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剣法一本勝負

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剣法一本勝負 ◆h3Q.DfHKtQ



C-5地区に広がる森の中で、二人の男が対峙していた。

一人は、全身を「大鎧」と呼ばれる、平安時代から鎌倉、室町にかけて
使用された形式の鎧に身を包んだ背の低い男である。
その手には「贄殿遮那」という銘を持つ太刀を下げている。

もう一人は、長い総髪の、羽織姿の武士である。
正眼の構えで、打刀の切っ先を鎧の男に向けていた。

一見するとまるで時代劇の一幕のようではあるが、
これはまったくの現実であるし、時代劇だとしても、
着ている格好に時代差がありすぎる。

総髪の武士の方は、名を阿魔野邪鬼と言った。
甲賀姫宮村の住人にして、甲賀忍者である。
かつては甲賀七人衆という、異能の忍者集団の頭だったが、
憎っき宿敵、伊賀の影丸により部下たちは皆倒され、
今の彼は唯の牢人だ。

鎧の男は、驚くべきことに名を源義経と言う。
そう、知らぬ人となし、あの源氏の九郎判官義経である。
彼は、壇ノ浦の合戦の直前、ここに突如呼び出された。
そして一刻も早く戦場に帰るべく、この殺し合いの場を
奔走していた。

二人が出会ったのはほんの五、六分ほど前、
C-5とB-6の境の場所である。

最初の獲物、男一人、女一人を逃がした義経は、
彼を拘束していた、怪しげな光の剣が消えた後、
先ほどの三人には追いつけぬと見て、他の獲物を
探し、南の方へ向かっていた。

一方、邪鬼は、今ここで何が起こっているにしろ、
先ずは情報が重要と、人が集まりそうな街に
地虫十兵衛と共に山から下りてきたところであった。
そこで、ともに忍者である以上、二手に分かれた方が
効率がいい、正午になったらまたこのあたりで落ち合あおう、
と約束し、地虫は西へ、邪鬼は北へと向かった所であった。

こうして、邪鬼と義経は対峙する運びとなったわけである。



(ちぃ・・・・こやつ思ったより強い・・・)
邪鬼は義経の予想以上強さに焦っていた。
最初、この目の前の男が自分のことを「源の九郎義経」と名乗った時は、
思わず哄笑してしまったものだ。
九郎判官義経!童でも知っているかの英雄の名を出すとは、
なんと大きく出てきた事か。
よくよく見れば着ている具足もやたら古めかしい代物だ。
いちいち準備のいいことだ。

ここで邪鬼は義経の実力を大きく見誤った。
彼は義経を唯の騙りの張ったり屋だと思ったのである。

しかし事実はどうだ。
邪鬼の羽織は所々千切れ、血で滲んでいる。
これは、義経の恐ろしく早い太刀さばきに、間合いの
とり方を誤ったがためだ。

(鎧を着けてこの早さかっ・・・・)
邪鬼は戦慄する。

「義経」の着けている大鎧は総重量が20kgから30kgだという。
これは、2リットルのペットボトルの10本から15本分の重さに相当するものだ。
つまりこの色白の小男は、そんな重たい物を身につけながら、
刀の扱いに長けた素肌武者(忍者だが)と戦っているという事になる。

(もしかすると本物かもしれん)
義経には逸話が多いがその中に「八艘飛び」と言う物がある。
壇ノ浦の合戦の時、平家の中でも特に剛力で知られた平教経に
迫られた時、八艘の船の間を次々とまるで飛ぶように跳ねて、
組み打ちを避けたというものだが、なんと義経はこの時
完全武装の状態で6メートルも離れた船に乗り移ったという。
恐るべき身体能力である。
鎧を着けたままの例の太刀さばきを見れば・・・・ありうる。

また、義経はまだ牛若丸と呼ばれていた頃に、天狗に剣術の手ほどきを受けたというが、
彼の使う刀のさばきは、刀の使い方を知らぬ者や、
粗雑で原始的な介者剣術のそれではない。
やや古風で、中には見たことの無い型もあるが、確かに剣術に通じた者の動きだ。

(噂に聞く、京八流か!)



“京八流”
それは今は絶えてしまった半ば伝説上の剣術である。
かつて鬼一法眼(『義経記』などに名がある、伝説の陰陽師にして軍学者)が、
鞍馬山の八人の僧侶に授けたとされる剣術で、日本で最も古い剣術だと言われている。
その後継としては、武蔵との決闘で著名な吉岡流、佐々木小次郎の師匠、富田勢源が達人として知られる中条流があると言われるが定かではない。
義経が天狗より修めた剣術はこれだと言われている。

(地虫の話もある・・・・だとすれば・・・・)
地虫十兵衛が言っていたこと、
『・・・・・俺の記憶が確かなら今は慶長十九年(1615年)じゃ・・・・』
(時を越えたというのか・・・・馬鹿な・・・)
しかし、今自分がおかれた不可思議な状況を鑑みれば、決して夢物語では・・・
(ええい・・・・そのような事はどうでもいい!取りあえずはこやつを倒してからだ)
思考を無理やり中断すると、邪鬼は正面の恐るべき強者に意識を集中した。

