたのを。
 七色光線は、目から発せられる技。技を出している間、響の視界は、自らの光線で狭められる。

 だからこその――不意打ち。いい手だ、とルーファウスは関心した。
 関心しながらも、ルーファウスは響にそれを伝えることは、しなかった。



(それが、バトルロワイアルというものだからな)

 もともとルーファウスは、響の生死などどうでもいいのだった。
 ただ、七色光線で殺されるかもしれないから、便宜上彼女と組んでいた。
 それだけの、ことである。

(それに――今こそ、千載一遇のチャンスではないか)

 敵の男はイスを投げているため、無防備。
 男のしもべだろうハート型の生物は、響の七色光線を受けるのに精一杯だ。

 今、ここで自分が再びあの男を撃てば。
 響は倒れ、男は死ぬ――つまり、一人勝ちだ。

「最後に笑うのは、第三者。これがバトルロワイアルというものだ、悪く……思うなよ?」

 ルーファウスは盛大にかっこつけながら、慎重に銃を構え、撃つ。
 銃弾は真っ直ぐに、正確に恋へと飛んでいった。


「ラブたん、れいとうビーム」

 だが、ルーファウスのもくろみも、銃弾も、銃も、
 全てが――凍ってしまって、ルーファウスは言葉を発することが出来なくなった。

◇◇◇◇◇

「……あ、あぶな、かった」

 戦いが、終わった。

 かっこつけてはいたものの、恋はその実、ものすっごいびびっていた。
 玉のような汗がほほをつたい、手も足もガクガクと震え、目はあらぬところを泳いで、口はからからにかわいている。

 しかし、やったのだ。どうにか、襲ってきた2人を、倒すことが出来た。

「殺……したほうが、いいんだよな?」

 恋の近くの床には、額にたんこぶを作って倒れている高嶺響。
 少し遠くには、冷凍ビームで四肢を氷づけにされたルーファウスが、それぞれ気絶した状態で横たわっている。
 支給品の中にラブたんがなかったら、間違いなく一瞬でやられていただろう。
 いや、ラブたんがいても――この2人次第では、恋は死んでいたのだ。

「と、とりあえずラブたん、おつかれ」

 ラブカスを、モンスターボールに戻す。“全ての技が3回しか使えない”との説明書きを信じれば、
 「まもる」はもう使えないし、「れいとうビーム」も2発しか打てない。

 「まもる」を解いて「れいとうビーム」を撃ったため、その間捨て身で七色光線を受けさせてしまったし……今は、休ませておくべきだろう。
 そんなことより、

「殺して、しまうのか?」


もう一度、恋は自らに問いかけた。主催はツンデレで、もし優勝したらどんなデレが待っているんだ――? とは言ったが、
 実際優勝する、となると、どうしたって人を殺さなきゃいけない訳で。

「あのなぁ、作品内でキャラを殺すならともかく――自分の手で、とか、ぶっちゃけ有り得ないと思うんよ、俺は。なんかのキャラになりきるとかならともかく……これ普通に、理不尽な理由で人殺ししてるだけじゃね?」

 誰に向かってなのか、恋に例えることもせずに恋は呟いた。
 いや、思えば戦い始めてからは、まともに恋に例えることが出来なくなっていた。
 それほど――切羽詰まってる、ということだろうか。恋は薄笑いを浮かべながら、自嘲した。

「そう、だな。恋だってそうだ、ギリギリになったらどんなことだってやるんだ」

 恋は考える。
 大好きなあの子にもう会えなくなると知って、警備員を振り切って空港に突撃するシチュを。
 姫がさらわれて、無謀だとわかっていながら、魔王に戦いを挑みにいくシチュを。
 人間とは、そういう生き物なのだ。

「だったら、俺のすべきことはひとつだな」

 最初の方針を変えないこと。優勝狙い、一筋だ。
 とりあえずこの2人には、毒薬を飲ませて逃げよう。人を殺すにはかなりの体力がいるらしいし、こんな序盤で体力を失う訳にはいかない。

「禁書目録のアニメも、帰ったら見ないといけないし」

 恋はデイパックから「毒薬」と書かれた箱を取り出して、開ける。丁度、中には2つのカプセル。

 恋はゆっくりと、カプセルを倒れている2人の口に含ませると、
 2人が持っていたデイパックを奪い、その場を後にした。

 ――テトリスの携帯機を、テーブルの上に残したまま。




【A-3(韓国料理店の外)/黎明】
【恋@マルロワ】
【服装】普通の服
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、ラブたん(ラブカス)@ポケットモンスター、ルーファウスと響のデイパック
【思考】
1:恋ってのは突然燃えあがる。そうだろ?
2:優勝して主催のデレを見てやるよ
3:帰ったら禁書目録のアニメ見るぞ

【ラブたん(ラブカス)@ポケットモンスター】
HP:あと40%
わざ:まもる(0/3)、れいとうビーム(2/3)、不明わざ1(3/3)、不明わざ2(3/3)
せつめい:ハート型のポケモンで、みずタイプ。ラブたんって名前は恋がつけたようだ。しかし、残念ながら♂である

※恋がどこへ向かうのかは、次の書き手さんにお任せします


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『恋』 The Flag of Death
七色の光 高嶺響 見た目は子供!頭脳も子供!
七色の光 ルーファウス 見た目は子供!頭脳も子供!

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