葵、夕霧、そして猫 ◆/SZNEjlDc.
「……ん、はぁ……っ」
熱い吐息が漏れ、狭い部屋の中に反響する。
断続的に響く濡れた音の元へと、指を滑らせ―――
断続的に響く濡れた音の元へと、指を滑らせ―――
『憎いのう……』
―――滑らせようとした刹那、重々しい声が響いた。
猫の耳を持つ女、ヴェーヌは己が身体がぴくりとも動かないことを知る。
猫の耳を持つ女、ヴェーヌは己が身体がぴくりとも動かないことを知る。
「ヒーホー! ピーポー! ドーしたんだいヴェーヌ!
イケないってか!? これっぽちじゃイケやしないってか!?
ヒャッハー! ならオイラが代わりにイッてやるー!
奥義! イヌハッカ一気食いー! ウヒャッハー! キタキタキター!」
イケないってか!? これっぽちじゃイケやしないってか!?
ヒャッハー! ならオイラが代わりにイッてやるー!
奥義! イヌハッカ一気食いー! ウヒャッハー! キタキタキター!」
すっかりキマった猫が、くるくると踊りながら耳元でわめく。
うるさいな、と思った瞬間。
うるさいな、と思った瞬間。
『―――やかましいのう』
声が、思いと重なった。
ぴしゃり、と何かが頬に跳ねる。
ぴしゃり、と何かが頬に跳ねる。
「ヒャ、ヒ、ホ……? ヒィ……ホ……」
掠れた響きは、裂けた喉からごぼごぼと噴出す血の泡に混じって聞こえてくるものか。
一瞬を置いて、目の前の猫が自らの作った血の海の中へと倒れ、べしゃりと気味の悪い音を立てた。
一瞬を置いて、目の前の猫が自らの作った血の海の中へと倒れ、べしゃりと気味の悪い音を立てた。
『静か、静か……のう、娘や』
声が、ヴェーヌの耳朶を打つ。
返事はできない。舌はからからに渇いた喉に貼りついたように動かない。
返事はできない。舌はからからに渇いた喉に貼りついたように動かない。
『あられもない姿……一人乱れて、気をやろうとしておったろう……?』
声は響く。
部屋にはヴェーヌと、倒れ伏すケットシーの躯だけ。
それでも、声は響く。
ヴェーヌの身体は動かない。
その手に握った、豪華な装飾の剣も動かない。
血に濡れた刃が、恐怖に震え見開かれた己が目を映しても、ヴェーヌの身体は動かない。
部屋にはヴェーヌと、倒れ伏すケットシーの躯だけ。
それでも、声は響く。
ヴェーヌの身体は動かない。
その手に握った、豪華な装飾の剣も動かない。
血に濡れた刃が、恐怖に震え見開かれた己が目を映しても、ヴェーヌの身体は動かない。
『憎い、憎いのう……そなたの美しさが憎い……若さが憎い、浮世のけらくが憎い……』
唾を飲み込むこともできない喉に、冷たい感触。
刃が、食い込んでいく。
刃が、食い込んでいく。
『あの方が憎い、あの方を惑わす女どもが憎い、あの方に振り向かれぬわらわが憎い……』
喉が、裂けた。
ひう、ひうと音が漏れる。
ああ、先ほどの音はやはり断末魔の息遣いであったのだと、つまらぬことを思う。
その、つまらぬことがヴェーヌという女の、この世で最後の思考となった。
ひう、ひうと音が漏れる。
ああ、先ほどの音はやはり断末魔の息遣いであったのだと、つまらぬことを思う。
その、つまらぬことがヴェーヌという女の、この世で最後の思考となった。
『憎い、憎い、憎いのう……』
声は薄れ、やがて消えていく。
後にはただ、物言わぬ血と肉だけが、残っていた。
後にはただ、物言わぬ血と肉だけが、残っていた。
【ヴェーヌ 死亡】
【ケットシー 死亡】
【ケットシー 死亡】
【H-4/猫屋敷二階/一日目/深夜】
【六条御息所@源氏物語】
【服装】:白襦袢
【状態】:生霊
【装備】:不明
【所持品】:支給品一式
【思考】女を一人残らず呪い殺す。
【服装】:白襦袢
【状態】:生霊
【装備】:不明
【所持品】:支給品一式
【思考】女を一人残らず呪い殺す。
※備考:本体はマップのどこかに眠っています。
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