一方、一見有利に見える義経も、実は大いに焦っていた。
(太刀さばきがまるで違う!)
目の前の男は、自分よりも刀というものに通じている。
義経は、これまでの数合の打ち合いから、その技術の差を
読み取り、焦っていた。

これは詮無きことだろう。
義経の京八流は、いわゆる剣術が成立する以前の物である。
一方、邪鬼の修めている剣術は、飯篠長威斎の天真正伝香取神道流以来の
現代に続く剣術であり、伊藤一刀斎景久、塚原卜伝、上泉伊勢守信綱、柳生石舟斎宗厳と
いった偉大な人々の手によってより洗練された剣術である。
義経の剣術と邪鬼の剣術とでは、完成度があまりにも違いすぎた。

また、一見有利に見える、鎧を着けていることもまた、焦る要因だった。
本来、大鎧は馬上で使う事を前提としており、非常に重い代物だ。
その重さが、義経の体力を徐々に奪っていた。

また、大鎧は弓に対する防御に重点を置かれている鎧で、
徒歩戦には向いていない。鎧を着ているからと言って防御面も万全で無い。

(次の一撃で勝負を決めねば・・・・)
義経は「贄殿遮那」を諸手で構えた。

(むっ・・・)
邪鬼は義経が構えを変えたことに気が付いた。
さらに、彼の殺気が急速に強まっていることも。
(次の一撃で決めるつもりか・・・)
義経の構えは、所謂“大上段”と言われるものだ。
迂闊に間合い入れば両断されるだろう。
(正攻法では分が悪い・・・・ならば・・・)
そう考えて邪鬼が取った構えは、

「むっ・・・?」
実に奇妙な構えであった。
刀を地面に突き刺し、右手を添えるように握る。

(何のつもりかは知らぬ・・・が)
義経は、その奇妙な構えに、訝しみつつも、
冷静に切り込む機をうかがっていた。



睨み合う事、二、三分。
しかし、当人たちには永遠とも思える時間が過ぎる。

「カァーっ!!」
最初に斬り込んだのは義経だ。
大上段から、全霊を込めた剣が振り下ろされる。

対する邪鬼の技は、その構えと同じく奇妙なものだった。

邪鬼は、右足で、地面に刺さった刀を蹴りあげたのだ。
中空で、切っ先が義経の方を向く。
その瞬間、右手の手のひらが、刀のつか頭を鋭くはじいた。

切っ先は、義経の剣撃よりも早く、
違うことなく義経の鎧の隙、喉笛に鋭く突き刺さった。

しかし、喉を突き刺されながらも、義経の剣撃は恐るべきものだった。
義経の放った大上段は、邪鬼を左肩から真っ直ぐに斬りつけた。

「ぐっ!」
見紛うことなき深手。

邪鬼と義経は、重なり合うように地面に倒れ伏した。



両者が相打ちになってからおおよそ一時間ほどしただろうか。

むくりと、義経の死体を押しのけて、邪鬼が立ち上がった。
どうしたことか、先ほど義経に付けられた傷は、
羽織に大量の血が付着してこそあれ、
何事も無かったかのようにふさがっていた。

「ふぅ・・・・俺でなければ危うかったかもしれん。
他の者ならば、良くて相打ちだっただろう」

これぞ、阿魔野邪鬼の恐るべき忍法である。
邪鬼の体は先天的に異常な再生能力を持っており、
それこそ通常ならば死亡するような傷でも、
ほとんど三時間以内に完全に回復し、蘇生してしまうのだ。
そんな彼の得意技こそ、相手との相打ちを狙う事だった。

彼の出身地である姫宮村は、邪鬼のような
異形の者たちの巣窟であり、
全身に吸盤が付いている者、
犬並みに鼻が効くもの、
全身の皮膚が鉄のように硬い者など、
ありとあらゆる異形の忍者を代々輩出してきた村なのだ。

その中でも、邪鬼の能力は彼固有の者であり、
この能力で彼は二百年もの時を生き延びてきたのである。

もし、彼を殺そうと思えば、全身を粉々にするなどの手しかないだろう。



(しかし・・・普段よりも治るまでに時間が懸ったような・・・・)
邪鬼は、かつて刀傷があった場所を眺めて考える。
(ここのところ奇妙なことが続いている・・・少し気にかけておいた方が良いかもしれぬ)
そう考えながら、義経の首より刀を抜きとり、血を拭いて、鞘におさめた。

「しかし、地虫の方は大丈夫なのか・・・・」
彼は地虫の向かった方角を向いて呟いた。

【源義経@平家物語 死亡確認】

【C-6/ 早朝 一日目】

【阿魔野 邪鬼@伊賀の影丸】
【服装】:羽織姿の武士
【状態】:健康
【装備】:脇差@現実、太刀@現実
【持ち物:不明
【思考】
1:地虫は大丈夫だろうか
2:誰かと情報交換がしたい
3:ゲームに乗るかは未定
[備考]
※「由比正雪の巻」後の参戦です。
再生能力は制限されています。
制限に少し気付きました。

※【地虫十兵衛@バジリスク~甲賀忍法帖~】については
 次の書き手さんにお任せします。



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ただそれだけできれば英雄さ 源義経 GAME OVER
甲賀忍法帖 阿魔野 邪鬼 怪しい洞窟へ行こう!

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